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Channel: あべまつ行脚
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京都 真言宗智山派 総本山智積院

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 京都国立博文館の「山楽・山雪展」で
 濃厚な鑑賞を経て外に出ると
 いつのまにか外は熱気と太陽光線の激しさで驚きましたが、
 すぐ近くの智積院へお参りすることとしました。

 なにしろ、長谷川等伯の国宝障壁画がこのお寺の寺宝ですし、
 狩野永徳時代、突如強敵現るだった、等伯という存在ですから
 ぜひに拝見したく思いました。
 若葉の緑が瑞々しい庭園横の収蔵館に入ると
 下界から遮蔽された中に
 楓図・桜図がどーんと現れました。

 智積院の画像から こちら
 この絵を描いていた頃は、等伯充実の時だったはずですが、
 桜図を描いた息子久蔵26歳を失う不幸に見舞われます。
 父等伯の嘆きは如何ばかりだったか。
 その物語と共に楓図と桜図が並ぶことにより一層情感が深まって
 迫ってくるものがあります。
 この絵を描くための筆遣い、等伯の過ごした時間がここにあるのです。

 しかし、如何にせん収蔵庫。
 国宝として安全に保管されている、という感が否めません。
 東京国立博物館で展示されたときの華々しさは
 檜舞台をしつらえてもらったからこそなのでしょう。
 
 気持ちを切り替え、庭園を拝観することにしました。
 この庭園は、利休好みといわれ、中国の廬山を模って造園されたそうです。






 園内に建つのは智積院講堂。
 その中に今の時代と思われる襖絵が見えました。
 ぞっとするほどの美しい木立に目を奪われました。
 作者は田淵俊夫画伯。芸大副学長を務められ、
 平成20年に奉納されたそうです。

 既に展覧お披露目があったようです。
 こちらに紹介されていました。

 日本の春夏秋冬を題材にした墨絵の襖絵とのこと。
 ふいに静かな夢想の情緒に迷い込んで言葉を失います。
 しだれ桜の妖艶で儚げな姿に、
 先月突如天界に旅立った友を思い出し、
 ここで祈りを捧げようと手を合わせました。
 安部龍太郎著「等伯」という小説が新聞小説として取り上げられた後に
 直木賞を受賞したのも去年のこと、その話も彼女としていました。

 人生はどう終わっていくのか、誰もそれをコントロールできるものではありません。
 散りゆく桜の花びらとともに、
 そよぐ風の向こうに行ってしまっただけのことで、
 こうして思い出や、これからのことを語り合える時間が
 まだまだ続いていることに、少し安堵して、
 理不尽を恨んでみても何も生まれない、むしろ負のスパイラルに
 健全な精神を落とし込むことになりそう。
 それよりも、ずっと面白く美しい時をどれだけ楽しめるか。

 そういうことね。
 
 ふっと気持ちが切り替わり、庭園の緑の生命力と
 現代の模写による等伯の障壁画に囲まれた
 桃山の息吹の典雅な空間で、まだまだ元気で美しいものを
 見つけていくわよ、と誓ったのでした。
 













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