Quantcast
Channel: あべまつ行脚
Viewing all 295 articles
Browse latest View live

THE RINGS 指輪 ・国立西洋美術館

$
0
0
 
 久しぶりに、国立西洋美術館に行ってきました。
 女子の心の支え、胸のときめき、を見ないことには
 まずいだろうと、ジュエリーに執着はないのですが、
 工芸、金工、宝飾ジャンルとして見てこようと思いました。





 高校教師の友人と連れだって入りましたが、
 会場の設営がとても美しく、サントリー美術館的要素が
 溢れていました。

 庭園美術館で展示されたら、とも夢想します。

 天井からつるされた大きな半径1メートル位の輪のランプシェードのようなものに
 展示されている作品を拡大してプリントされた布が張られていました。

 ともかく作品が指のサイズ、掌に入る小さなものですので
 鑑賞者が目の前で張り付いてため息をいちいちケースに吹きかける、
 そういった状態が続きました。
 作品の近くにはその拡大図と共に解説があって、
 鑑賞の手引きとしてとても役に立ちました。

 指輪とは単に宝飾としてその人を飾るためのもの、
 そういったことばかりではなかった事に気づかされたことが
 一番大きな収穫でした。

 指輪の歴史は紀元前。リングの歴史、4000年を辿ります。
 それも展示品の中で最古のものはエジプトの紀元前1991〜1650年のもの!
 古代、新王国時代にはふんころがし、スカラベが多くかたどられました。
 研磨がまだ柔らかで、金属の仕上げもゆるやかな時代から、
 工具の進化と技術の向上と、要求が多岐にわたってくると
 いよいよ石が輝きを増してきます。
 ダイヤモンド、の威力は昔から変わらず、
 輝きの光線が如何に人々を魅了し続けてきたかがわかります。
 時代が下ってアーツ&クラフツ時代となると
 デザイナーの力量発揮の場ともなります。
 ジュエリーの大御所、カルティエが現れると
 圧巻、圧倒されます。

 飾らない指輪。
 そんなことがあるのかと知らされます。
 実は、指輪は魔除けであったり、
 護身であったり、印章でもあったり、
 多岐にわたる用途があったのでした。
 小さな男根がつけられた金の指輪に驚くと
 それは子供のお守りとして作られたそうです。
 また、ヒキガエル石、という素材にも驚かされました。
 腎臓の病気を防ぎ、毒を検知するそうです。
 
 語る指輪。
 ギリシャ神話に登場する、聖書に登場する人物や、動物たちが描かれ、
 その物語を伝えます。
 
 技法と模倣。
 ここでは古代のリングと、それを模倣した近代のものが
 同列に並びます。
 昔の作品に影響されて新しい技術を取り入れて
 作る、ということは工芸では良くあることですが、
 憧れる作品は後世になっても受け継がれていくのだと
 実感できます。

 死と婚礼
 この対極の章にぎょっとしますが、
 相反するもので生は結婚がなければ産まれないし、
 生はまた死へ繋がるものです。
 ドクロをモチーフにするリングは負のオーラを
 纏うようで身につけたいとは思いませんが、
 若い人たちはそれがクール!なのでしょう。
 またこの結婚が永遠と願うカップルのための
 誓約書のようなリング。
 刻印に死を分かつまで愛の宣言をするのです。
 友と二人、永遠はあり得ない、むりむり、と笑いながら
 縛る、管理する、制約する、それは厳しいことよね、と
 厚く同意したことが愉快でした。
 老練とうことの諦観です。笑)

 他、絵の中の指輪、
 モードと指輪では、その指輪と絵画、衣装が展示され、
 その工夫が大変面白く、西美の常設展示でおなじみの作品が
 指輪をいう共通項で登場することでまた再発見することができる
 ものでした。

 ラストに
 指輪あれこれ。
 そういえば、時計指輪ってありましたね。
 戦渦では自害するために毒薬を指輪に忍ばせて携帯していたとか、
 蛇のとぐろ状になったものや、
 007のようなカメラを搭載した指輪や、
 デザイナーの解釈による斬新な指輪がこれでもかと
 押し寄せてきます。

 目の中がキラキラ星になって
 目の前の輝きから目が離れず、目眩を起こすほどの凝視に
 疲れ切ってしまいましたが、
 じつに楽しく、興味深い展示でもありました。

 力尽き果て、空腹にも耐えかねて、
 常設のご馳走には触れず、
 へなへなと昼食に向かったのでした。

 今週末、連休15日が会期末です。
 ぎりぎりとなりましたが、駆け込みお勧めしたい展覧会でした。

 展覧会のロード・オブ・ザ・リング なのでした。
 
 特設サイトはこちらから

 国立西洋美術館のサイトはこちらから

平櫛田中コレクション展 ・東京藝術大学大学美術館展示室2

$
0
0


 木彫好きで仏像もその彫像として見てしまいますが、
 平櫛田中のコレクションを芸大美術館で開催と知って
 いそいそ出かけてみてきました。

 平櫛田中コレクションーつくる・みる・あつめるー

 会場は地階で、入場料無料のありがたい企画展示です。
 
 田中の作としていつも念頭にあるのが
 国立劇場に展示してある「鏡獅子」
 指先まで神経が張り詰めている、鬼気せまる迫力に息をのみます。
 また、岡倉天心の釣りをする姿。
 東博でのボストン美術館展で最初に天心が迎えてくれた、
 あの姿。
 時々、近代美術館でみていた天心の全身像。
 などなど、思えばあちこちで作品と対面してきたのですが、
 その度に樹の中から何かを掘り出す、その凄味に圧倒されるのです。

 この展覧は田中の作品ばかりではなく、チラシを飾った
 愛らしい少女は 橋本平八作「或日の少女」

 他、「牛」、「猫」の作品も。
 また、猫繫がりで前衛的単純化された辻晋堂作の陶彫、「ねこ」
 大作「出家」が展示。

 また、お気に入り作家、小川破傘(伝)の「煙草盆」を見ることができて
 大変喜びました。これもまた使える材料をすべて使ったような
 もの凄い装飾の煙草盆でした。これができるのは破傘以外に考えられないくらいのものでした。

 田中の作品は9点ですが、
 会場内に緊迫した空気が張り詰めるのは
 作品一つ一つからあふれ出すオーラの力でしょう。
  
 「三井高福像」三井財閥の8代当主ですが、ご本人のお髭を顎にたくわえた
 リアルなふさふさに仰天しました。
 殿様の背後には立派な花鳥図の屏風。
 なんと、尾形光琳(伝)の「秋草図屏風」なのでした。
 会場の主として鎮座しているようでした。
 三井記念美術館でもおなじみの三井財閥を作ってきた方です。

 また、歌舞伎役者六代目尾上菊五郎の姿、鏡獅子の彫像は
 衣装を着けず、隈取りだけの裸像作品があります。
 隈取りで衣装のない姿を菊五郎は嫌がったそうですが、
 田中はこれでいいと感じていたようです。
 獅子の毛をつけ、舞台衣装を纏った迫力ある作品が並んでいる姿からは
 光が電化して放電しているようでした。
 国立劇場の作品はこの作品より大きなもので、
 歌舞伎を鑑賞する前にいよいよこれから開幕だという
 高揚感に浸ることができます。
 田中は鏡獅子になんと20年費やしたそうです。

 田中の目にかなったコレクションから
 木彫に捧げた情熱の一端を感じ取れる、小企画ではあっても
 充実感に溢れるすばらしい展示作品群だったと
 幸福感に満ちた展覧でした。

 芸大美のサイトはこちら

 この展覧は10月19日まで。
 参考に平櫛田中のサイトがとても役に立ちます。
 小平のサイトはこちら。
 岡山県、井原のサイトはこちら。

 同時に東博でも灰袋子作品を展示されていました。(9月28日まで)
 併せて鑑賞できたので喜びもひとしおでした。

台灣の近代美術 ・東京藝術大学大学美術館展示室3

$
0
0

 今年の都内美術展企画にはどこからともなく台湾の風が吹いているようです。
 平櫛田中展と同時期に芸大美術館で開催されている
 「台湾の近代美術」という展覧会に立ち寄ってみました。
 
 副題にはー留学生たちの青春群像(1895-1945)

 とありますので、台湾が日本に併合された時から、
 大戦後台湾に主権がもどるまでの期間です。
 この限られた波乱に満ちた期間に日本の東京藝術大学で西洋絵画を学んだ
 若者達がいたことを初めて知ったのでした。

 会場では簡単な冊子が配られます。

 
 
 どことはなしに梅原龍三郎や、岡田三郎助の影響も感じ取れ、
 留学生達との交流があった軌跡を
 絵画を学びたい熱意の表れる作品群を通して知ることができました。

 近代の中国や台湾の作家達、なかなか知るチャンスがなく、
 触れることもなく、そんな現実に驚かされます。

 今後はもっと近隣国の作家達を知りたいと思いました。

 先の近代美術館で開催されたアゲオコレクションにしても、
 アジア圏の作家と初対面だったことが印象的で
 まだまだ知られていない現実をみたのですが、
 ますます今後、を期待したいと願ったのでした。

 この展覧は10月26日まで。

 ぜひ、パンフレットを手にして知らなかった台湾の留学生達の
 存在に触れてみること、お勧めしたくなりました。

 個人的には、陳登波さんの作品におおいに魅力を感じたのでした。

 また、芸大美術館を出たところの陳列館で
 「国際木版画展2014」が開催中でした。
 9月25日までで終了していますが、
 思いがけず、船越桂さんの作品も展示してあって、 
 世界中からの作品が一同に集まった珍しい現場を拝見できたのも
 楽しい拾いものをしたように喜んで拝見したのでした。

 展覧会のタイトルは台湾の漢字を旧漢字「灣」使用しています。
 

 

名画を切り、名器を継ぐ ・根津美術館

$
0
0
 根津美術館、新創開館5周年記念特別展として、
 「名画を切り、名器を継ぐ」と題して
 美術にみる愛蔵のかたち の展覧会が開催されています。

 この極上の名品たちに心躍らせて行ってきました。

 なぜか若い頃から古美術が大好物で、そのものが歴史を生き抜いてきた、
 それだけでぽうっとなってしまいます。

 この展覧会は根津美術館でなければできない企画展です。
 この後、巡回もないのです。

 出品数は約百点あまり、会期中の展示替えもありますが、
 出品協力の所蔵者名がまた凄いところばかり。
 東博、京博、MOA、MIHO、徳川、五島、三井、大和文華館、
 泉屋、正木、三の丸、遠山、北村、永青、などなど、、、、

 古美術の極上の名品を所蔵している美術館からの出品に
 すでに大変な事が起こっていることを知らされます。

 会場では、墨画巻物、和歌集、絵巻物、三十六歌仙、
 また、茶道具の名器、陶磁器、などが並びます。

 つまり、古くは奈良平安、中国の南宋時代から時の人の眼によって
 選び抜かれた名品が
 受け継がれていく間に様々な事情が生まれ、
 切り、継ぐことによってその形を変えながらも大切に伝来してきた、
 変容の姿を展覧する企画となっているわけです。

 *国宝 瀟湘八景図 漁村夕照 牧谿筆 
 
  この瀟湘八景図の由来がなやましく、東山御物としての印、
  足利義満所有の「道有」の印章が確認できます。
  これは八つの景色に分かれ、牧谿への憧れが輝いていた時代に
  巻物で管理するよりは分断した方が合理的で茶掛けにも
  使い勝手がいいとされたことでしょう。
  不肖未熟ながら、過去に追跡記事を書いていたので、
  勉強が足りなく、お恥ずかしいのですが、
  自分の復習のためにのせておきます。
  こちら

  いずれかの時に 根津、京博、出光、畠山、の残された
  瀟湘八景図牧谿筆を並べてぜひ拝見したいものです。

 *青磁茶碗 銘 馬蝗絆 
  13日まで開かれていた、東京国立博物館東洋館での画像をご紹介します。(あべまつ写)
  



  
  この茶碗は東京国立博物館所蔵で、東博東洋館で
  5月27日~10月13日まで 
  「特集日本人が愛した官窯青磁」の中でも
  名品の一つとして展示されていました。(展示期間5/27~8/31)
  同時に川端康成が所蔵していたという汝窯の青磁の盤、なども出品され、
  南宋の青磁器の悩ましい翡翠色に見惚れました。
  また、竹橋の工芸館での「青磁のいま」という展示には
  この、馬蝗絆とそっくりな「銘 鎹」という青磁輪花碗と出会いました。
  鎹を打たれた青磁茶碗はひとつではなく、まだあるのかと仰天したのでした。
  その驚きはまだ続きがあることを
  ここ、根津美術館でも知らされます。
  「銘 雨龍」との対面でした。
  こちらは輪花のような切れ目がなく、すっきりとした朝顔のような形で
  とても可憐です。鎹も三カ所程度で痛々しさがない姿でした。
  
