Quantcast
Channel: あべまつ行脚
Viewing all 295 articles
Browse latest View live

2月の東京国立博物館 (2月12日)

$
0
0
 先月のこととなりますが、
 東博、クリーブランド展、人間国宝展に行ってきました。 

 今年初めての東京国立博物館に行ったのが、二月に入ってから。
 去年8月、ネットで三館共通券をなんと破格の千円という値段の
 新しい時代のチケット販売を体験しました。
 その三館共通チケットを印刷したチケットを大事にバッグに入れて
 やっとやっと行ってきました。
 半年あまりの待ち時間となりましたが、
 会期もせまってドキドキしましたが、ようやく入館してきました。

 先ずは本館から見て回ってから平成館に入ることとしました。
 本館の凄さは企画展を凌駕しているところです。
 企画展に合わせた展示も彼方此方その配慮にキュンとさせられます。
 私の目に止まったものだけチョイスしてみます。

 本館二階は縄文弥生からスタートします。
 縄文土器、土偶がなんといってもその沸き上がる熱に毎回パワーをもらいます。
 今回は土偶のスター、遮光器土偶がお目見えでした。
 エスキモーの使う雪眼鏡の形をしている、と言うことで
 遮光器と名付けられたとか。
 さっそく画像を取り込んでiPhoneの待ち受けにしました。



 土面、その素朴さにひれ伏します。だれかクッキーにして下さい。


 人形焼きでも良いです。
 そして、注口土器のかっこよさ。
 縄文が良い具合に配されて、とてもモダンです。
 急須、ポットに写しで良いです、だれか、模作して下さい。



 仏教の興隆展示に、珍しい仏様がいらしてました。
 如来立像 法隆寺献納宝物だそうで、解説によれば、
 法隆寺献納宝物の中で唯一の木彫像で飛鳥時代と同様クスノキを使用し
 頭から台座まで1本のクスノキで作られ、
 後ろにある木製の光背やそれを取り付けるための鉄の支柱は
 当初のもで、7世紀後半のものとのこと。
 とても滋味溢れるお顔立ちで、
 ふとルオーの描くキリストさまを思い出したのでした。






 国宝室は 雪舟の秋冬山水図。
 でました、という感じがします。
 つくづく不思議な空気感がみなぎっているのですが、
 思いの外小さくて驚くのです。

 仏教の美術展示では
 伝 源頼朝坐像。
 つい中井貴一さんを思い出してしまう、大河ウオッチャーですが
 彼よりももしかしたら違う役者さんで
 こんな人いたんだけれど、と思いをめぐらします。


 
 宮廷の美術展示には
 肖像画がずらり。
 後白河法皇や、宮廷にあがったセレブ殿方の麗しいお姿。



 また、驚いたことに鎌倉イケメンズ三人衆が現れました。
 平重盛、源頼朝、伝、桜町成範。
 これは江戸に入ってから冷泉為恭の模本とのこと。
 ついつい山愚痴晃氏の頼朝の自画像を思い出してふっとしてしまったのでした。
 教科書にも出てくる頼朝肖像画はじつに麗しい美男子だと
 惚れ惚れするのです。
 本作があったらこその模作。麗しかったです。



 武具のコーナーは通り抜けがちなのですが、
 今回はたおやかな書があり、よく見れば細川ガラシャ筆。
 入信まもないときの夫、忠興への手紙とか。
 自分の名をがらしゃと書く事の火照りが伝わるようです。



 入館情報をあまり持たない方がドキッとすることになるので、
 そのドキッとを大切にしようと思っていますが
 今回はまさにどっきりが沢山ありました。
 
 突然南蛮文化のそれも思いがけない大きな肖像画が目の前に現れて
 日本絵画において肖像画がこんなに大きなものは
 曼荼羅、仏様ならいざ知らず、生の肖像ですからビックリです。
 その人は
 支倉常長(はせくらつねなが)
 何故、ここに西洋画の肖像画があるのか??
 特別展「支倉常長像と南蛮美術 400年前の日欧交流」
 この企画をいつもなら屏風に囲まれているところでの展示です。
 本館の入場料で見る事が出来ます。
 23日までの企画展。パンフレットも充実です。
 伊達男がスペインでフェリペ三世に、ローマ法王謁見してきたというのです。
 どれだけ正装に気を遣ったか、お金をかけたか、
 肖像画の豪華さに呆れてしまいます。
 展示室はそこだけなのですが、この肖像画の存在感は圧倒的でした。
 400年前の伊達男、一見の価値ありです。
 今も、イタリアの個人が所蔵されているということにも
 驚嘆します。



 江戸期の書画の展開で、
 蔦の細道図屏風、深江芦舟と出合います。
 久しぶりの対面です。
 どこかでの琳派展で見たのでしょうけれど、
 宗達の色使いが伝播されていると感じます。
 この屏風が後で見たクリーブランド展に繋がるとは
 その時は思いもかけなかったのでした。



 他にゆるすぎる富嶽図は仙厓義梵。


 
 酔李白図は池大雅。




 江戸博での大々的浮世展に元気をもらいましたが、
 こちらでも名だたる浮世絵師が並びました。
 歌麿の粘着質は他の追随を許しません。
 江戸博の企画展示に広重の江戸百景が並びましたが、
 こちらにも、有名すぎる亀戸梅屋鋪。
 春信のファンタジックなやわらかな冬景色。
 今年はよく雪が降り、雪だるまを作った家もあったのではないでしょうか。
 ここには本当の雪だるま、みつけました。







 そして、企画展示がもう一つ。
 弥生時代の近畿 華麗なる土器と青銅器の展開
 素朴な土味と、端正なフォルムに現代でもまったく問題なく、
 むしろ、この無邪気な純粋が憧れでもあります。
 蛸壺の可愛らしいこと。




 線刻絵付長頸壺には龍のような動物らしき絵が見えます。
 大阪界隈ならではの発掘があったようです。

 平成館でのクリーブランド展、人間国宝展、まで記事Upは
 長々しくなるので一旦ここでしめます。
 


 東博ではいよいよ京都建仁寺から栄西がやってきます。
 去年、京都博物館までいって山楽山雪を見た日に建仁寺まで行ったことが
 懐かしく思い出されます。
 宗達の風神雷神図を見るのはもしかしたら出光での展覧会以来になるのかも知れません。
 楽しみです。

皇國大道 スメラミクニノオホミチ 佐々木誠展 ・羽黒洞

$
0
0
 
 前回の個展記事の日付を見ると
 2012,12.2
 とあるので、その年の2012の春、アートフェア東京会場で
 山下裕二さん監修による展示ブースで初めて佐々木誠さんの
 木彫にぶつかり、以来その迫力に引き寄せられ続けています。

 今回二年ぶりの個展のご案内を頂戴してわくわく作品との出会いを楽しみに出掛けました。

 ご案内葉書からもゆるがない木彫への偏愛にぞくっとしました。









 夜久毛多都 と言う名の木の根から生まれ出た、百獣の王のような毛並みを
 振るわせ鎮座する神様。

 夜ごとこの世の荒ぶれる悪行に怒髪天をつき
 雷鳴し地を動かし荒ぶれた後の静けさを
 いまだ余震つきぬその姿に心奪われます。

 静かである、ということに至るまでのその荒ぶれたさまを想像するも恐ろしく
 ただ鎮まってくれたことに安堵するのです。

 人はいつの世も愚かないきものであると思い知らされることばかり。
 
 そしてその心を誰かにどこかに預ける先があれば、
 身代わりとなってそこに置いていけるものと思いますが、
 なにしろ今は神様仏様におすがりする信心が薄いので
 困っているのは現代人。

 どうか、ここにすべてを置いて私の心を軽くしてくれますようにと言う
 救いを求めても許されるのではないかと
 厳しさの中にも引き受けてくれる度量をも見る気がします。

 大迫力の木彫のサイドにももろく壊れそうな
 雌鹿の頭蓋骨、両性具有の偶像人体、
 竹の祠、木版画、またちいさな祠、狛犬たちも。

 写真をわがままに撮らせて頂きました。
















 
 今後展覧会参加の予定など、親しくお話しを伺うことが出来ました。
 やはり、あのシャッフル展示は本当に鳥肌ものだったと改めて
 山下裕二先生の美術史を超えた現代生きている人にアピールする
 ステージの出現に改めて感嘆しました。
 今回も山下先生は初日に訪問されたとか。
 佐々木さんご本人は、とてもスマートで、
 激しい鑿目の跡からは想像もできないほどの華奢な手をお持ちです。

 この展覧は今月29日まで。
 湯島天神さま目の前のマンション一階にある
 羽黒洞でぜひ実物を目にして欲しいと願っています。

 今後のご活躍に熱烈エール送ります。

 画像は佐々木さんにも見て頂いたのですが、
 ともかく実物から発するオーラ体験をお勧めしたいと願っています。

 
 
 

 

春の花探し 

$
0
0
 久しぶりのブログ記事です。

 三月が色々詰まりすぎていて
 PCでカタカタする時を持てずにこんな間の抜けた更新になってしいました。

 取り込んだ花の画像が沢山あるので、
 ご紹介します。


 こちらは3月27日の北九州、小倉城近く、紫川のさくら。
 一泊の慌ただしい旅でしたが、昔の仕事を思い出したりもして
 ご縁の糸が繋がる有り難い体験でした。
 白木蓮は北九州市立美術館の庭園からです。





 次は
 我が家ご近所から。
 雪柳が連なって壁が出来ていて見事でした。
 お堀沿いの桜は相性ぴったり。
 残念ながら画像がぶれちゃいました。




 これは都心、日本橋のさくら通りから。
 近代的建築との景色もなかなかのものでした。





 こちらは上野、芸大美術館から、
 東京国立博物館の庭園からです。
 上野公園は薄桃色に煙っていましたが、
 花見でごった返す場所を避けて静かに春の息吹を満喫してきました。
 嬉しかったのは、 
 つくしと、たんぽぽのコラボ。














 こちらは市川江戸川近くのさくら。


 小学校母校の校歌には
 桜堤の花あかり〜という歌い出しで、今も何となく覚えています。
 真間の手児奈、千葉商科大学、里見公園、あのあたりはまだ桜の
 名所が残っているはずです。

 さて、最後は伊豆高原へ飛びます。
 実家は育った場所ではないのですが、
 両親が30年近くそこで暮らしています。
 花が大好きで、所狭しと色んな花々が植わっています。
 シャクナゲ、ハナカイドウ、ツバキ、ヤマブキ、スイセンなどなど、
 他にも沢山。
 ツバキは百種あるともいわれ、様々な色形を見る事が出来ます。
 伊豆高原界隈でも大木のツバキから生け垣に使われていたり、
 花の大きさも大輪から八重、一重、などなど。
 シャネルのカメリアと呼びたくなるような白く可憐なものから、
 お水取りの時期に和紙で作られるのりこぼし、のようなものまで種々。
 一番シンプルなのが藪椿ヤブツバキとよばれるもの。
 根津美術館で開催された「百椿図展」も思い出されます。
 京狩野の山楽の図といわれてました。
 










 散歩したついでに
 キフジを採取して玄関にいけてきました。
 私がいけばなを学ぶようになっているのも、
 母がいけばなをしていたし、家の庭にはいつも何かの花が咲いていたことが
 影響されていたのだろうな、と再確認しました。
 環境というのは大きな影響を与えてくれるものです。



 とりあえず、毎週なにかとイベント続きだった3月が終わり、
 浪人生となった愚息もいよいよ塾通いが始まりました。
 いつもの毎日が始まります。
 
 すこし濃厚な3月を振り返りながら、
 絶賛見逃しの展覧を追いかけながら
 いつものアート鑑賞を続けていきたいと思っています。

3月のアート鑑賞記録

$
0
0
 
 2月28日〜3月2日 
     北千住丸井 ギャラリー1010 
     草月いけばな展 東京北支部 出品

  6日 新宿高島屋 いけばな協会花展

  7日 原美術館 ミヒャエル・ボレマンス展
     最初の部屋の木蓮でやられてしまいました。
     この人、何者?というオーラがビシビシきました。
     残像が絵画という世界に住んで何か密やかな妖しさを
     見る人に感知させます。
     実存ではない何者かの亡霊のようなイメージの存在とでも言うような
     表現が難しいですが、とても静かな画面で精神世界を喚起させてくれます。
     案の定、京都のお寺でも展覧があったとか。
     ともかく寒い日で、奈良さんの部屋から眺めた窓が一瞬絵画のように
     白い物がふわふわしてきました。
     原美術館での雪景色に上気しました。







