Quantcast
Channel: あべまつ行脚
Viewing all 295 articles
Browse latest View live

第54回いけばな協会展に参加してきました。

$
0
0

 いけばな協会は超党派の団体として、いけばなの普及発展と
 会員の親睦、福祉の充実を目的として昭和33年に設立されました。
 今回は、60流派670名の作品が展示され会場は春満載の花色に染まりました。

 開催は 3月4日~9日までの6日間を2日に区切り3次にわたり、
 私は第1次、4日、5日に出品しました。
 場所は新宿タカシマヤ11階
 晴れやかな場所に、様々ないけばなが展示され、
 それぞれの花の解釈の立場で春爛漫を披露されました。

 今年になって、様々な事が重なって
 静かに花と向き合える時がなかったのですが、
 ようやく愚息の浪人生活から卒業し、大学入学が決まったので
 春、おめでたいことがあった人、お祝いしたくなった人、
 そんな方を思い描いて、祝い花として
 沢山の花々で華やかな作品にしたいと考えました。

 花器は友人の店で展示会を開いていた、綿貫哲雄さんの
 黄瀬戸の可愛らしい陶器にしました。

 展示する場所、広さ、高さ、バックの色合い、などが指定されています。
 その限られたスペースをお隣に迷惑がかからないようなサイズで
 仕上げなければなりません。

 今回は45センチ四方の小さな台ということもあり、
 小品ながらも春らしい花々で飾ろうと考えました。

 自宅で何度もその花器を使い、
 色々な花材で試しいけをしてみました。












 花材の手配はいつもお世話になっている花屋さんにお願いします。
 いけこみ当日に入荷している旬のものをみたいと思いましたが、
 黄色の花を付けている、花木を骨組にしてみようと思いました。
 レンギョウ、マンサク、サンシュユなどです。
 それに白い花を付けている、コデマリ、ユキヤナギを加えたいと思いました。

 そして、本番の日がやってきました。

 花屋に行って、その日の自分とフィットする花との出会いが大切だと感じます。
 
 こうして選んだ花材は
 サンシュユ(黄色)コデマリ(白)
 レースフラワー(白)
 スイートピー(黄色)フリージア(黄色)ラナンキュラス(オレンジ)
 ゴッドセフィアナ(斑入りの緑葉)
 トルコキキョウ(ピンク、薄緑)

 会場には既に沢山の花を抱えた人たちが集合し、
 限られた時間内にいけこみを終了しないとなりません。
 ほぼ2時半頃に自分の席の前に座り込み、
 いけこみを始めました。

 今回は先生のチェックをして頂けるのが
 翌朝だったので、自分の判断で完成させなければなりませんでした。

 これでいいだろうか、という思いもありながら、
 なんとか完成させて、後は先生にOKを頂けるか、
 ドキドキしながら翌朝、8時を待つことにしました。

 いけばなの展示は開場される前にお手入れを終了させなければなりません。
 開場は10時の予定なので、 
 朝、8時に開場入りしてお手入れを始めます。
 お陰様で、先生のOKを頂戴できたので、
 安心して水替えなどの作業に入ることができました。
 毎回花器に入った水をきれいに取り替えます。
 花材もちょっとくたびれた花は水切りして元気を取り戻してもらいます。
 最終チェックして、周囲を掃除して終了となります。

 いよいよ、開場です。

 今回は友人知人達が急な風邪、怪我に合う人続出で心配しましたが、
 初めてお目にかかる方や、同じお稽古に通う方、
 いつも私を応援してくれる方々が多忙な中、新宿までお出かけ下さいました。
 応援されている、という実感がこれほどありがたいと思うことは
 ありません。
 ありがたい時間でした。

 遠く、伊豆高原から母も見に来てくれました。
 
 賑やかな非日常を過ごすことができて、
 実に嬉しい2日間でした。

 会場内は様々な流派のいけばながひしめきあって、
 花の力が溢れていました。

 すこしだけ会場内の画像をアップします。
 また、来年、参加できればと思いますが、他の方々の参加など
 今後の事はわかりませんが、ささやかなことでも
 チャレンジすることで、沢山の学びに出会えます。
 
 花の一期一会、そして消えてゆく花々。
 あげばな(いけばなを片付けること)はあっという間の30分程度で終了し、
 次期に出品する方へ早くその場所を綺麗にして
 明け渡さなければなりません。
 あの絢爛な花々はあっという間に姿を消してしまいました。
 
 作品が残らないとこの潔さもいけばなの醍醐味のように思います。
 ほんの少しでも誰かの胸が華やいでくれた瞬間があれば
 なにより嬉しい事だと感じました。
 
 いけこみ初回の作品


 初日の展示の様子


 初日の作品


 2日目の作品


 草月流 勅使河原茜家元作品







 まだまだ修行は続きますが、
 何かを想像する、創造する、造形する、そのことの楽しさを
 もっと学んでいきたいと改めて感じたのでした。

富田菜摘展 平成浮世絵ー役者舞台姿絵ー ギャルリー東京ユマニテ

$
0
0
 
 ようやくギャラリーを回ろうと思う時間と、気持ちの余裕が生まれました。
 そこで訪問したのが
 京橋のギャルリー東京ユマニテ

 ここで知った、富田菜摘さんの展覧開催と聞いて
 楽しみにでかけました。
 きっと暮れからバタバタしていた疲労感を飛ばしてくれるだろうと
 勝手に思い込んで伺いましたら、
 キュートな富田さんが在廊されていて、
 興味深いお話をユマニテのカナリ女史とご一緒の時間を頂戴し
 すっかり元気になりました!

 ブログアップと画像アップのお許しを得たので、
 拙いながらもご披露致しますが、
 残念ながら展覧は3月20日(金)で終了しております。
 
 遅筆にご容赦頂きながらも、
 富田ワールド全開でしたので、
 iPhone画像をご紹介致します。

 今回は役者絵、浮世絵の世界を使って、
 現代芸能界代表の団体組にスポットをあて、
 その専門誌を片っ端から読み込んで、
 その誌面を遺憾なく、容赦なく、ストイックなユーモアを織り交ぜて
 切り刻み、その紙片を姿図に押絵のように貼り付け
 羽子板の板がない状態を彷彿とさせる表現にされました。
 浮世絵の世界もしっかり学ばれて細部のこだわりも
 抜かりありません。

 作品を引いてみると動く紙人形のような関節が動くようなものに
 みえますが、
 顔面まで近づくと恐ろしい作業が迫ってきます。








 誌面の切り取り部分にも作者のチャーミングな壺センスが満載と
 気づかされます。

 言葉の切り取りにもおもしろみを発見できる、
 そんな仕組みもあるのです。

 さて、今回の餌食、いや、着眼はAKBであったり、
 嵐だったり、EXILE だったり~

 ファンならずも媒体の露出が頻繁なのでご存じの方も多いはず。







 これまでにも今生きている人を張りぼてにした作品を制作されてきましたが、
 今回のように多分あのひと、という具体的な人物を制作されたのは
 初?ではないでしょうか。









 とはいえ、ともかくは見て楽しむ、
 純粋にそれでいいのです。

 ギャラリーの奥の部屋には
 お得意の廃材ジャンルのオブジェが一つ一つ名前をつけられ
 いとおしく並んでいました。
 これも材料の使い方にふっと頬が緩んでしまいます。










 そこが富田さんのハートのやんわりした温かさ、なのでしょう。

 お陰様でずっとご無沙汰しているアート界の立春を迎えた気分と
 なり、心意気は「悩み無用。それでいいのだ」
 そんな楽ちんな気持ちにさせてもらいました。

 富田さん、元気をもらいました、ありがとう!!!

 世の中の光を浴びる人のその悲喜こもごも、現実の闘い、
 それでも人々は光を求めて右往左往するのです。

 次回作も楽しみとなりました。

とっておきレア画像‼︎

 

BEST of THE BEST ブリジストン美術館

$
0
0
 


 せっかく京橋にでたので、
 頑張ってブリジストン美術館まで足を伸ばしてみました。
 ちょっと時間が限られていたので、
 ざっくりの鑑賞になりましたが、
 5月17日の会期末後は数年にわたって新築工事のために休館するようなので、
 再度足を運びたいと思います。
 ブリジストンのコレクションは両親の世代にジャストフィットで
 コレクションも時代性があるとつくづく実感します。
 
 幼い頃、一時玄関にモジリアーニのプリント作品が飾られ、
 細い目をした首をかしげている女性に見送られていたことがあります。
 洋画界の巨匠達の名前は誰もが知っているようになり、
 ピカソ、シャガール、セザンヌ、ルノワール、モネ、
 そういった画家達はもしかしたら
 日本画家以上に日本国中に知られていったのではないかと思います。

 ブリジストン美術館が開館したのが
 1952年、昭和27年のこと。
 戦後まもないころによくぞこぎ着けたものだと感嘆します。
 まだ上野に西洋美術館の存在がなかった頃に。

 展示室1ではそういった開館からの歴史を映像も含めて
 知ることができます。

 福岡の同郷であった夭折した青木繁の作品を守るために
 コレクションされてきたというエピソードなどの
 創設者石橋正二郎の交友も織り交ぜながら、
 昭和という時代の熱気を思い出しながら
 極上の絵画をほっとする空間で鑑賞できる場所を
 東京駅のすぐ近くに建ててくれたこと、
 おおいに感謝したいところです。

 個人的にはゴッホ、ゴーガン、ロートレックの
 作家自身が持った暗さが魅力でおおいに贔屓しています。
 マティスの明るさは熊谷守一のような単純化に通じて
 好ましく思っています。
 ロートレックの「サーカスの舞台裏」これが
 モノトーン作品で実にステキでした。

 最後の部屋、戦後美術の特集がとても気に入りました。
 ザオ・ウーキーのカラーになった水墨画のような飛沫、
 白髪一雄の足の裏の踏み込み、なぜそこまで行き着いたのか、
 そこにポロックが登場してぎゅっとつかまれたのでした。

 今月末で少し展示替えがあるようです。
 青木繁は後期から。
 会場内に10ページあまりの冊子が配布されています。
 これはぜひに。
 半券があればリピーター半額割引があったり、
 学生は3月31日まで無料鑑賞という特典も!!

 5月17日のラストデイまで、このチャンスを使いまくりましょう!!

博物館でお花見を 東京国立博物館

$
0
0
 
 色々立て込んでた時期もなんとか終わり、
 懸案事項はまだまだ未解決ではあるけれど、
 ちょっと時間ができたので
 久しぶりに東博に行ってきました。

 ミュージアムシアターの招待券が今月末で期限切れになってしまうので、
 それではと、東洋館に向かったのでした。
 始まる前の30分ほどで展示室をざっと見て回ることにしました。
 中国陶磁器では
 あの、横河民輔氏の名コレクション図録「甌香譜」が並び、
 驚嘆と感激。青山二郎の仕事ぶりも垂涎ものです。







 李朝の愛らしい染付をみたり、
 水滴のかわいらしさに目を細めたり。





 中国絵画は
 南京の書画 仏教の聖地、文人の楽園
 今回も重厚な日本の絵師達がため息を漏らしただろう、源泉がそこここに。
 カメラ禁止マークが残念でしたが
 花卉の水墨画の勢いのある黒々としたタッチと濃淡を描きわける
 瑞々しさに息をのみました。
 作者は 石濤。中国清時代
 こんな水墨画をめざして、硯に向かった人が必ずいたことでしょう。
 目にとまった作品はこちら。








 ミュージアムシアターでは
 先日まで展示されていた、永徳の「檜図屏風」
 その補修と発見、それをバーチャルで探検する映像の旅でした。
 先日、NHK日曜美術館でも詳しい番組が放映されたので、
 かぶることもあったのですが、
 大画面で見ることの贅沢さを味わいました。

 そして、駆け足でしたが
 「博物館でお花見」スタンプラリーも楽しみつつ、
 iPhoneでぱちぱち撮ってきました。
 はしょりますが、ご紹介します。
 今回は1階からまわりました。









 仁清の小さな茶碗。成形の端正がきっちり。
 その向こうも仁清作。




 水滴の企画が秀逸。
 金工する人の垂涎もの。
 小さな宇宙に技が凝縮されています。
 特集「水滴の美 ー潜淵コレクションの精華」4/5まで







 2階に上がって国宝室
 狩野長信の「花下遊楽図屏風」





 「天狗草子」 東寺・醍醐寺巻
 醍醐寺桜会の童舞。
 満開の桜に囲まれて華やぐ一瞬。








 屏風のコーナーに入った瞬間、あぁ、宗達の色紙絵だと驚喜。
 この深い緑に癒やされるし、構成とデザインに頭を垂れるのです。
 「桜山吹図屏風」 俵屋宗達



 陶磁器のコーナーに見慣れない紫の作品が並びました。
 三彩牡丹文皿 偕楽園
 和歌山の偕楽園でやかれた御庭焼。
 楽家十代旦入、永楽保全、仁阿弥道八らが参加して窯の発展に
 つながった、と解説がありました。