  奇遇なことでしたが、時同じくして青磁茶碗、3碗との出会いも嬉しい経験でした。
  
  もう二度と作れない、といわれ、鎹を打たれて治された青磁のやきもの。
  日本では鎹を打つ手法が見当たらないのですが、
  金継ぎなどの補修があらたな景色として楽しむ風土文化が
  それをさけたのかもしれないと思ったのでした。

  同じく、「銘 鎹」とされた、砧青磁の下蕪形のふっくらとした形の花入れが
  青磁のひび割れに鎹を打った作例として並んでいました。

 他、石山切、佐竹本三十六歌仙(殿方、姫方を前後して展示)
 駿牛図、京都国立博物館でずらり展示中の鳥獣戯画の断簡、
 平治物語、などなど。
 また、やきものでは、長次郎の赤楽茶碗破片を再生した「木守」
 桃山時代の志野茶碗の欠片を見事に一碗にした「銘もも」
 どこが割れていたのかまったくわからなかった朝鮮李朝の白磁壺。

 どれもが奇跡の継承を経て今に残されてきました。
 一つ一つの名品に伝来の物語があって、
 何故今ここにあるのかというエピソードを教わりながら
 なるほど、それほどまでに大切な物だったのかと感嘆せざるを得ない、
 物を大切に守って継承しなければならない、そう思うほどの
 名品の姿を期間限定で拝見できる喜びに浸ることができます。
 根津美術館、記念の展覧としてきっと輝かしい足跡となる
 素晴らしい展覧会だと確信しています。

 2階の展示室には伊勢絵、源氏絵がずらり並び、
 茶器のコーナーでは「和光を楽しむ茶」として、
 切り継ぐ、その精神を感じるもの、月明かりを感じる物が並びました。
 
 会期は11月3日(祝)までですが、
 10月15日から随分入れ替わります。
 
 瀟湘八景図の洞庭秋月、伝牧谿筆 徳川美術館所蔵は
 10月21日に展示されます。

 日本で愛されてきた名品の継承の仕方の
 慈愛と尊敬と畏怖とそれを守る技術と工夫に
 深く感じ入ることができる素晴らしい空間でした。

 図録はものがたりの語り部として、ぜひ手元に置いておきたいものでした。

 11月3日までの開催です。

 根津美術館のサイトはこちら。

 この日は、三時過ぎに入り、根津カフェにお邪魔し、モンブランケーキと紅茶をおやつに頂きました。
 緑の帝庭園を眺めながら、今見てきた名品を思い出し、
 ゆったりとした気分で、もう一度会場に入ってみてきました。
 閉館ぎりぎりまで楽しんだ、優雅な愉悦にひたることができた至福のひとときでした。

8月,9月のアート鑑賞記録

$
0
0
 
 たまりにたまった鑑賞記録。
 どうしょうもないのですが、とりあえずの自分用記録としておいておきます。

 <8月>

 *石内都 背守り LIXIL ギャラリー
  こちらのギャラリーは初訪問でした。
  石内都さんの写真からは何か、亡くなった方から届くメッセージが
  印象的で、今回も生まれた子供を大切に守り、成長を祈った親の願いが
  背守り、という形で着物に縫い付けられたことを知りました。
  温かな手作りの着物の質感と、祈りが縫い合わさって
  純粋に成育を願う親の気持ちに胸が痛くなりました。
  
  

 *ギャルリー東京ユマニテ
  新世代への視点2014 
  佐竹真紀子展「記憶する皮膚」
  表面が削られた様々なものの切り口から見える色の堆積層が
  時間の堆積にも似て、思いの沈殿が浮き彫りにされて新しい質感となった
  ユニークな手法に引きつけられました。

  
  
  岡知代展「漆表面Ⅱ その奥に内包された世界」
  漆の大画面をよくぞ磨ききった、という大作。

 *絵画の時間ー24のエピソード ブリジストン美術館
  京橋界隈を歩いていたので、タイミング良く始まったばかりの
  展覧会を見てきました。
  ブリジストン美は祖父母、父母世代の洋風への憧れがどこかに潜んでいて、
  和洋折衷のリビングに招かれたような気持ちになることがあります。
  今回は所蔵品の中から、24のエピソードとともに紹介された展覧でしたが、
  そのエピソードはイヤホンガイドから視聴できるという企画でした。
  短時間の鑑賞だったのでイヤホンを借りなかったことが残念でした。
  とはいえ、レンブラント、オノレ・ドーミエ、カイユボット、
  セザンヌ、ゴーガンと,ゴッホ、ヴラマンク、ザオ・ウーキー
  日本画家では古賀春江、岸田劉生の濃密な油絵を見ることができたことを
  喜びました。一度、母を連れてきたいと思います。

 *現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 
   国立近代美術館
  こちらは記事としましたので、ご参照下さい。
  びっくりするほど、豪華でビッグアーティストが並んで
  仰天したのでした。

 *国立近代美術館 常設展
  常設のために一日費やすことができた方がいいのだけれど、
  近代日本画に慰安されるのでした。
  河原温作品が並んでいて弔問できたような気持ちに。
  企画展の味が濃い場合はこちらを先に鑑賞する作戦をとると
  都合がいいことを発見しているのでその作戦で今回も
  常設からの鑑賞にしたわけでした。

 *つなげよう花の心3 増上寺
  友人の関係からご紹介されて行ってきました。
  いけばなの数流派によるデモンストレーションと
  増上寺の天井絵の美しい場所でのいけばなを鑑賞してきました。
  様々な流派が精力的に活動していることを知りました。

 

 *ABKAI2014 新橋演舞場
  今や歌舞伎界では一番元気な海老蔵さん、ひきいる
  ABIKAI の舞台を急にお誘いを受けて行ってきました。
  元気なパワフルな海老蔵さんの魅力満載でした。
  お席が花道すぐ脇だったので、汗と息づかい、そして海老さまから
  漂う香しい薫りに悩殺されました。

 *日本の美を極める ホテルオークラ東京アスコットホール
  記事はこちらにしました。
  夏休みの避暑に出かけたようなオアシス的展覧会でした。
  ホテルでの展覧会の落ち着いた環境もとても優雅な気分となりました。

 

 *草月流秘蔵コレクション展 パレスホテル東京
  私が学んでいる草月流は芸術ともとても親しくて、
  コレクションも多様にわたっています。
  それを新しくなったパレスホテルで開催され、
  会場には勿論勅使河原茜家元ほか、長年草月で活躍されている先生の
  作品が並びました。もっと沢山の方に見てもらえると
  いけばなと、芸術の親近感が伝わるのではないかと思いました。

 
 
 *魅惑のコスチューム・バレエ・リュス展 国立新美術館
  服飾学校卒業の友人と行ってきまして、とても充実した展示企画に
  すっかり魅了されました。
  衣装があって、ダンサーがいて、舞台装置があって、音楽が,詩があって
  絵画となり観客は酔いしれるのでした。

 *オルセー美術館展 国立新美術館
  なんというスタンダード、という気もしますが、
  それが目の前で鑑賞できる喜び、とはいえ、沢山のお客様で
  モネのカササギと会えたことが一番の嬉しい事となりました。
  新しいことを目指す、若い熱情とチャレンジに胸がじゅんとしたのでした。

 *木村宗慎 一器一菓展 日本橋三越本店
  茶人の木村宗慎さんが一日一つの菓子器にその日のお菓子を取り合わせた
  愛らしい、ステキな365日、日めくりのような本を発刊された記念の展示会。
  出品されているものたちも凄技主のものばかり。
  ため息つきつつ、ちょっと小さな漆器を予約してしまいました。

 

 *3331 アンデパンダン 
  旧知のあおひーさん久しぶりの出品に駆け付けました。
  身内贔屓かもしれませんが、
  あおひーさんの作品は飛び抜けてました。
  作品集をまとめられていて、それを開く楽しみも
  ご本人のお話も一緒に伺うことができて、
  オシャレだし、クールな視点にわくわくするばかりでした。
  今後も期待しています!
  ご本人のブログはこちら

 <9月>
 
 *江戸妖怪大図鑑 太田記念美術館
  季節柄、お化けと妖怪が忙しい時期で、その展覧となると
  どれだけおどろおどろしい画面と遭遇するのかと
  ドキドキでしたが、期待値をあっさり裏切るとてつもない
  濃厚さに眼球が止まってしまうことしばしば。
  強烈濃厚画面に悩殺されてしましました。

 *涼風献上 根津美術館
  夏の激しさに青山根津まで出かける、その気合いが入らないまま、
  会期ぎりぎりの鑑賞でしたが、やはり間に合って良かったと、
  つくづく根津の環境のすばらしさと、空間と美術品の質の高さに至福を頂戴してきました。
  酷暑をいかに涼やかに暮らすかという工夫が嬉しい展示品でした。
  やきものの青、白、水や瀧、魚や鳥たちが楽しげに遊ぶ姿は
  優しい暑中、残暑お見舞いとなります。
  今回のハイライトは「赤壁図屏風」長沢芦雪筆の大作、6曲1双の屏風絵でした。
  ゆったりとした自然風景を墨で悠然と描ききる雄大さが素晴らしかったのでした。
  2階の展示室5では名筆といわれる人たちの消息があり、驚喜しました。
  明恵上人、光悦、近衛信伊、後水尾天皇、小堀遠州、などなど。
  信伊のお?な恋文もあったりで、生々しく生きていた証として晒されることも知らず、
  気の毒な気もしたけれど、書の名筆であることがどれだけ大事なことであったかを
  感じる展示室でした。
  また、茶器のコーナーは「夏の茶事」としてさわやかな取り合わせを楽しむことができました。

 *鎌田あや展「いずれ、いずれ、あるところで、、、」ギャルリー東京ユマニテ 
  若い作家さん達との遭遇は時々その発想にどきっとさせられます。
  執念の表現が時代と共に変化してくることがあるのでしょうか。
  何事かの原因、理由、宿命、性質などが絡み合って、
  とりつかれるように制作の時間を過ごしていることに
  驚かされに行くような、そんな空間でした。
  記事にしていますので、こちらをご参照下さい。

 *through 2014 中村ミナト彫刻展 ギャラリー現
  長いご縁のある方の友人でもある、中村ミナトさんの個展に
  行ってきました。奥野ビルのすぐ近くの小さなギャラリーです。
  階段で搬入のご苦労が目に浮かびます。
  大作の一点でシャープな金属のオブジェがどんと設置されています。
  緊張が床から、天井から壁から迫ってきます。
  アクセサリー作家としてもご活躍のミナトさんの
  作品からは金属からのメタリックな硬派な臭いも有りながら
  ご本人のおおらかな暖かみも感じられるところが特徴です。
  今後はアクセサリー展に向けて大忙しとのことです。

 *ギャラリーさわらび
  佐々木誠さんの個展が奥野ビルの「さわらび」で開かれ、
  暑いさなかの外出にひるんでいましたが、
  ようやく会期末ぎりぎりにお邪魔してきました。
  やっぱり、木彫の迫力はドア越しにもはみ出ていて、
  素材も、鑿跡も造形もおどろおどろしさを越えてきた
  静けさがあって引きつけられるのでした。
  今後も常設で作品が並ぶそうです。
  記事はこちら

 

 *So Frenchi Michel Bouvet Posters ギンザ・グラフィック・ギャラリー
  資生堂ギャラリーにほど近いggg ではいつもポップなポスターとお目にかかれます。
  今回はフランスのポスターアーティスト、ミシェル・ブーヴェの黒太ゴチの
  明快なポスターが見えたので、入ってきました。
  写真国際フェスティバルで続いたポスターの端的な動物たちの顔、
  物語の象徴的シンボルをうまく取り合わせた見た瞬間にそれとわかるデザイン、
  カードやシールにしてしまいたいと思う図案ばかりで
  愉快に楽しめる作品群でした。

 *せいのもとで 資生堂ギャラリー
  ものを作る、その精神の神々しさに資生堂ギャラリー会場が
  寺院のように変身して依り代となったような怪しくも美しい展覧会でした。
  ブログ記事をご参照下さい。こちら

 *THE RINGS 指輪 国立西洋美術館
  ご縁あって、2回見ることができた展覧会。
  女史のハートを鷲掴みする指輪の展覧会を西洋美術館で開催ということも
  珍しいことでした。
  煌めくリングの様々を時代の流れと、ともに、衣装や、絵画なども
  展示した幅の広い視野をもって鑑賞することができました。
  ブログ記事も書きました。

 *女王と女神メトロポリタン美術館古代エジプト展 東京都美術館
  女性はいつの世もたくましい、その証を見せてもらったように
  心強いものを感じました。
  ふんころがし君は色々なアクセサリーとしてお守りになったりしたけれど、
  和名をなんとか美しいものに変えてあげたい、と切望もしました。
  そのスカラベ、指輪展でも沢山出品されてました。