  8日 国際フォーラム アートフォーラム東京
     かねてより、親しく作品を拝見している、荒木愛さんの作品が
     展示されるとのご案内を頂き、
     去年はいけなかったAFTに行ってきました。
     日本のギャラリーが古美術からコンテンポラリーアートまで大集合する  
     3日限りのありえない大市場です。
     日頃美術館ばかりでギャラリーにはなかなか足が向かないのですが、
     ここに来れば元気なアート界を肌で感じることが出来ます。
     古美術ファンとしては超有名店の看板だけでも憧れますが
     こちらでは軒をぐっとさげてくれるのでふらふら見る事が出来ます。
     2年前の山下裕二先生監修の「シャッフル」の展示がやはり強く印象に残っています。
     感じる目線がぶれないと時代を超えても何の問題が生じることなく
     美しい空間を作り出せることに感銘しました。
     今回のAFTはやはり工芸品に目が止まり、嗜好に傾くのは致し方がないこと実感でした。
     ユマニテでの個展で知った廃材メタリック素材で動物たちを作る富田菜摘さんや
     日本画家の荒木愛さんともお話しすることができ、嬉しく思いました。
     荒木さんからは、すぐに個展があるとのDMを頂戴しました。
     DM作品のバックのグレーのもやもや感がとてもいいので、
     尋ねると和紙を工夫して重ねてみたとのこと、本作を見るのが楽しみになりました。
     単なるかわいい絵ではない、岩絵の具から浮かび上がる色の世界、
     その儚い線が何かを訴えてくるのです。
     今回のAFT特別ブースは「日本が創った近代」というコーナー。
     蒼々たる画家の登場にビックリしました。
     中川一政、佐伯祐三、坂本繁二郎、藤田嗣治、安井曾太郎、須田国太郎、麻生三郎、
     熊谷守一、松田正平、堂本印象、香月泰男などなど続々並んで壮観でした。
     各画廊からの展示作品群でした。
     また、書家井上有一さんの書の大胆な墨の迫力も印象的でした。
     それにしても、むんむんする会場の熱気に倒れる前に退散することにしました。
     

 これはザ・コレクション玉匳 (たまくしげ)に展示されていた
 安藤郁子さんの作品。この土臭いところに目が止まりました。


 これは巧術だったか、ちょっと記憶が不明ですが
 自在のカマキリのような虫の様子に痺れました。








  13日 サントリー美術館 伊万里展
     サントリー美の展覧はその会場作りがいつも快適美的で心地よい時間を過ごすことが出来ます。
     今回も見慣れた伊万里を輸入した異国ムードで展示し、
     新たな景色として感じることが出来ました。
     シンメトリーに展示することだけでも異国間が生まれるのでした。
     伊万里の人形が面白く、相撲の取り組みなどもユニークで、
     収集した海外の人達の得意げな嬉しげな顔が想像できそうでした。
     既に終わってしまいましたが、展覧会の様子はこちら
     
     汐留パナソニックミュージアム 南部鉄器展
     早くから南部鉄器の展覧情報にワクワクしてましたが
     ようやく行ってきました。
     やはり、日本のものづくりスピリットには驚嘆します。
     金工の凄さはこういった日々の用の美にも手を抜かないということでしょう。
     火鉢に鎮座したきただろう、伝統的鉄瓶の意匠に脱帽しつつ、
     その流がデザイン、という表現に変わっていった南部鉄器。
     北欧的なすっきりとした線、はたまた軽やかな色に染められた鉄器。
     住空間や、時代の変化があってもこうして鉄器は
     日本に留まらず、むしろ世界から再発見されてきたことを
     誇らしく思った展覧でした。
     我が家にもひとつ、鉄瓶が欲しくなりました。
     会場内では内田繁さんによる現代の茶室がしつらわれ、
     遊び心もある楽しい空間演出となっていました。
     以前、麻布のル・ペインギャラリーでアルミのようなシルバー金属板が
     パンチされた壁をつかった斬新な茶室が現れたこと思い出しました。
     竹橋の工芸館でもこんな企画があれば素敵です。


 19日 湯島羽黒洞 佐々木誠展
     2年前のAFTでのシャッフル展示場で仰天した木彫像を作成した
     佐々木誠さんの個展が湯島の羽黒洞で開催されました。
     シャッフル展示が終わってすぐに羽黒洞に駆け付けたのですが
     それ以来、佐々木さんの木彫に魅せられています。
     今回もまた素晴らしい作品と遭遇できました。
     詳しくはブログ記事をご参照下さい。





 21日 世田谷パブリックシアター 杉本文楽 曽根崎心中
 22日 二日連続、杉本文楽
     ようやく念願かなって杉本文楽、パリ公演凱旋バージョンを鑑賞することが出来ました。
     それもなんと、二日連続でです。
     ありえないご縁に感謝するばかりです。
     その内容の濃厚なこと、一言では言い尽くせません。
     現代アーティスト、杉本博司氏の手で古典文楽の解釈が見事に舞台上で
     劇場で繰り広げられ、罠に入ってしまった観客の息の根を止めてしまったのでした。
     というと大げさですが、ご本人は至ってラフな方で
     あ、杉本さんだわ、と階段ですれ違いざまに声をおかけしたら、
     どうも、って、笑みをくださいました。(ただのミーハーです!)
     跳ねた後には出口に立っておられるので、 
     ありがとうございました、とお礼を述べてきました。(ミーハーです)
     機会があれば、このこと、ちょっと記事にしようと思いますが
     手強い話しなので、どうなることやらです。
     うっかり踏み入れた落とし穴は誠に心地よく夢見心地で自ら落ちていった、
     そんな至福の二日間でした。
     そして、去年急逝してしまったのえるさんにやっと見てきたわよ、と天空に向かって
     伝えたのでした。



 26日 青山一丁目 ギャラリー くにまつ 
    荒木愛個展 [I SPY ]
     このことはまた別記事にしましょう。
     愛さん、と呼んでしまいますが、ご本人とお仲間、そしてその師匠である
     日本画壇の大家先生と分不相応にご一緒する機会を得て、
     以来、親しくさせて頂いてます。
     なんで素人の私がご一緒できるのか、未だに謎ですが、
     ご縁のきっかけとはそんなものかも知れません。
     また、ご家族とも対面してしまったり。
     そんなことで、今回の個展はとても楽しみにしていたのでした。
     ギャラリーは青山一丁目の大通りの1本入ったところにあって、
     おしゃれな街、青山の住宅街に溶け込んでいるお宅のようなところでした。
     さて、どんな作品群だったでしょう。
     改めて思い起こしてみます。
   




 31日 日本橋高島屋 武井武雄展
     北九州往復やら、その後伊豆高原の両親宅に行く予定のある中、
     もう、今日しかないと思いきって出掛けてきました。
     地下道のショーウィンドウには次回展の浅田真央さんのポスターやら
     パネルが準備されていました。
     以前、武井武雄の本をもっている人がいて、そのかわいらしさ、に魅せられました。
     また、神保町の古書店で武井武雄さんの本を大切にしまう箱が
     とびきり素晴らしいできだったことが印象に残っていました。
     この人から生み出される児童書の夢見る心根の美しいことに
     今一番見失われている、慈しむ、という心。
     世の中のすべてに愛が溢れていることに気づかされる、あたたかさ。
     ものつくりの心底楽しいこと。
     品の良い始末という仕事とは丁寧で優しい眼差しがあるということ。
     こんなステキな手作り本で物語を学ぶことが出来たなら、
     どんなに幸せなことを発見できる軟らかな人になれたのではないかと
     至らないことを思い知ります。
     ユーモアと、慈愛と、ものつくりの楽しさがこもった愛情溢れる本たち。
     豊かな心とはこういうことだと確信もする幸せな空間でした。    
     物販の危険度は最高でしたが、ポチ袋、ハンカチ程度に抑えることがやっとでした。

 4月に入ったので、もう少し更新が進むよう、頑張ってみます。

 東京国立博物館の栄西と建仁寺、
 三井記念美術館での超絶技巧明治工芸の粋、
 横浜美術館の版画展、
 千葉市立美術館での芳中展、
 などなど気になるところ続々です。
 とりあえずではありますが、ざっと3月の記録とします。

4月の東京国立博物館 

$
0
0

 4月11日、やっと東京国立博物館で開催されている
  特別展「栄西と建仁寺」展を見に行ってきました。

 さすがの重厚感溢れる圧巻の展覧会でした。
 京都に行かなくても、建仁寺の意義を知るきっかけとなると思います。

 昨年、ちょうどGWが終わった頃に京都往復したときに
 京都国立博物館の山楽・山雪展をみて、
 智積院から建仁寺まで訪ねたことが思い出されます。
 
 寺院はその土地の空気感を知っておくと展覧会も
 一層実体験に近い鑑賞を体験することができます。
 禅寺らしい、庭園などは現地でぜひ感じて欲しいところです。

 その特別展に合わせての本館の展示の気合いの入り様も素晴らしいものでした。

 一字金輪像 蕨手形頭光といわれる光背の描き方はマーブルのようでとても
 色使いが美しく、印象的です。
 この模写が 田中親美氏の手によって作成されていたものを見た事があります。

 法然上人伝絵巻 法然上人の力強いエピソードが絵巻になっている一巻。

 日月山水図屏風 こちらはかの有名な金剛寺所蔵のものとは違って、
 もう少し、長閑です。絵の中の日月は鍍金、鍍銀された金属板を使用しているとの
 解説に、丁度出光美術館で開催中の展示品の中にも
 同じように金属を張った屏風がありました。
 後の長谷川等伯たちが手がけてきた柳水車図屏風などの本歌のような気もしました。




 
 白衣観音図を描いた能阿弥の力作屏風がやはり、出光美術館で見る事が出来ます。
 
 この平安から室町までの時代の作品群からはいつもいい知れない
 底力を感じます。
 江戸期に入ると技巧が洗練されてきて都会的になっていくのです。

 その潮流を受け継いだ琳派の申し子、光琳の
 「風神雷神図」がお出ましです。






 後に光琳を私淑したという抱一の「風神雷神図」も
 出光美術館で展示中です。
 つまり、出光展とセットで見る事とかなり関係性が繋がって
 一層鑑賞モチベーションが上がるというものです。

 その陰になってはいけないのが、
 海北友松の「琴棋書画図屏風」です。





 いつもなら竹林の七賢人のようなおじさんたちの塊を鑑賞するところですが、
 ここの海北友松は唐美人を配置します。
 それだけで色使いが華やかになり、
 建仁寺展にも出品されている、「琴棋書画図屏風」よりぐっと鮮やかです。

 同時に館内ではトーハクでお花見というイベントも開催中(13日で終了)でしたので、
 普段は面倒がって手にしないスタンプラリーに挑戦してきました。
 といっても、展示室を回ったときにエンボス印を押す台を見つければいいだけで
 五カ所はあっという間に完了して、記念の缶バッチを頂戴してきました。


 
 また、本館の横から入る庭園も開放中(13日で終了)でしたので、
 こちらも気持ちよく散歩しながら
 写真も撮ってきました。
 桜はすでに盛りを超えていましたが、
 それでも春の芽吹きを存分に感じることが出来ました。









 平成館での建仁寺展は海北友松の風圧のある画力にため息を漏らします。
 
 15日には正門プラザのオープン、
 本館の一階近代美術からぐるり閉室していた15〜19室のリニューオープン、 
 22日からは本館特別5室でキトラ古墳壁画展開催、
 続々とイベントが続き、目が離せないトーハクです。
 
 今年の年間パスポートも月末で期限切れです。
 また一年間たっぷり遊んで、学んで、発見のワクワクを
 期待したいところです。

あちこちで見つけたも画像載せておきます。






































 最後のこの桜を勝手に 山雪桜と呼んでいるのですが、
 無事に花が咲いているのを認めてホッとしました。かわいい姿でした。

4月のアート鑑賞記録

$
0
0

 日々なにやら所用が生まれることで落ち着かないことでした。
 また、風邪を引いたりして季節の変わり目、少々お疲れ気味、だったかも知れません。

 それでも彼方此方寸暇を縫って見てきたもの、備忘録程度に記録しておきます。

 *東京都美術館 世紀の日本画 
  クリーブランド美術館展との関連事業でネットで前売りチケットを購入したものの、
  なかなかチャンスがめぐってきませんでしたが、ギリギリ最終日に入館してきました。

  明治20年から平成15年の間、日本画の辿ってきた道のりを眺める、
  日本美術院の歴史を回顧する
  展覧ですが、巨匠たちの作品はどこかで見る機会があっても、
  昭和、平成の作品に触れる事があまりない私にとって初見の作品ばかりでした。
  日曜美術館の放送で山口晃氏がゲストでお話しされていたことなどをちょっと思い出して、
  御舟の比叡山の稜線にうっかりあぁこの線ね、と思い出し笑いしたり。
  道産子の私には岩橋英遠の「道産子追憶之巻」が親しみを感じました。
  一部屋ぐるりと囲んだ巻物展示でした。
  田淵俊夫さんの「流転」
  齋藤満栄さんの「秋晨」
  目に染み入る気配に引き込まれました。
  ゆるっとした重量感ある馬場不二さんの「松」は乾山のDNAを感じました。
  人物画よりも花鳥画に心が向くことも今更ながら自分の目のこのみを
  確認することもできたのでした。
  日本独特の自然湿潤のなかの丁寧な物事に対する精神の静かな力強さ、
  それが日本絵画の質感なのだろうな、とも感じたのでした。


 *東京藝術大学美術館 観音の里の祈りとくらし展
            芸大美コレクション展
  琵琶湖の北、湖北は十一面観音の宝庫として知られていますが、
  平安時代から現代、平成の今までずっとその土地の人々に守られてきた
  共に生活してきた観音さまたちとお目にかかってきました。
  信長の強行から逃れるために土中に埋めて守ったエピソードなども
  生々しく、信仰の美しさに頭を垂れる思いもします。
  展示室一堂ぐるりと観音さまに囲まれて
  仏教美術としての仏様、というよりも今も尚、共に生きてきている証としての
  仏様を拝観した,そんな気持ちとなりました。
  このファイルをもれなく配布されてまして、
  大喜び!