 なんて愛らしい一幅でしょう。
 尾形乾山の「桜に春草図」
 乾山は70過ぎてから自由でおおらかな絵をよく描きました。
 わらびのくるくるが茶碗などにもよく登場しました。
 偉ぶったところが全くない、自然体の許容ある雰囲気が
 心許すところです。



 「和歌図屏風」 近衛信伊 
 墨書の文字も麗しいのですが
 文字を囲む愛らしい草花に目が奪われます。



 「源氏物語図屏風」(若菜上)
  女三の宮のお姿が猫が簾を引っ張ったお陰で見えてしまった瞬間。












 東博の庭園開放が始まっていますが、
 前庭の一部から春の色を見つけました。











 屏風コーナーにひときわ目を引く桜の山の絵が現れましたが
 カメラ撮影禁止マークがでていたので
 東博ニュースのとびらに使用されていたのでこちらを
 ご紹介します。
 光琳の絵に学んだとか、渡辺始興の作「吉野山図屏風」4/19まで


 慌てての鑑賞で、作品を確認しないままの記事アップになってしまいましたが、
 「博物館でお花見を」は4月12日までとなっています。
 上野の桜もそろそろ動き始めています。
 人混みを避けて、博物館でお花見、ここはとっておきの場所となるでしょう。
 あと一週間後、どうなっているのか、注目していきたいところです。

3月のアート鑑賞記録

$
0
0
 
 2月はとてもアート鑑賞する余裕のない一月でしたが、
 3月に入ってちょっとほっとしたのもつかの間、
 4月1日、エイプリルフール午前に
 突然、30年来のご縁のある方の訃報が届き、
 まさにその方らしい最後に直面し、慌ただしい一週間が過ぎました。

 今後も様々引き継ぎ案件があって、動かざるを得ないのですが、
 頂いたご縁、大切にしっかりお手伝いしようと思っています。

 3月のアート鑑賞、といえるのかどうか、
 十分な鑑賞とは云いにくいのですが、
 行ったところ、メモ備忘録程度に残しておきます。

 * 高野山 祈りの美 日本橋高島屋8F

 * 富田菜摘展 平成浮世絵 役者舞台姿絵 ギャルリー東京ユマニテ

 * ブリジストン美術館コレクション展
   ベスト・オブ・ベスト  ブリジストン美術館

 *グエルチーノ展 国立西洋美術館
 
 *西洋美術館常設展
  世紀末の幻想 

 *若冲と蕪村展 サントリー美術館

 *博物館でお花見を 東京国立博物館


 若冲と蕪村、この展覧が誠に面白い企画なので、
 展示替えも多いので、何回か通いたいところです。

 グエルチーノも大変興味深く、初展覧ということもあって、
 これを見逃す手はないと思ったのでした。

 いよいよ桜も散り、春本番です。
 春の命の息吹は何かが始まるドキドキと通じて
 毎年わくわくさせられます。
 愚息も大学生として無事スタートを切ったところです。

 みなさまもステキな始まりが見つかりますように。

 近くで桜を見た画像をご紹介します。













4月のアート鑑賞記録

$
0
0
 4月のアート鑑賞を記録しておきます。

 ブログ記事に向かえる時がなかなか生まれず、
 放置状態に申し訳なさもありますが、
 とりあえずの記録でご容赦下さい。

 *高橋常政展 巣鴨染井 蓮華寺ふすま絵と「墨描絵」
  ギャルリー東京ユマニテ
  山水画ではない、墨絵の「動物涅槃図」作家自身から
  お寺に描きたいと願い出たとか。
  現代人感覚の新しい襖図現る、という温かさ。

 *四月大歌舞伎 中村鴈治郎襲名披露
  吉田屋  歌舞伎座 
  新鴈治郎はん、どうしょもない色男のはんなり、
  軽味のある伊左衛門さんでした。
  劇中にそれとなく口上が入り、
  幸四郎おにいさまとのやりとりもほほえましく。
  夕霧藤十郎さんが息子鴈治郎はん襲名を盛り上げたのでした。
  歌舞伎座ショップではユニクロTシャツに紙衣バージョンも現るでしたが、
  夕霧Tシャツはきっとコスト的に商品化できず、残念なり。

 *若冲と蕪村 サントリー美術館
  (4/15~4/20) 展示替え
  かなりごっそりな展示替えに驚きました。
  何度見ても若冲はユニークだし、筆の技量を楽しんでいたかのよう。
  蕪村は表現に情緒があって空気を孕んで心地よいと思うのは、
  私が老練化してきたのかも知れないかな、と自覚もしたり。
  この際、最後の展示替え後も見届けにはせ参じたいと願っています。

 *東洋の美 出光美術館
  安定の東洋古美術企画展示に癒やされてきました。
  古代原始のころからのやきものから
  縄文を経て中国漢、唐、清、明、
  朝鮮の高麗、朝鮮王朝時代(李朝)
  ベトナム、タイの15~6世紀のものまで、
  やきもの、漆器、金工、などの工芸を堪能しました。
  茶室にはセンガイ和尚の
  「春眠落日遅」のゆったりとした墨書に慰められ、
  伊賀の水指、井戸茶碗の景色に豊かさを感じてきました。
  ながめる皇居は若緑が広がっていました。

 *ギャルリー東京ユマニテ
  鋤柄大気展 麻紐から生まれた巨大なオブジェ、着色なしの
  麻紐の色だけで、どかーんと存在していました。
  しかしよく見ると綿密な製作が見て取れます。
  怪しくも生命体の抜け殻のようで
  実は本体が動き出すことがあるのかもしれません。







  同時期に加納光於<右手に海が>展
  色の洪水のような油彩と底からはみ出してきたかのような
  色を纏ったコンクリートの円柱が生まれていました。
  大御所は今なおまだまだ先を見据えて活動されているのだと
  エネルギーに敬意を捧げました。

 *東京アートアンティーク
  ユマニテでアートアンティークが今日、ラストデイですと教わり、
  おすすめスポットなども地図にマークして頂いたので、
  それを頼りに
  急遽京橋アンティークショップ巡りをしてきました。
  
  古美術草友舎
  こちらはユマニテと同じフロアに開店された古美術店。
  ほっとする小さな草花がさりげなく活けられて、
  古いものから生まれる安堵が滲む空間でした。

  花徑
  ユマニテから歩いてすぐのところの間口一間あまりの小さなところですが
  観音様の掌がさりげなく店頭に飾られて
  引き寄せられました。
  ステキな黒地にうっすらと輝く仏様の指が主役のポスターもすばらしいものでした。
  お店の紹介パンフレットもハガキもとても美しいので、
  思わず頂けるのかとお尋ねして嬉しく頂戴してきました。
  店内の小さなお地蔵さまが愛らしく、天衣の欠片もまた
  痛々しくも本来の姿をとどめようとしている姿にキュンとしたのでした。
  「仏教美術のかけら展 Ⅱ」というタイトルの企画でした。

  去来
  縄文の欠片、ヤジリ、勾玉、そんな縄文期のものを
  中心に所狭しと並べられていました。
  縄文土器の欠片も安価で手に入ります。

  加島美術
  今回のアートアンティークで一番びっくりしたギャラリーでした。
  GW6日まで「美祭」というタイトルで企画展示されていますが、
  建物も素晴らしく、2階には茶室があり、空間に当然のように
  フィットする古美術が陳列されています。
  若冲も買えることに驚かされますし、
  他にも大変なものがお値段オープンで披露されています。
  円空仏は六百万円なり~~
  ぜひ、現場確認をお勧めします。

 *烽 とぶひ 憂国のアート、至誠のアート
  巻之一 彫刻家 佐々木誠展
  ギャルリさわらび
  ご贔屓の佐々木誠さん、スサノヲ展に木彫の大作を展示することを
  ご案内頂いていたのですが、
  残念ながら、足利も川村も伺えずじまいで申し訳なかったです。
  お詫びかたがたお邪魔し、佐々木さんともお目にかかりましたが、
  気持ちがざわついていましたので、
  ちゃんと拝見できないまま、失礼してしまいました。
  リベンジをと思い、後日、再訪させて頂きことにしました。

 *映画
  イミテーション・ゲーム
  ベネティクト・カンバ-バッチ主演、ときいてわくわくして見に行ってきました。
  さすがシャーロックで人気を鷲掴みした役者さんだけあって、
  実に哀しい数学天才を演じていて大満足。

 *三井の文化と歴史展 三井記念美術館
  三井のお宝シリーズ、渋いこと渋いこと。
  前期5月6日までは茶の湯の名品の展示です。
  長次郎の俊寛、光悦の雨雲、のんこうの鵺、
  国宝志野の卯花墻、ずらずらと名品が居並んでおりました。

 *再訪 佐々木誠展
  ギャルリーさわらび
  前回、きちんと拝見できなかったので、
  もう一度、伺ってきました。
  今回も佐々木さんが在廊されていたので、
  ギャラリーの田中さんともお話をご一緒させて頂きました。
  写真もご紹介したいので、
  いずれ、記事にしましょう。
  しばらくの猶予を頂戴します。





 *椿会 2015 初心  資生堂ギャラリー
  赤瀬川原平さんが亡くなって、
  千葉市立美術館にも行きたかったのですが叶わなかったので、
  原平さんの筆致に会いたくて行ってきました。
  昭和の切ない情けなさが混在するおかしみが原平さんに
  まとわりついています。
  心底、正直な方だと思うのです。
  子供の絵日記のようなノートに切々とつぶやきにも似た
  日記を続けています。
  絵が、挿絵がたまらないのです。
  同時に畠山直哉さんの写真、内藤礼さんの小さな製作、
  などが同時に並んではいるのですが、
  原平さんワールドに打ちのめされてしまうのでした。
  私が昭和の人、なのだからどうしょもないわ、と
  日記に息を吹きかけてきました。
  24日まで開催中です。月曜日休館4日もちゃんと休館です。












  ゴールデンウィーク只中ですが、
  木々の緑がわさわさと伸びてきました。
  元気になれる季節です。
  大変な方の亡き後の様々を経験していますが、
  どんな時でも、目が喜ぶものをエネルギーとして
  楽しむこと、忘れないようにしたいと思っています。

  今月は文楽、玉男さん襲名興行があります。
  今からとっても楽しみにしています。

燕子花と紅白梅 光琳デザインの秘密 ・根津美術館

$
0
0

 根津美術館に通い続けて何十年立つことでしょう。
 庭園の燕子花が満開の時期は
 GWのタイミングも重なってなかなかチャンスをつかむ事ができませんでした。
 今年、ようやく念願の燕子花満開時に立ち会えることができました。
 他のところでは目にすることができても、
 ここ、根津の庭園は今年初めての満開時でした。
 
 光琳の傑作「燕子花図屏風」を展示室で拝見したあと、
 ゆっくり庭園を散歩してきました。
 今回はMOA美術館から出品された「紅白梅図屏風」が
 「燕子花図屏風」の隣に並びました。
 56年ぶりのことだそうです。
 次は一体いつのこととなるのでしょうか。

 根津美術館の公開を前に
 熱海のMOA美術館で光琳をリスペクトした現代作家との
 コラボレーションが人気を呼んでいましたが、
 機会を得ることができず、大変残念に思っていました。

 展示室に入ると
 目の前に宗達の傑作 「蔦の細道図屏風」が目に飛び込んできます。
 伝 宗達の作品ではありますが、
 この緑青と金色の大きな絵巻物のような屏風から
 えもいわれない陶酔が舞い降りてきます。

 根津美術館の大きな展示ガラスに
 「燕子花図屏風」、「紅白梅図屏風」がその横に。

 その向こうには
 宗達の本歌、伝宗達ではありますが、「槇楓図屏風」
 光琳の「槇楓図屏風」(こちらは重文)が対面します。
 宗達の作の方が野太く、光琳の方が端正ですっきりしています。
 この違いは、「風神雷神図」の違いに似ていると感じました。

 同時に琳派の作品が展示されました。
 香包、乱箱、硯箱、また乾山のやきもの、などなど。

 茶道具の展示には「燕子花図屏風の茶」というタイトル。
 「青山緑風」の墨蹟がかかり、
 瑞々しい季節に阿蘭陀花鳥文向付を選んで
 涼しげな茶会の取り合わせを拝見しました。

 庭園に出て、満開の燕子花を堪能しました。
 それでも花の命は短くて、旬の時はあっという間のことです。

 はかない、もののあわれ、
 そういった情緒を認識することもステキな体験です。
 屏風と、庭園のコラボ、これも根津美術館ならではのこと。
 気持ちよく、堪能できました。

 庭園の画像をご紹介します。
 
 この展覧会は5月17日まで。
 12日からは夜7時まで開館しているようです。
 お仕事帰りに贅沢な時間を過ごすことができそうですね。
 次回は「江戸のダンディズム」これまたステキなタイトルを付けられましたこと。
 楽しみにします。























 最後の二枚は
 地下講堂に展示されていた模作の「燕子花図屏風」から
 カメラOKでしたので、一部分撮ってきたものです。

 心地よい季節、このあと日本橋高島屋の細見美術館から
 琳派の逸品が勢揃いしている展覧会に行ってみましたが、
 やはり、琳派作品からこぼれる、自然への目線、情緒が満載で
 うっとりしてきました。
 今年は琳派の400年の記念の一年、
 あちこちで琳派の作品を見る機会が巡ってきそうです。
 