 

 *岡村昭彦の写真 生きること死ぬことのすべて 写真美術館
  恵比寿の写真美術館がこの展覧会を最後に大規模改修工事にともない、
  長期休館してしまうのと、同時開催の「写真新世紀東京展」にTwitterでフォローし、
  写真作品がとてもユニークな目線を持っている、麥生田兵吾さんの作品が
  佳作として出品されているとのことで、行ってきました。
  岡村昭彦さんの写真、世界各地での戦場のその現場臭のもの凄いこと、
  それでも人々は食べて恋して遊んで、生きるために仕事をしているのだと
  今でも何の進歩などしていない現実に照らしても鬱々となるやりきれさが
  写真画面に圧縮してきたのでした。

 

  そして、麥生田さんの写真と初対面してきました。
  彼の目線はいつも残された対象物から放つ残映、残香、おいてけぼりの空しさを
  背負いながらも命のほとばしる瞬間があって、色の層からものの本当の姿を
  追いかけてみたい、という求心も伝わるのでした。
  切なくて生々しい、という人の性も匂い立つのです。
  今後の活動が楽しみです。

 

 *芹沢けい(金に圭)介展 日本橋高島屋
  用の美、柳宗悦、工芸館、その世界が好きな人ならば
  必ず、どこかで目にしていた、文字のテキスタイル。
  それを作った芹沢介の作品展があり、楽しんできました。
  温かな質感と、手作りの緩さとぬくもりに
  使い手の心まで安心させてくれるのは作り手の自然とのつきあい方
  ではないかと思うのですが、今の人たちは自然とあまり親しくしていないので、
  新鮮に感じるのかもしれません。
  本当はいつでもどこでもすぐ横にあるような、普段の景色であるはずなのに。
  ふるさとを感じる、手作り感は今一番欲している世界観かもしれません。

 

 などなど、詰め込み備忘録で、長々しいことでした。 

 他、国立劇場で住大夫さんの引退後初の文楽を観劇してきました。
  一部 「双蝶々曲輪日記」(ふたつちょうちょうくるわにっき)
 住大夫さんの野太い声が響かない、そういう現実を改めて確認しながらも
 その存在の大きさを感じることができましたが、
 嶋大夫さんの熱演ぶりに感激もしました。
 また、新しいチャレンジとして、文楽「不破留寿之太夫」も観劇するチャンスが舞い込んできまして、
 日本文芸の流から離れた、シェークスピアの「ヘンリー四世」「ウィンザーの陽気な女房たち」
 より、文楽にアレンジされたものを楽しんできました。
 過去には蝶々夫人、椿姫、ハムレットなどの上演もあったそうで、
 文楽の懐の深く、広いところを沢山の人に楽しんでもらえたら、と思ったのでした。

 10月はまたとんでもなくすばらしい展覧会が続出で、
 悩ましい限りです。
 いけばなの展覧会など他にも様々予定乱入している中、
 なんとか目指す展覧会は見逃さないようにと
 カレンダーとにらめっこです。
 
 忙しいと逆に効率よく回すことを工夫できるのではと
 楽観していたりしますが、豊かなことだと喜んでいます。

仁清・乾山 京の工芸 ・出光美術館

$
0
0

 年に数回、自分の好みストレートにくる展覧会が開催されます。
 それがこの「仁清・乾山」展でした。

 そもそもやきもの好きが高じて、日本美術をもっと見てみたいと
 思うようになるくらい工芸好きなのです。

 琳派を継承する乾山のやきものは、献上品に漂う緊張感よりも
 そのもの自体のデザインを楽しみながら、使われるシーンを想定し、
 場面に生かされることが主眼のようで、穏やかさと、斬新さが混在していて、
 見る者の心をいつもわくわくさせてくれます。

 古くならないデザインはやはり本物だと教えてくれます。

 対する仁清のやきものは
 多分、熱海のMOA美術館でみた茶壺が初仁清だったように思います。
 二十代の私はMOAの建築環境にまずは驚き、秀吉の金の茶室にあっけにとられ、
 そして、絢爛たる仁清の茶壺と対面しました。
 それが国宝「色絵藤花文茶壺」です。
 茶壺の周りを蔓がのびて花房を優雅に垂らしている華美な茶壺で
 他を圧倒して輝いていました。

 その国宝色絵藤花文茶壺と姉妹品が東京国立博物館に「色絵月梅図茶壺」
 そして出光美術館の「色絵芥子文茶壺」
 などが著名作品です。
 そういったことからも仁清のやきものはいかにも京焼の元祖、
 色絵付け師だという認識が強いのですが、
 じつはろくろ使いの名手であることを
 茶器の展覧などで絵付けが施されていない、とても簡素な形の
 水指や、茶碗などをみて驚かされたことがあります。
 ろくろの名手であること、その形の均整のとれた破綻のない形状に
 作陶への勤勉さが伝わってくるのです。

 前置きが長くなりました。
 その二人の陶芸家が如何に京都という場で作品を創作してきたかという
 切り口に迫った展覧会が出光美術館で12月21日まで開催されています。

 安土桃山の戦乱を経て、徳川幕府が江戸城を建設した後、
 京都は公家が公家諸法度のもと規制された活動を余儀なくされました。
 つまり、お公家さん達は武力ではなく、文化の発信者として
 顧客となる大名たちを得て生きながらえていくのです。
 政治・体育会系は江戸、天皇家・文化芸術系は京都、という具合でしょうか。

 洛西の仁和寺、御室窯を開いた仁清は茶巧金森宗和の参画で
 お公家さんや寺社との太い関係から名声を得ていったけれど
 じつは華やかな色絵好みは公家よりもむしろ大名だったことを
 会場の解説で知り、驚きました。
 京都のやきものは当初はとてもシンプルな形状と
 ほんの少し色がさしてある程度の唐津や高取にみられる
 九州の茶陶のような渋いものでした。

 そして、色絵仁清というイメージを払拭する白秞と銹絵のやきものコーナーには
 知られざる仁清の底力をみたように思います。
 端正な形状と白釉のまろやかな光沢、
 桃山陶器からの継承を見る形、
 それらは多く御所の公家屋敷から発見されたということです。
 そしていよいよ色絵が生まれます。
 その背景に探幽、安信兄弟の存在があったということ、
 また宗達派や狩野重信が残している「麦・芥子図屏風」から
 「色絵芥子文茶壺」に描かれた芥子の花が浮き出て見えてくるのでした。
 会場ではその意図を鮮明にするための工夫がされていて
 茶壺の背景に「麦・芥子図屏風」が配置されていました。
 (11月16日まで)
 これには歓喜と愉悦に目眩がしてしまいそうでした。
 また、「色絵若松図茶壺」の背景が漆黒であることに
 漆芸との関わりを感じさせます。
 展示品の側にその関連作品が添えられていることで
 その意味が読み取れるようになっています。

 乾山は仁清の継承を自分なりの解釈でより一層深めていいきます。
 兄、光琳との共作から、形状への新しい取り組み、
 漆器や木工、色紙、そういった工芸ととても身近に融合していく作品が
 作り出されます。
 まさに京焼きの絢爛期だったのかもしれません。

 各所にその焼き物との関連品が添えられ、
 ふと京へタイムトンネルをくぐって公家のお宅へ
 紛れ込んだような錯覚を覚えます。

 ゆるやかな時系列とともに、
 京焼が変化して継承されてきた雅を京のアイコンとして
 商業化し、多くの人々を引きつけてきた魅力の
 底力を改めて確認できる、典雅なしつらいのもと
 日比谷から京を想うゆたかなひとときでした。

 この展覧は来月12月21日までの開催。
 そして美しい図録と光る解説文と目から鱗の論考文も
 読み物としても大変すばらしいものでした。



 後期、11月18日から展示替えが少しあります。
 もう一度、二人の陶工のすばらしさを確認しに出かけたいと思っています。

 出光美術館のサイトはこちら

師走せまる

$
0
0
 
 明日、12月、師走を迎えることとなりました。
 なんという早いこと。

 最近の所用が立て込んでアート鑑賞となかなかならず、
 また、家でPCカタカタ入力する時が得られず、
 ブログ更新が一層遅延しています。

 12月はいけばなのほうも忙しく、
 年末に師匠のいけこみヘルプ、友人店でのレッスン、
 企業の華道部お手伝いなどなど。
 普段の教室での課題もどれもお正月花。

 10月、11月はそれなりに美術館に通えましたが
 感想をあげる間と気合いが足りなく、
 お恥ずかしい限り。
 どこかで記録だけでもあげていきたいと思っています。
 
 紅葉狩りをするまもなく、
 冬が来てしまいそうです。

 インフルエンザもはやりはじめたそうです。
 私も既にのど風邪を引いてしましましたが
 油断しないように、気を引き締めようと思います。

 みまさまもお大事にお過ごし下さいませ。
 
 
 

10月のアート鑑賞記録

$
0
0

 記憶が既に怪しい具合となってしまいますが、
 10月に見てきたものの記録です。

 *菱田春草展 東京国立近代美術館
  明治の日本近代画壇、菱田春草の大々的個展に早々のうちに行ってきました。
  数年前、明治神宮の中にある宝物館で春草展を見たことを
  思い出しました。
  うっそうとした木々の中にぼうっとシルエットが見えてくるような、
  そんな印象を持っています。
  視線が地面に引き寄せられ、その奥深いところへ誘われる「落葉」
  清々としながらも静かでかさかこそと枯れ葉のこすれる音、
  湿潤のミストの気配の重さを
  どこにでもありそうな画題を実に品よく上質な世界に誘ってくれます。
  短命の悲運もさることながら、天心への憧憬、日本画の新しい試み、
  挑戦することの情熱が端正な画面に変換されて
  静粛な作家という印章を深めました。
  「王昭君」の群像作品は
  後日、西洋美術館で見たホドラーの作品との共通項を感じさせてくれました。 

 *東京国立近代美術館常設展
  特別企画展の場合は最初に常設展を見ることがあるのですが、
  この時は春草をしっかり見てからエレベーターで上階に上がりました。
  春草から得たしっとりした気持ちで日本絵画を鑑賞できた気がします。
  加山又造の大作屏風「千羽鶴」に圧倒されました。
  美しい、その痛みに触れるのでした。
  国吉康雄の作品が沢山出展されていて喜びました。 

 *青磁のいま 東京国立近代美術館工芸館
  工芸館で青磁の企画展でしたが
  思いがけない作品との遭遇に大変喜びました。
  東京国立博物館東洋館「官窯青磁」の特集で、
  また、根津美術館での「名画を切り名器を継ぐ」展で
  その後、三井記念美術館での「東山御物の美」で
  青磁の逸品を鑑賞する機会を得てきたのですが、
  青磁輪花碗銘馬蝗絆はどちらの展示リストに上がっていました。
  工芸館では東京、兵庫、静岡での展示はなく、
  山口のみの展示ということでしたが、今年は大活躍。
  どうか、ご無事で、と祈りました。
  そのかわりに、姉妹品のような
  銘鎹(かすがい)という作品がマスプロ美術館から出品されていました。
  その存在に驚きました。まるで双子のようです。
  馬蝗絆よりも鎹の入り方が縦に一本で素直なひびのようです。
  南宋時代の陶磁器のひたすらな頂上への追求に畏怖さえ感じます。
  こちらでは東山御物というくくりはなく、
  単に青磁、というジャンルで存在しているのでした。
  青磁に憧れ惹きつけられ、後年様々な青磁が作られてきました。
  宮川香山、板谷波山、河井寛次郎、現代では中島宏、深見陶治、川瀬忍などの
  青磁作品が一堂に会しました。
  後日、土気にあるホキ美術館で、波山、深見陶治の作品と遭遇するのでした。
  工芸館の雰囲気の落ち着いた雰囲気はともすると
  暗くて重厚すぎてお客さんが少なくて残念なのですが、
  この企画への心意気を感じられた素晴らしい展覧で
  見ることができて大変満足でした。

 *フェルディナント・ホドラー展 国立西洋美術館
  昼間の内覧企画を知って早々に申し込んで楽しみにしていました。
  ホドラーという名も初耳でどんな作家なのか、
  西洋美術館に掲げられていた予告看板の女性の横顔が並ぶ不思議な雰囲気に
  期待して伺いました。
  19世紀半ば、スイスに生まれ若くして肉親を失い、貧しいながらも
  画家を目指し踊る身体のリズムを「パラレリズム」という表現を
  提唱していきます。
  身体の動きと、スイスの山脈湖という自然を壮大に表現していました。
  色使いが独特で特に陰影に使われる青が印象的でした。
  そして、どこか不穏な気配が謎めいているのでした。
  会期は来年1月12日まで。
  もう一度静かに見に行きたいと思っています。