  同時に芸大コレクション展も開催されていました。
  簫白の「群仙図屏風」
  光琳の「槇楓図屏風」
  山雪の「四季耕作図屏風」 
  「絵因果経」
  特集では「女性を描く/ヌードと出会う」
  黒田清輝、藤島武二、岡田三郎助、コラン、ラファエルなど。
  「近世の山水/近代の風景」
  玉堂、文晁、司馬江漢、雅邦、大観などなど。
  さらりと大物大作が現れ、とてもお得な充実感があって、
  満足な空間でした。
  パンフレットもしっかり充実でした。
  会期は既に終了しています。
  外は桜満開の上野公園界隈。
  帰りに東博の前庭をふらついて花見をしてきたのでした。
  
 *出光美術館 日本絵画の魅惑 前期展
  早くこの展覧に駆け付けたかったのですが、
  やはり素晴らしい企画をしてくれました。
  前期は4月5日から5月6日まで。
  後期は5月9日から最終は6月8日まで。
  絵巻から始まり、仏画、屏風、
  江戸に入ると浮世絵の黄金期まで。
  また、文人画の蟄居世界観から
  琳派の花鳥図、前期は抱一の「風神雷神図屏風」
  後期には同じく抱一の「八ッ橋図屏風」
  其一の「桜・楓図屏風」もきます。
  また、狩野派と長谷川派の作品群も。
  ラストにはセンガイ和尚もお出ましです。
  出光の所蔵庫がどれだけ豊かかと恐れ入るのは
  工芸品も同時に展示されるということです。
  今回は江戸期の色絵やきものが展示品を
  より一層美しく飾る効果となっていました。
  9日から後期が開幕です。
 
 *東京国立博物館 栄西と建仁寺展
          本館、法隆寺館、庭園開放
  この日のことはブログで写真などご紹介しましたが、
  栄西さんのお茶イベント一座風景は興味深いものでした。
  お鉢が発達した帽子のような頭蓋骨をお持ちの栄西さんは
  お茶文化を日本に持ってきた人だったのでした。
  宗達の「風神雷神図」はもちろんのこと、海北友松の風圧感ある
  気迫ある襖図群は現在の建仁寺ではキヤノンのコピーとなって
  再現されていることを丁度一年前に見てきたことを
  有り難く思いました。
  未だに拙ブログを訪ねてくれる人気記事となっています。
  こちらは海北友松の龍図の一部クローズアップです。



 *国立西洋美術館 ジャック・カロ展
          非日常からの呼び声展
          常設展
  西美の版画企画展は充実していて、目が痛くなるほど緻密な
  銅版画家、ジャック・カロという作家を初めて見に行きました。
  副題が「リアリズムと奇想の劇場」とあるように、
  画面からはなにやら妖しい気配が溢れる作家のようです。
  17世紀宮廷附きの版画家として祝祭の記録をしたり
  喜劇を取材した作品なども手がけた後、戦争の悲惨さや
  悪魔たちの大作なども制作しますが43年余りの生涯だったのでした。
  確かに直視しがたい悲惨なシーンもあったり、
  道化や酒飲み、乞食たちを画題に取り上げた、アウトサイダーたちに
  遭遇します。
  虫眼鏡を貸し出してくれますので、ぜひ細部を凝視してみること
  お勧めします。呆れるほど微細なものまで描かれています。


  
  同時に平野啓一郎が選ぶ西洋美術の名品として
  「非日常からの呼び声」展が開催されています。
  小説家平野啓一郎氏の目によってキュレーションされた
  新しい企画展の方法で、西美所蔵品から平野氏の目による一つの
  物語のような展覧でした。
  6の章立てから構成され、その章ごとに選ばれた絵の横に
  平野氏の文章が並んでいます。
  恥ずかしながら現代の小説をあまり読まないので無知でしたが、
  平野氏は美術に造詣が深く、美術を通しての作品も出してきたそうで、
  文章に魅力を感じましたので、読んでみようと思いました。
  選ばれた作品群は私の好きなものが多く、
  壮大で美しく宗教的なものよりも、
  一目でドラマが潜んでいる、そんなことを感じさせる作品が多かったように思います。
  図録がコンパクトにまとまり、平野氏の文章も総て掲載されているので、
  展覧会図録というよりも、平野氏の著作を求める気持ちで手に入れました。
  会期はどちらも6月15日まで。
  上野公園の緑深い草いきれとともにお散歩がてら楽しめるはずです。
  
 *東京ステーションギャラリー 洋画家たちの青春
  副題「白馬会から光風会へ」光風会100回展記念
  日本の西洋画の流を67作家、80余点の作品によっての構成で
  作家の若き日10代から30代の時期の作品群を展覧しています。
  西洋画を習い始めた明治期の黒田清輝が結成した白馬会の後、
  光風会が生まれました。
  その光風会会員による、活動を通しての展覧ですが、
  西洋画にどれだけ憧れ、影響されてきたか、
  印象派にどれくらい学んできたか、
  胸がつんとするくらい、洋画を学んできた若いエネルギーが充満していました。
  去年開催されたエミール・クラウス展の流もつかめ、
  日本が西洋画を見つめてきた軌跡を追体験出来るものでした。
  昭和期の初めて見る作家の多いことは
  触れる機会がなかったのか、展覧が少なかったのか、
  いずれにせよ、初見の作品ばかりで
  画面からは清々しい光の粒子をまぶしく感じることができました。
  ステーションギャラリーの古い煉瓦色の壁の効果もあって、
  懐かしい気持ちにもなる、豊かな展覧会でした。
  5月6日に終了しました。
  チラシの画像紹介です。


 
 他、日本橋コレドにできたTOHOシネマズで玉三郎の「日本橋」鑑賞。
 不動の女形玉三郎の演ずるお孝の厳しい美しさは迫力満点ですが、
 対する高橋恵子演ずる、清葉(きよは)の切なくも慈愛溢れる姿もしっとりして
 二人の対極が鮮やかに映えて鏡花の世界に身を沈めることができました。
 芝居キャリアの長い江原真二郎さん演ずる植木屋のおじさん役がとても良い癒やしの存在で
 言葉使いも滋味溢れるものでした。
 
 後は、実家の伊豆高原へ二泊三日してきました。
 息子の卒業と浪人の報告も兼ねて久しぶりの対面。
 そして、時の流れは速いもので、のえるさん一周忌を偲ぶ会。 
 友人店でのフラワーレッスン。
 企業での華道部お手伝い。
 北九州報告会。
 などなど。

 5月も色々ありそうです。
 どんなことになりますやら、記事にできる時間と気力が欲しいこの頃です。
 あまり無理せずに頑張らないようにできることに向かいたいと思います。
 確かに時は流れているのです。

 

茶道美術の玉手箱 ・畠山記念館

$
0
0
 北海道の叔母が遊びに来ているので、
 宿泊先の品川からふらふらお散歩がてら、
 高輪台の畠山記念館に誘い出して行ってきました。

 もう、新緑から深い緑の木々に
 五月も終わりの頃と感じることができました。

 しばらくして畠山記念館の門構えが見えてきました。
 中に入るとす〜っと空気が変わりました。

 緑深い木々からあふれるマイナスイオンのおかげでしょうか。
 叔母と二人、来てよかったわねと、同じ思いで庭園を進んでいくと
 お茶室の手入れをする職人さんが前を行くので、
 つられてお茶室を拝見することにしました。









 畠山記念館には6軒のお茶室があって、
 入ってすぐのほうに4軒。奥の方に2軒あるそうです。
 お茶会のときはすべてのお茶室を使って沢山の方をおもてなしするとか。

 それでは、と奥の方のお茶室も拝見してきました。
 光悦垣のような竹垣もあって、日本家屋のしっとりした情緒を感じ、
 茶道具鑑賞前に気分も上々となりました。













 荏原製作所の畠山即翁の平櫛田中による肖像に見守られながら
 階段を上がり、落ち着いた光の中、
 丁寧に展示された茶器を拝見しました。

 後期の展示となりましたが、
 思いがけず、雪村周継筆による「竹林七賢図屏風」を見ることができました。
 過日、東博での建仁寺展では海北友松の同題のものを見ていますが、
 友松の風圧ある作風とは違って、雪舟の香りがする、墨の力強いものでした。

 乾山の愛らしい色絵替り土器皿たち。
 この違い皿五枚はいつでもレプリカで良いから
 手に入れたいと願う物です。
 
 畳のケース展示では
 国宝の「林檎花図」伝趙昌筆
 仁清の富士山の香炉三品、
 稜線が微妙に違い大きさもちょっと変化している
 富士山が三つ並ぶと床の間に置かれた香炉から
 富士山の煙たなびく様がそれぞれで興をそそったことだろうと
 その工夫に感心しました。

 柿の蔕茶碗、渋い、とにかく土味溢れる渋い作です。
 畠山記念館が持っているという意味のある
 銘 畠山 小瀬戸肩衝茶入
仕覆が色々ある中畠山裂というものもあるのでした。
 道入、ノンコウの黒楽茶碗は沓形のような斬新作。
 高取の透鉢はつい蓮根という名を勝手につけて親しんでいます。

 茶懐石で使用された
 茶器一式の展示は明治から昭和の物の中、
 そっと桃山の物が現れ時代を超えた良いバランスを感じました。

 脇には
 今鏡、蔦の細道蒔絵硯箱、亀甲花菱文蒔絵手箱
 などの工芸も極上です。

 そういった茶味あふれる渋い環境の中、
 叔母とお茶室に入り込んで
 お茶を頂くこととしました。
 床の間には籠にミヤコワスレ、スジアシ、ズイナが楚々と入っていました。
 畳の上で正座し、お干菓子干錦玉の緑モミジ、和三盆の水流型二種を頂き、
 叔母とは姿の違うお茶碗で抹茶を頂戴しました。
 何とも静かなゆったりとした時を楽しむことができました。

 なにより、叔母がとても喜んでくれたのが
 嬉しい事でした。

 6月15日までの会期です。
 素晴らしい茶道具の展示室の中で
 お茶を一服、甘露な体験もぜひにお試しをおすすめします。

 展覧会のご案内はこちらから。





秘展 其の三 垂直ノ存在社 [木彫] 佐々木誠 [絵画]東千賀・ギャルリさわらび 

$
0
0
 
 木彫の作家さん、佐々木誠さんより銀座の奥野ビル内のギャラリーで展示会の
 ご案内を頂戴しました。
 そのご案内状からすでに霊気が充満しています。
 いかねばなりません。

 銀座一丁目近くの中央通りから2本奥まった通りに
 緑茂る古色騒然のアンティーク臭あふれる奥野ビル、
 その場所での開催に
 またまた期待値が上がるではありませんか。

 ずいぶん前から、あそこのビルほしいと夢想しています。

 伺うと、建てられたのは昭和7年、実父と同い年です。
 
 銀座の片隅で戦争をくぐり抜け、
 生き続けてきた建物から発する老齢の威力、
 そこに染みついた人々の熱気を古色に変えて生き続けている生命力、
 それでも尚、新しい命と共生している瑞々しさ。
 建物の歴史を肌で感じます。








 会場は2階の「ギャルリさわらび」

 2階への階段もいちいち古くて味わいがあります。

 上がりきったところに真鍮のドアノブが付いたギャラリーが見え、
 ここだと確認します。



 引き戸を引くと作家の佐々木さんがいつもそこにいらっしゃるかのように
 立っていらして、ご挨拶頂きました。







 漆喰の白い蔵のその主であるかのような
 「久延毘古」
 面相に走る亀裂から何かが生まれてきそうで痛々しくも生々しい。
 両手両足を表さない形で、身体を遮断している。
 瞑想し自らの思考に籠もっているのか、他者を見てはくれない。
 知恵の神様は身体全体からふつふつと球体を生みだし、
 地べたへコロコロと転がり落としている。
 落ちた球体を拾う者があったとして、それがどういう効力があるのか、
 それは思考の過去の物。
 しかし、今も尚、瞑想し思考の球体は動き出している。
 頭上の傘と腰布はあがめている信者からの供物かもしれない。
 あの集中に誰も近づくことはできないのだ。