旧白洲邸 武相荘

$
0
0
 白洲正子、その人の魅力にとらわれて長い年月が過ぎています。
 ご主人の白洲次郎、その人のジェントルマンぶりは
 ドラマになったり、白洲正子展のなかで紹介されたり、
 広く知られるようになりました。

 その類い希な夫妻の周りに集まる人々も超一流。

 サラブレッド、セレブ、という出生の輝かしい白洲夫妻の
 一流の教養と審美眼、選び抜かれた品々に囲まれた生活空間が
 鶴川の隠れ里、武相荘に残されています。

 駒場の柳宗悦氏の民藝館とともに、
 同時代に生きた工芸、用の美を実生活に取り入れてきた
 その美しいさまに今も尚、変わらず人々のため息を集めています。

 多数出版されている関係書籍から知られている
 あの武相荘を目の前にして、
 やはり私の好きなジャンルはここだと、深く感じ入り
 再確認しました。

 新宿から小田急線に乗り込み、新百合ヶ丘で乗り換え、
 ようやく鶴川に到着。
 同行した友人達は何度か行ったことがあるにも関わらず、
 町の変貌ぶりに驚いていました。
 
 町中をゆるゆる散歩しながら武相荘を目指しました。
 到着してから最初にしたことがランチ。

 レストラン場所はお宅訪問するような、
 暖かみ溢れる一室で、棚には西洋のガラス、陶器などが
 並べられてテーブルに座る前からきょろきょろしていまいます。

 お店の方に伺った話によると、次郎さんは野菜が苦手で、
 キャベツの千切りの上にカレーのルーをかけて
 召し上がったのだそう。

 私はビーフシチューをお願いし、そのセットされた姿にも
 味にも大満足。









 お腹が満ちたところで、武相荘の見学となりました。
 写真を撮ることができませんが、
 薫風の頃、清々しい風に吹かれながら心地よい東西入り乱れての
 セレクト品にうっとり見とれてきました。
 なかでも圧巻なのは書斎の風景でした。


 
 使う人が生活を彩り、使うものが選ばれ、日々の暮らしが豊かになっていくこと、
 それを改めて実感します。

 生きている時間を豊かにするのは、まぎれもない、本人その人の力にしか
 頼れるところはないのだと、確信しますが、それはなんという
 反省と自戒の連鎖でしょう。
 そんなことはともかく、美しい季節の姿、佇まいの画像をご紹介して
 叶わない、審美眼の神様に礼を捧げるばかりです。

 久しぶりの集合だった旧友達との遠足は
 だたひたすらのんびりと、おしゃべりに大半を使い果たし、
 長年のつきあいの気楽さに感謝した一日となりました。

 画像、ご紹介します。

 安息を得たいとき、ぜひ鶴川、武相荘の自然の風に、お宅の景色を
 訪ねてみて下さい。






































 

東京国立博物館 5月13日、21日本館

$
0
0
 
 鳥獣戯画展まっただ中、その行列に恐れをなし、
 横目で見つめながら本館を見学してきたので、
 二日分の画像アップ致します。

 13日は1階を、21日は2階を中心に回ってみました。

 先ずは1階から。
 こちらは7月26日、8月2日までの展示期間となって展示替えもゆっくり目です。
 
 *彫刻
 菩薩立像 ただひたすらの美しさ。 鎌倉 ~8/2



 サイトの解説には、上下の唇の彩色に薄い水晶板をあてる「玉唇」とでも
 いうべき技法を用い、仏師善円(1197~1258)の作風に通じるものがある、
 という説明があり、驚きました。



 大日如来座像 平安
 
 *漆工


 印籠意匠色紙箱 笠翁細工 江戸 ~7/26

 *金工 
 自在と置物 ~7/26


 自在伊勢海老置物 明珍宗清 作 江戸18~19


 自在龍置物 明珍宗察 作 江戸正徳3年


自在蟷螂置物 

 *陶磁


 黒楽茶碗 銘 かのこ斑 一入作 17世紀



 黄瀬戸向付  美濃


 志野茶碗 銘 振袖 美濃
 志野向付


 織部獅子鈕香炉 美濃

 *日御碕神社の甲冑と模写図


 国宝 白糸威鎧

 *近代の美術 ~5/31


 花鳥 河鍋暁斎


 群鷺図額 加納夏雄 明治2年シカゴ・コロンブス世界博覧会事務局






 岩上双虎置 鈴木長吉 明治33年
 芸術大学で開催されたダブルインパクトの流、バリバリでした。
 長吉の人為を越えた作品はぐるり見て回っても破綻がどこにもありません。
 恐るべし。

 
 本館2階に移動します。

 親と子のギャラリー 美術のくにの象めぐり ~5/17
 象さんが沢山集まりました。







 その後、平成26年新収品特集となりました。~5/31


 桜下美人図 長沢芦雪


 冠断片 エジプト 前8世紀


 アメン神立像 エジプト 前3~後1世


 鴇像 エジプト 前664~332

 *鳥獣戯画と高山寺の近代ー明治時代の宝物調査と
    文化財の記録

  平成館での長蛇の行列に参加できない方はここの模写で
  存分にその姿を想像することができるのでした。
  模写をしたのは 山崎董詮 明治期に活躍されたようです。













 *仏教の美術


 観音菩薩立像 平安 ~5/13



 金銅蔵王権現懸仏 奈良天川村金峯山出土

 高山寺伝来の明恵に関わる図像、書籍他が展示され、
 鳥獣戯画展との合同企画になっていました。
 

 木製彩色夫人乗馬図華鬘
     胡蝶舞図華鬘


 木製彩色迦陵頻伽文華鬘

 これら三品は和歌山丹生都比売(にうつめひめ)神社伝来
 
 *宮廷の美術






 浜松図屏風



 清水寺縁起絵巻 (重文)土佐光信 室町

 *禅と水墨画




 囲棋観瀑図屏風(重要美術品) 伝狩野元信 室町


 三酸図 「輞陰」印 ~6/28

 *茶の美術 ~7/12


 青磁王宗(王と宗で一文字)形花入(重文) 中国南宋官窯尾張徳川家伝来
 この作品は折良く東京都美術館で開催中の
 大英博物館にその大元が展示されていました。
 No.012 玉王宗 (王と宗で一文字)
 元は翡翠の石でできた埋葬品と思われ、翡翠は中国では
 死後に強い効力を持ち、遺体の腐敗から守ると考えられていたようです。 
 四隅の装飾は「髪と口、目」の単純化といわれています。
 紀元前2500年頃にこの形が生まれ、ずっと時代が下り、
 南宋でもこの形が継承され、果ては日本の茶人が茶味をみて、
 愛玩してきた、そういう伝来が見えてきたのでした。

 また、彫三島茶碗 銘 木村
 が展示されていましたが、
 こちらも大英博物館展では
 No.066 金継ぎされた碗として紹介された三島茶碗が展示されています。
 磁器と陶器の中間的、半磁器といわれているものの
 発達を紹介する作品として選ばれていました。



 *屏風と襖絵




 山水図屏風 雲谷等顔 





 花鳥図屏風 海北友雪

 *暮らしの調度 


 色絵花鳥文輪繋透文皿 伊万里柿右衛門様式 17世紀

 *書画の展開






 西行物語絵巻(渡辺家本)詞烏丸光弘 画俵屋宗達
 こともなげに、こういう色鮮やかな名品が突如現れて
 あたふたしました。


 雨中釣灯籠図 長沢芦雪筆 外山光実参

 *浮世絵と衣裳


 実競色乃美名家見 玄宗皇帝・楊貴妃 歌麿


 尾根舟四手綱 歌麿 三枚続


 豊廣豊國両画 ・十二候・五月



 こうして、たっぷり本館を楽しんで、
 満足、充実感を胸にしまい込んで、元気に帰宅しました。

 トーハクの庭園からすこし、五月の緑をご紹介。  












 プレートにちょこんととまった雀さんににっこりしました。

 今回もトーハク、ありがとう、最高のアミューズパークです!!

2015 さつきフェスティバル 上野公園 6月1日まで

$
0
0
 

 都立美術館へいそいそと歩いていましたら、
 なにやら華やかな花の色が目に止まりました。

 そういえば、何年か前にもこのさつきフェスティバルを
 見ていたのでした。

 あんまり立派で、すばらしいのと、
 びっちり咲いている様や、
 工夫の見える様子、
 さつきといっても様々な種類があるということ、
 目を奪われてきました。
 沢山iPhoneで画像撮りましたので、
 ざっくりご紹介です。

 上野公園にお出かけの折は、月曜日、6月1日までの会期、
 一見の価値ありと思いました。
 天晴れでした。






























5月のアート鑑賞記録 2015

$
0
0
 一月前のこと、記憶が薄れてきましたが、
 消えてなくなる前に、ぎりぎりメモ残しておきます。

 *燕子花と紅白梅  根津美術館
  庭園の燕子花と光琳描く燕子花の競演、紅白梅図との相乗効果、
  夢のような景色でした。

 *ルーブル美術館展 国立新美術館
  ゴールデンウィークの中、沢山の家族連れ、子供達、若い人たちが
  会場内に集まっていました。
  そういった事情もあって、目にとまったものだけの前で止まって
  鑑賞し、さらりと抜け出してきました。
  目つきの悪い金貸し夫婦、哀しい少年の蚤取りシーン、
  フェルメールの天文学者、などなど宗教絵画の神々しさから離れて
  人々の営みがリアルに伝わる作品群でした。
  人体表現、光のつかみ方、布の重厚感、やはり西洋画ならではの
  魅力が満ちていました。
  

 *京都・細見美術館 琳派のきらめき 日本橋高島屋
  まだまだ未見の作品があるものだとため息もらしてきました。
  デパート展覧会でも作品リストが作られるようになりました。
  琳派は日本デザインの基本だと毎度、毎回しみじみ。 

 *武相荘
  念願の白洲次郎、正子夫妻の拠点、武相荘に行ってきましたが、
  あの世界観を感じるためには、無知すぎる恥ずかしさに困惑しましたが、
  それでも白洲正子という人の圧倒は私の美学の基本に繋がると
  確信してきました。

 *若冲と蕪村展(4/29~5/10) サントリー美術館
  ジャクソン展、3回の展示替えの度に通って、
  絵師の豊かさを痛感しました。
  感じて表現する、技量があればこそ、あの境地へはたどり着けないのだと。
  蕪村の湿潤、厚情、ゆるっとした中のぶれない画力、改めて
  尊敬を捧げました。
  若冲、その人の偏執と愛着と愛嬌にはいつもわくわく元気をもらいます。

 *単位展 21-21DESIN SIGHT
  なんでもものを計ってみようというメジャー体験型展示。
  日常のものたちがユニークな単位の塊となって
  新たな気づきがありました。
  日本の単位表現の豊かさも深い!











 *マグリット展 国立新美術館
  本当はもっとがっつり対面していたかったのですが、
  時間制限があったので、あっさりスルーしましたが、
  あのシュール感は大好物です。
  固まった脳内をほぐしてくれます。
  間に合えば、後もう一回!と願っています。




 *ルドゥーテ「美術選」展 日比谷図書文化館
  思いがけず、日比谷の集まりの後、覗いてみました。
  軽やかなチェンバロの生演奏にも遭遇できて
  マリー・アントワネットに仕えた宮廷画家、
  ルドゥーテの描いた可憐な花の図に引き込まれました。
  常設の展示も面白く、日比谷、というエリアの深さを
  再発見。芳醇なバラの香りが漂っているようでした。

 *本格派GO!GO! 不忍画廊(不忍画廊55周年企画)
  木彫作家の佐々木誠さんの作品が展示されると伺って
  日本橋高島屋前の不忍画廊に初訪問してきました。
  佐々木さんの人体の木彫はやはり異形の哀しさと生々しさと
  命あることの致し方なさと、それを越えた諦観があるものの、
  そこにある、それだけでこの世のものとの信仰を
  教わるような心持ちになります。
  ざわざわを抑えてくれる、そんな存在、とでもいいましょうか。
  縄文土器など色んなお話を伺えて有り難い時間でした。
  お向かいの高島屋壁面に謎なオブジェが見えたので写真を撮ってきました。












 *大関ヶ原展 江戸東京博物館
  実はもの凄く混雑している展覧と聞いていて
  恐れをなしていました。
  ところが、ひょいとチャンスが現れていってみましたら
  待ち時間なし、の幸運が舞い込んできました。
  戦ってきた武将の武勇伝もさることながら
  具足の美しさにうっとりしてきました。
  しかし、戦場であの出で立ちで?
  武士の美学、戦い方、あれは西洋の人々にはどう感じたのか、
  聞いてみたくなりました。