  
 *竹久夢二展 日本橋高島屋
  生誕130年記念、夢二とロートレック・東西のベル・エポック
  に生きた二人の偉才
  夢二130年生誕記念に際し、ミシュランの日本版に岡山の夢二美術館のことを
  「日本のロートレック」と紹介したことをヒントに夢二とロートレックを
  企画の中心にしたとのことです。
  企画記念に夢二が描いた着物や帯を京友禅の老舗千總が再現を試みました。
  また、所々にロートレック作品が並び、
  同時代の作家がコラボしているのはとても興味深いものでした。
  ついついグッズも手に入れたりして、楽しい展覧でした。


  
 *宗像大社展 出光美術館
  現在東京国立博物館で国宝展が会期末を迎えて大盛況ということですが、
  その展示にも加わった、宗像大社の宝物を先んじて出光美術館で
  会期末ぎりぎりとなりましたが滑り込んできました。
  展示品の多くが国宝クラス。
  神の島、沖の島に伝わる神と祈りの形。
  その沖の島から出土した国宝は8万点もあるのだとか!
  まだまだ知らないことが山のようにあります。
  日本の歴史の道のりをこうして発掘された宝から
  大陸との交通が見えてくるのですから。
  同時に狩野安信が描いた、三十六歌仙扁額がずらりならんだことも圧巻でした。
  人麿など有名人の額は別のケースだったことも面白く見ることができました。
  
 *東山御物の美展 三井記念美術館
  古美術好きにとって、室町時代の将軍コレクション最高峰、
  「東山御物」を集めたあり得ない企画展を心待ちにしていました。
  お茶道具の頂点ともいえる、足利将軍コレクションです。
  この南宋時代の超技巧、超絢爛な唐物があったからこそ、
  のちの利休の茶、侘び寂びがどこ吹く風と対極してきた、という印象があります。
  しかし、ギラギラした美々しいものではなく、重厚かつ畏敬の存在感溢れるものです。
  作品リストを見ると、さすがのお宝なので、入れ替えが激しい事になりました。
  なんとか、8日と25日の2回見ることができました。
  最終週は風邪引きとなってしまい、徽宗皇帝描く猫と鳩図を見に行けず
  残念きわまりましたが、
  それくらい奇跡的なお宝集合の特別展だったと思います。
  足利義満という将軍、何を目指していたのでしょうか。
  将軍のお目に叶った逸品群を「東山御物」ヒガシヤマゴモツと称します。
  後生の人々は有り難がって大切に継承してきました。
  青磁輪花茶碗銘馬蝗絆から唐物茶入れ、
  国宝油滴天目茶碗は大阪東洋陶磁からの出品でした。
  水墨画の牧谿作品がこれだけ集まることも珍しく、
  徽宗、李迪、馬遠、馬麟、夏珪、趙昌、梁楷、などなど中国絵画の
  超大家が並ぶ様は東京国立博物館の東洋館でも叶わないことです。
  いずれにしても、根津美術館の「名画を切り名器を継ぐ」展からもつながる
  南宋文化の神髄をおしげもなく目の前にできたことの喜びは大きい
  破格の展覧会でした。
  いずれいつの日にか、牧谿の瀟湘八景図を一望にしてみたいと妄想したのでした。
  その後の日本の作家たちの憧れを一身に集めた東山御物、
  その存在感、重圧感にくらくらしました。
  
 *人思い、人想う。 ホキ美術館
  奈良に住んでいた頃からのおつきあいの知人が二人連れだって
  千葉、土気にある、ホキ美術館にわざわざ上京するということを聞きつけて
  旧友を誘って一日バスツアー鑑賞に参加してきました。
  東京八重洲から10時に出発して美術館内のレストランで
  早めのイタリアンランチをして、ギャラリートークを聞きながら、
  3時半までゆっくり鑑賞することができました。
  なにしろユニークな建物で、四角い太く大きな分厚い鉄板チューブが束になったような
  斬新デザインで長い廊下のスロープを移動する展示室が延々と伸びていきます。
  展示作品は超リアル、写実主義。
  何故ひとはここまでもリアルに絵にしたいと願うのかと
  写したいという執着と画力に呆然とするばかりでした。
  写実絵画の嵐に飲み込まれそうでしたが、
  一カ所、工芸コーナーがあって、
  そこに竹橋の工芸館で見た板谷波山や、深見陶治の作品と出会って
  歓喜したのでした。
  写実というエンターテイメントか、奇跡か。
  そのなかで磯江毅さんの作品がじーんと残って
  リアルのものを描くだけのものではない、なにか、を感じたのでした。





 *高野山展 サントリー美術館
  以前平等院の展覧を企画された佐々木康之学芸員が担当されました。
  メンバーの特典で内覧会とスライドレクチャーに参加してきました。
  もう少し学んでから記事にしたいとは思うのですが、
  とりあえず、見てきたことの記録ということで簡単に記しておきます。
  サントリー美術館の展覧会はいつも会場の作りが丁寧で、洗練されています。
  今回は高野山六本木別院のようになり、入館料というより、
  拝観料を納める、そんな環境と化していました。
  高野山に行ったことがある人ならば、杉木立がうっそうとした中で、
  戦国武将から様々な著名人の墓標が並び、連なる祈りの聖地という
  観察をされた事でしょう。
  我が家も数年前に行ってきたので、
  景色を思い出しながら弘法大師空海の密教道具、三鈷杵が松の枝に見つけたという
  エピソードを聴いたことを思い出します。
  空海が将来した様々な仏教具等が紹介され、
  階を下ると快慶作の凛々しいくも美しい孔雀明王座像が出迎えてくれます。
  圧巻は第3展示室で、運慶作の八大童子像がずらり不動明王を囲む空間です。
  これだけ見ることができるだけでも
  この展覧の価値が上がるものと思います。
  高野山開創1200年記念のありがたいお出ましに触れることができたこと、
  彫像の凄味に息をのんだ素晴らしい展示会場でした。
  


 *鏑木清方と江戸の風景展 千葉市美術館
  鎌倉の鏑木清方美術館に一緒に行った友が、ぜひにも見ておきたいという
  懇願から連れ立って行ってきました。
  千葉美の展覧は作品数もさることながら、解説もとても丁寧で
  じっくり見ていると一時間などあっという間となってしまいます。
  今回も軽く百点越え、参考作品も50点ほど。
  冊子や挿絵などで小品があるとしても大変な展示数です。
  清方は明治の人だと思っていましたが、
  亡くなったのが昭和47年、私が思春期の頃まで生きていたのでした。
  江戸の風情を描くことに焦点を当てた企画で
  さらりと町中で生活している庶民のありふれたひとときを
  情緒あふれる軽やかさで描いていました。
  はんなりとした春信のような浮世絵師に憧れていたという
  作品や、歌麿を模写したもの、
  鏡花、紅葉などの作品の挿絵
  「暮雲低迷」「慶長風俗」のような屏風の大作。
  文芸とお芝居、江戸の生き生きとした人々の姿を
  存分に見ることができたのでした。
  本当に、清方の描く女性のしとやかさは類い希で、
  上村松園の女性像の厳しさ、緊張とは違い、
  しとやかな品を感じるのでした。
  同時に新しい収蔵品の紹介展示「七つ星 近年の収蔵作家たち」があって、
  そちらに岡本秋暉が十数点並びました。
  その中に徽宗落款の白鷹図 という作品が有り、
  なんと草月会寄託品だったのでした。
  現在は「赤瀬川原平の芸術原論展」が開催中ですが、
  まったく原平さんが急逝してしまったので、
  これがご本人参加の最後の展覧となるのかと、残念な思いでいっぱいです。
  おかしみと切なさの同居のパロディっぷりに大笑いしてきたいものです。


  
 *国宝展 東京国立博物館
  こちらには入場制限が発生するだろうと心して気合いを入れて
  一日中東博にいる予定で行ってきました。
  正倉院宝物が展示されている間になんとか入館してきました。
  その前に東洋館、本館を見て、
  それから、国宝展に入場したのでした。
  案外並ぶこともなく、二度回ってみてきました。
  しかし、会場のもの、全部国宝。
  国宝って何点ぐらい存在するものなんでしょうか。
  この展覧は「祈り、信じる力」というサブタイトルがあるので、
  仏教、神道にかかわる作品に焦点が当たりました。
  文化の日までに正倉院宝物11点を奈良に行かずに鑑賞できたことは
  大きな収穫でした。
  あともう一回、なんとか滑り込みたいと思っています。
  その時に、まとめて記事にできればと妄想しています。 
  同時に東洋館、本館の展示の気合いの入れようにも注目したいものです。

 *仁清・乾山展 出光美術館
  この展覧については記事にしましたので、
  こちらをご覧下さい。
  会期はまだ12月21日までです。ぜひに。

 ざっとではありますが、備忘録程度の記事でご勘弁下さい。
 今年もあと一月、駆け込み鑑賞ができれば、と願っていますが、
 どうなりますことやら。
 庭園美術館のリニューアルもとても気になっています。
 いけばなのお手伝いやらが立て込んできましたし、
 あっというまにカレンダーが埋まりそうです。
 無理のない程度にゆるっと出かけてみたいと思います。
 みなさまも風邪などに巻き込まれませんようにご留意下さい。 

東京国立博物館 10月22日 画像紹介

$
0
0

 10月22日に東京国立博物館の東洋館、本館の画像を沢山写してありましたので、
 画像のご紹介です。

 まず東洋館から

 

 

 その日は雨上がりでとてもきれいな酔芙蓉が咲いていました。
 そして、東洋館の名宝、双幅の芙蓉図のレプリカがショップに展示販売されていました。

 
 
 手が届く方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 李朝陶磁器の愛らしいものたち、大井戸茶碗銘佐野井戸も現れました。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 特集「中国書画精華 ー譲り伝えられてきた名品たちー」
 そこに現れた「五龍図巻」伝 陳容筆 中国南宋時代
 数年前にこの絵巻きを初めて見た時に、この絵巻は
 日本の龍図の元祖なのでは?と思ったくらい驚いたものでした。
 東京国立博物館ニュースに関連記事が掲載されていました。
 掲載文によると、この図巻はボストン美とメトロポリタン美に分蔵される
 作品で、もとは一つで切り取られたものであるとわかってきたそうです。
 昨年修理されてからの初展示となったとのこと。
 展示ケースには新調された箱と、旧箱、書付なども共に展示されていました。
 久しぶりの再会に驚喜しました。

 

 

 他、南宋時代の 千手観音図 全体が大きすぎてiPhoneカメラに収まりきれなかったので、
 掌の一部だけです。それだけでもきめ細やかな表現が伝わると思います。




 本館2階に移動します。
 いつもは平成館の考古展示室に展示してある、巻貝形土製品が
 縄文土器の展示に加わりました。
 

 キャップ状の可愛い金属帽子が見えました。
 金銅装鋲留眉庇付甲 という名がつけられていました。

 

 楠一本でできた、菩薩立像
 円空さんを思います。

 

 国宝室には「寛平御時后宮歌合」
 まぁ、名だたる歌人のつらつらと美しい文字。
 判読できないというもどかしさに突きつけられながらも
 文字の美しさ、というものを感じます。

 絵因果経断簡
 
 

 屏風のコーナーには
 秋草図屏風 俵屋宗雪筆
 宗達工房の後継者で京で活躍したのち、金沢前田家に仕えたそうです。
 
 

 

 

 

 


 もう一つ、作者名は不明ですが、秋草白菊図屏風

 

 
 
 

 
 柿本人麿自画賛 近衛信尹筆
 人麿の姿が柿本人麿の文字で表されていることに気づきます。

 

 角倉素庵
 光悦や、宗達の活躍した時代、光悦本を印刷した功績のある人です。

 
 
 光悦の和歌巻がズラリと並べられました。
 この下図は宗達が絡んだのではないのでしょうか。
 宗達の名は解説されていませんでした。
 

 
 
 こんなところを記録してありました。
 いつ見てもわくわくしてくるものばかりです。
 平成館は12月7日で展示が終わり、しばらく休館します。
 来年の4月までの予定だそうです。
 東洋館も12月8日から休館し、お正月2日から開館するようです。
 今後の予定にも注意が必要のようです。

 近いうちに東博行かねば、です。


 

エルメス レザー・フォーエバー 特別エキシビション ・東京国立博物館表慶館

$
0
0
 
 トーハクの国宝展が会期末となり、金印展示も終わったので
 もしや、入場に隙間が生まれているかも?と出かけていったのですが、
 噂ににきいていた「エルメス」の展示があるということを
 東洋館本館を見て歩いた後、ひょっと思い出して行ってみました。



 入場のためのエルメスサイトの案内も何も見ないで
 直撃受付すると、再度入場をしてチケットを手にしてきて欲しいとのこと。
 (下記にサイトをリンクしましたのでご参照下さい。)
 お姉さんの案内通り無料チケットを手にして
 久しぶりの表慶館に入りました。
 