 横には東千賀さんの大作、「夢十夜ー仰天・深懊・俯瞰」
 天岩戸のような深遠な色調に人の残映を写している。
 瞑想から俯瞰へ。
 むしろこの夢十夜の世界にこそ「久延毘古」は生きていられる。
 滝の飛沫を浴びるように業を受け入れ、行に生きていられる。

 わがままに行を積んで、したり顔でも岩戸は何も言わないのだ。




 強烈なコラボ空間にしばらく見とれてしまう。
 その角に白い踊り子がいる。
 前衛舞踏の騎士、暗黒舞踏の山海塾の土方巽を連想してしまうが、
 佐々木さんは日本の舞踏をずいぶん見てきたそうだ。
 暗黒舞踏、と言えば、大野一雄、麿赤兒、天児牛大、田中岷、などの
 個性的舞踏家を思い出す。
 日本人としての貧しい身体をさらし、月夜の晩でしか見ることができない
 禁断臭の強いアバンギャルド舞踏家の押さえることのできない
 粘着質な妖怪的存在は実は日本のどこにでも現れていたはずで、
 単純に見る機会を失ったのでは無く、気がついていないだけなのだと。

 あなたのほら、すぐそこに。



 他には、八百万の神の依り代としての祠が壁面に、その分祀たち。
 縄文から生きてきた土蜘蛛。
 猫の手のような孫の手などなど、小さな神様たち。






 奥の部屋にも展示品があり、まるで秘密の屋根裏部屋で、
 こんな場所は誰でも憧れる。
 秘密の場所には秘密の祭壇。
 生きていくための心棒、それが揺れると前に進めない。
 東千賀さんの老いても益々盛んな魂力の画力に
 若い者はひれ伏さなければならない。









 その東さん、実は私の学ぶ草月会館で絵画・デッサンの講師をおつとめされていると聞き、
 驚きました。
 どおりで、草月家元からのお祝い花が届くわけで、
 私の動く範囲は実は仏様の台の中なのだと知らされるのです。
 訪ねてくる方も多く、あの、山下祐二先生も初日にお出ましとか。
 会期は今週末7日土曜日まで。
 
 じめじめとした空気の中、
 心の置き場所を探しに、奥野ビルの魔界へようこそ。
 純粋は垂直にそびえ立つのです。

 ギャラリー内の写真は店主と佐々木さんのお許しを頂戴しています。
 楽しいひとときをご一緒できて大変喜んでいます。

5月のアート鑑賞記録

$
0
0

 5月のアート巡り備忘程度に。

 二十代の頃からのご縁で今も尚おつきあいのある夫人が
 4月末に急に入院、5月早々に手術ということになり、
 家族も身内の方もいらっしゃらない環境から
 私が動かなければと、お手伝いに伺うことにしました。
 旧知のご近所の方が献身的にサポートして下さっていたので、
 私はできる範囲でよかったのですが、
 病気になると色んな事が押し寄せてくること、
 ご本人の抱える荷物の大変さに驚かれたのではないかと思います。
 無事に手術は成功し、順調に快復に向かい、
 今はご自宅で静養中です。

 その渦中、やはり、最悪を想定して、
 様々な問題をどうやってクリアするべきなのか、
 頭の中で緊張が続いていましたが、
 なんとか、それは回避され、現状維持を保てそうです。
 そうはいっても、いずれ、という現実を受け入れることは必ずやってきます。
 覚悟を決めなければならない時がくるのです。

 生きているって事は大変な事です。
 胸に重石を抱いたまま、気分転換してきた、鑑賞記録です。

 *土田康彦展 東急本店8階美術画廊
  ベネチア、ムラーノでガラス制作をしているガラス作家さん、土田さんの
  ギャラリートークに草月教室の先生とご一緒してきました。
  土田さんの作品に草月の本江霞庭先生が花を生ける、というコラボをされました。
  そのお二人の作品を通してのお話を伺い、
  どこでもいつでも創作する神経を働かせて、表現することの難しさ、楽しさを
  肌で感じることができたのでした。
  土田さんは69年大阪の生まれで、ヴェネティアで数々の受賞歴を持ち、
  昨年の映画「利休にたずねよ」の中でガラス作家として出演もされてます。
  草月の本江先生の講義をサマーセミナーで受講したことがあり、
  とてもパワフルで許容のあるおおらかな、かつ、アグレッシブルな先生
  という印象で、尊敬しています。
  本江先生は自らヴェネティアにある土田さんのアトリエに押しかけて以来
  親子のような?息の合ったトークと作品コラボを見せて下さいました。








 *ミラノ ポルディ・ペッツオーリ美術館
  華麗なる貴族コレクション展  Bunkamuraザ・ミュージアム
  短時間での鑑賞でしたが、イタリアミラノの貴族の日常が
  如何に豪華華麗な環境であることか、
  それにため息をついてきました。
  横顔の美しい貴婦人の肖像、甲冑、タペストリー、時計、ガラス、などが並び、
  邸内のまばゆいさまがそのまま移動してきたかのようでした。
  お見舞いに美しい女性のハガキやら、ファイル、エコバッグなどを仕込んで
  お届けしたらたいそう喜んでくれて何よりでした。

 *のぞいてびっくり江戸絵画  サントリー美術館
  ミドルな旧友3人でミッドタウン内の和食屋さんで
  昼間っからビールなど傾け(下戸な私は、ほんのグラス四分の一ほど)
  ゆるっとランチをしてからサントリー美術館に回りました。
  毎回、ここの展示企画は楽しみですし、会場内のデザイン、作り込みが
  丁寧で美しく冴えているので、気持ちよく鑑賞できます。
  後期の展示でしたが、見所満載かつ、体験型もあって終始楽しんで
  鑑賞できたのでした。
  応挙の眼鏡絵は実際にレンズ越しに覗き眼鏡体験ができて大喜びしました。
  覗くという遊び、学び、工夫、発見がつまった、
  愉快で、さらに、美しい仕上げを感じられる展覧でした。
  次回は「徒然草」です。これもまた楽しみです。

 *光琳を慕う・中村芳中展 千葉市立美術館




  ミドルな三人組で千葉美ツアーしてきました。
  当然、まずはランチです。
  千葉美近くのイタリアンでしっかりお腹と気持ちを充実させて参戦してきました。
  こちらの展覧会は毎回資料とともに、ものすごい出品数があるので、
  体力勝負なところがあります。
  ゴールデンウィーク中なのに、肌寒く、どんよりした一日でしたが、
  会場内にはほっこり、ゆるっとした呑気なうららかな空気が充満していました。
  もしかしたら、このゆるさは光琳を慕いつつも実は
  乾山のDNAが強いのではないかと感じたのでした。
  どの作品を見ても、見る人の頬を緩ませる、画家のセンガイ和尚的な
  油断を引き起こさせてしまいます。
  そんな中、「許由巣父・蝦蟇鉄拐図屏風」という大作が現れます。
  花鳥図の小品が多く、ゆるくデフォルメされた木々花々の形に
  目が慣れてしまっていたところ、突然の屏風絵に仰天してしまいました。
  こんな大作、手がけていたんですか!
  常々、光琳を輝かせる琳派展でも終わりの方に数点の紹介程度で終わる
  芳中が会場全体を覆い尽くす作品数にひたすら喜んできました。
  芳中をとりまく絵師たちの脇も充実していました。
  それにしても作品の多くが「個人蔵」
  よくここまで協力てくれたものだと、敬意を表しました。
  同時に関連展覧として、「春爛漫」という所蔵版画展が企画されていました。
  浮世絵の名だたる絵師の作品から、芳年、明治の揚州周延、その後に
  小原古邨という作家の版画に目がとまりました。
  色鮮やかな繊細でかつビビットな表現で近代的な版画だと感じました。
  それにしても、前期後期含めて総数228点、所蔵展は100点。
  体力勝負、眼力勝負でへとへとになりました。
  とはいっても、念願かなった芳中のワンマンショーです。
  晴れ晴れしい気分とゆるり脱力もした、充実感あふれる展覧でした。




 *三井記念美術館特別展 超絶技巧!明治工芸の粋
  トークイベント 「日本美術応援団 明治工芸を応援する!」
   井浦新氏×山下祐二氏 日本橋YUITO6F大ホール
  このイベント情報を知っていち早く申し込んで楽しみにしていました。  
  申し込み番号、12!
  会場につくと整理番号が発券され、列ができていました。
  この人気ぶりは新さんのファンがさぞ押し寄せているのだろうと
  ちょっと場違いのようで戸惑ってしましましたが、
  山下先生の楽しいお話はすぐに会場の空気を明治工芸の魅力へ
  連れて行ってくれました。
  先生の門下生になりたい学生は列をなしていることでしょう。
  お二人のトークは虫が好きな少年会談を呈していて、
  それもまたほほえましく、つい聞き惚れているのは
  一体私はここに何をしに来たのか、判然としない事態に陥ってしまいました。
  とはいえ、京都清水三年坂美術館の村田館長の飛び入りトークがあったり、
  明治期工芸は実は海外の方に理解があって作品も海外に随分渡っているとか、
  やはり美術館のケース越しからは伺えない生のお話はとても興味深いものでした。
  早々に展覧会を見に行くつもりでしたが、いまだかなわず、
  今月中にはしっかり時間を作って鑑賞したいと願っています。
  重要なことは、新さん、無事に山下先生のテストを通り、
  日本美術応援団入団が決定されたとのこと。
  拍手喝采!

 *コンテンポラリーアートジュエリー展 銀座三越店 8階ギャラリー
  ここに若いジュエリー作家さんたちが集合して新しいジュエリー作品を
  発表していました。
  その中に金工作家の鈴木祥太さんが参加されてました。
  ひょんな事からのご縁で、祥太君と呼んで親しくさせてもらっているのですが、
  彼独特の極小繊細技巧世界を見てきました。
  壊れそうな折れそうな小さな金属の花びらが帯留めだったり、  
  ピンブローチだったり。
  めしべのその裏にも細やかな手が目が注がれている、
  小さなじつは広い宇宙の始まりです。
  参加作家さんたちの色んな工夫も面白く,楽しく拝見してきました。
  食い入るように見ている若い女性たちの多かったこと、
  会期中きっと大盛況だったことでしょう。

 *国立文楽劇場開場30周年記念 
  七世竹本住大夫引退公演 国立劇場小劇場
  増補忠臣蔵、恋女房染分手綱、卅三間堂棟由来   



  いよいよこの時がきてしまった、住大夫さんラストの東京公演です。
  大夫が引退を表明されて、大阪では無事に千秋楽まで菅原伝授をお努めになり、  
  ニュースや、特番などでも紹介されました。
  心中いかばかりかと、その姿を拝見できるだけで、
  ぐっと来るものがありました。
  まだまだ文楽初心者で、その本来の意味が理解できていませんが、
  住大夫さんがくるっと床に現れると
  割れんばかりの拍手が鳴り響きました。
  場が一瞬で変わったのでした。
  隣には住大夫さんの側でずっと三味線を弾いていた錦糸さん。
  恋女房染分手綱の沓掛村の段、切場をつとめられます。
  この演目は住大夫さんの父、六世住大夫さんの引退演目で
  文楽を愛してきた親子の絆もあり、最終の舞台を飾る
  縁の深い演目だということを知りました。
  若い大夫さんの麗しく通る声のすばらしさに聞き惚れはするのですが
  住大夫さんの奥深い腹の底から滲み出てくる切ない語りには
  どうにも簡単に追いつけるものではないと明らかです。
  住大夫さんの「浄瑠璃は情でんなぁ」
  と常々仰っていたことがその滋味あふれる野太い声からぎゅんと伝わり、
  若い活気ある八蔵、年老いた母、主人の嫡男与之助などの人物を
  見事に語り分けて物語りしていきます。
  与之助の兄、眼病を患ったその頭の美しいこと。
  今回は住大夫さんの引退公演と言うことで、
  パンフレットは特集が組まれ、付録に住大夫さんのグラビアがセットされました。
  68年の長きにわたる大夫としてのお勤め、本当にお疲れ様でした。
  わずかな舞台しか拝見できませんでしたが、それでも、生で鑑賞できたこと、
  ありがたく感謝したいと思います。
  この五月の舞台は主演者一同で住大夫さんを慕い、尊敬し、
  見事な引退公演にしてお送りしようという心が詰まっているようでした。

 *茶道美術の玉手箱
  開館50周年記念 畠山記念館名品展  畠山記念館
  この時のことは先に記事にしましたので、
  こちらをご覧下さい。
  
 *日本絵画の魅惑 出光美術館
  前期、後期とも鑑賞できたことは幸運でした。
  この名品の数々が全て出光所蔵品というコレクションのすばらしさに
  改めて敬服しました。
  日本美術絵画の変遷を辿る歴史の川に流されて
  耽美な自然を崇め、共に生きて自らの生命の光を
  画面に注ぎ、静かに次の人々へ襷を手渡してきた、
  日本絵画の旅をするようです。
  その側には日々の営みを共に暮らしてきた工芸品たちが
  脇を支えます。
  このバランスのよい展示は見る側に心地よいリズムとなって
  調和に溶け込む豊かな時を過ごすことになるのです。
  絵巻、仏画、室町水墨画、室町やまと屏風
  風俗画、浮世絵、文人画、琳派、狩野派と長谷川等伯、
  仙ガイというジャンルからの名品がずらり。
  出光の所蔵の奥深さと名品の質の良さに静かな
  感動の波が押し寄せてきます。
  次回は没後90年の鉄斎。濃厚な鉄斎ワールドを楽しみにします。