 *ダブルインパクト 芸大美術館
  超、ご馳走な展覧会でした。
  卓越した技巧の目眩する作品群。
  人間がどのくらい研鑽すればあのようなものが生まれるのか、
  途方に暮れます。
  明治期の日本の目指す技術立国の姿にエキセントリックを感じます。
  見世物、としての極み。
  超絶技巧という狂人的陶酔。
  とはいえ、見てしまうことでその魔界にはまってしまうこと、
  その快感を誰が止めることができようか、ということなのでしょう。
  図録も求めて何度食べても美味しい、反芻を楽しんでいます。
  いやはや、とんでもないことでした。



 *インドの仏 東京国立博物館 表慶館
  そうだ、「インドのイム展」という表記に面白がっておりましたが、
  展覧を見ていないことに気づいて慌てて潜り込みました。
  トーハクの表慶館に展示品が所狭しと並べられ、
  鑑賞するにはかなり手狭感を感じましたが、
  肉感的蠱惑的仏様の石像群を人の流れに任せて拝んできました。
  仏様たちも肉感的、鑑賞者の熱気も情熱的、
  ちょっと熱気にやられた感があり、本館でしばし息を整えたくなったのでした。



 *東京国立博物館 本館
  私の変わらないホーム、アミューズメントパーク。
  いつも何か新しい発見に充ち満ちていて、
  飽きることがありません。
  何十年通い続けていても、そこに安定の品格と新しさで
  出迎えてくれます。


 
 *片岡球子展 東京国立近代美術館
  球子さんの圧倒的画面に元気をもらいにいってきました。
  お行儀の良いアカデミック画法、そういった縛りから
  解放されることの難しさも、闘いもあったことでしょう。
  それでも球子さんはお構いなくデッサンし、描き続け、
  チャレンジし続け、
  78才では裸婦に挑戦します。
  80,90になっても前を見続けている、その凄さに
  年のせいにして逃げること、投げ出すことの恥ずかしさを感じます。
  挫けそうなとき、球子さんにきっと純粋な渇を入れてもらえます。
  突き抜けて球子さんで、天晴れなのでした。
  
 *所蔵作品展 近代工芸と茶の湯 東京国立近代美術館工芸館
  近美の本館も大変見所満載でした。
  ギャラリー4では「大阪万博1970デザインプロジェクト」が開催中でした。
  先日、岡本太郎の万博の事をBSプライムニュースの中で
  石原慎太郎と美術評論家山下祐二の二人をゲストにした特集を視聴したばかりだったので、
  あら、ここにも太郎さんがいる、と思ったのでした。
  山下先生は岡本太郎との関係が深いので、石原慎太郎氏とも
  互角以上のコメントをされていて、ちょっとまた敬意表明したのでした。
  そこには、日本のポスターデザインの先駆けが厚く渦巻いていました。
  丹下健三との闘いも大変だったようですが、
  岡本太郎がともかくどでかいこと、やり遂げたのでした。
  その足で工芸館に向かいました。
  工芸好きにはここは外せないメッカです。
  やきもの、金工、漆芸、木工など工芸の天才たちが集合していました。
  加守田章二の「妬壺」
  辻清明の「信楽陶缶」(缶詰の蓋が缶切りで開かれたような形)
  濱田庄司、田口善国、黒田辰秋、熊谷守一、小川街子、
  深見陶治、魯山人、村瀬治兵衛、象牙撥縷の吉田文之、
  15代楽吉右左衛門、
  ルーシーリーのお弟子、ハンス・コパーなどなど巨匠続々現れました。
  私はルーシーリーより、ハンス・コパーの方が野太いながらも
  宗教的静謐さを感じるので、贔屓にしています。 

 *炎の人 式場隆三郎ー医学と芸術のはざまでー 市川市文学ミュージアム
  私は市川の小学校、中学を出て、その後20年近く市川住民でした。
  祖父母たちはもっと長い住人でしたので
  市川の名士、式場隆三郎のことは精神科病院の先生として知られていましたし、  
  美しいバラ栽培でも知られていました。
  ところが、ゴッホの研究者、民芸運動の柳宗悦との繫がりなど、まったく知りませんでした。
  チラシからは民芸の臭いがぷんぷん香っています。
  そこで、市川住民の友人を伴って市川コルトンプラザの中にある、
  市川文学ミュージアムに行ってきました。
  なにしろ、4月に亡くなった夫人が入院していたのは国府台国立病院でしたし、
  松戸からバスに乗って病院へ行く途中には式場病院を必ず通るのです。
  導かれたような展覧でした。
  会場では学芸をしている方と面識があるので、有り難くガイドして頂きました。
  「二笑亭奇譚」この不思議な建物にまつわる話も興味深く拝聴しました。
  永井荷風の「墨東奇譚」の挿絵をした木村荘八に挿絵を依頼予定も、
  その話は実現せずに挿絵原画も行方不明のだったそうですが
  この度、幻の原画が明らかになり、17点が展示されました。
  「二笑亭奇譚」に強く惹かれたので、速効で密林で宅配してもらいました。
  式場さんの真面目なこつこつした仕事ぶりに驚嘆しました。
  次回は式場隆三郎との縁も深い、山下清展です。
  小さな展示室ではありますけれど、中身充実の企画でした。
  文学ミュージアムのオブジェと床の白バラは福田繁雄さんの作品だそうで、
  びっくりでした。







 *吉田玉女改め二代吉田玉男襲名披露
  五条橋、新版歌祭文、口上、一谷嫩軍配記
  3月に玉女さんとして最後の文楽を六本木ヒルズ文楽で
  鑑賞してきましたが、
  いよいよ玉男襲名披露となりました。
  国立劇場小劇場はいつになく華やかな賑々しい雰囲気に包まれていました。
  ご縁あって先代の玉男さんと長年ご縁のある方からのお手引きを頂戴して
  文楽鑑賞をさせて頂いていますが、
  その方のお話も大変興味深く、一度しっかりお時間頂いて拝聴したいものです。
  お披露目の演目は「一ノ谷嫩軍配記」
  先代の玉男師匠縁の演目を選ばれました。
  大きな気っぷの良い熊谷次郎直実を威勢良く演じられました。
  文楽の襲名披露口上を初めて拝見しましたが、
  ご本人からのご発声がなく、あら、と思ったのでした。
  三味線の鶴沢寛治さん、大夫さんからは豊竹嶋大夫さん、
  人形遣いは中学生時代から一緒に稽古してきた桐竹勘十郎さんが花を添えます。
  新しい時代が文楽にも来たのだとお客さんたちも
  みなにこやかに華やかなひとときでした。

 *大英博物館展 東京都美術館
  「もの」「工芸」好きにはたまらない展覧でした。
  「もの」には人々の願いや物語が隠されています。
  そういったエピソードとともにあった「もの」を見ることで
  側にいた世界中の人々の思い、暮らしを想像します。
  大英博物館に収集された「もの」たちを通して
  人の生き様、歴史の流、技術の進歩、そんなことをひしひしと感じてきました。
  一つ一つが大変力のあるものばかりでした。
  展示にも工夫があり、生まれた場所の地図などが掲示され、
  100点に選ばれた意味なども考えさせられます。
  大きな歴史の大河に流れて生まれた来た数々の「もの」たちが
  第8章までの構成で世界中からエントリーされました。
  No.97には銃器で作られた「母」像が現れて息をのみます。
  銃を捨て再利用されて生まれた「母」
  ほんの少し解放され、安堵した表情も見て取れるけれど
  人間のやってきた業の深さに空しさが押し寄せてきます。
  お気に入りのベストを見つけるのも一興でしょう。
  6月28日までの開催です。



 *鳥獣戯画展 東京国立博物館 
  日々鳥獣戯画展の混雑模様がtweet告知される世の中になってきました。
  その告知の待ち時間の凄さに怖じ気づいていましたが、
  ひょっとしてどうかと思って立ち寄った日は
  入場に待ち時間なしの案内。
  これを逃すてはないと駆け込んできました。
  すでに戯画の甲巻には長蛇の列があって、それを達成する気力と時間がなかったので、
  その他の展示を楽しむこととしました。
  高山寺は白洲正子の敬愛する明恵上人がいらしたところ。
  白洲正子展でもその関連品を見る機会がありました。
  再会、のものもありましたが、
  「華厳宗宗祖師絵伝」などもしっかり見ることができて喜びました。
  本館では甲巻の模本があり、充分参考になりました。
  展覧会関係者の行列待時間奮闘記、が生まれるのではないでしょうか。
  連日、連夜、お疲れ様でした。



 *飯能窯 陶芸教室







  何回となく通ってきた飯能窯での陶芸教室。
  今回は筒状のものを作りたいと考えていました。
  さてさてどんな焼き上がりになりますことか。
  これが毎回の楽しみであり、
  秋の勉強会でうまく使いこなせるかが課題でもあります。



 と、まぁ、色々と詰め込んだものでしたが、
 4月に亡くなった夫人の後片付け、相続のことなどを背負っていましたので
 気持ちがどことなくストレートにアートに向かっていたのかどうか。

 とりあえず見逃せないものをおいかけてしまったような気もします。
 とはいえ、アートは精神を整えてもくれます。
 トーハクの変わらない存在感は人生を捧げた芸術家の
 菩提寺でもあるわけで、
 臥薪嘗胆を極めた匠の魂がご本尊のように不動のものとなっているのです。

 まだまだ未熟なふりまわされている自分に叶わないエネルギーを頂くことで
 奮起し、前を見ようという気持ちにさせてもらえます。

 6月は少し、落ち着けると良いのですが、
 納骨式などが控えていますので、どうなりますことか。
 それでも時を狙ってどこかに出かけてみようと思っています。
 

MOA美術館所蔵企画展 又兵衛 山中常磐物語 ・MOA美術館

$
0
0

 年明け早々からの懸案の色々がようやく山場越えしました。
 あっという間に今年半年が過ぎてしまっていて
 愕然とします。

 今年はなにか、ままならない事が押し寄せてくる一年となるのでしょう。
 それでもいつもステキな方の存在があって
 なんとかがんばれるのはそういった精神的バックアップのお陰だと
 しみじみ思い至り、ありがたく感謝するのです。

 そういった中、
 気心知れた友人と久しぶりに熱海、MOAの又兵衛見よう!
 と声を掛けてもらいました。
 丁度伊豆高原に住む両親が通う病院の日とも重なり、
 ランチは両親と、その後は友と美術館へ、という二度美味しい計画となりました。
 先月6月12日のことでした。
 
 そもそも辻惟雄先生著作の「奇想の系譜」「奇想の図譜」から
 相当影響を受けましたので、
 又兵衛を無視するわけにはいきません。
 MOA美術館にはその又兵衛の強烈な絵巻が三作品所蔵されています。
 「山中常磐物語」「浄瑠璃物語絵巻」「堀江物語絵巻」
 何年か前、「岩佐又兵衛作品集」矢代勝也著の本が発行され、勇んで手に入れて
 喜んでいました。
 極彩色にギラギラする絵巻が公開される度に、ぜひ行ってみたいと念願しましたが
 なかなかタイミングが合いませんでした。
 今回はその三作品の中の
 「山中常磐絵巻」全巻12巻が並ぶ展覧でした。
 新幹線車内で、辻惟雄先生著作の
 「岩佐又兵衛 浮世絵をつくった男の謎」文春文庫をお供に
 心躍らせて行ってきました。
 その中で、山中常磐物語にめぐるエピソードも面白く、
 よくぞ日本国内に留まってくれたものだと関わった
 長谷川巳之吉、そしてMOAの創始者岡田茂吉その二人に敬意を捧げます。
 もちろん、その後の研究第一人者である辻御大にも。

 さて、我ら二人連れ女史は雨そぼ降る熱海駅からバスに揺られ、
 緑深々としたMOA美術館に着き、延々と頂上へ導かれるエスタレーターを
 乗り継ぎ、受付を通りますが、同行する人がまばら。
 いよいよ看板の「山中常磐絵巻」12巻(全巻であっても公開部分は限りあり)
 との対面です。
 展示会場の薄暗いケースから色の洪水です。
 絵巻の様子は本の図からも想像はできますが、
 本体から溢れる絵の具の発色はあまりにも退色がなく、
 絢爛豪華、緻密細密!
 源氏の御曹司牛若丸と母常磐の物語。
 母常磐が侍従と連れだって牛若を訪ねる旅の途中
 盗賊に無残に着ぐるみはがされ襲われ殺されてしまう。
 山中の宿の主人が常磐と侍従の弔いをしたところに
 牛若丸が秀衡のもとから、夢に現れた母を訪ねてくる。
 宿の大夫と女房の協力を得て
 盗賊を見事打ち倒し、また秀衡のいる館に戻るが、
 三年三月後に平家打倒の大軍を引き連れ山中に立ち寄る。
 その時に母の墓前に冥福を捧げ、大夫と女房に山中の土地を与えて
 恩に報いた。情けは人のためならず。
 あらすじはざっとそんなお話なのだが、
 登場人物の表情、道具立ての細やかさ、
 微細な線描、絵の具の発色のすばらしさ、
 又兵衛独特のリアリティ。
 一場面どれもが手抜きのない、見る人を飽きさせない
 濃厚な絵巻きがずらずらと広がる姿は
 圧巻、としかいいようがなかったのでした。

 その他、MOAが誇る名品の数々も展示されていましたが、
 この「山中常磐絵巻」に力を吸い取られてしまって、
 洛中洛外図屏風や、仁清の色絵藤花文茶壺などさえ霞んでしまったのでした。
 その中では
 海北友松の「四季山水図屏風」が湿潤溢れるしっとりした
 水墨の世界観に惹かれました。

 雨が庭の木々に英気を注いだかのように
 緑が綺麗でした。
 その緑に誘われてお茶室でお抹茶を頂くことにしました。
 のど元から自然の英気が伝わり、質の良い休憩となりました。

 画像をご紹介します。
 慌ただしい中、ホッとできる小旅行気分を味わえる
 嬉しい一日となりました。





















 これが辻惟雄先生の著書と
 又兵衛MOA所蔵全作品集の本です。
 既に激しさが横溢しているとおわかり頂けるでしょう。


 これからも怪しげなパワフル又兵衛の作品を
 注目していきたいと思っています。

6月のアート鑑賞記録 2015

$
0
0

 今年始まってからというもの、気がついたら半年が経とうとは!