 なにしろブランドに疎くてお恥ずかしい限りです。
 馬具屋さんのバッグ、グッズを得意としている、その程度でいいのかという
 アウェイ感に気後れしましたが、
 展示スペースを楽しむことに徹してきました。

 場内はカメラOKということ、
 表慶館との相性も抜群すぎて喜んでバシャバシャ撮ってきました。

 素材の皮のサンプルが並び、そこだけは手に触れていいそうです。
 皮の質感とかを感じて欲しいとのことでした。
 ブースの近くには係の方がいるので、気軽にお尋ねできます。






 また、フランスから鞄を作っている技術者が目の前で
 バーキンの皮を小刀でカットするところなど、見学できました。
 熟練職人さんの手仕事の巧みな様子は
 雑な仕事を一番嫌い、最上を目指す、という点で実に美しく、
 日本語の「所作」に繋がると見とれました。





 エルメスのオレンジの箱が積み重なったことろに
 ショーの映像が埋め込まれていたり、
 アンティークなバッグが紹介されたショーケースの反対側では
 巨大な白いサイ像が現れます。
 皮の香りがして、新しい作品だとわかるのですが、
 実は彼らの仲間から革製品が生まれているのだという気づきに繋がります。



 表慶館の薄暗い階段が甘美な映画のワンシーンのようでうっとりしました。



 階上の展示は
 様々なバッグ、靴、時計、ベルト、馬具、等が
 古いメゾンでの展示会場のように並びました。



























 ぐるりまわって階下へ移動すると
 ケリーとバーキンの多彩な顔をみます。
 留金具に光の焦点が当たり、その光の線がバッグをつたって
 全体のイメージを輝かせる映像の展示は現代的でとても美しいものでした。



 最後にエルメスの作ってきた麗しき道具たちとの旅。
 それらを持って旅することの夢想は
 世界中の人々のため息を集めることでしょう。







 これで終わりかとおもったら、
 ラストにとても面白い展示が現れました。
 暗幕をくぐるとびっくり!










 松の盆栽が根っこごと引き抜かれた状態で中央にぶら下がっています。
 ボックス型の部屋全体が照明光で変化していきます。
 松の盆材が中央に鎮座している周りを
 エルメスのバッグが囲んで眷属のように浮遊しているのでした。

 このような展示室のBGMも洗練されていて
 邪魔にならない効果音のようにフィットしているのでした。

 この展示は今月23日まで。
 トーハクの広報とは別次元のようで、
 告知などが見当たらない点などもありますが、
 大いに楽しめるひとときでした。

 今後もエルメスの商品が似合うような生活とは縁遠いので、
 ひたすら眺めるばかりでしたが、
 セレブという人々の持ち物への憧れは深まるのでした。

 デザインはちょっと堅く、重たい感じがします。
 馬具屋さんらしいという雰囲気です。
 色使いもとても使いこなせる物ではないのですが、
 似合う方の麗しい姿を妄想する楽しみもある、ということに
 落着するのでした。

 前回の「カルティエ」も素晴らしい展示でしたが、
 表慶館の魅力を存分に生かし、
 エルメス精神がちりばめられた心ときめいたひとときでした。

 クリスマスのデートにもステキかもです!

 エルメスのサイトはこちら。

 ミロのヴィーナス像がなにげに佇んでいて、素晴らしいおまけでした。


 

誰が袖図 ー描かれたきものー ・根津美術館

$
0
0

 錦秋の紅葉を感じるまもなく、晩秋にはいってしまいましたが、
 ようやく根津美術館に行ってきました。

 新旧あわせての友人たちとのカフェタイムを楽しくすごし、
 ゆったりと鑑賞した後、先を急ぐ友と別れ、残った旧友と庭園に繰り出しました。

 こういった庭園環境を持っているところは
 やはり日本美術の生まれたところはうつりゆく自然であると改めて感じます。

 誰が袖図、としての展示品は17点ですが、
 5点もの屏風が並ぶ様は艶やかのひとこと。
 色使いも金色をベースに多彩な色が輝きます。
 一挙に絢爛な世界へ誘われるのです。

 今回初めて拝見する作品ばかり。
 寄贈された福島静子氏は、上野精養軒社長を務められた方とか。
 明治期の実業家の底力は果てしがなさそうです。

 三作品の屏風を見比べることも面白く、
 描かれた洗練された調度、文具、着物、という工芸品への愛情も深く、
 細やかな描きようにため息が漏れます。

 この掛けられた衣装は一体どんな人なのか、
 それを想像することがゲーム的愉悦です。
 同時に「洛中洛外図屏風」が展示されましたが、
 これもまた目が疲労する位の描き込みようで、素晴らしく上等な作品でした。
 金雲もまぶしく、京都の彼方此方を丁寧にガイドしてくれます。

 場内に点在するやきものも色絵付けされた
 伊万里の皿が共鳴して華やかさを引き立てています。
 日本のタイル研究者、山本正之氏寄贈とのこと。
 自然と顔の表情筋が緩んで、豊かな気持ちになっていきます。

 隣の展示室には
 旧竹田宮宅所蔵品の婚礼衣裳を見ることができます。
 ゆかしい衣裳に伝統の重厚さと品格を垣間見ました。
 
 同時に2階では、根津美コレクションの名碗20撰。
 雨漏堅手茶碗、高麗茶碗の名碗とされますが、
 このしみしみの汚点を雨漏りと表しておもしろがる民族、
 茶人の美学、うなるばかりです。
 美濃のやきものは土味が面白いので見ていて楽しい気分になります。
 仁清の端正な茶碗が2碗。
 絵付けも京都らしい雅な鉄仙、武蔵野図。
 
 茶室展示室は「霜月の茶」として
 夜の茶会、夜咄の茶器が並びました。
 炭おきや火箸、灯明、茶器の銘も霜月らしいものが選ばれ、
 深々と静かで寒い冬に向かって
 集まるお客様への温かな心遣いが伝わってきます。

 こうして根津美術館の鑑賞も今年この日が最後となりましょう。
 来る新年からまたおめでたい、清々しい展覧が始まるようです。
 今年一年、根津美での時間をありがたく振り返りながら、
 来年もまた素晴らしい出会いが待っていることを
 楽しみにしいています。

 根津美術館のサイトはこちら。
 会期は23日までです。
 次回は新年10日から「動物礼賛」が始まります。










松平不昧の数寄 ・畠山記念館

$
0
0

 5月に叔母と訪問して以来、久しぶりの畠山記念館に行ってきました。
 まだまだ紅葉が楽しめる頃で目に癒やしのひとときでした。





 門扉が目新しくなった畠山記念館。
 昭和39年(1964)に開館して丁度今年が50周年記念を迎えたということです。
 創始者、畠山即翁が50年掛けて集めた東洋美術品が季節ごとに
 50周年記念として展示する特別の一年となりました。







 今回は出雲国松江七代当主、というよりも大名茶人、として有名な
 松平不昧公(1751~1818)の数寄、という展示です。
 この茶器の横に解説されている伝来と、その価格にぎょっとするのですが、
 松江藩が一時財政難に陥ったときに不昧公が必死に立て直したという功労の後、
 茶器収集に邁進し、「雲州蔵帳」を編纂したという逸材の御仁で、
 執心した茶器の伝来も超一流の名品ばかりのようです。

 ぐるりと重厚な茶入が並びました。
 仕覆の布も様々に大事に守られてきたことが伝わります。

 天下三井戸、と呼ばれる名碗 喜左衛門、加賀、細川の三碗のうちの
 重要文化財、井戸茶碗 銘 細川が展示されていました。
 その伝来をメモしてきました。
 細川三斎→仙台伊達→冬木喜平次→松平不昧→月潭→出雲松平→畠山即翁
 茶器の凄さはこういった伝来が明かであることでしょう。
 堂々とした形と大ぶりながら派手さのない、
 素直な深々とした井戸茶碗の典型のようでした。
 解説には不昧28歳の時に三百両で入手したと記されていました。
 根津美術館での「井戸茶碗」展を思い出します。
 東博での国宝展ではあの、大徳寺弧蓬庵から喜左衛門が存在感を示していました。
 
 井戸茶碗細川の隣には粉引茶碗 銘 松平 
 この茶碗もとても有名で、享和年間に無準墨蹟(東博所蔵)と共に千五百両で手に入れたとか。
 釉薬が一刷毛掛けられずに土肌が見えるところが景色となっています。
 粉引の茶碗にはどことなくあたたかみがあって、安堵感があります。
 
 そして、重要文化財の茶入、唐物肩衝茶入 銘 油屋
 南宋時代の物です。
 今年は本当に南宋時代のいい物を見ることができました。
 この茶入を手に入れるときも不昧33歳の時に冬木家から千五百両で入手するのですが、
 天下の宝物として、生涯茶会に使うことなく大切にされたという
 気の入れようだったようです。
 いかにも堂々とした肩の張った立派な姿です。
 
 彫三島茶碗
 この三島はとても優しい彫りで三島暦のようだという三島手の文様も
 淡い表情で、素直な形でした。
 
 薩摩文林茶入 銘 雪の花
 こちらの箱書きは寛永の三筆、近衛信伊の筆によるものです。
 さりげなく、端正でステキな文字でした。
 
 唐物籐組茶籠
 この籠の中に収められる小さな茶器の愛らしいこと。
 ころんとした茶入は仁清のものでした。
 黄瀬戸の素朴な茶碗、茶筅入れは象牙。
 こんな可愛らしいセットをぜひ旅の荷物にしてみたいものです。

 他に不昧公の筆の作品、蓋置、
 さらりとした墨絵と自賛の一幅がさりげなく展示されていました。
 文字はさらりとした自由な筆致でした。
 
 執心した茶器を手に入れて不昧ならではのコレクションを作ってきたわけですが、
 それをまた、畠山即翁がしっかりと受け継いできたわけですから、
 これもまた大変なエピソード、ご苦労があったとしのばれます。
 
 畠山記念館の見所のひとつは畳の展示ケースです。
 そこには
 館の名宝、国宝クラスが並びます。
 国宝 離洛帖 藤原佐理筆 平安時代
 不昧はこれを七百両で手に入れたようです。
 佐理といえば、平安の名筆、和様の書を確立したといわれる三蹟のひとり。
 (もう少し、書を学ばなければと反省しつつも少しも身についていない残念さ)
 利休の書状、
 鷺が空から舞い降りる臨場感ある、伝牧谿の蓮鷺図
 などをうやうやしく拝見しました。
 
 その奥のお茶室の床にいつもそっと茶花が活けてあるのを
 拝見するのも楽しみの一つです。
 今回は
 竹の一重切花入に 灯台躑躅(どうだんつつじ)の紅葉した一枝に
 白椿(加賀八朔)という控えめながらも華やかさが淑女らしく飾られていました。

 今年50周年記念を記念して「畠山記念館ハンドブック」が作成されました。
 コンパクトにお茶室の鑑賞方法などが館蔵品の紹介もかねて
 とてもわかりやすい入門編となっています。
 なんと、お値段四百円のかわいらしさ。
 入館記念にお勧めです。


 
 さて、来期は畠山記念館のお宝、琳派の名品がお出ましとか。
 新春を琳派で言祝ぐ、良い機会となることでしょう。
 いまから楽しみに致します。

 松平不昧の数寄展は14日が会期末最終日となります。
 畠山記念館のサイトはこちら

東京国立博物館 12月3日 画像紹介

$
0
0
 
 この日は庭園開放された紅葉と、国宝展を再訪し、
 東洋館、本館、法隆寺館、そして
 表慶館で開催中のエルメス展を見る、というまるまる東博を
 楽しんできました。

 本当に体力と気力さえあれば一日中遊んで暮らせます。

 そこで、見てきたものの画像をアップして見てきたものを
 記録しておこうと思います。

 きっとこの日が今年最後の東博になるのかもしれないのですが、
 この一年、相変わらず沢山の目の保養をさせて頂いたものです。
 まずは庭園開放された紅葉画像を少し。庭園開放は12/7で終了しています。















 今回は1階から回りました。
 漆芸のコーナーには舞楽図の硯箱が中を見えるような
 鏡をおいての展示に喜びました。2/8まで展示
 「舞楽蒔絵硯箱」伝本阿弥光悦作


 他、お気に入り作家の小川破傘作の「九貢象意匠硯箱」も展示されていて
 嬉しく思いました。

 陶磁器コーナーは2/15までの展示
 乾山の可愛らしい椿の香合に再会しました。
 今回は蓋をずらしての展示、念願の中を見ることができました。


 珍しい釉薬の茶碗に目がとまりました。
 蛇蝎釉茶碗(じゃかつゆうちゃわん)
 この珍しい釉薬は薩摩焼元立院窯のもので、へび、さそりの肌を思わせる釉薬の
 変化が特徴の物で、黒と白の二種類の釉薬を重ね掛けして
 独特の焼き肌を作ったようです。
 やきものコレクターの横河民輔氏寄贈品でした。