 ということで、おかげさまで充実の五月を過ごすことができました。
 行きたかった展覧も数々あれど、日常と優先順位の葛藤で
 なかなか回りきれるものではありませんが、
 時を見つけてまたふらり出かけたいと願っています。



あべまつ行脚開設3000日

$
0
0
 
 今日でこのgooブログ開設3000日という記念日だそうです。
 本来、あまり数字に頓着しないのですが、
 切りの良い数字に気をよくしております。
 これもグダグダと呑気なことを連ねていても
 おつきあい下さる方がいらっしゃるというありがたい
 存在のおかげです。
 この場をお借りしてお礼申し上げます。
 
 とはいえ、読者のためにはほとんどなっておらず、
 唯我独尊我が道を行くので、ご迷惑なことと思いますが
 これが独り言を通せるgooブログの特典ということで
 スタイルに変化が生まれないというあきらめを持って
 おつきあい下されば幸甚です。

 好きなことは続くのだと
 我ながら感心しております。
 また3001日目からもよろしくお願い申し上げます。

 あべまつ


東京国立博物館 東洋館 (6月15日)

$
0
0
 今日は東京国立博物館で
 念願の「台北國立故宮博物院 神品至宝展」
 開催のオープニングセレモニー・内覧会が無事に開催されて
 安堵している方々も沢山おられることでしょう。
 直前の國立表記問題で大慌ての関係者皆様の
 ご苦労に敬意を表します。

 そこで、先日東博東洋館で故宮展にふさわしい
 逸品の展示をみてきましたので、
 開催記念にご紹介しようと思います。
 
 東洋館がリニューアルされて早一年が経過しましたが、
 やはり時々見ておかねばならないと再確認します。

 いつもならば1階の仏像から巡り,順々に階を進めていくのですが、
 今回は5階に上がり、
 中国関連に重点を置いて下っていくことにしました。

 朝鮮陶磁器の展示には
 愛らしい水滴が並んでつい、頬が緩みます。



 次に現れたのは、
 中国のカラフルなガラス作品。
 西洋のガラスとは全く違って不透明でまるで玉です。


 完璧と言う言葉が生まれた中国ならではの
 玉の芸術品。
 これがあの故宮博物院所蔵のお宝、
 白菜と豚の角煮、いや、
 肉形石、の兄弟です。
 ザクロは瑪瑙石榴 鯉の登竜門のようなものは
 碧白玉双鯉花器。
 石の材質をとことん追求した作品です。






 
 また、中国絵画コーナーでは
 一六羅漢、五百羅漢像の異形が立ち並びました。
 そのうちの五幅はベルリンに分かれてしまっているとか。
 (*注 この展示は15日で終了して展示替えしています)











 その下に降りると、
 感激の青磁の美しい姿が飛び込んできました。
 「日本人が愛した官窯青磁」の特集でした。
 川端康成旧蔵品が二点もあったことに驚きました。



 作品リストはこちら




 
 壊れた茶碗を返したらこれを再現することはできないから
 ホッチキスして返されたという三井殿所有の有名なお茶碗
 銘 馬蝗絆








 そしてまた珍しい刺繍で表された刺繍九羊啓泰図。



 その横には緻密な刺繍の経文。
 仏説無量寿仏経刺繍





 どんな視力の持ち主がこれを作成したのでしょう?


 そういえば、芸術新潮の2007年1月号はこの
 台北國立故宮博物院のリニューアル特集号でした。



 世界で70点あまりしかない汝窯の作品がこちらの
 故宮には21点所蔵されていて、オープン記念には
 全点展示されたという記事に悲鳴をあげたくなりました。
 私が行ったのはそれよりもずっと前で、
 1996年頃だったかと思います。
 汝窯が3点、美しく並んでいたのを今でも
 ぞっとしながら思い出します。

 大阪東洋陶磁美術館にも一点所蔵されていますが、
 館長を長年勤められた伊藤郁太郎氏も比較にならないと
 故宮所蔵の水仙盆を絶賛しています。
 もはや磁器というよりも玉のような
 一点の曇りもなく、つるりとした気品ある肌質に
 うっとりするしかないのでした。

 絵画や書もなにやら日本にはない、独特な空気感と
 色使い、線の神経質なほどの描き込みや
 見たこともない景色にどうそこに向き合えばよいのか
 うろたえるほどの別世界宇宙観に呆然としました。

 当時よりはもう少し中国絵画を見てきましたが、
 やはり、中国の土地、自然界、そういったものが
 近くに感じていないとなかなか距離が縮まるものではないと
 果てしなく手が届かないものと感じてしまいます。

 なにはともあれ、無事開催される運びとなった
 「台北 國立故宮博物院 神品至宝展」
 実物を目の前にして
 もう一度その突き抜けた何かを確認してたいと
 切望しているところです。
 
 官窯青磁関連記事として、トーハクブログご紹介します。
 こちら

 平成館の特別展と共に、ぜひ、東洋館を見学されますことを
 おすすめしたいと思います。
 

東京国立博物館 本館 (6月15日)

$
0
0
 
 東洋館を訪ねたら、やはり本館をチェックしておかねばなりません。
 二階の縄文土器から見て回るのがいつものコースです。
 
 毎回記事に仕切れないほどの作品群に
 ひたすら感心しています。
 国宝室には、法華経、久能寺経 信解品(しんげぽん)
 平安期の装飾経のなかでも美麗かつ美術的歴史的価値のあるものだそうです。
 (7月6日までの展示)
 仏教の美術で、身体が微妙に斜めになっている菩薩立像がありました。
 平等院の飛天たちを彷彿させてくれます。
 (6月15日までの展示)

 宮廷の美術では色の鮮やかな(6月15日までの展示)
 「たけくらべ草紙」
 歌合わせの様子が描かれていて、奈良絵本と呼ばれる冊子本を
 巻物に改めたものだそうです。




 禅と水墨画の展示には(6月15日までの展示)
 眼力あふれる一休和尚像がみえました。



 その中で南画系のような不思議な二幅がありました。
  花鳥図 石樵昌安筆



 茶の美術には夏の茶器が並びました。(8月3日までの展示)
  青井戸茶碗 銘 土岐井戸



  瀬戸唐津茶碗


  楽しい向付5皿 古染付向付 中国景徳鎮窯 明時代
  こちらは横河民輔コレクションから




 屏風と襖絵展示には(6月29日までの展示)
 長谷川等伯の嫡男,久蔵の作
 大原御幸図屏風 
 平家物語から取材した建礼門院が平家一門の菩提を
 弔う大原に後白河方法皇がお忍びで訪ねる場面。





 真ん中には 岡本秋輝筆による
 四季花鳥図屏風




 最後に御所車の華やかな屏風絵が現れて感嘆しました。
 私が学んでいるいけばな草月流では大作によく御所車を使います。
 その姿と重なってとても興味深いものでした。
 花車図屏風 作者不詳









 暮らしの調度には(6月15日までの展示)
 季節にあわせた花などをあしらったものが並びます。

 瓢形酒入 船田一琴作
 幕末の装剣名工後藤一乗の弟子で、一乗派の名工と
 云われています。




 煙管の姿もとても斬新です。



 書画の展開では
 桃山から続く江戸時代の絵画が並びます。(6月29日までの展示)

 四季花鳥画帖 増山雪園筆
 この画帖の丁寧な描きに魅せられました。












 また、土方稲嶺筆による三幅
 寿老、牡丹に猫、芙蓉に猫図はにゃんともな空気に満ちていました。







 珍しい作品、高橋草坪筆の水墨画にも引きつけられました。


  
 能と歌舞伎の展示には舞楽の場面を描いた絵巻が展示してありました。
 (6月15日までの展示)
 絵師は狩野洞春。鮮やかに可憐に描かれていました。




 衣装の展示には毎回目を見張るものがあるのですが、
 今回もどうやってできあがったのか、
 その工程に頭を抱えます。

 打掛 鼠地唐織花文編目繋八橋胡蝶模様
 ねすみじからおりはなもんあみめつなぎやつはしこちょうもよう
 読むだけでも大変です。


 (6月15日までの展示)

 浮世絵には夏らしい魚づくしが見えました。
 (6月29日までの展示)
 広重の魚づくし 鯵車蝦



 繊細な蝶の図は窪俊満の作
 群蝶画譜


 
 一階では親と子のギャラリーとして
 「仏像のみかた」という企画展が始まっていました。
 (8月31日までの展示)
 夏休みの課題として取り組んで中身の濃い宿題ができますように。
 とはいえ、大人ももちろんぐっと心がつかまれます。
 美しい姿の仏様、千住観音様の持っているもの、
 愛嬌あふれる十二神将たち、
 様々な仏像の巧みな姿に改めてその技量に感服するのです。

















 一階のアイヌ関連と近代絵画、工芸の展示室が
 リニューアルされていました。



 関連記事がトーハクブログに記載されています。こちら
 天井からの光が柔らかく届き、展示物をより一層
 見やすく鑑賞することができます。
 明治期の超絶技巧、その流もこちらで確認できます。












 
 平成館での特別展だけで見て帰るのではとてももったいないのですが、
 これは一日では見きれないので、
 気力体力が充実しているときを見計らって一日中かけてみるか、
 小刻みに鑑賞するか、ともかく展覧会の何十倍もつまっている
 トーハクなのでした。
 展示替えも小刻みにあるので、ご注意下さい。

今回もたっぷり堪能することができました。年間パスポートも無事継続してきました。

台北國立故宮博物院 神品至宝展 翠玉白菜 ・東京国立博物館

$
0
0
 



 門外不出の「白菜」奇跡の出品!!
 皇帝の至宝 186件、台北から初来日。

 この台北故宮展覧会を心待ちにしていました。
 その中の「白菜」は現地でも人気スターで
 行列順番で見ることとなっているようです。

 仕事がらみで台湾に行った20年前に
 ありがたく故宮博物院にいくことが叶って、
 とても興奮して見てきたことが思い出されます。

 当時はまだ今ほど「白菜」並んで見るほどではなかったのですが、
 それでも擬態の豚の角煮「肉形石」と並んで人気の作品でした。
 それよりも汝窯の優品を見ることができた感激が
 大きかったのでした。

 今回、その「白菜」が初来日でエライいことになりました。
 この至宝展示ために東博は本館特別5室を一部屋つかって
 厳重な鑑賞現場を作りました。
 レオナルド・ダ・ヴィンチ展の「受胎告知」一点だけの展示は
 この特別第5室でした。
 そんなに大変な事になるとは思ってもみなかったのですが、
 開催されると同時に本館横に張り巡らされたテントに長蛇の列。
 Twitterアプリで現場の状況をつかめる世の中になって
 便利になりましたが、それにしても
 マックスで「240分」という待ち時間を見て仰天しました。
 ツイートで台湾に行ける時間だわ、とのコメントをみつけて苦笑いでした。

 さて、どうしましょうと悩んだ結果、
 最終日の7日まで休まずに夜8時まで開館しているということ、
 これは月曜日の夕方が一番の穴場だと確信して
 もし、長蛇の列で「白菜」の持久戦を諦めたとしても、
 平成館の展示をしっかり見ようと気合いを入れて行ってきました。

 6月30日、東博に着いたのが3時半頃。
 本館の周りにテントが張り巡らされ、
 途中には水分補給のテーブルも設置されて万全の取り組みです。
 待ち時間は「120」分という看板。
 平成館のほうに伸びるテントの中に粛々と待つ人の行列が見えました。
 むむ、これは「白菜」は諦めようと思って平成館の至宝に
 たっぷり時間をかけられると思ったのでした。
 平成館を出てきたのが5時過ぎ。
 テントはどうなったかと確認すると、ややや、これは
 短気の私でも我慢できそうな60分の看板が。
 こんな事もあろうかと、晩ご飯をカレーに仕込んできたので、
 ギリギリ7時すぎに帰宅してもなんとかなりそう。
 息子の帰りはもっと遅いので、なんとかなる、
 そんな胸算用をしながら、列に加わることにしました。

 しばらくで本館から館内に入ることができて、
 これは嬉しいじゃないかと中に入ると、
 なんと、ここでも行列整理の一室が設けられ、
 忍耐と持久戦力のある人々の真面目さに感動しながら、
 色々なおしゃべりが聞こえてくる中
 至宝のビデオを眺めたり、時々現場の方がアナウンスされることを
 聞いたりして順番を待つのでした。