 浪人生の愚息の受験に始まり、
 知人夫人の入院、介護、そしてついに冥界への旅立ち。
 その後は相続のお手伝い。納骨。
 合間を縫っていけばなの稽古、展示会、企業の華道部お手伝い、
 女子高校での授業助手、
 そして寸暇をみつけてのアート鑑賞。
 同人誌への寄稿、編集お手伝い。
 主婦の仕事はどうやってきたのか、謎です。
 深く追求しない夫や愚息に感謝です。

 先月は久しぶりに、両親と熱海でランチを一緒にとり、
 その後、両親は伊豆高原へ帰り、私は友人と合流して
 MOA美術館へ移動し、賑々しい岩佐又兵衛の山中絵巻全巻展示に
 参戦してきました。
 いやはや絵の具の鮮やかなこと、線の細やかなこと、緻密なこと。

 熱海までの新幹線往復はちょっとした小旅行気分が味わえます。
 最近の焼身自殺事件にまきこまれるというニュースに
 驚きますが、なにごともない、ということの奇跡にも驚かなければならないことに
 気づかされます。

 東京駅ステーションギャラリーでは
 その生き様にも心揺さぶられる、鴨居玲展を鑑賞。
 すさまじい赤の変遷、自画像からあふれる画力の凄味。
 流浪の旅の果ては自ら命をたってしまうドラマが作品から炸裂してきます。

 人は自分との闘いでしかないのかと暗澹たる思いになりながらも
 凡人の悩み無用な諦めには通用しない闘いでもあるのだと
 安堵もします。




 久しぶりはあちこちに。

 山種美術館にはどのくらいぶりだったでしょう。
 「松園と華麗なる女性画家たち」として、
 知られる機会の少ない、女性画家に焦点が当てられました。
 この企画はご近所の大学、実践女子学園との連携企画で、
 鑑賞後、実践女子学園まで雨模様ではありましたが、
 足を伸ばしてみました。
 学園内に香雪記念資料館を併設していて、
 女子大の立派なこと、綺麗なことに大変驚かされました。



 最終週に、いけばなの先生と清澄白河で深川ランチをご一緒しました。
 その後、せっかくなので、現代美術館まで足を伸ばし、
 山口小夜子展を見ることとしました。
 丁度、小夜子さんがモデルとして活躍されていた時代を
 体験しているので、とても懐かしく、
 今でも先端を突っ走れる洗練された美の伝道師であることに
 改めて容姿から、様々なシーンから感じ取れたのでした。









 現美コレクションも久しぶりに鑑賞。
 ここの展示室の天井の高さと解放感にリフレッシュされながら、
 充実のコレクションとその作家に元気をもらいました。

 夏休みは恒例の子供たちへのメッセージ展が開催されることでしょう。








 そして先月から引き続き、文楽も鑑賞。
 これは文楽若手会といって、
 師匠の足や左手遣いの若手が主役となれる滅多にない機会です。
 お芝居は丁度玉男襲名興行と同じ演目でしたから、
 様子がつかめます。
 それでも、歌舞伎も同じ事が云えますが、
 役者が変わると同じ演目がまた違って見えてきます。
 大夫も三味線も檜舞台です。
 清々しい若い力が感じ取れました。
 しかし、文楽の現役演者のみなさんは
 サラリーマンの隠居のお年頃からが本番です。
 気の遠くなる世界ですが、一生を捧げる芸事の深さも感じ入ります。
 人形遣い、玉佳さんのご活躍祈願です。




 週に一度程度のアート鑑賞となってしまってはいますが、
 ぼちぼち続けていこうと思います。

 夏はどんな展覧を見に行こうか、
 ちょっと情報からも疎くなってしまってますが、
 ふらふら出かける時間を探したいと思います。

 急な暑さに参らないよう、気をつけながら、
 楽しいこと発見できますように。


東京国立博物館 本館(7月23日)

$
0
0

 上野藝術大学美術館で開催されている注目の展覧会を駆け足で
 鑑賞した後、トーハクの年間パスポートの更新に行ってきました。
 また一年間、たった4100円で特別展、平常展を何回も楽しめるなんて!!
 (特別展は6回。国立博物館ならばどこでも!)
 
 本当にありがたいシステムです。感謝!!

 新しい年パスを持って、先ずはクレオパトラ女王様に参詣しました。
 平成館はまるで海外の博物館のようで、天井に刺さるような
 石柱(レプリカ)が重厚感もってエジプトを演出していました。

 それにしてもうっとりするのは美しい女王の頭部。

 いまだに発掘作業が続き、
 その歴史がひもとかれ、そこからあらわれた発掘品の美しさは
 こうして日本にもやってきて見ることができることに
 改めて感嘆します。
 
 気持ちを入れ替えて本館に移動しましたら、
 平成館からつながる廊下が拡張されて広々していました。
 日本中の展覧会ポスターを眺める空間が狭かったのですが、
 これで少し混雑も緩和されます。

 さてさて、
 今回はなにしろ着物の数が凄かったので、
 着物に焦点を当てることとしました。
 解説タイトルの長々しく漢字が連なりますが、
 大体のイメージで感じ取れます。

 8月2日まで、特集「呉服商『大彦』の小袖コレクション」が
 本館特別1室、特別2室で公開されています。
 日本橋橘町に「大彦」を開業した、大黒屋・野口彦兵衛(1848~1925)
 による小袖コレクションです。
 このコレクションを見た、永井荷風は
 「限り知れぬ美感に酔ひし」と感動したそうです。(東博ニュースより)
 数多いコレクションから選りすぐりということですから、
 どのくらい所有されているのでしょう。
 すべて手の込んだ、素晴らしいものでした。
 
 着物は、「一領」と数えるのも、興味深いところです。
 画像と合わせてピックアップしてご紹介します。
 
 小袖 白練緯地松皮菱竹模様(しろねりぬきじまつかわひしたけもよう)



 打掛 萌黄縮緬地松竹梅模様(もえぎちりめんじしょうちくばいもよう)



 打掛 紅綸子地水仙梅葵菊七宝模様(べにりんずじすいせんうめあおいきくしっぽうもよう)




 振袖 白縮緬地梅樹衝立鷹模様(しろちりめんじばいじゅついたてたかもよう)



 夜着 萌黄紗綾地唐獅子牡丹模様(もえぎしゃあやじからじしぼたんもよう)




 小袖 白綸子地斜縞歌文字模様(しろりんずじななめしまうたもじもよう)




 小袖 紅綸子地竹牡丹模様(べにりんずじたけぼたんもよう)



 小袖 白綸子地大菊波模様(しろりんずだいきくなみもよう)





 小袖 黄羽二重地海辺風景模様(きはぶたえじうみべふうけいもよう)



 同時に本館10室 浮世絵と衣裳のコーナーの着物の展示をご紹介します。

 帷子 黒麻地御簾藤模様(かたびら くろあさじみすふじもよう)



 帷子 浅葱麻地檜扇寝殿蓑笠御所車風景模様
 (かたびら あさぎあさじひのきおうぎしんでんみのがさごしょくるまふうけいもよう)



 被衣 白生絹地夏秋草模様描絵(かつぎ しろきぎぬじなつあきくさもようかきえ)





 9室、能と歌舞伎からもご紹介。
 
 唐織 茶紅段枝重柳鷺模様 (こちらは偶然大倉集古館所蔵のものでした)



 唐織 紅緑段御簾色紙短冊萩模様



 思いがけず、着物尽くしの鑑賞となりました。

 今、トーハクでは休館中の大倉集古館からの出品があり、
 国宝 随身庭騎絵巻が展示されています。
 今回彼方此方で大倉の所蔵品と遭遇する楽しみがありました。
 10月27日から1月17日まで、国宝「普賢菩薩騎象像」が展示されるようで、
 トーハクで見る、大倉の普賢菩薩様を楽しみにしたいと思います。

 他にも大倉集古館からは
 四季草花図屏風 6曲1双 松村景文 

 虫太平記絵巻 1巻
 
 等が展示されていて、喜びました。
 写真不可なのが残念なところではありますが、
 松村景文のきらびやかで可憐な草花にうっとりしますし、
 色鮮やかで繊細ながらも様々な虫を頭にのせた「虫太平記」の
 奇想天外ぶりに感嘆しました。
 蛇は虫の仲間なのですね。

 その横には扇面。








 若冲の鶏、芦雪の雀、呉春はなんとウド。独活です。

 芦雪の作品が他にも。
 寒山拾得図屏風



 また、珍しいことに、抱一の大きな絵馬が展示されました。
 洋犬図絵馬 こちらの写真不可でした。
 
 時代が逆流しますが、
 時代不同歌合絵 鎌倉 が興味深いものでした。




 屏風の展示からは
 犬追物図屏風 江戸17世紀 筆者不詳ですが、きっちりとした画力が見えます。




 茶の美術では
 渋く、柿の蔕 茶碗 銘 唐衣 




 最後に、河鍋暁斎の
 地獄極楽図の大作の一部を。







 平成館の企画展示室では
 特集「キリシタン関係遺品にみる聖母マリア信仰」
 として、通称、親指のマリアさまがお出ましです。

 他、厳しい弾圧の元、踏み絵という厳しい苦行がありました。
 敬虔な信者に対する、無慈悲な拷問が待ち受けていたのでした。
 祈りに対する信仰の深さに頭を垂れます。

 真夏にむかうトーハクの緑も一段と深まっているようでした。






うらめしや~、冥土のみやげ ・東京藝術大学美術館

$
0
0
 

 夏といえば、怪談、お化けのシーズン到来です。
 私がお化けを最初に見たのはいつだったことでしょう。
 北海道の田舎町にサーカスが回ってきました。
 その時に公園の広場にいかがわしい見世物小屋が立って、
 その中にろくろっ首があったように思います。
 実際は見る機会はなかったのですが、
 今にして思えば残念なことです。
 幼稚園児には刺激が強すぎて親が連れて行ってくれなかったのだと思います。
 では、どこか。
 遊園地のお化け屋敷、でしょうか。
 私は端っから仕掛け物だからと高をくくって
 いそいそゴールを目指したのではないかと
 可愛げのなさを今更ながらに反省します(笑)

 東京、谷中全生庵に怪談の噺家、三遊亭圓朝ゆかりの
 幽霊画が50幅所蔵されているそうです。
 夏になればコレクションされた幽霊画を公開していて
 いずれ、と思いつつ日が経ってしまい、
 悔しい思いを持ち続けていましたが、
 今夏、芸大美術館でその機会がめぐってきました。
 大変喜びつつ、勇んでいってきました。

 フライヤーの表を飾るのは
 上村松園の「焔」
 女性の怨念が般若に変わる寸前のような鬼気迫るものがあります。
 情念に狂う女の着物は蜘蛛の巣に藤の花房がかかります。
 近代日本絵画の中でおどろおどろしさ満載の作品として有名ですが、
 会場のお披露目は9月1日から13日までとのこと。
 引っ張ります。

 会場は全生庵コレクション中心の展示、
 幽霊縁の絵を遠方からも集合しての展示に分かれています。
 先ずは、三遊亭圓朝を紹介するコーナー。
 肖像は河鍋暁斎、鏑木清方。
 伊勢辰貼込帖より圓朝辞世の色紙、扇面何というものもありました。
 高座用の湯呑、パイプや湯たんぽまでも。
 実際どんな怪談を名調子で語ったのでしょう。
 今や人間国宝となられた講談師、一龍斎貞水さんの
 野太い声で四谷怪談を聞いたことがありますが、
 小道具なども登場したりして、ちょっとしたエンターテイメントで
 大変面白く、思わずのめり込んでしまいました。
 