 企画特集、「日本の仮面 能面創作と写し」11/5~1/12







 この特集のために冊子が作られました。
 ショップで600円で販売されています。
 面の内側の詳細な画像なども紹介されていて、
 能面理解のための素晴らしい一助となりそうです。
 今年、三井記念美術館でも能面の展示があり、そこでも
 面の裏の様子も見えるような展示に驚き、嬉しく拝見しましたが、
 この冊子には面打の系図などもあって、興味深いものです。
 能は秀吉の頃に大流行して必然として能面の数が必要となり、
 古い作から学んでそっくり写すことが試されてきたそうです。
 その創作、写しの仕事ぶりにスポットが当てられました。
 能面は舞台でこそ映えるものでしょう。 
 来年は久しぶりに能舞台へ出かけてみようと思っているところです。

 2階国宝展示では雪舟の「破墨山水図」が12月23日までの展示
 割合と小さな作品ですが異彩を放っています。

 仏教の美術では、「聖徳太子絵伝」第一、二、三、が並べられました。
 この作品は南北朝時代のもので、なんと、川合玉堂氏からの寄贈品でした。
 国宝展では法隆寺から玉虫厨子が展示され、
 聖徳太子の存在を感じましたが、
 東博構内の法隆寺館内では同じ画題で比較できるように
 「聖徳太子絵伝」が10面一挙に展示されていました。
 延々と太子の生涯が語られたようですが、画面をおいかけることは至難の業です。
 受付で何が描かれているか、プリントを配布しているので、
 参考に頂戴してきましたが、それでも判然としない画面と
 内容を結びつけることは難しいものです。
 平安延久元年(1069)秦到貢(ハタチコウ)作 12/7で展示終了
 カメラOKでしたので、撮ってきましたが見にくくて残念です。
 本物実物もじつにぼんやりしていてわかりにくいものでしたが、
 それでも偉大なる聖徳太子さまの生涯をこうして絵解きするべく
 大きな作品となっていることに、ますます偉大なる聖徳太子さま、と
 仰ぎ見るのでした。


 宮廷の美術のコーナーには美しい源氏物語図扇面がずらり並びました。
 まばゆい金地に華やかな源氏のシーンが描かれています。1/12まで展示







 茶の美術の展示に、ユニークな火入れが展示されていました。1/25まで展示
 柿釉地染付人物文火入 
 日本から図案が行ったようですが、中国で絵付けされたときに
 牛車などが理解されずに破綻した車の様子がみてとれ、
 それを面白がった茶人たちの遊び心が伝わります。



 武士の装い展示ケースに美しく染められた羽織が見えました。
 胴服 水浅葱緯地蔦模様三葉葵紋付
 中綿が入れられた温かそうな胴服です。
 辻が花染めでしょうか。2/22まで



 屏風の展示は麗しの「武蔵野図屏風」が現れて驚喜しました。
 本当に美しい作品です。





 暮らしの調度のコーナーから
 「梅枝短冊蒔絵硯箱」ときどきお目見えですが
 愛らしい意匠でお気に入りです。



 いかにも京焼、という色使いのお茶碗が見えました。
 「色絵梅花文茶碗」仁清
  その向こうは京焼のもの。


 あぁ、白隠さんだ、という絵がみえました。
 「箒図」白隠筆
 またなにごとか、禅のお話をおもしろく伝えているのでしょう。


 浮世絵の展示室最初に
 肉筆、「遊女立姿図」懐月堂度種筆
 太い黒い線が全体を力強く、勢いよく見せてくれます。
 色の配色もクールです。


 今回の目玉、とでもいいましょうか、
 とんでもない仮名手本忠臣蔵が出てきました。
 こんな事をやるのは、国芳、です。笑!
 「化物仮名手本」十一段の下までずらり展示で圧巻です。
 しかもその段のエピソードが面白く盛り込まれているところなど、
 泣かせ所も外していません。
 12/23日までの展示なので、これを見るだけでももう一度東博!と思いたくなります。 





 最後に平成館の国宝展つながりで、
 国宝再現ー田中親美と模写の世界ー
 という企画が平成館1階の企画展示室でありました。
 田中親美さんという人、時々東博の模写作品の作者として名前を見ています。
 東博のサイトから解説をコピーしましたので、ご参考に。

 田中親美(たなかしんび、本名・茂太郎、1875~1975)は、生涯にわたって、
 数々の国宝の模写・模造を制作し続けた人物です。
 父・田中有美(ゆうび、茂一、1840~1933)より絵を教わった親美は、
 和様の書の大家・多田親愛(ただしんあい、1840~1905)に弟子入りし、
 写すことの大切さを学びました。
 若い頃から、国宝「源氏物語絵巻」をはじめとする模写に携わり、
 明治30年代には、国宝「本願寺本三十六人家集」の模写と、装飾料紙の模造を行ないます。
 そして、大正9年(1920)から広島・嚴島神社の依頼で行なった国宝「平家納経」の模本制作は、
 当時の財界人や数寄者の援助により実現しました。
 それは、絵や書を写すだけでなく、絢爛豪華な装飾料紙、繊細な金具や銅製の経箱の模造まで、
 徹底的に再現されたものです。
 「平家納経(模本)」(全三十三巻、経箱一合)は全部で五組制作され、
 最初に作られた一組は嚴島神社に納められました。
 益田鈍翁(ますだどんおう、孝(たかし)、1848~1938)が所蔵していた一組が、当館に伝来しています。

 という、類い希な模写の大家であったことがわかります。
 鈍翁、また貴方様ですかというため息も漏れたり。
 その作品の一部の画像がこちらです。

 
 

 こうして一日中東博を楽しんだのですが、
 ご紹介しきれない沢山の見所満載なのです。
 特別展があった時だけではなく、常時東博の展示を見て回る、そのことの楽しさを
 季節の移り変わりと共に味わえる、最高のテーマパークです。

 黄昏時の法隆寺館


 東博前庭の大銀杏。まるで三尺玉の花火のようでした。


 新年の東博で初詣、これも毎年の楽しみです。
 ご案内サイトはこちら。
 

新年明けましておめでとうございます。 (2015年・平成27年)

$
0
0
 
 新年明けましておめでとうございます。

 昨年は様々なシーンで色んな芸術、美術との遭遇を楽しんできました。
 なかなか記事にできないまま、
 その日暮らしに振り回されておりますが、
 今年も相変わらずのマイペースで
 ぼつぼつの記事アップになるとは思いますが、
 宜しくお付き合いのほど、お願い申し上げます。

 もう少し、余裕が生まれましたら
 昨年の振り返りもしてみようと思います。

 年末年始、私の草月の先生が展示される作品のお手入れ、
 30年あまりのお付き合いの方の入院、
 浪人中の愚息の大学受験、
 1月はいつになく忙しい月となりそうです。

 寸暇を見つけてまたどこかへふらり出かけることでしょう。

 春になりましたら、すこし、身動きがとれるようになっていると
 淡い期待を胸に、身の程をわきまえながら
 楽しい発見をし続けていきたいと思っています。

 おつきあい頂いているみなさまにも
 どうか、ご壮健で有意義な一年となりますよう、祈念申し上げます。

 あべまつ

2014年 アート展覧会ベスト10 

$
0
0
 


 悩ましい年一度のベストテンの年末恒例イベントを越年してしまいましたが、
 印象の強かった展覧を思い、振り返りたいと思います。

 10 内藤礼 信の感情  東京都庭園美術館

   リニューアルで休館中だった庭園美が戻ってきたそのうれしさを
   建築のもつ歴史と暮らした人の歴史と内藤礼さんの目を通して
   空間の内と外の光をみつめる静謐な共鳴が表現されました。
   新館のスマートさは杉本博司氏のこだわりが随所に。
   二年前亡くなった友にリニューアルされた庭園美を見せてあげたかったと
   強く思いました。
   鑑賞した後からも小さな人の視線の波動が心地よく残るのでした。






 9 東山御物の美      三井記念美術館
   
   唐物の頂点、足利義満の目で収集された将軍コレクション展。
   それらが一堂に会することがあるのかと、驚かされた展覧会でした。
   紅白芙蓉図、馬蝗絆青磁茶碗は今年色々な場所に現れ、
   南宋時代の至宝、ここに極まれり、という名品が目の前に。
   2回通いましたが、展示替えラストに行けず、
   風邪引きになったことが悔やまれます。
 

 8 光琳を慕う中村芳中 千葉市立美術館

   光琳から継承されてきたはんなりした琳派継承を
   芳中はよりまるっと愛嬌良く芳中化させてきたことを
   圧倒的物量で楽しませてくれました。
   大きな屏風絵から、小品まで、今でも全く古さを感じない、
   ゆるゆる芳中デザインを堪能しました。
 
 

 7 名画を切り名器を継ぐ 根津美術館

   三井記念美術館と会期がかぶっての展覧で、
   これまた贅沢な展覧会でした。
   瀟湘八景の牧谿から石山切の名筆、藤原公任、定信や、岩佐又兵衛、
   春の展覧が待たれる、鳥獣戯画の断簡も。
   佐竹本三十六歌仙や茶器などなど、伝来の物語もまた興味深く、
   どうしてそのようなことをしてきたのか、所蔵する人の伝来が加わり
   作品に不思議なオーラを与えているようでした。
   本歌の姿が実用に悩ましければ、それをエイと変えてしまい、
   その変化に脚色が生まれ、新物語となってまた伝承されていく、
   執着というものの恐ろしさと美しさが渾然となって迫ってきました。

 
   

 6 仁清・乾山 京の工芸 出光美術館

   仁清の仕事は端正、その形に絵が生まれた経緯、公家と武家の趣味の違い、  
   そして狩野派の協力と華美な絵付けが可能となって華やかな京焼がやかれてきました。
   乾山は様々な陶器を研究し、楽しみ、自由を手に入れたように思います。
   そのことが京都なのだということ、典雅な展示空間と
   色鮮やかな図録と研究論文から教わりました。
   この幅の広い視野から見た企画展の品の良さをつくづく感じ、
   場内にはほんのりお香が漂っているような京が充満していました。
 

 5 現代美術のハードコアはじつは
    世界の宝である展   国立近代美術館
   チラシの目くらまし作戦に危惧しましたが、
   そのじつは、凄いコレクションで、爆風で吹き飛ばされた気がします。
   アメリカの富豪がときどき凄すぎるコレクションをお持ちだが、
   台湾の富裕層も注目すべきだと云うこと。
   現代美術界の大御所がずらり並ぶ展示には度肝を抜かれました。
   異界の地から異形のものたちが近美に乱入してきたのでした。  
 
 

 4 ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展
               世田谷美術館
 
   日本の美術工芸が西洋でどの程度の影響を与えてきたのか、
   浮世絵をコレクションして油絵の具で着物や小道具を描いて見た、
   そんな緩い認識でいたけれど、
   直接影響された画家の描く作品が相対するように展示された
   とてもわかりやすい企画展でした。
   これほどまで日本美術に衝撃を感じ、影響されてきたのかと
   改めて西洋の日本への憧れを目の当たりにしました。
   今更ながら、浮世絵師たちを誇りに思い、
   それに影響された西洋画家たちのまなざしがまぶしく光るようでした。

   
 3 フェルナンド・ホドラー展 国立西洋美術館
   
   この画家をまったく知らなかったのですが、
   今まで見てきた西洋画のなかでも何か特別な不思議な雰囲気を感じました。
   ムンクの重い哀しみではなく、生死とともに生きてきた諦観というのか、
   リズムを描いていても動いているようには思えないのです。
   瞬間を切り取ってそのままオブジェにしてしまっているようで
   描かれた人は生々しくなく、むしろ死んだ人の方が実体が残ってみえました。
   スイスの山を描いてもどこか虚実あいまってこの世のものではない
   ファンタジックな夢のような、フレームも興味深く、空想の実際。
   色使いも独特。女性たちにまとわりつく青い陰、表情は堅く、
   後ろ姿だったり、伏し目がちだったり、
   感情の起伏はフリーズされているかのようでした。
   チューリッヒ美術館展でもホドラー作品を見ましたが
   すでに知人と出会ったような嬉しさがありました。
   得体の知れない魅力のある画家を紹介されたようで
   強く印象に残った作家で今後も記憶にとどめたいと思いました。