 さてさて、いざ、5室に入りましたら、
 またまた行列の渦が待ち構えています。

 室内は暗くなり、壁面に大きめのスクリーンに「白菜」のビデオが
 流れています。
 5室の前方右手に黒い円柱の壁が見えます。
 窓が開けられ、中の様子が外からも覗けます。
 あぁ、今入った人たちはどのくらいの人数で
 どのくらい楽しませてもらえるか、外から確認できる仕組みです。
 円柱の展示ブースの中に20人程度の人が入って、
 まずは「白菜」のすぐおそばで鑑賞して2〜3分たったらその周りに
 まわってしばらく1メートル至近でもう一度鑑賞することができるようです。
 
 テーマパーク化しているとはいえ、
 うまく大勢の人を裁く工夫がされていることに感心しました。

 順番が迫ってくる、それだけでも胸が高鳴ります。
 そりゃ、既に待ちぼうけ一時間以上経過していますから。
 さ、いよいよ対面です。
 至近距離で張り付いて裏側からもしっかり凝視。
 白菜の葉脈も透ける肌合いも、
 緑に光る翡翠の輝きも鮮やかなこと。
 現地よりも照明の所為でしょうか、とてもまぶしく映りました。

 あっという間の約一時間。
 諦めないで見た、持久戦に参加できたことの
 達成感みたいなものが押し寄せてきました。

 時計は6時半を回っています。
 シンデレラ時間のように、
 慌てて日常へ戻っていったのでした。


  芸術新潮2007年1月号台北故宮博物院の秘密 誌面から
 
 そして、この翡翠玉のお話を少し。

 *翠玉白菜
 清(19世紀)高さ 18,7センチ
 白と緑の翡翠を材料に、
 清らかさの象徴である白菜と多産のあらわすキリギリス、イナゴを彫刻、
 光緒帝の墐妃の嫁入り道具とされています。

 というプロフィールをさっと流すだけでは
 きっと西太后が存命中の恐ろしい時代、毒殺やら横行していた怖い時代、
 選ばれた妃となってもけっして幸せな安泰の時を過ごしていたとは思えないのです。
 光緒帝は西太后の妹の息子、続く戦争などの困難時流に振り回され、
 西太后にものをいえない立場となっても
 国を立て直そうという意識もあった上で、墐妃を娶るのです。
 それも、清らかで多産であるようにとの願いが
 光緒帝妃としてどれだけ重たい任務となっただろうかと、
 背筋がぞっとするのでした。
 それだけに、白と緑のコントラストが美しく、
 玉作品としての最高峰、といわれても、壊れて処刑が待っているのではないかとか、
 ハラハラする思いも巡ってきます。
 西太后の癇癪は信長に似ているようで恐ろしい限りです。
 この玉を支えている細工物にも注目します。
 日本での盆栽のように、「盆景」と呼ばれるものだと思います。
 嫁入り道具の格付けとしても素晴らしい盆となっています。
 
 対する、角煮の「肉形石」の台は黄金に輝く波の形となっています。
 石を支える盆の形にも注目すると面白いです。

 さてさて、本日七夕、「白菜」の見納めのラストデイです。
 私はご縁あって、20年前台湾に行った知人達と邂逅の時をご一緒することとなりました。
 なんとも巡り合わせという意味で
 不思議な七夕の夜となりそうです。

 お楽しみになれなかった方はぜひ、台湾へ。
 また、九州国立博物館には「白菜」にかわって
 「肉形石」角煮がきてくれるそうです。
 まだまだもの凄いお宝が東博で開催中です。
 本当にもの凄いお宝なので、ぜひぜひお出かけしてみて下さい。
 本館、東洋館も気合い入っています。
 「白菜」がお帰りにあった後でも
 9月15日まで、神品至宝が鑑賞できます。

6月のアート鑑賞記録

$
0
0
 
  *アート好きのためのアート好きによる図録放出会 
   東北芸術大学信濃町学舎  6月1日

  詳しいレポがこちらに。アートブロガーのTakさんのブログです。
  この図録放出会には初回からお邪魔しています。
  今回も図録バッグを使っていない布を使って拙作をほんの少し提供のお手伝いしてきました。
  図録の保管場所に悩んでいながらもまたまたお手頃価格にほだされて
  供出してもまた仕入れてしまう、というスパイラルにはまるわけでした。
  その活動をささえる情熱と、活動と、その後、震災復興へ差し出す精神と
  すべてにおいて喜べる形が現実となった希有な活動で、
  ささやかながらも続けて応援したいと思っています。







 今回ゲットした図録はこれらで、大満足です。

 *草月いけばな展 みどりの瞬間 新宿高島屋 6月5日〜10日
  我が先生も出品されました。
  会場内は若葉の瑞々しい緑色に染められ、
  渓流に散歩しに出かけたような、さわやかな気持ちになりました。
  与えられた課題に果敢かつ自由に挑戦した作品群は
  植物を使ったアート造形表現です。
  いけばなの家元、諸先輩達の情熱にはいつも敬服するばかりです。


 
 *オランダハーグ派近代自然主義絵画の成立展 損保ジャパン東郷青児美術館
  4月19日〜6月29日
  オランダの絵画はフェルメールで終わっているのではなくて、
  続くゴッホへの道のりが継承されていました。
  そんなことを知らされた、ハーグ派という存在。
  フランスのバルビゾン派の影響を受けながら
  豊かな自然と海と風の近代自然主義の成立を
  高層損保ビルから見てきました。
  ゴッホの「ガシェ博士」
  モンドリアンの風景画、「夕暮れの風車」にとてもひかれました。
  不勉強だったので、図録を求めてきました。
  ついでに、3Dで生まれたゴッホ消しゴムもついつい買ってしまったのでした。





  
 *超絶技巧!明治工芸の粋 三井記念美術館
  4月19日〜7月13日
  この展覧のために開かれたトークショーに参加してきたのですが、
  本展を見るのが遅くなってしまいました。
  大体どんな作品群が登場するのか、トークショーでスライド画像で
  紹介されていたので、想像できていましたが、
  図版や画像で納得している場合ではありません。
  こういうものこそ、しっかり現物、本物を目の前にしないと、
  超絶の息づかいが伝わらないこと実感しました。
  本物を写し取る、その技巧も果てしないのですが、
  そのものと対峙する情熱と執念に胸が焦げる思いがします。
  7月13日まで、まだの方はぜひに。

 *第43回伝統工芸日本金工展 石洞美術館
  5月3日〜6月15日
  草月の教室が終わってから、石洞美術館を知らない方をご案内しながら
  北千住からバスで行ってきました。
  京成の千住大橋駅前がすっかり開発されて驚く激変ぶりでした。
  駅から寺院のような屋根をもつ建物なので,すぐにわかると思います。
  ここで、伝統工芸、日本金工展が開催中でした。
  金属から生まれた様々な技法での造形に感嘆してきました。
  まるで室芸のようであったり、陶芸のようであったり、
  小さな帯留めサイズのものから、茶釜や、大きな花器まで
  落ち着いた雰囲気の中、じっくり鑑賞できました。
  館に併設されたミニカフェで一服してまた
  バスで北千住に戻ったのでした。
  ここはちょっとしたご近所美術館の穴場です。
  夏には古伊万里が並ぶそうで、楽しみです。

 *4METAL 新生堂 5月28日〜6月13日
  金工展を見た、石洞美術館で以前の展示でたまたま知った作家さん、
  吉田康平さんが青山表参道の
  新生堂で金工作家4人での展覧があると伺って行ってきました。
  どこでどんなご縁が繋がるか不思議なものですが、
  Twitterというツールでのご縁です。
  こちらの新生堂さんからみの作家さんとの出会いがよくあるのも面白いことです。
  吉田康平さんはメタリックな歯車滑車などを使う仕掛けがお得意。
  ギィーと動き出す音もわくわくします。
  石洞美術館で初めて見た作品も金沢のからくり人形のような
  可愛らしい中にもムーブメントが見える作品だった様に思います。
  江戸川乱歩のパノラマ島のタイトルが印象的でした。
  仕掛け人形が金属になったような世界観です。
  今後のご活躍、楽しみにしています!
  ようやくご本人ともお目にかかれてウキウキしました。
  他、本郷真也さんともお目にかかり、楽しくお話ししました。
  本郷さんは日本の仏像系の表現で、迫力ある作品でした。
  
 *カラフル 根津美術館 5月31日〜7月13日
  東京国立博物館で開催されている、故宮國立博物院展と平行して
  中国の明清工芸の精華、カラフル というタイトルの展覧会が
  根津美術館で企画されています。
  さすがの根津、というラインナップでした。
  堆朱の緻密な彫りは目がつぶれそうでしたし、
  青花の透明感ある陶器は清々しく、大皿の迫力も、小さな茶碗も
  とても透明感あるものでした。
  白、赤、青、黄色、緑、等々じつに色鮮やかな、
  カラフルな会場となっていました。
  それと、交趾、染付、などの小さな香合の集合ケースはとても愛らしい作品群でした。
  展示室2には中国絵画の優品ずらり。
  2階の展示室5でも明清時代の絵巻が展示されて、
  こちらも見応えありました。
  絵巻という形はなんとも魅力ある形状です。
  展示室6には鳴神月の茶、として、
  雷の鳴り響く季節に合わせた茶道具が並びました。
  雨や、舟、伏見天皇の様々な雨を歌った広沢切が茶掛けとなっているところも
  魅力のひとつでした。
  時間があまりなかったのですが、庭園もちらりお邪魔してきました。






 茶室前の姫クチナシが可憐に咲いていました。

 *縹渺 HYOH BYOH スパイラルガーデン
  6月6日〜15日
  根津美術館の帰りに金工の吉田さんがスパイラル、面白いのやってますよ、
  とのことでしたので、電車に乗る前に行ってきました。
  が、本当に面白く、金工のテイストもあり、楽しく拝見しました。
  これは、春のアートフェアにも参加した作家さん達で、
  超絶技巧の潮流があり,けっして日本の芸術技巧は廃れないと
  信じたのでした。
  虫の自在を作る、満田晴穂さんの作品もここで再会したのでした。
  また、超絶技巧の三井記念美術館の放送をしたNHK日曜美術館にも
  お出になった、前原冬樹さんのあり得ない腕、しびれました。
  ものつくりをする人の突き抜け観はやはり尋常ではないのだと尊敬畏怖します。
  超絶技巧のトークで山下先生が前原氏の珍しい経歴とその風貌をお話しされていたことを
  思い出しながら、肩から外れた片腕に見惚れたのでした。

 *東京国立博物館 東洋館、本館
  これについてはブログ記事にしました。
  東洋館はこちら

  本館はこちら

  ずっと超絶技巧の流が中国から続いて、今も尚、日本のどこかで
  生息している、うれしい再発見となりました。

 *徒然草 サントリー美術館 6月11日〜7月21日
  会員の継続をかねて、早く行きたかったのですが、
  ようやく徒然草、吉田兼好に行ってきました。
  と、吉田兼好を書きましたが、どうも吉田さんではないらしいとのこと。
  俗名、卜部兼好(うらべかねよし)さんという方なのだそうです。
  やんごとなき二条天皇にお仕えし、有望視されていても
  30歳あたりで謎な出家をしてしまいます。
  それであの俯瞰した達観した名文調子が生まれたようです。
  改めてその名文達にお目にかかると、
  高校生?学生時代?に触れた
  つらつら硯にむかひて的授業的感想は記憶喪失で、
  実はとても深く、面白く、諧謔見あふれて愉快なきついご託宣です。
  乾山の兼好法師像に地雷を踏んでしまったのですが、
  あの兼好さん、大丈夫か?と笑いをこらえながら、
  後から現れる海北友松の息子、友雪の力作絵巻に感嘆しました。
  友雪の個展的な展示会という側面もあります。
  帰路にはショップに並んだ徒然草を電車内で読んでいるという始末。
  行き詰まり感のある日々にちょっと休憩、兼好法師のお導きに
  胸がスカッとすること請け合いです。
  7月21日までの開催で案外早い会期、お気をつけ下さい。
  
 *故宮國立博物院展 東京国立博物館
  翡翠の白菜鑑賞記はブログ記事にしましたので、ご参照下さい。
  こちら
  ともかくは、もの凄い熱狂の2週間でした。

 他、女子高校の華道部のお手伝い、総合学習いけばな体験授業コーチや
 飯能窯で花器作陶体験など、いけばな関連が多かった一月でした。
 飯能窯での画像をのせておきます。
 拙作はどんな具合に焼き上がるのか、今から楽しみです。











 7月は大型展覧会が次々と開催されます。
 台風や、梅雨のじめじめ感に悩まされますが、
 少しでも気分が晴れる作品とに巡り会えますように。
  

現代美術のハードコアは実は世界の宝である展 ・東京国立近代美術館

$
0
0
 実はこの派手派手しいチラシに目くらましをくらっていまして、
 一体何が起こったのかと
 見に行くにはこちらのコンディションを整えなければならないと
 気合いを入れていきました。