 会場の狭い廊下のようなところをぐるりすると
 照明は薄暗く、天井から蚊帳が宙づりされていて、
 部屋の隅には雪洞がぼんやり灯り、
 幽霊が壁面にぞろり張り付いて、こちらを見つめてきます。
 ひゅ~という風も聞こえてきそうです。
 壁に張り付いたお化け、幽霊たちは全生庵のコレクションでうまりました。
 伝 応挙から、谷文一、谷文中、中村芳中、広重、
 河鍋暁斎、芳年、是真、鰭崎英朋、などなど極上の絵師が並びます。
 驚いたのは今村紫紅が幽霊ではなく、「月に鵜図」で参加していたこと。
 鰭崎英朋はお化けでも色っぽく、あの世にはまだまだ行かないだろうと
 美人図に見惚れました。
 圓朝の髑髏図自画賛をみて、何でも器用な方なのだなぁと感心しました。
 芳中はお化けを描いてもどこかコケティッシュです。
 
 次の展示室に移動すると、
 錦絵によるうらみの系譜として、浮世絵師たちの力作が並びます。
 浮世絵でもずいぶんと幽霊お化けが描かれていたことを再発見します。
 牡丹灯籠のお露、皿屋敷のお菊、四谷怪談のお岩、累ヶ淵の累が代表で
 そのキャストが登場しますが、
 まぁ、お岩さんの悲惨な姿に、伊右衛門は本当にひどい男の代表で、
 どうしようもないのだから、こてんぱんにしてやって欲しいと
 願掛けをするのです。
 その怨念を国芳、北斎、芳年、等々が競演します。
 「偽紫田舎源氏」月岡芳年 
 この詰め込み過多の圧倒的画面に息をのみました。
 
 次に うらみが美に変わるときとして、肉筆画が展示されます。
 なんと関西の絵師、祇園井特の作品が紹介されて喜びました。
 こちらにも暁斎、伝応挙、芦雪の作品があり、
 曽我蕭白の「柳下鬼女図屏風」が現れ、おうっとなりました。
 
 会期は9月13日までと長そうですが、
 8月18日以降、展示替えがあり、相当数入れ替えがあるようです。
 後期の展示もぜひとも確認して実見したいと思います。
 芸大美術館の特設サイトはこちら。
 
 会場の片隅から一龍斎貞水さんのおどろおどろしい声が漏れ聞こえると思ったら
 怪談のビデオが放映されていました。
 ビデオは半ばでしたし、時間が足りなかったので、
 諦めて通り過ぎましたが、次回はしっかり時間を確保して
 鑑賞したいと思いました。

 
 幽霊とは案外身近な存在なのかも知れません。
 悲しませた人、いませんか?

 東博で開催されたプライスコレクションに美しい幽霊画があったことを
 思い出しましたので、ご紹介します。



 左は「柳下幽霊図」幽霊を呉春、描表装の柳を松村景文が描きました。 
 右は「幽霊図」芦雪の筆です。
 呉春の幽霊は背中に冷たいものを感じます。


 あなたの右肩を見て下さい。
 じっとあなたを見ていた人がいたように感じました・・・・・

 うらめしや~~~

蔡國強展:帰去来 ・横浜美術館

$
0
0

 蔡國強というアーティストをなんとなく気になる人として
 インプットしていたので、
 久しぶりに横浜美術館まで出かけてきました。
 北京オリンピックの開会式で会場に花火でつくられた足跡が
 ずんずん進んでいく空中ショーに魅せられたことが新しい記憶でしょうか。
 
 某テレビ番組でたけしさんと共演し、たけしさんも作品創作に加わったりして、
 火薬を使って火の燃えた跡を絵画に使うといったら、
 蔡國強の作品だと深く認識しました。

 爆音のとどろいた後、火薬が燃え、そして即刻消火されていきます。
 一瞬の火の痕跡は人為の力では及ばない力が生まれますし、
 蔡國強氏の作為によって仕組まれるわけですが
 火薬が爆発する瞬間は火の力にゆだねるしかないのです。
 それだけでもエモーショナルでドキドキさせられます。

 みなとみらい駅から直結状態の横浜美術館。
 上野から熱海行きに乗り込めばあっという間の横浜でした。
 目の前に広がる横浜美術館、前庭の両サイドが工事中で、殺伐感はありましたが、
 入館して目の前に巨大な墨絵のような壁画が現れると
 ただ見上げて引き込まれて見入ってしまいました。

 「夜桜」

 こちらの作品だけは思う存分カメラを向けることができます。
 iPhoneで撮ってきましたので、ご紹介しますが、
 迫ってくる大きさはぜひ目の前で確かめて欲しいものです。











 チケット売り場で夏休みとなった中学生の男の子たち、5人ぐらいのグループに
 係りの方が入館時の注意を丁寧にしていることを
 ほほえましく見ていましたら
 第4室は大人しか入れないところなので、入らないでね、
 え~~~~!
 というやりとり。
 最近はこの辺のアナウンスも微妙ですが、館側の立場も
 あるのでしょう。
 男の子たちは文句たらたらながらもしょうがないと諦めたようす。
 
 その第4室は「人生四季 春、夏、秋、冬」
 が展示されています。
 一作品が横 648㎝、縦 259㎝もある巨大作品です。
 男女の営みが春夏秋冬に描き分けられていますが、
 何処が性的表現なのか、と思うほど、粘着性がありません。
 色の移り変わりが四季の移ろいとリンクして、
 二人のあり方にも変化が生まれているようです。
 生命体ならば皆、そういった営みが繰り返されてきたのです。
 悪徳と紙一重にあるところにある健全性はどうしたら守られるのでしょうか。
 ほのぼのとした自然体の健全なあり方を感じました。

 展示室を移動すると
 また目眩のする作品が壁一面に。
 こちらも「春夏秋冬」
 磁器タイルに火薬が撒かれている、それだけなのですが
 緻密極細超絶技巧をきわめた磁器の自然界の表現に息をのみます。
 菊の花弁一枚一枚の薄い重なりをどうやってやきものとして
 制作してきたのでしょう??
 日本美術の花鳥風月に描かれる動植物たちが共演していますが、
 微細な陶器の表現と黒く影を落とす火薬の墨色が
 死生観にも繋がるようで繊細でデリケートな命を思います。
 展示室の中央の高い天井からは朝顔の蔓が地上に舞い降りてきます。

 琳派の継承を感じます。鈴木其一が現代作家だったら
 このような表現をしたかも知れません。

 作品の間にはビデオが流れています。
 エントランスの「夜桜」に火薬の火がついた現場の映像や、
 蔡國強、その人を多方面から紹介する映像それ自体が
 「帰去来」を示しているようでもあります。

 圧巻は狼の99匹の大群が占拠した展示室6。
 「壁撞き」
 99体のオオカミたちが大挙して一番奥のガラスの壁に向かって突進し、
 そしてぶつかり、なだれ崩れおち、そして
 また立ち上がる、一連のループを横長の展示全体を使い切って
 動き回ります。
 これは見えない壁に向かう勇気、チャレンジ精神、それに
 ぶつかった後の立ち上がる奮起、諦めない気持ち、
 そんなわき上がるものが充満しています。
 オオカミたちのなかで、誰かが一声遠吠えすると
 威勢良く立ち上がり、飛び上がり、空中を行進し、
 壁へと向かうのです。
 まるで剥製のようで、つい触りたくなってしまいますが、
 鉄の芯に藁などで身体をつくり
 表面の毛皮は羊のものを着色したものだと教わりました。
 群れの中のおきにいりオオカミを見つけるのも楽しいことかも知れません。
 この作品がドイツ銀行のものと知るのも興味深いものでした。
 
 彼らのタフな生き様、エネルギーをもらって、
 また「夜桜」見下ろすとまた違って見えてきます。

 蔡國強というアーティストの地球サイズの活動と、
 中国に生まれたというアイデンティティ、
 火薬武器をアートに、東洋的美的感覚、
 現状の世界の混沌にアートの繫がりで体温のつきあい方を目指し、
 その中で火花を散らすのは深い愛情のあり方なのかも知れないと
 スケールの大きさに圧倒されながらもすがすがしさを感じたのでした。
 この空間から溢れるエネルギーを浴びる体験を、
 お勧めしたい展覧会です。

 同時に横浜美術館のコレクション展を見ることができます。

 これもまた大変なコレクションで、
 気になったところだけピックアップします。
 コレクション展はカメラOKなので、鑑賞の楽しみもふえます。
 
 ・ダリ ガラの測地学的肖像



     幻想風景ー暁・英雄的正午・夕べ







 ・北脇 昇  眠られぬ夜のために



        自然と人生



 ・藤田嗣治 腕を上げた裸婦



 ・中村 宏 観光帝国
 




 ・荒川修作 作品



 ・宮崎 進 俘虜

       精霊の踊り
  
       沈黙




 ・下村観山 ラファエロ「椅子の聖母」模写


   
       ミレイ「ナイト・エラント」模写



 ・平櫛田中 帰去来




 ポール・ジャクレーと新版画

 ・ポール・ジャクレー


















  
 ・橋口五葉 髪梳ける女



    
      化粧の女




      夏衣の女




 ・伊東深水 十五夜



       洗い髪



 ・山村耕花 段四郎の鉄心斎




 最後にまた「夜桜」を。
 裏側も2階から間近に見ることができました。









 横浜から世界へ発信するスケール感を
 ぜひ体感してみて下さい。
 
 10月18日までのロングランです。

 久しぶりの横浜美術館をすっかり堪能してご機嫌良く英気を頂戴し
 また帰路は順調かと思いきや、
 車両点検などに引っかかり、あれやこれや乗り継ぎをし
 時間稼ぎをしながらの帰宅となったのでした。
 そして私も、はるばると「帰去来」(かえりなんいざ)したのでした。

7月のアート鑑賞記録(2015) 

$
0
0
 7月は割合と狙った展覧会を目指すことができました。
 今年初めてアート鑑賞したなぁという実感がありました。
 うまくいけば、月にこのくらいの量が一番良いペースかも知れません。

 *春信一番!写楽二番! 
  フィラデルフィア美術館浮世絵名品展 三井記念美術館
  このフィラデルフィア美術館の所蔵している浮世絵が日本に来る、里帰りする、
  それだけで驚きの機会を得るわけですが、
  選りすぐりの150点のどれもが素晴らしいので本当に驚きました。
  前期、後期に分かれての展示ですが
  後期もしっかり目に焼き付けてこようと思います。
  同時に超絶技巧、自在置物、緑山の牙彫置物も脇をしっかり固めてくれています。
  8月16日で終了しています。

 *時松はるな きみの顔が好きだin東京 ギャルリー東京ユマニテ
  7月6日~7月18日
  軽やかな群像の中に切ないシーンが潜んでいます。
  青春の思春期のツンとした甘酸っぱさが思い出されてます。
  人体の造作よりも集合体から生まれる心地よいリズムが
  感じられるけれど、ほんの少し痛みも混じる、巧さが効いています。
  ご本人とも母娘のようなお話をさせて頂きました。
  国立能楽堂のチラシにイラスト制作もされていたり、
  これからも思いがけない活躍が広がりますように!









 *シネマ歌舞伎 三人吉三 東劇
  勘九郎、七之助、松也の三人吉三の映画バージョン。
  串田和美氏の演出、美術が光る構成に。
  歌舞伎を知らなくても、映画作品として充分楽しめます。
  淡路屋、笹野おじの怪演も見所。
  勘三郎、橋之助、福助の三人吉三は不滅保存版だとしても、
  若い三人吉三もアクティブでとても良かったのでした。
  画像は勘三郎のコクーン三人吉三のパンフレットから。

  
 *歌舞伎座ギャラリー
  東劇で三人吉三を見て歌舞伎熱を帯びたので、
  一幕でも、と思いましたが、運悪く売切れ、さすがの猿之助丈でございます。
  では、とうことで、歌舞伎座初潜入の友を連れ立ち、
  ギャラリー体験してきました。
  鳴り物をガンガン鳴らしても良いところなので、
  太鼓で雪の音を出してみたり、友は思いっきり銅鑼を叩いて自爆したり、
  効果音の雨の音やら、波の音など楽しんできました。
  特集のビデオも興味深いシーンが集められています。



 *ギャルリさわらび
  建築物として文化財クラスの奥野ビルにあるギャルリさわらびに
  御贔屓にしている佐々木誠さん作品の実物を見たいという友を案内しました。
  やはり、実物から溢れる霊的オーラはいつもながらビシビシ感じられました。
  初見の友も大満足のようで私も喜びました。
  8日から松濤美術館で開催される「スサノヲ展」にも
  佐々木さんの作品が展示されます。
  今から楽しみにしています。


 *川本喜八郎人形ギャラリー ヒカリエ8階
  ヒカリエが開店してから初めて入店しました。
  銀座線から思いの外スムーズに館内に入ることができ、
  杞憂は直ぐに解消されました。
  久しぶりに会う従妹と幼稚園に通い始めた彼女の娘となんなく遭遇できて安堵しました。
  思いがけないことに川本喜八郎さんの人形がケースに入れられていました。
  その中になんなく入場し、三国志の勇姿をながめることができて、
  ヒカリエはなかなか良い場所だと感じたのでした。 