 2 THE RINGS 指輪   国立西洋美術館

   工芸美の極み、ジュエリー展というイメージで会場入りしましたが、
   時代の流れに従い、指輪を巡る旅のようでした。
   指輪をはめる人の衣裳や絵画なども展示され、とても興味深く張り付くように見てきました。
   時代が進むとジュエリーとしての威力と洗練されるデザインと
   金工技術や研磨機の発達なども見て取れ、要求も極まってくることを
   実感し、引き込まれました。
   映画スターが身につけていたような現代の作品も
   古代の人々もスカラベ形のリングも指にはめて
   身を守り、身を鼓舞し、憧れを纏い、時代を切り抜けてきたのです。
   光る石の魅力に引き込まれそれを身につけようと思うのは、
   有史からなにも変わりはないのだということも。
   小さな展示作品なのに、ダイナミックな展示会場で
   2回見に行く機会にも恵まれ、おおいに楽しんできました。
   蛇足ながら、私はジュエリーより、勾玉が欲しい派です。
 
 


 1 台北國立故宮博物院展  東京国立博物館
 
   180分待ちの白菜行列。それだけでもイベント性の強い展覧会でしたが、
   同時に20年前に台湾にいった人々との邂逅もあって
   合わせて印象深い展覧会となりました。
   当地に行けば、美味しいものにありつけるけれど
   それはさておき、「國立」表記にすったもんだも懐かしく、
   至宝との対面はいちいちため息が漏れるものでした。
   東洋館の展示も故宮を意識した気合いの入った展示。
   こういう相乗効果も嬉しいものです。
 
 
   私は月曜日開館の夕方、小一時間で鑑賞することができました。
   刺繍の凄さは目がちらちらしたし、汝窯の名品はやはり
   玉を目指していたのだろうと納得。
   ジュエリー的な輝きではない、マットな質感が東洋アジアなのだな、
   と飴をなめる思いで見つめてきました。
   至宝は国の力なのだと云う到底届かないはるかなものであることも
   実感し、美術工芸の頂上をみたように思いました。
 
 



   
  トップ10には入らなかったけれど、
  それでも興味深かった展覧会

 * 泥象 鈴木治の世界 東京ステーションギャラリー

 * 能面と能装束 三井記念美術館

 * 高野山 サントリー美術館

 * 青磁のいま 東京国立近代美術館工芸館

 * 輝ける金と銀 山種美術館

 * 日本国宝展 東京国立博物館

 * 人思い、人想う ホキ美術館

 * 天神万華鏡 松濤美術館

 * エルメス レザー・フォーエバー 東京国立博物館表慶館

 * ミヒャエル・ボレマンス:アドバンテージ展 原美術館
   
 去年は青磁を彼方此方で見る機会があったことも特筆すべき一年だったように思います。
 また、南宋時代の至極の至宝とも随分対面できました。
 川端康成所蔵の汝窯の青磁盤がこともなげに東博の東洋館に現れたのも
 サプライズでした。
 
 現代作家では、木彫作家、佐々木誠さんのギャルリさわらびでの個展は
 ざわざわさせられました。
 
 
 どの展覧も会場構成の工夫が丁寧なことが感動を引き出してくれます。
 サントリー美は毎回会場の洗練された展示に喜びます。
 出光はあの会場のサイズが心地よく、それぞれのケースを活かしきる構成が
 プロフェッショナルです。
 今年は庭園美に向かう回数が増えそうです。
 根津美は庭園散策がセットで楽しめる所でご贔屓は変わりません。
 東博はワンダーランド、不滅です(笑)
 
 
 

 文楽では住大夫さんの引退公演、杉本文楽を鑑賞、
 歌舞伎は年末に吉右衛門さんの伊勢道中双六を前から三番目の良席で、
 演舞場でABKAI海老蔵さんのお香焚きしめた芳しい香りを花道際で鑑賞、
 などなど、舞台も楽しみました。
 まだまだ知らないことだらけで浅学非才厚顔無恥も甚だしい限りですが、
 目指すなにか美しい魔力に導かれて今年もまた
 彼方此方へと出かけていってみたいと思っています。

 いけばな草月との関わりも広がり、
 3月の花展へ出品することとなりました。
 拙いながらもチャレンジャーであることは
 老化ぼけ防止の手助けになるという助言も身に迫る年齢となりましたが、
 90代の方が生け花教室に通い始めるという
 すばらしいお手本がいらっしゃるので、年齢を言い訳に使わないよう、
 前を向きたいと思います。
 今年もわくわくドキドキをご一緒しましょう。

博物館に初もうで ・東京国立博物館

$
0
0

 
 羊の干支印が示すように、前途洋々 メェメェで参りたいと思います。
 更新スピードがまた一段と遅くてお恥ずかしい限りですが
 今年も彼方此方出かけたいと思っています。

 1月9日にようやく東博に行ってきました。
 さすがの東博、やはり期待値以上の楽しさ満載でした。

 長谷川等伯の松林図屏風がうやうやしく国宝室にお出ましでした。

 簡単ですが、見てきた画像をアップしておきます。
 

 今年も一年東博で楽しい鑑賞が沢山できますように!
 
 初詣特集で羊さん大集合でした。










 東博本館の最初は縄文!これは何度も見てはいるものの、
 やはりずば抜けパワー炸裂です。


 きました!長谷川等伯、松林図屏風!
 さすがの人気作品で沢山の人がケース前に張り付いてました。
 見にくい画像、お許しを。


 等伯と負けない人気者、若冲もおでまし。
 いつ見てもオシャレで赤を入れるポイントも秀逸!
 そして何気に可愛らしい。
 「松梅群鶏図屏風」

 
 愛らしいお軸が登場して、印を見れば抱一の系列とわかる、
 田中抱二筆の「梅鴛鴦若松春草図」 


 それから美しい巻物が展示されました。 
 「来中洛外図巻」住吉具慶筆




 そして琳派メンバーに近いところにいた烏丸光弘の書
 「東行記」(展示は1/2~1/12)


 浮世絵では
 「青楼正月二日年礼仕着小袖模様正写之図」
  栄松斎長喜筆 これがとても斬新な構図で新鮮でした。


 紅嫌いの窪俊満の渋い作品も。
 「土佐日記 並みに月」
 上質の紙で空刷り技法もしっかり確認できました。



 一階に下りて、仏像を拝観し、漆芸をまた見て
 陶芸のコーナーを歩くと
 先日サントリー美術館で興味深く鑑賞した
 仁阿弥道八さんがいらっしゃいました。
 「銹絵雪笹文手鉢」
 お隣には岡山の虫明焼なのでしょうか
 「銹絵雪笹文手鉢 虫明」とある作品が並びました。

 
 そして、近代絵画コーナーにうつると
 柴田是真の「桃漆絵額」が怪しい彩色で現れて喜びました。


 また大迫力の大皿三枚組!
 良く破綻せずに成形できたと感心します。


 遠目にもあぁ、川村清雄作品だ、とわかる横長の額縁が見えました。
 「早春」
 ガラスに展示品が映り込んでしまいましたが、
 しっとりとした品のある和風洋画とでも云いましょうか、
 しみじみとした味わいがあります。

 
 館内は彼方此方に新年を言祝ぐ景色がありました。




 東博のこの一年、またわくわくする企画に何度も足を運ぶこととなるでしょう。
 時間切れで東洋館、法隆寺館には立ち寄れませんでしたが、
 新年独特の清々しいくも賑々しい展示に大変喜んで
 画像をご紹介しました。
 この展示は12日に終了しています。
 

New Year Selection 2015 ・ART POINT

$
0
0
 
 年賀状を支度しないまま年越ししてしまいましたが、
 頂戴した年賀状の中に
 あおひーさんからのギャラリー展参加のご案内が届きました。

 毎年銀座のギャラリー ART POINT で開催されている
 来場者の投票による大賞展

 1月7日から16日までの開催。

 来場した人の投票で参加したアーティストの大賞を決めるという
 とても開かれた大賞です。

 その大賞を既に手にしているあおひーさんですが、
 今年はどんな作品を展示されたことでしょう。
 楽しみに投票参加してきました。

 10日は早朝のいけばな手入れのお手伝いがあり、
 10時前に解放されていたので、
 銀座に移動し、資生堂ギャラリーを見て、
 早めのランチをし、
 久しぶりのあおひーさんとの対面を果たしました。

 一段とスレンダーになったような。

 アイウエオ順の展示なので、作品はいきなり一番最初に展示されていました。

 あら、カラフル!表面に水滴が?

 「彩葉色玉(甲)」





 いままでの作品は対象物を意図的にぼかして焦点をはずし
 一体これは何なのだろう?というなぞなぞが楽しいもので、
 種明かしを伺うことも作品の一部となっていました。

 今回の作品は多分紅葉した木々の葉色が揺れている、
 その葉先に水滴が煌めいている、
 そんなことをすぐに見て取れたのですが、
 この木は奥さんのご実家がある日光での画像だそうです。
 (甲)とあるので、連作もあるそうですが、
 どっちかと云えば、こちらを持ってきたかった(甲)作となったそうです。
 (乙)作はご自宅に。
 
 あおひーさんの写真をどうにかして新しい表現にしたい、という熱意が伝わります。
 画像を立体的に光の加減、光源の移動で変化する、そんな工夫も新しい試みです。
 とかく対象物を閉じ込めて時間を圧縮させてしまう写真という世界。
 あおひーさんのこの作品は時間が揺れています。
 こんなゆったりした光のさざ波を初めて見ました。

 この作品は見る人を楽しませてくれる、そんなあたたかな人柄が
 クールな目線とあいまって単純に
 わぁ、すてき。
 といわせてくれます。

 当日早々に記事アップができれば、
 作品を見るチャンスを案内できたのですが、
 今頃になってしまって、申し訳ないことです。

 会場の様子など、じゃんじゃんとっていいですよ、ということでしたので、
 ここに記録してあおひーさんの今後ご活躍を祈念します。
 私が投票した他の2作もご紹介します。










 我が家にも以前のこんな作品が日常に住んでいます。




 投票結果は
 ダントツのNO.1!!!

 大賞受賞、おめでとうございます!!!
 次回作、どんな新しいドッキリを生み出してくれるか、
 楽しみにしています。
 ギャラリーのOfficeにはあおひーさんの作品が
 すっかり溶け込んで温かな色を発光していました。 

 あお!ひーさんのブログはこちらです。

第9回shiseido art egg 川内理香子展 ・SHISEIDO GALLERY

$
0
0

 前回のブログ記事、あお!ひーさんのギャラリー展に伺う前に
 久しぶりに資生堂ギャラリーに行ってきました。
 ここはとても洗練された、現代アートを紹介してくれる
 お気に入りの場所です。

 今回は9回目を迎えるshiseido art egg展
 皮切りに川内理香子さんの展覧。
 2月1日までの開催です。
 のちに、飯嶋桃代 2/6~3/1
     狩野哲郎 3/6~3/29

 どんな新しい目と出会えるのか、楽しみです。

 川内理香子さん、どんな方でしょう?

 作品リストによると「食」にとても関心があるようで、
 食べることによって生まれる様々な変換を
 食品から、人体、動物、その関係性と伸びていきます。
 展覧のタイトルが
「Go down the throat」(喉を通って)

 とあるように、作家独特の感性を会場中のスケッチのような
 軽みのあるドローイング作品群から伝わります。
 会場展示はカメラOKでしたので、
 ここにご紹介します。





















 そういえば、食べることは我意を満たすことばかりで
 その奥の何かを考えてなどいなかったことに
 気づかされるのでした。
 コケティッシュなようで、シリアスな謎めいた雰囲気が
 楽しめた展覧でした。

 銀座お散歩の寄り道にうってつけの場所です。

 また、資生堂の出版物、「花椿」毎回ステキな誌面つくりで
 大変尊敬しています。
 その中で、第32回「現代詩花椿賞」受賞作品
 「祖さまの草の邑」(おやさまのくさのむら)
 石牟礼道子さんの詩が2編掲載されていました。
 
 わたくしさまの しゃれこうべ

 さびしがりやの怨霊たち

 なんという土の臭いのする、神々のいた頃の懐かしい自然と
 その中で浮遊する魂を俯瞰する目の辛辣なこと、
 魂との交歓に改めて言葉のちから存在感を感じさせてもらいました。
 今後ますますのご活躍を願います。

 花椿、ステキな雑誌です。



他、その日に歩いた銀座の景色を少しばかり。






 
 
  

 

1月のアート鑑賞記録

$
0
0

 年明け早々、様々なことが舞い込んできて落ち着かない日々を過ごしていますが、
 年初に見てきたもの、とりあえずメモ代わりに残しておきます。
 
 草月の私の先生が赤坂でいけばな展示を約一月年末年始に展示していました。
 そのお陰で早朝からのお手伝いがあり、
 仕事から解放された後、意外にも彼方此方立ち寄ることができました。