 その前に、近美の常設展を見ておかなければ、
 きっと頭の中の混乱が予想つくのです。
 近美の常設は幅広く、
 速水御舟、鏑木清方、岸田劉生、河野通勢、古賀春江、北脇昇、岩田専太郎、恩地孝四郎、
 丸木位里、水越松南、河原温、荒川修作、草間弥生、山下菊二、
 中村宏、杉本博司、・・・・
 私のご贔屓筋が乱立しておたおたしてしまいます。
 こういうこともあって、
 最近は企画展を見る前に常設展を鑑賞することにしています。
 受付カウンターにその旨お願いすれば、なんなく常設へ向かうことができます。
 企画展の残像を背負って常設を見るととてもつらいことになるのです。

 じりじりと焼け付く竹橋の太陽は
 入り口にに設置した巨大なオブジェを日焼けさせるのではないかと危惧します。
 白い肌で、ややこしく屈折していることに驚愕しながら、ハードコア展に突入します。
 巨大女性像は マーク・クイン 「神話(スフィンクス)」





 このコレクションは
 台湾資本の電子部品メーカー、ヤゲオ・コーポレーションのCEOである、
 ピエール・チェン氏のもので、今や世界トップ10入りしている
 著名なコレクターなのだそうです。
 台北「國立」故宮博物院のお宝が東博で展覧中ですが、
 アジア圏、台湾の現代アートコレクションを見る機会は初めての展覧でした。
 今年はちょっとした台湾ブームなのかも。

 中へ入っていきなり、マン・レイ、リキテンスタイン、ウォーホル!!
 近美の企画展会場の特徴である長い廊下状の展示コーナーには
 中国の近代、現代作家作品がずらり。
 こちらの作品群は東洋絵画のDNAがあって親しみを持って見ることができました。
 もう少し、中国現代作家のこと知るチャンスがほしいとも思いました。

 長い展示が切れて景色が変わると
 マーク・ロスコの黄色系暖色の作品、
 その奥に杉本博氏の海景を思う、二作品が
 「最後の晩餐」の長大なモノクロを挟みます。
 やられた感に浸りながら、このコレクションに寒気立ちました。
 振り返るとゲルハルト・リヒターの一瞬ずらした危険な肖像画が並びます。
 「毛沢東」はちょっとしたショックです。
 リヒター作品はなんと6点も出品されていました。
  
 この展覧は、今、あなたがあふれる財力があったならば、
 世界のどんな芸術作品をコレクションしますか?という
 あり得ない妄想も伏線に忍ばせてくれます。

 そして、次の間に入ってまたくらっとしました。
 去年訃報がニュースとなった、ザオ・ウーキーの作品が
 4点も並んで囲まれます。
 色のにじみに儚いたゆたう生命を感じる、日本のもののあはれ、それにも
 通じるような墨色をカラープリントしたらこんな風に見えるのではないかと思います。
 この日丁度、ブリジストン美術館所蔵のウーキー作を見てきたばかりでした。

 次に現れたのは グルスキー作品。
 去年、国立新美術館で初めてグルスキー展をみて
 写真の持つ破壊的作戦に感嘆したのでした。
 以来、集合体マッスを見ると、すぐにグルスキーだと変換してしまいます。
 彼のどうしようもない写真力にはテンションが上がります。
  
 キャンバスに藁束が貼り付けられた4メートルもの作品、
 アンゼルム・キーファーの「君の金色の髪マルガレーテ」
 金髪を束にしたものがバラバラ点在しているのは
 なんだか不穏です。1945年生まれの作家。

 そして、ツァイ・グオチャンの「葉公好龍」
 火薬を仕込んでその焼けた後を作品にする日本でも著名な作家作品を
 初めて見ることができました。
 火薬がバチバチ音を立てて焼け跡を残した音も残されているようです。
 そしてそして、
 なんと、フランシス・ベーコンの3連作が!
 「ルシアン・フロイドの肖像のための三習作」
 「教皇のための習作 Ⅵ」
 
 デヴィッド・ホックニーの「学位のための人物画」
 
 ラストの展示には人形造形、チラシに掲載された金色のミニチュア、
 なぜか、川端康成に捧ぐという副題が付いた
 「名人」4連作は碁盤に碁石を拡大した無駄のないクリアな線と色で 
 表現していて、とても静かな印象を受けました。
 ホセ・マリア・カーノによる、小泉純一郎、マドンナの肖像。

 意表をつかれ、鳩が豆鉄砲状態で出たのでした。
 出口サイドに
 妄想コレクションゲームが設置されていて、
 50億円の予算でお好きに購入してみて下さいと投げかけられたので、
 恥ずかしながら挑んでみましたら、
 1億4286万円不足と云われました。
 ロスコーを入れたのが敗因だったかもしれません。

 とはいえ、ヤゲオ財団コレクション、これはショッキングなコレクションでした。

 後もう少しの会期、あのチラシにだまされてはいけないと
 まだ未見の方にはぜひにもお勧めしたい展覧です。
 遅まきながら、あのチカチカは鑑賞後の頭の中を表現したのかも?と思いついたこところです。

 サイトはこちら  

日本の美を極める ・ホテルオークラ東京

$
0
0
 
 先日、夏休み中の友と連れだって久しぶりにホテルオークラに行ってきました。
 丁度「日本の美を極める」展の開催中、ランチも含めてホテルでの
 ゆったりした時間を楽しんできました。







 お盆の最中ではありましたが、沢山のお客さんが来館されていて
 ランチも随分待つこととなりましたが、
 ホテルでの待ち時間はラウンジでおしゃべりしていればいいので苦になりません。
 
 鑑賞券とランチのセットで少々優雅な気分を楽しみました。
 主婦には上げ膳据え膳が一番のご褒美です。

 ダイニングレストラン、カメリアでカジュアルなフレンチを頂きました。
 もう少し気張れば、ゴージャスなランチが楽しめます。
 来年はそれにチャレンジしてもいいかな?

 ホテルニューオータニの美術館が閉館してしまったので、
 ホテルという環境の元、アート鑑賞できる少ないところとなってしまいました。
 大倉集古館は改装工事のため4年間の休館となっていて、
 あの中華飯店風な空間の保存と改修が待たれます。

 ゆったりお腹も満たされたので、会場に入ってみました。

 清々しいホテルマンのサービスを受けながら鑑賞できるのは気持ちのよいものです。

 展覧会は
 第20回 記念特別展 秘蔵の名品
 アートコレクション展 日本の美を極める 

 というタイトルです。
 毎年開催されているアートコレクション展、初めて伺いました。 
 四季、花鳥、風情という章立ての中、
 日本画の名品が、古くは応挙から、新しくは中島千波まで。
 市川在住の友と一緒だったので、東山魁夷の作は親しみ深いものでした。
 大観の「夜桜」は大倉集古館の名品として有名ですが
 六曲一双の屏風を真っ直ぐフラットにしないで、自立した屏風の形で展示されていたのは
 壮観でした。とかく左隻の方が代表に
 取り上げられますが、
 右隻の静けさと併せて見ると一層左隻の華やかさが強調されるように思いました。

 前田青邨の「みやまの四季」この温かな梅の木に集まる鳥たちの姿、
 一本の木が四季を表している華やかさと移ろいが凝縮されていました。

 芸術大学美術館で高橋由一の展覧でみた「墨水桜花輝耀の景」と再会です。
 広重風に桜の枝を手前にクローズアップし、遠く隅田川を描くものですが、
 桜の花びらの油彩が放つ生々しさに息をのむのです。

 上村松園を4点見ることができました。
 松篁、淳之の作品も展示されています。
 山種コレクションで学んだ世代の画家達の競演でもあります。
 竹内栖鳳の屏風、「河畔群鷺」の静かな緊張感を金地の屏風仕立てにする
 そのかっこよさに痺れました。
 その栖鳳の作品を人気投票に一票入れてきました。

 岡本秋暉「花卉孔雀図」孔雀の羽の描き込みが流れる波頭とからんで
 絢爛な中にも濃厚な陶酔がありました。
 
 清方の女性の姿はどんな作品にもしっとりとした情感があります。
 島成園の片肌を見せた女性図は貼り交ぜられた色紙の図が
 伊勢物語か、源氏のようで一層艶めかしい一場面となっていました。
 
 大智勝観「梅雨あけ」この作品を初めて見ましたが、とても静謐で
 ドクダミの群生や、竹の若々しい葉などすぐ側にあるものがとても
 品ある質に浄化されて見えました。

 他にも高山辰雄、奥田元宋、加山又造、川合玉堂、橋本関雪、木島桜谷、
 伊東深水、小倉遊亀、などなど近代日本画壇が続々。
 
 小冊子となった図録がコンパクトでお値段も300円という便利なものでした。


 この展覧は今月末31日まで。
 純益は日本赤十字社を通して社会貢献されるそうです。
 そして、今年20回を迎えたということ、このままずっと夏のイベントとして
 継続されていくことを願っています。

 都会の喧噪から離れて、ちょっとしたオアシスタイム、
 良い時間を過ごすことができました。
 来年も又、楽しみとなりました。 

7月のアート鑑賞記録 

$
0
0
 

 8月も終わる頃、今更ながら、7月の記録メモです。

 鉄斎展 出光美術館
  没後90年を記念して、鉄斎の若き日の作品から最晩年の作品まで一望することができました。
  それにしても80才を越えてからの迫力ある画面に脱帽するばかりでした。
  何にもとらわれない、心象絵画はもはや前衛絵画。
  最晩年の蓬莱山図の大迫力には恐れ入りました。
  文人画が生き残るには厳しい時代だったように思いますが、
  孤高の存在感。
  そういえば、鉄斎の印章コレクションもなかなかのものだったことを
  思い出し、それらもあればよかったのですが、
  翡翠の瓢箪をあしらった可憐な筆洗や、やきものなどが
  花を添えていました。
  
 ヴァロットン展 三菱一合館美術館
  パリで31万人もの人が熱狂したという、ヴァロットン展に行ってきました。
  版画はここの三菱で、もしくは近代西洋美術館で、見たことがあったかもしれませんが、
  日本初の回顧展、とあるだけに、沢山の油彩画が展示されていました。
  プロテスタントの真面目な青年がスイスからパリに来て
  その退廃の臭気にまみれていく様子が痛々しくも感じ取れます。
  彼もまた、浮世絵からの影響を受けたのだそうです。
  肉体から放たれる芳香は彼を虜にし、物語を作り、見る人にそのジャッジを迫ってくるようにも
  思え、まんまと罠にはまるような怪しさも感じました。
  同時に突然、静嘉堂の東洋陶磁コレクションから中国のやきものが
  展示されて驚きました。
  
 玉蟲敏子先生講座 ロンドンギャラリー
  友人を介して、有り難くも琳派の研究で著名な玉蟲先生の講演を
  拝聴してきました。
  来年、光悦寺400年の時を迎え、琳派の展覧会が目白押しとか。
  講義メモを放置したままでもったいないことですが、
  絵所土佐派が武士として但馬攻めで継承がたたれたあと、
  光悦、宗達が代表し、「みんなの大和絵」となった、
  というお話が印象的でした。
  ロンドンギャラリーという古美術品が並んだ環境で、
  実に優雅な講演会でした。
  せめて、写真だけでも。









 
 夢の超特急展 日本橋高島屋
  愚息が小さい頃、鉄男だった(今もですけれど)お陰で
  随分あちこちの鉄道博物館などを見学してきました。
  新幹線ゼロ系のラストランを大阪から姫路まで乗車してきたことも
  懐かしいことです。
  新幹線の生まれたころ、日本の経済発展めざましく、
  昭和の熱をリアル体験してきた私にも十分楽しめました。
  会場には模型展示があって、車両が動く様子を
  ちびっ子から熟練のおじさんまでの目を心を止めていました。
  なんでも熱を持ったコレクターの収集品は目を見張るものばかり。
  運転体験はすでに人気コーナーとなって列が伸びていました。
  物販の熱の入りように立ちくらみ。
  心強く振り切って、逃げ切ってきたのでした。笑!  