 *ヒカリエ 現代茶湯アワード
  渋谷ヒカリエ 現代茶湯アワード
  急遽こちらに出品されるという兼藤忍さんのtweet連絡で
  従妹親子と一緒に行ってきました。
  茶湯で使われる、茶陶はいつの世でも魅力あるものとして
  継承されているようですが、
  実際、それらを使って楽しい茶会体験がもっとできれば
  もっと手にする実感として茶碗が、茶陶が生き生きしてくることと思います。
  現代アートと、茶湯コラボ、広がること期待したいです。
  ヒカリエ全体の様子がまだつかめませんでしたが、
  銀座線からはとてもアクセスしやすかったので、
  億劫がらずに行けるのだと思ったのでした。
  ロブションのパンもなかなかでした。 

 *ヘレン・シャルフベック展 芸大美術館
  藝術大学美術館でヘレン・シャルフベックという
  フィンランドの女性画家の軌跡を辿る展覧会がありました。
  その前にどこかの駅ホームでただならない視線をこちらに向ける
  大きなポスターがあって、その存在感が気になっていました。
  彼女の生い立ちや、事故で左足が不自由になったことや、
  何処にも出かけない引きこもりの時代、失恋の時代、
  どんな人生であったのか、ともかく自画像にその思いをゆだねたかのような
  孤独に充ち満ちた作品群でした。
  ちょっと、いたたまれないのですが、グレコに影響を受けたり、
  絵画に対する真摯な気持ちが充満していました。
  絵があったからこそ、彼女の人生が成り立っていたのだと
  切なくも辛い視線を浴びてきたのでした。
  7月26日で終了。



 *うらめしや~、冥土のみやげ展 芸大美術館
  ブログ記事にしましたが、
  これは一見の価値あり展覧会。
  純情が怨念に変わるとき、その薄ら寒さが
  酷暑の避暑地となっています。
  後期は18日から。
  松園の「焔」は9月1日からです。
  会期は9月13日まで。ぜひ。



 *クレオパトラとエジプトの王妃展 東京国立博物館平成館
  平成館がエジプトの宮殿のように変身していました。
  延々と続くエジプトの発掘研究はいつ終わりが来るのか、
  見当もつきません。
  しかし、ファラオたちの血流とクレオパトラの美貌が
  壮大な空間と宇宙との交信と人々の技術力とが絡まって、
  今も尚、その不思議にとらわれる迷路が続くのです。
  そのミステリアスな魅惑の泉が枯渇することはないのだと
  発掘された王妃の美しさに思わず跪きたくなったのでした。
  会期は9月23日まで。
  夏休み企画も沢山あるようです。
  
 *呉服商大彦の小袖コレクション 東京国立博物館本館
  この展示についてはすでに拙ブログで画像を含めてご紹介しました。
  日本人の身体があまりに平坦であるが故に、着物を纏うことで
  ネームバリュー、権威、美の競演、個人の力を発揮したことなのでしょう。
  その衣裳への執着、技術向上へのたゆまない努力と
  プライドまでが見えてきそうな、
  また、その着物を注文する人の心意気、引き受けた呉服屋の力量、
  呆れるほど素晴らしいものばかりを拝見しました。

 *蔡國強 帰去来 横浜美術館
  こちらもブログ記事に致しましたが、
  長い展示期間中、より多くの方が
  あの空間を体験できればと思います。
  10月18日まで、ぜひ現場の圧倒的空間を
  体験して欲しいと思いました。

 *横浜美術館コレクション
  夏、戦後70年を迎えた日本で、戦争を体験してきた
  アーティストの作品が特集されました。
  併せて、個人的にはポール・ジャクレーの
  新版画、浮世絵を橋口五葉、伊東深水らの作品と共に
  たっぷり鑑賞できたことも大きな収穫でした。
  コレクション展の解説はこちら


 *絵巻を愉しむ 《をくり》を中心に 宮内庁三の丸尚蔵館
  熱海のMOA美術館に岩佐又兵衛の「山中常盤物語絵巻」を見に行った事もあって、
  三の丸尚蔵館でのこの企画展に岩佐又兵衛の
  「小栗判官絵巻」が展示されることを知って、
  行かねばなりませんでした。
  やはり、並々ならぬ画力と物語の展開に
  目がくらむようなものでした。
  他にも「「絵師草紙」「酒呑童子絵巻」「彦火ヶ出見尊絵巻」(ひこほほでみのみことえまき)
  等も展示されて、それも入場無料というありがたい展覧会は
  8月30日までの開催です。展示替えがあったようなので、
  もう一度場面変えなども確認したいと思っています。
  「小栗判官絵巻」を知るためにも
  「小栗判官と照手姫」という広げてわかるわくわくシリーズ、という
  解説書を求めて、じっくり学ぼうと思っています。



 *画鬼暁斎展 三菱一号館美術館
  江戸、明治にわたり、浮世絵、狩野派などの画法をものにし、
  描けないものはないのではないか?と思わせる巨匠、
  河鍋暁斎の展覧があるとなれば、
  行かずにはいられません。
  いままで、どこかの展覧会で数点の展示が小刻みにあっても、
  全部暁斎尽くし、という展覧は私にとって初めての展覧鑑賞でした。
  まぁ、本当にエライ絵師、画家がいたものだと、
  ため息ばかりの傑作尽くしでした。
  丁度、東博でも巨大な「地獄絵」が展示されていましたし、
  芸大美での「うらめしや~」にも圓朝の肖像画と
  お化けの作品が登場しました。
  7才で国芳に弟子入りし、10才で狩野派も学び、外国人とも交流し
  ついには建築家ジョサイア・コンドルを「暁英」と名付けて
  弟子にしてしまう、幅の広さに仰天するのです。
  ともかくは、9月6日までの展覧会、面白すぎて困ります。
  胃癌で享年59才とはちょいと短命であったことが残念です。
  
 *田能村竹田展 出光美術館
  没後180年記念の田能村竹田の展覧が8月2日までの開催でした。
  渋い文人画を得意とした人です。
  酷暑の中、出光美術館で山水の涼風に吹かれたような
  展覧会でした。
  青木木米との交友もほほえましく、
  同時代の蕪村、池大雅なども展示されていました。
  竹田はなんだかいつも拙い絵ではあるが、と自身の出来を
  卑下しているようなところがあって、
  絵から伝わる真面目さが滲んでくるようでした。
  愛らしい草花の作品を見ることができて、
  ホッとしました。
  (サイトの見所解説などがあっさり消えてしまっていて残念です)

 と、ともかく書き出しただけとなりましたが、
 世の中にはなんて楽しい芸術作品が溢れていることでしょう。
 それを見ることの至福を今一度感じた眼福の初夏となりました。


 遅すぎる7月のアート鑑賞記録でしたが、
 なかなか充実度が高かったのでした。

 8月は、中だるみしそうですが、
 それなりに追いかけてみようと思っています。

第21回秘蔵の名品アートコレクション展 美の宴 ・ ホテルオークラ

$
0
0


 東京のホテルの伝統、ホテルオークラがこの9月から
 建替え工事に入ることとなったそうです。

 アメリカ大使館の直ぐ側で、
 日本の中枢に近い場所で要人たちに最高のサービスを提供し続けています。

 その建物の日本的なテイストにどうにかそのまま素晴らしい意匠などを
 残して欲しいとの声も世界中の著名人から上がっていることも
 その建物の持つ重要な存在を証明していることだと思います。
 こちらに動画の紹介があります。

 今後のご案内などはこちらホテルのサイト

 さて、今回のアートコレクション展は
 美の宴 琳派から栖鳳、大観、松園まで
 というタイトルで、この8月20日(木曜日)までの期間限定の開催です。
 明日がラストデイ、滑り込みできますように。
 
 松園の作品が目白押しでした。
 やっぱり、品格とうっとりする美しさに溢れていました。
 「虫の音」の登場人物のゆったりとした時間とつま弾かれる三味線の音が
 聞こえてくるようです。
 柱にもたれる顔が隠れた女性?の色香にぐっと惹かれました。
 小堀鞆音(こぼりともと)の舞楽、「蘭陵王」
 「萬歳楽」の丁寧な歴史画的な丁寧な描き方から、
 有職故実を基礎とした新しい歴史画を手がけた、という作家解説に
 納得しました。
 同時代にアンリ・マティスがいました。
 彼の作品が日本画の並ぶ会場に色を添えたリズムが生まれていました。
 岡本神草という、「仮面を持てる女」という
 怪しい雰囲気を醸し出す作品に目がとまりました。
 甲斐庄楠音の「横櫛」の臭いを感じるなぁと思っていましたら、
 やはり、彼が深く関係していたのでした。
 
 ウィキより抜粋:
  (大正7年) - 京都市立絵画専門学校(現:京都市立芸術大学)卒業。
  第1回国画創作協会展に「口紅」が入選。
  甲斐庄楠音の「横櫛」とともに入賞候補に挙げられる。
  このとき、「横櫛」を推した村上華岳と「口紅」を推した土田麦僊とが
  互いに譲らず、結局、竹内栖鳳の仲裁で金田和郎の「水蜜桃」が受賞する。
 
 拮抗する何かが立ちこめていたような事態があったことを知らされました。
 また、美の巨人たちでの放映があったようです。
 こちら

 こんな出会いも生まれるので、アート鑑賞は
 止められません。

 他、個人的に
 あぁ、下村観山はうまいなぁ。という事と、
 遠くからでも片岡球子作品は異彩を放っているなぁ、とか、
 栖鳳さんは動物愛にあふれてるなぁ、とか。
 また、大作、「護花鈴」今村紫紅作品の雅な中の
 鈴のぶら下がる糸の緊張感と醍醐の花見という場面の
 華やかさとどこかミステリーな気配があって
 実に典雅で魅力的な屏風の世界に浸ることができました。

 出品作品数が60点というなかで、
 充実感に満たされたひとときを感じることができました。
 300円でパンフレットが手に入ります。
 また、この展覧会の純益は日本赤十社を通じて社会貢献のために
 寄付されるそうです。

 ホテルオークラの継承と復活を祈念して、
 大倉集古館と併せて、
 4年後のリニューアルを心待ちにしたいと思います。

 ホテルオークラの本館の画像と大倉集古館の姿を
 ご紹介します。









 今月いっぱい、オークラの姿を見納めできるようです。
 落ち着きのあるホテルと美の宴の共演を名残惜しんで頂ければと思いました。

藤田美術館の至宝 ・サントリー美術館

$
0
0
 藤田美術館の至宝
 国宝 曜変天目茶碗と日本の美


 

 この展覧が六本木で開催されるとは、本当に歓喜しました。

 早速前期のうちに行ってきました。
 
 明治時代、関西の二代事業家、藤田、白鶴、が不同の位置を誇っていました。
 その藤田家、藤田傳三郎が収集してきた
 至宝が119件大阪から運ばれてきました。
 何度も大阪に出る機会があっても
 なかなか藤田美術館まで足を伸ばすことが叶わないままで、
 いつか訪問したいものだと思っていました。

 その所蔵品のレベルの高さは国宝9件、重要文化財52件という数字からも
 想像できます。
 今回はその中から優品がごっそり選ばれての展覧です。
 どうしてもテンションが上がってしまいます。
 傳三郎の収集は廃仏毀釈の中、海外に流出することを杞憂し、
 日本の愛玩してきた宝を守ることに奔走しコレクションの柱ができましたが、
 その後は長男、次男に継承され、今に至るそうです。

 収集されたのは、特に茶道具や、古美術が中心で、
 長州藩士、外務大臣、財務大臣など務めた井上馨や、
 三井財閥の益田鈍翁などと社交場として茶会がしばしば催されたそうです。
 そうすると、このコレクションが大茶人たちの間で茶会用のものとして
 披露されてきたのかと思うと、一層臨場感が沸いてきます。
 (資料:サントリー美術館ニュースから)

 会場に入りますと、
 千体聖観音菩薩立像が五体並んでお出迎え下さいます。
 そのお姿にノックダウン。
 これはとんでもないコレクションだと鳥肌が立ちました。
 その奥には法隆寺の羅漢様。
 法隆寺からどうやってこちらにいらしたのでしょう?