 *岡部嶺男 火に生き 土に生き 展 菊池寛実記念智美術館




  
  こちらへは本当に久しぶりとなりました。
  陶磁器、工芸の若手展覧も時々されていますが
  今回は加藤唐九郎の長男、岡部嶺男の作陶展に
  器の店を持っている友人と行ってきました。
  この展覧の後にサントリー美で仁阿弥道八をみて
  陶芸家の多彩な技術、技巧に驚くのですが、
  こちらの岡部氏も淡々と幅の広い作品にチャレンジし、
  かつ、現代への道筋もつけられているように思いました。
  端正な中国陶器から織部、志野、黄瀬戸、窯変米色などの
  伝統的スタイルから、青織部縄文塊の激しいものまで。
  土の塊から生み出す闘いから何を目指していたのだろうか、
  どんな風に自身のやきものが存在して欲しいと願ったのか、
  静寂な会場の暗闇から浮かび上がるぼうっとした存在と陰が
  土をこね、窯にくべられ、生まれてきたやきものを
  一段と深い重圧をのせているようにこちらに迫ってきました。
  
 *仁阿弥道八展  サントリー美術館



  やきもの好きで様々な陶磁器を見てきましたが、
  この、仁阿弥道八の作品はいつもちょっとだけの展示参加で
  じつは全貌を知らないままでした。
  乾山系統で色絵の鮮やかな楽しい作、というイメージを抱いていましたが、
  数少ない展示作品からは、好きかどうかを判断できかねていました。
  その道八に焦点を当てた展覧がサントリー美術館で3月1日まで開催中です。
  メンバーの内覧日にゆっくり拝見してきました。
  実に多彩な陶磁器を写し、模索し、研究し、道八の色を付けていく、
  天才陶工といわれる由縁を実感できる絶好のチャンスだと感じました。
  乾山もまた様々な陶磁器を写し,研究し、自分の作品を作り出してきました。
  その乾山を本歌とすれば、道八独特のユーモアテイストとリアリティを
  加味しているようです。
  サントリー美術館が道八の真面目な模索から茶目っ気ある楽しいやきものまで
  一望できる道八色に染まった貴重な展覧だと思います。
  見ているこちら側の顔がずっと穏やかに、にこやかになれる展覧でした。
  勿論、大好きな陶工になったことはいうまでもありません。
  作家自身が楽しんで、面白く工夫を重ねることが作品に投影され
  自由になるための努力さえも面白がっていたように感じました。
  もう一度愉快な気持ちになるために道八に会いに行きたくなっています。
  サントリー美のサイトはこちら

 *フェルディナント・ホドラー展 国立西洋美術館
 

  昨年、内覧会に当選した好機をえて初めてのホドラーを鑑賞しました。
  その時のこんな画家、見たことがなかったこともあって、
  ホドラーの独特な表現と色使いが深く印象に残っていました。
  年初、展覧の会期末に再度行ってきました。
  ホドラーは(1853ー1983)スイスを代表する画家で生涯を通して
  スイスに留まり活動してきました。
  貧しい家に生まれ次々と肉親との別れを経験する中で
  死生観、憂鬱を表現しますが、のちに躍動感ある「パラレリズム」(平行主義)または
  「リズム」に注目した表現を得意とするようになります。
  代表作、「感情&ⅠⅠⅠ」「恍惚とした女」またレマン湖、ユングフラウ山などの
  風景画のそれぞれが印象派とは違った色使いと構図に魅せられました。
  同時に国立新美術館で開催された「チューリッヒ美術館展」でも
  ホドラーと対面することができました。
  その時既に親しみが生まれていて、展示されていることを喜びました。
  図録を手に入れてはいるものの、積ん読状態なので、
  ゆっくりその人の画家生涯をめくってみたいと思っています。
  初期の風景画や、スイスの紙幣に使われた木を切る、草を刈る人も
  大変魅力的な作品でした。
  エゴン・シーレの色調を思い出したり、印象派の風景画を感じたり、
  西洋画家の中で注目したい作家のひとりとなりました。 

 *西美常設展 国立西洋美術館

  ホドラー展を再訪した後、常設に回りました。
  常設では版画の展示があり、それが楽しみでもあります。
  小企画展「ネーテルランドの寓意版画」
  緻密な銅版画の超絶技巧に目がつぶれそうでした。
  そして、常設の館内をぐるっとまわると
  それ自体が西洋画の大きな歴史の川となっているのでした。 

 *トーハクに初詣 東京国立博物館




  
  これはブログ記事に早速アップしましたが、(こちら)
  東博は私のワンダーランド。
  今年もできるだけ通いたいところです!

 *高松次郎展 国立近代美術館




  近美の展覧では私の思いもよらない作家と、作品を魅せてくれます。
  今回の高松次郎展では、彼の生きていた時代の「芸術そのものの存在を
  疑ってかかる」芸術という仕組みを裏から底からひっくり返して考えてみる、 
  そんな時代だったのかも知れません。
  見えているものと、映っているもの、頭蓋骨に反映されているもの、
  それを疑って素直に見つめていると・・・・・
  その回路が見えてくるような楽しさがありました。
  数学に弱い私には記号と分解、構築が苦手ですが、
  その難問を前にして技術を駆使して色々やってみた、高松次郎の
  作戦会議は俯瞰する場所から見ていても謎めいているようで
  実はとても素直なコケティッシュな暖かみのあるシニカルな
  斜めの椅子だったりします。
  陰を作っている実存はほんものなのか? 
  解説は難しい言葉でしたが、それに振り回されることの
  自虐的楽しさもあったのでした。
  サイトはこちら

 *近美常設展 国立近代美術館

  ギャラリー4で「奈良原一高 王国」が開催されています。
  3月1日まで。
  これは意表を突かされ、胸に迫るものがじんわりと押し寄せてきて、
  言葉にならないような重たい、強い印象が残りました。
  奈良原一高、その人の名前を写真家としてなんとなく知ってはいたものの、
  レンズ越しにこれを写したいと思う、怖さを感じました。
  北海道の修道院、和歌山の女性刑務所、
  そのセレクトと対比、人として生があることは
  いったいなんなのかと、モノクロ写真で黒々と
  考えることを押しつけられます。
  社会と隔絶された営みの別世界を野次馬で覗いていいのだろうかという
  後ろめたさも生まれてきました。
  そこにある風景と人の営みがあると云うことと、
  この世の理解できない世界が目の前に現れて
  途方に暮れるのでした。
  3月1日まで開催中。サイトはこちら

 *第9回shiseido art egg 川内理香子展 資生堂ギャラリー



  こちらはブログ記事にしましたので、ご参照下さい。
  こちら

  銀座の真ん中で、資生堂の芸術に対する
  スマートな支援が滲む嬉しいお気に入りのスペースです。

 *ART POINT New Year Selection 2015
  あおひーさん出展



  ブログ記事はこちらです。
  あおひーさんの今後どんな変化が生まれてくるのか、
  楽しみで、新作を待っています。

 *雪と月と花展 三井記念美術館

  毎年、旧友と新年会を日本橋でした後に三井記念美術館に行く、
  なんとなく、恒例となっています。
  年初のおめでたい展覧に今年一年を無事に過ごせるようにと
  祈願するような、初詣のような心持ちでした。
  展覧に合わせて応挙の国宝作品「雪松図」屏風が新春を言祝ぎます。
  沈南蘋が五幅、お気に入りの茶籠などが現れて喜びました。
  応挙と三井家との関わりの深さを改めて感じました。
  今年もまた、三井記念美術館に通うこととなります。
  次回は繊細なデコレーションのデミタスカップが会場を
  可憐に変化させてくれるはずです。


 *琳派名品展 岡田美術館所蔵 日本橋三越7Fギャラリー

  2015年、今年は光悦が家康から鷹峯を拝領し光悦村を作った年を記念し、
  琳派400年というビッグイベントが盛り沢山開催されるようです。
  その最初の琳派展が日本橋三越で開催されました。
  箱根に誕生した岡田美術館の至極の琳派作品、初見のものばかりで
  目を見張りました。まだまだ琳派メンバーの隠された名品がどこかに
  あるのではないかとドキドキしました。
  まぁ、なんといっても見ているとテンション上がります。
  なんとか繰り出せて本当に良かったのでした。
  箱根の山へはもう少し自由時間がとれるようになってから。
 
 *菅野由美子展 ギャルリー東京ユマニテ
 








  京橋のユマニテ、キャリアのあるギャラリーでセレクトにも安定の
  心地よさと、新鮮さが魅力ですし、そこを切り盛りするKさんの
  お話と、運良くは作家さんのお話が伺えることも魅力のひとつです。
  陶磁器好きの私にとって気になる画像がご案内メールで届きました。
  菅野由美子さん。
  ちょうど在廊されていた菅野さんからお話を伺うことができました。
  やはり、陶磁器好き、骨董好き、ガラスも好き、ということが
  画面からも十分に伝わります。
  でも、なにか不思議な空間で、果たしてその実体があるのか、
  架空なのか、画面の暗闇がリアルを否定しているような
  ミステリアスな騙し絵的な魅力がありました。
  3,11で壊れてしまったものもそれを記憶するものとして登場させたり
  好きな急須だけの作品があったり、とても親近感のあるチョイスでした。
  油絵なのに、どこかフレスコ絵的な感覚、
  今後登場するのはどんなやきものなのか、
  菅野さんコレクションの増殖もまたたのしみとなりました。


 さてさて、新しい一年が始まりました。
 思いがけず、忙しい1月でしたが、寸暇を見つけて展覧に行くことができて
 良かったと思いました。
 この2月がまた色々懸案事項山積で、どうなります事やら。
 ブログ更新が思うように進まないこととなりそうですが、
 みなさまにはどうぞ体調管理など怠りませんようにと願います。
 立春を迎えましたので、時々春めいた光や花が目につくこととなるでしょう。
 健やかな春の訪れを心待ちにしたいと思っています。

 お正月の草月の花も画像ご紹介します。
 場所は赤坂、ホテルニューオータニ、キャピトルホテル、などです。
 これから花の展覧会がラッシュのシーズンです。
 あちこちで花のエネルギーをもらってお元気になりますように。














 

春遠からじ

$
0
0
 
 2月もはや月末を迎えました。

 アート鑑賞を趣味で動き回っている日々ですが、
 今月はとても余裕がない状態で
 残念なひと月を過ごしています。
 
 とはいえ、様々な問題課題があって、それに向かっていると
 アート鑑賞する心の余裕が生まれないこと、実感しています。

 一浪人した愚息のリベンジ受験もあと少しでその結果が届きます。
 一年間、彼の人生で一番濃厚な時間が過ごせたのではないでしょうか。
 身びいきながら、悲観せず、挫折せず、
 よく頑張ってきたと思います。
 結果は何があっても受け入れる心構えができているようです。
 もちろんどんな結果でも応援し続けることに変わりはありません。

 お正月のいけばなの手入れが終わり、
 次に、いけばな協会展の参加が決まって
 どんな作品にするか、試行錯誤。
 だいたいのイメージは固まってきましたが、
 いざ、会場入りして、花材を広げたときにどんな化学変化が生まれるか、
 予想通りにうまくいくとは考えられないので、
 花材と花器と現場に教えてもらおうと思います。
 それにしても、チャレンジすることのドキドキはいい緊張感と
 つんつんする刺激で、振り回されます。(これもまた修行~)

 他に、文芸同人誌の事務方のお手伝いしています。
 今回は寄稿することもあって、
 悩ましい作文の課題を頂戴しました。
 ようやく脱稿しましたが、とても荒っぽいので
 きちんとした推敲が必要です。
 こんな文章でいいのかお恥ずかしい限りです。
 文筆業に改めて尊敬を捧げます。
 
 一番どうすることもできないのが、
 人の命の行方です。
 若いときからのご縁で「美しいこと」を教わった夫人が入院中です。
 いつ何時何があるか、覚悟しながら、
 血縁、身内のいない現実にどうお手伝いできるのか、
 ご縁のある方々と、お世話になっている訪問医の先生と
 助け合いながらの日々が続いています。
 治療をしない、という英断をされたので、現状維持と痛み緩和をしてもらって
 終末を過ごしている、そういう状態がどんな心境なのか、
 とても想像ができませんし、理解できるものではないと無力も感じます。
 そういった状況下でもいつも笑っていよう、ということにしました。
 存分に生きてきた、その人の人生を尊重したいと思います。
 実父と同じ年齢、ご自分のありようを頑固に持ち続けた
 何をしても鋭く、痛みを伴っていたはずですが
 それを曲げることはしない方です。
 どうか、残された時間が穏やかでありますようにと
 願うばかりです。

 そうそう、高校時代の友人の娘さんに女の子が生まれました。
 一度流産を経験したつらい思いを経て、
 本当によかった、おめでとうございます。
 早くぷるぷるのほっぺに会いに行きたいと思っています。

 3月になれば。

 もう少し、余裕が生まれることと思います。

 その時が来るまで、ブログの遅延をお許し下さい。

 みなさまにも、ステキな春の鼓動が届きますように。
 人生は厳しい現実を深刻になりすぎず、どう楽しめるか、なのかな。
 


Viewing all 295 articles
Browse latest View live