 高島屋幻想博物館 日本橋高島屋
  超特急の後に、美術画廊フロアーに立ち寄ってみましたら、
  丁度初日を迎えた「高島屋 幻想博物館」が始まったばかりでした。
  俄然わくわくしました。
  美術画廊X で展示されてきた作家作品が、新しくオープンした
  美術館のようにレイアウトされ、
  企画の幻想という怪しげなダウンライト色に染められ、
  魅力ある空間となっていました。
  会場にはお気に入り彫刻作家、大森暁生さんの姿も。
  コンパクト図録があったので、すかさず求めました。
  質の高い緊張感ある造形作品に惹かれました。
  気になった作家さんたち(敬称略)
  豊海健太、北川健次、青木美歌、小俣英彦、大森暁生、
  フジイフランソワ、森淳一、川端健太郎。
  古い博物館のかび臭い日の当たらない密室で
  いったい何が起こっているのか、そんな現場拝見体験のようでした。
  
 泥象 鈴木治の世界 東京ステーションギャラリー
  チラシのたたずまいと色に誘われ行ってきました。
  東京ステーションギャラリーの質感、壁の色、天井の高さ、
  外光を取り込んだ展示室もあったり、
  アトリエのような場面や、博物館のような閉塞感のある場面や、
  様々な景色とともに、鈴木治氏の作り出す土の世界を初めて体感しました。
  作品の年代を年譜代わりに展示して、会場出口には作陶現場の
  ビデオ30分あまり、がずっと映されていました。
  1960年代の圧倒的な造形も素晴らしいのですが、
  会場階下の煉瓦の壁に並んだベンガラ色シリーズも心奪われました。
  小さな手のひらサイズの作品群、「掌上泥象 百種」
  「掌上泥象 三十八景」のかわいらしさも忘れられません。
  土の質感の好きには、ため息ものでした。
  そして、今回年間会員に入ることにしました。
  特筆すべきはカードに自分の顔写真を添付することという条件が付いたことです。
  さまざまな美術館メンバー制が生まれてきましたが、
  ご本人認識を厳重にするようになってきたのだな、と感じ入ったところです。
  それにしても、企画が魅力的なところなので、
  これからも注目していきたい場所となりました。
  
 能面と能装束 三井記念美術館
  お能鑑賞がまだまだ足りない、お恥ずかしい身の上ではありますが、
  能面を見るだけでも吸い込まれそうな魔界的存在で、とても惹かれる世界です。
  どんな展示となっているのか、楽しみに行ってきました。
  入ってすぐに息をのみました。
  能面が透明なアクリル板にかけられて
  ケースの裏に回ると面の内側がしっかりと見ることができるのでした。
  入り口に向かって面がすらり。壮観です。
  面を掘った鑿の跡が目の前に現れて、作った人の息づかいまでが
  聞こえてきそうです。
  三井記念の開館時だったか、孫次郎の面の瞳は四角だということを学んで以来、
  面の瞳を確認することが楽しみとなりました。
  しかし、女性の情念が恨みと成り高じて般若となっていくとは
  本当に恐ろしいものですが、純粋の極みでもあるわけで、
  思い知らされただろう、殿方の救いの面なのかもしれません。
  展示は能装束にもおよび、ありえない織物に仰天するのでした。
  会期は9月21日まで。 

 ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展 世田谷美術館
  この展覧を去年から心待ちにしていました。
  砧公園近くにお住まいの旧知の方とご一緒してきました。
  印象派の巨匠達が日本の浮世絵コレクターであったり、
  アールヌーボー工芸が日本の絵画からヒントを得てきたり、
  吸収し、まばゆい光を放ってジャポニスムの作品群となって
  アメリカ、ボストン美術館に集められてきたことは
  もはや、奇跡としか云いようがないと既に心が高まっていくのでした。
  フェノロサの来日で、彼に岡倉天心が日本人を代表して日本の美を伝えていったという
  二人の巡り合わせの奇跡も含めて、ボストン美術館の存在自体が
  日本の美術館のように思えてなりません。
  高鳴る気持ちを抱いて展示室に入りますと、
  紹介作品の横には日本の影響されただろう、本歌的(元ネタ的)作品が
  横に紹介されています。
  そんな展示のされ方に、とても心が動かされました。
  こんなに日本の美術が海外で影響を与えてきたのかと、
  誇らしく、嬉しく、まぶしく、感動するものでした。
  油彩画は勿論、七宝、漆芸から、浮世絵、テーブルウェアなどなど、
  日本の美学があちこちで開花しているさまは
  本当に輝かしく喜びの声があふれてくるのでした。
  今回モネの「ラ・ジャポネーズ」の保存修復が終わっての
  世界初公開という展覧会の目玉となりましたが、
  思いの外大きな作品で、見上げて驚きました。
  ご一緒した方が以前ボストンで見ているそうで、
  あの鮮やかな赤の打ち掛けは、もう少し紫がかっていたという印象をお持ちでした。
  世田谷美術館の2階はいつもは小企画と常設展を開催していますが、
  今回は2階も使いきってボストンからのコレクション展です。
  当時、どれだけ日本の美術に憧れを持って画家達が、工芸作家達が
  今までにないものにチャレンジしてきたか、
  丁寧な展示と解説、ビデオも設置してあり、堪能できる展覧会でした。
  図録も詳細な分析が掲載されていて、影響がどういった所に
  見えているのかがよくわかるようになっています。
  モネが、いかに日本を愛していたか。
  9月15日まで。是非ともお勧めしたい展覧会です。
  巡回先は 京都市美術館 9月30日〜11月30日
       名古屋ボストン美術館 来年1月2日〜5月10日

 他、文芸同人誌のお手伝い、企業の華道部コーチ、友人店での花教室コーチ、
 術後14年目の検診、などなど。

 この暑い夏に活発な鑑賞に向かう気合いがなかなか入りませんが、
 秋に向けて、しっかり体力温存してあちこち動き回りに出かけたいものと
 思っています。みなさまも夏バテにご注意下さい。

鎌田あや展「いずれ、いずれ、あるところで」・ギャルリー東京ユマニテ

$
0
0
 
 今日で最終日となってしまった、
 鎌田あや展を京橋のギャルリー東京ユマニテ で見てきました。

 案内ハガキの画像からは、ガラス作家の繊細な表面を削った
 透明のなにか、オブジェを想像していましたが、
 なんと、古いガラス板を自ら探し手に入れたものに
 物語の文章のアルファベットをつらつら米粒以下の極小文字を刻んで
 それが繋がってひとつの絵となっているのでした。

 削られた物語のイメージが編み物のように
 椅子になったり、シダの葉っぱのようになったり、
 幾何学的なマークになったり、トルソーになったり。

 近づいてみても大きなガラス板にレース編みされたものが
 張り付いているかのようで、
 光莉を帯びると二重三重にずれてまた思惑ぶりなぶれが生まれます。

 本が好きで、椅子が好きという鎌田さん、
 案内状の裏にぼんやり文字が透けて見えたのですが、
 これを無理矢理はがすと印刷した日本語の回文のような
 延々と続くエッセイのような文字の連なりが見えます。
 
 一筋縄ではいかない、こだわりが
 ガラス板に透けて私に語りかけてきました。









 同時に、廃材オブジェを得意とする富田菜摘さんの
 雑誌の切り貼り人体が並びました。
 もう、身につまされる題材もあったりなのですが、
 その人の持っているキーワードが慈愛あふれた文字をひろって
 全体を包みます。
 仕事場でどんな雑誌が切り取られていくのか、興味津々です。







 京橋、今は工事中の明治屋の斜前のビルの地下ですが、
 隠れ家的、楽しい作品と遭遇できるところです。

 *写真はギャラリーの許可を頂戴して私がiPhoneで撮影したものです。

たまふりー佐々木誠の木彫展・ギャルリさわらび

$
0
0


 前回の佐々木誠さんの個展から
 わずか、三ヶ月での展覧開催に驚きます。

 夏の酷暑も終わり、秋の気配漂うなか、
 うっそうとした魔界の奥野ビル、そのなかの
 ギャルリさわらびにお邪魔してきました。

 展覧はじつは8月6日から開催されていたのですが、
 なにしろ暑い日々でしたので、外出をためらっていました。

 ぎりぎり会期末に間に合ってホッとしているところです。

 そして、佐々木さんはこれから
 「スサノヲの旅と精神」(仮)
 というタイトルをひっさげて足立市立美術館での展覧を控えています。
 会期は10月18日〜12月23日
 (JR足利駅、東武伊勢崎線足利駅、から徒歩7分)
 館林美術館へも車の方ならうまく回れそうです。
 
 足立市立美術館のサイトはこちらから。

 そして、さわらびでの個展は
 初見のものもあって、喜ばしい対面となりました。

 「たまふり」魂振り
 気を失った弱体を今ひとたび魂の営みの脈打を願って
 命を呼び起こしてくれる、そんな響きが
 木彫の鑿目からざわざわと震えてきます。

 奇しくもこの夏の天空はすさまじく、荒れ狂い、滂沱たる雨が
 日本中の深山を動かし、尊い命をも流し去っていきました。
 これからの時期も何が起こるかわかりません。

 日本という土地にすんでいる魔物たちを畏怖し、
 共存することを今一度考え直す必要がありそうです。

 その大地からの地響きと鑿目の震えの共鳴をこの目で
 確かめられたことの喜びは大きかったと、
 作品の残像から発せられる余韻に浸っています。

 なんと、今回は自画像に初対面しました。
 その日はご本人との対面は果たせませんでしたが、
 画廊主の田中さんと楽しく歓談できたことも喜びのひとつとなりました。

 来月、足立市立美術館出品へとお忙しい事と思いますが、
 絶賛エールお送り致します。

画像を画廊主からの許可を頂戴していますので、ご紹介します。





















 大きな瓶に入れられたガマは因幡のウサギの傷を癒やした
 薬草となったそうです。
 傷を負ったいきものたちを癒やす、そんな空間でもありました。

 会期は6日まででした。








 異空間、奥野ビルのオーラにも毎回魅了されるのでした。

せいのもとで ・SHSEIDOGLLERY 資生堂ギャラリー

$
0
0


 この日、京橋からずっと銀座8丁目まで移動して、
 ラストに訪ねたのが、資生堂ギャラリー。

 前回の展示がとても好評ということでしたが
 残念ながらチャンスを逃しました。
 今回はたまたま、初日であるのと、
 キュレーターが 植物の超リアル木彫家の須田悦弘さんであり、
 志村ふくみさんも参加されていること、
 それでぜひ行ってみようと思ったのでした。

 「せいのもとで」資生堂ギャラリーのサイトはこちら

 こちらの地下に降りる階段が油断も隙もないことを知っているので、
 気をつけて天井もチェックすれば、案の定。
 なにか細い糸で編まれたような筒状のものが階段の両端をつなげています。

 受付テーブルには須田さんの椿がウエルカムブーケが出迎えてくれます。

 志村ふくみさんと、娘の洋子さんの作品は大きな機織りのような枠に
 壁面から絹糸をつたって光源のような淡い色の瀧となって流れ落ち、
 染め糸の変化を見せてくれます。

 クリスティアーネ・レーアさんは動植物を素材にする作家で、
 極細の繊維が集合して発する繊細ながらも力強い確かなものとして
 小さなもののなかの妖精が集まって作品が構成されています。
 超絶技巧の精神に自然素材が癒合しています。

 宮島達男さん作品はおなじみのデジタルカウンターで
 刻々と刻み続ける時を壁一面に散らします。
 時限爆弾がいつ稼働するのか、そんなハラハラした
 ざわつかせる強迫観念にとらわれる、
 怖くもクールな点滅を繰り返しています。

 銀閣慈照寺研修道場の花方教授の珠寶(しゅほう)さんが花を
 活ける姿を映像化して放映しています。
 そのたたずまいと、しぐさと、活けられていく花のありさまを
 カメラが追いかけてゆきますが、
 その神々しさ、というのか、厳しさというのか、
 ひたむき、というのか、
 珠寶さんの手によって野の花たちが選別され、
 そのための花器に活けられ、
 慈照寺の寺内の選ばれた部屋に飾られてゆくさまは
 尼僧がお経を唱えているかのようでもあって、
 息を潜めて見入ってしまいました。

 しかし、花をさばくその手はとてもなまなましく、
 生けられていく花も選ばれたという喜びに満ち、
 迎える花器も仕舞われていた時から解き放たれて輝き出し、
 置かれた空間は
 まさに神様への荘厳に満ちていくような、そんな舞踊にも似た、
 歓喜の歌を感じました。

 いけばなを学んでいる私にとって、とても刺激のあるシーンでしたが、
 とても及ばぬ手の届かない向こうの方、のようにも
 感じたのは、花の立場があまりにも違うことへの
 畏怖、のようなものだったのかもしれません。
 珠寶さんはこともなげに、普段の自然との関わりで、
 ご自身の花も咲かせていて、つややかななまめかしさが
 溢れているのでした。
 
 私の花は、生活している現場のバタバタの中の
 おやつ、休憩みたいなもので、次元が違いすぎます。
 自分の足下をみて、その中でできること、それでいいと
 得心するまで、銀座の移り変わるさまを見ながら歩きました。


 
 この展覧は10月12日まで。
 実物を見ないと、なかなか伝わらないと
 もどかしさを感じます。

 資生堂の機関誌、「花椿」をひさしぶりに手にしました。
 じつに美しい仕上がり。



 誌面もとても切れ味が良く、無駄がなく、
 白石かずこ さんの 「こえる」という詩の希望の響きに喜びます。

 スマート、クールであることのおしゃれ度に感激しました。

 京橋から銀座までの一日散歩は資生堂で終了。
 とても有意義な豊かな一日となりました。
 夏休み終了し、秋到来という実感もじわじわ。

 大型展覧会もめじろおし、あまり気合いを入れすぎないで、
 なにごともマイペースを保つことを大切にしながら、
 美味しいものにありつきたいと思っています。
Viewing all 295 articles
Browse latest View live