 振り向くと神々しい光を放つお地蔵様が現れます。
 仏師、快慶の地蔵菩薩立像です。
 この世の美しいものをすべて持つ事を許されたかのような、
 美仏さまです。
 360度ぐるり拝見できます。
 
 入り口付近からこのハイレベルでこれから
 会場を進んでいくと一体どうなることかと
 くらくらしました。

 国宝 玄奘三蔵絵 鎌倉時代
 玄奘三蔵が夢を見た,その景色が現れます。
 須弥山を目指す足下には蓮台が波を越えるように
 現れ玄奘を導くのです。
 波間には龍も見えています。
 須弥山には霊山にかかる雲も白くたなびきます。

 また、平安時代の奈良、内山永久寺に伝来した
 国宝「両部大経感得図」が厳かに展示されます。
 1136年とされていますが、よくも保存されてきたものだと
 感嘆します。

 平安の貴族の嗜みとしての書、歌が
 藤原佐理、藤原俊成、紀貫之、小野道風、後醍醐天皇、
 などの超セレブ、名筆が伝付きではありますが、雅に並びます。

 そして、茶の湯の世界が展開されます。
 利休の松茸をありがとうという、利休尺牘(松茸の文)に
 少し、利休に親しみを感じます。
 
 中国の南宋時代の
 馬遠、伝梁楷、による李白、寒山拾得が重厚感を演出し、
 因陀羅の寒山拾得が掛けられ、ちょっと脱力します。
 いいなぁ、この緩さ加減。

 雪舟の自画像(模本)
 梅花水禽・遠浦帰帆図が扇に描かれます。絵師は伝狩野永徳!永徳です。

 茶道具の収集は会期中展示替なく、全期展示されます。
 世の中に3碗しか確認されていない、
 曜変天目茶碗、一碗のために立派なステージで
 やきものとは思えない、怪しい輝きを確認できるように展示されました。
 藤田家の曜変天目は水戸徳川家から伝来したものだそうです。
 中国にも完品は残っておらず、破片しか確認されていないそうです。
 それで、日本に残された3碗、どれもが国宝指定されました。
 一つは静嘉堂、もう一つは大徳寺龍光院。
 大徳寺のものはそうそうお披露目が叶わないのでしょう。
 静嘉堂のものも本当に宇宙との交信ができそうだと感心したのを
 思い出しますが、こちらも劣らず、発色の良さに驚かされたのでした。

 中国の南宋時代、という時代には何が起こったのでしょう。
 陶磁器の頂点をやり尽くしてしまったのではないでしょうか。

 大井戸茶碗 銘 蓬莱(武野井戸)
 この茶碗は利休の師匠、武野紹鴎が所持し、後に娘婿の今井宗久に渡った
 という事もあり、蓬莱もしくは武野井戸と呼ばれるのだそうです。
 井戸茶碗の有楽(東博)柴田(根津美)の二碗も
 もとは藤田傳三郎が所有していたものだそうです。
 (資料:根津美術館井戸茶碗図録、目の眼2014年10月号)

 黒楽茶碗に銘太郎、次郎と名付けるほど、子息に愛情を
 注いでいたことも傳三郎の情の深さを感じます。
 また、本阿弥光甫、空中斎のアバンギャルドな
 花入れ「空中信楽花入」が突如現れ、驚きました。
 空中斎の作陶はいつも驚かされます。

 南宋の砧青磁袴腰香炉 このとろみのある青磁に
 金工の超絶技巧の蓋がのります。
 梅花のレース状に目眩がしました。

 そして、傳三郎の愛玩した交趾焼の香合、染付の香合、
 仁清の鴨形香合、など小さなものが展示されます。
 乾山・光琳の銹絵絵替角皿も並び、
 愛らしさについつい頬が緩みます。
 その中の交趾大亀香合は
 傳三郎氏が亡くなる10日前に手に入ったという
 大変ご執心されたものだそうで、念願叶ったものだったようです。

 他、能衣裳、能面。
 絵画では菱川師宣の大江山酒呑童子絵巻。
 竹内栖鳳の立派なライオン図、大獅子図屏風が並びました。

 ともかく、大変なコレクションでしたので、
 展示替え後もしっかり見に行かねばと
 心に決めたのでした。

 相当はしょりましたが、
 ともかくは一見されますこと、お勧め致します。

 会期は9月27日までです。
 サントリー美術館のサイトはこちら





画鬼 暁斎 ・三菱一号館美術館

$
0
0
 
 三菱一号館美術館で、画鬼暁斎展が開催中です。
 暁斎展のサイトはこちら
 「狂っていたのは、俺か、時代か?」
 画鬼 暁斎 
  幕末明治のスター絵師と弟子コンドル

 この展覧会タイトルからも熱気が帯びてきます。

 いつの頃からか、暁斎と聞けばすぐに反応してしまう御贔屓絵師となりました。
 おかげで河鍋暁斎にかんする本もたまってきましたが、
 「河鍋暁斎」ジョサイア・コンドル著 山口静一訳 岩波文庫
 「もっと知りたい 河鍋暁斎 生涯と作品」 狩野博幸著 東京美術
 
 この二冊が最強のガイド本として側にあります。
 また、最近の芸術新潮7月号、 
 美術手帖7月号 がそれぞれ河鍋暁斎を特集しました。


 
 かの、画伯、山口晃氏の「へんな日本美術史」においても
 「一人オールジャパン」の巨人ー河鍋暁斎
 と、彼の巨人さをひとしきり熱弁をふるい、
 文章にも鼻息が荒く力がこもっていました。
 
 東博でのプライスコレクションでもうまいなぁとため息が出た
 一枚の絵が展示され、印象深く記憶しています。
 今年はダブルインパクト展や、今も開催中のうらめしや~展でも
 芸大美術館が暁斎作品をピックアップしました。
 同時に東博で「花鳥」や
 「地獄極楽図」を展示しました。






 その度に暁斎作品を見るとアドレナリンが活発化します。
 画力の自由さ、巧みさ、色遣いのツボを知り尽くし、
 見る人の喜びを知っている、画題もセンセーショナル。
 一枚の絵の物語が必然と目を集めてしまうのです。

 三菱一号館美術館では9月6日までの会期、
 是非とも沢山の方に暁斎の画鬼を才能にため息をもらして欲しいものです。

 1暁斎とコンドルの出会い
  そもそもこの二人が出会ったのは暁斎がすでに50才を超えていた頃、
  上野で開催された「第二回内国勧業博覧会」に4点の作品を出品した年。
  その会場はコンドルが設計したもので、宮内庁の役人を通して
  暁斎を紹介されたようです。
  その時に展示された、「枯木寒鴉図」も三菱一号館に出品されました。
  これが百円の高値を付けて顰蹙を買った後、日本橋榮太郎の主が
  その値で求めたのが大評判となった物議醸し出した一作です。
  コンドル29才、暁斎51才でした。
  三菱一号館も彼の設計によるとなれば、
  ここでの師匠と弟子による展覧会は想像以上に
  意義深いものとなるはずです。
  三菱一号館美術館開館5周年祈念にふさわしい企画だと思いました。

 2コンドルー近代建築の父
  コンドルは明治10年に来日します。
  24才の若き建築家です。
  日本で工部省造家学科教師、官営建造物設計施工に従事しました。
  コンドルは建築家になる前に画家になりたくて
  美術学校に通っていたそうです。
  暁斎はコンドルを大変気に入り、「暁英」という名を与えます。
  コンドルも弟子として稽古に精を出し、真面目な絵を描きました。
  当時励んだ、コンドルの絵をみると、彼の誠実さが見えてきます。
  また、日本の芸事に大変興味があり、歌舞伎、踊り、いけばなも学び、
  造園や、いけばなの本も出したのだそうです。
  器用で才能ある人は何をやっても形にしてしまうのだなぁと感心しきりです。
   
 3コンドルの日本研究
  それらの成果がここで紹介されます。
  展覧会で受賞した作品「鯉図」は暁斎の薫陶輝くものでしょう。
   
 4暁斎とコンドルの交流
  暁斎のつけていた絵日記で日常の姿が垣間見えます。
  楽しそうにスケッチの旅に出かけたのでしょう。
  写真家、小川一真との交友もあり、欠かせない人となったようです。
  「大和美人図」の写真を小川が撮り、精緻な木版になりました。
  コンドルコレクションとなった作品が紹介されます。
  「鯉魚遊泳図」鯉の正面の顔を絵画で初めて見ます。
  コンドルの「河鍋暁斎」にもこの鯉のスケッチのことなど詳細に
  記してありました。
  コンドルコレクションの中の頂点にある、
  「大和美人図屏風」を間近に見ることができて
  大変喜びました。本当に極彩色で緻密で綺麗でした。
  静嘉堂所蔵の「地獄極楽めぐり図」を見る機会を逃しましたが、
  また、いずれ時を待ちたいと思います。
  
 5暁斎の画業
  1英国人が愛した暁斎作品
   今回初めてメトロポリタン美術館所蔵の暁斎作品が展示されました。
   さすがのコンディション、素晴らしい絵が所蔵されています。
   これを見ることができるだけでも意義深いものと思います。
   特に動植物の緻密微細な作品が多く展示されました。

  2道釈人物図
   毘沙門天、布袋、白衣観音、中国の神仙、鍾馗、
   龍神、風神雷神、などなど歴史のヒーローヒロインが
   続々と現れました。
   どの作品も空中間が素晴らしく、
   「風神雷神図」は狭い幅の中に勢いある風神雷神が浮かび上がり
   迫力満点でした。
   
  3幽霊・妖怪図
   このコーナーは暁斎の真骨頂でしょう。
   「九相図」は人が死ぬとこんな姿になってしまうという絵姿。
   死体を描くことは暁斎の幼い頃からの癖でもあるようで、
   執着が半端ではないことを感じます。
   上部木の枝に描かれるはずの鳥に色がつかなかったところがあって、
   それも興味深く観察に励みました。
   百鬼夜行や、妖怪の並ぶ屏風にはどこかしらユニークなふふ、
   と笑いを招く楽しさがあります。

  4芸能・演劇
   以前、三井記念美術館で「河鍋暁斎の能・狂言画」展が開催されました。
   その時に初めて暁斎が能を稽古していたことを知りました。
   猿楽、三番叟や、高砂、石橋、熊野、など、能舞台を描いていたことに
   驚きました。
   演劇を学ぶことによって得た人の動きや衣裳、小道具などの表現は
   自分の画力を上げるために一つも無駄にならないのです。
   團十郎や、菊五郎との交流もあったそうです。
   ここでは河竹黙阿弥の「漂流奇譚西洋劇」をパリス劇場で公演するときの
   表掛かりの場、が展示され、仕事は日本に留まっていなかったのでした。
   
  5動物画
   メトロポリタン美術館所蔵品からもわかるように、
   暁斎は動物がとても得意のようです。
   猿の毛の表現の凄さには猿を得意とした森狙仙をしのぎそうです。
   「月に狼図」のぎょっとしたくわえものには驚かされましたが、
   時として生首を登場させるのがお好きだったように思います。
   幼い頃から生首に執着があったからでしょう。
   
  6山水図
   今回、一番驚いたのが、この山水図作品群です。
   暁斎の静かな山水図を初めて見たように思います。
   さすがに狩野派に学んだだけのことはあります。
   しっとりとした山村の佇まいにきっちりとした
   狩野派が潜んでいるようでした。

  7風俗・戯画
   暁斎が幼い6才の頃に入門したのが狩野派ではなく、
   浮世絵師、国芳だったということ、これが彼の絵心の
   奥深いところに絶え間なく潜んでいるように思います。
   国芳が師匠で浮世絵を学ぶ、狩野派にも入門し、山水も描く、
   その学べる環境があったこと事態が今思えば奇跡のように思えます。
   師匠国芳は猫を沢山描いてきたが、
   暁斎はそれを蛙としたようです。
   あちらこちらに蛙が登場します。
   ユーモア精神旺盛な戯画作家としての作品は
   既に有名な暁斎さん。
   浮世絵も抜かりはありません。
   「放屁合戦図」の愉快なこと、ばっちいこと!!
  
  8春画
   今回初披露の春画コーナーがお目見えしました。
   日本の春画は先にロンドンでも展覧会が盛況だったニュースがありましたが、
   国内での展示にはいささかハードルが高いのが現状で、
   色々物議をもたらすことがあるようです。
   三菱一号館、頑張ったのでしょう。
   秋には細川の殿が永青文庫で春画展を旗揚げされます。
   昔の方がそんなことオープンで、猥雑だったんですけれどね。
   暁斎の春画はほのぼの系で、熟年女性もしっかりご覧になっていました。
   取り扱い注意に躍起になるのはそれだけ魅力と毒があるということなのでしょう。
   
  9美人画
   さぁ、暁斎作品、見過ぎて目が痛く、疲労感も出てきます。
   ラストに美人画で気合い入れ直します。
   どの作品も本当に女性の美しい様子がしっとり描かれていて、
   女性の物腰の柔らかさや、まなざしの美しさにうっとりします。
   遊女たちからも私を見て、という媚び、挑発がなく、
   そこがとても清々しい姿に映るのです。
   そして、暁斎は赤の使い方が大変巧みだと感じました。
   毒々しい赤もピリッとした赤も情熱の赤も
   大変効果的な使い方をすると感心しています。

 それにしても大変な展覧会ですが、
 いっぺんに暁斎を見てやろうなどと思ったら知恵熱がでてしまいそうです。
 山下祐二先生曰く、「暁斎スピリットを継ぐのは誰だ?」の視線を
 山口晃氏に投げかけつつも、
 威勢のいい脂ぎった大酒飲みで監獄入りもものともせず、
 川に流れ着いた生首をひっさげて怒られる幼少期をもって、
 ひたすら執念深く絵を描くことに拘った人生は
 なかなかこの現代にあらわれるかどうか、と暁斎おじの弾けた
 出っ歯に想いを投げかけるのでした。

 9月6日までの会期末が見えてきました。
 そろそろ混雑してきそうです。
 何でも描いてしまう暁斎と、その弟子、コンドルとの交流に
 ぜひ、注目して頂きたいものです。 
 これからも、暁斎の仕事、注目していきたいと思っています。 


Viewing all 295 articles
Browse latest View live