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お伽草子 この国は物語にあふれている ・サントリー美術館(レクチャー)

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酒呑童子絵巻 狩野元信

 楽しみに心待ちにしていた「お伽草子」展がサントリー美術館でいよいよ開幕しました。
 その展覧に会員メンバー対象のレクチャーがあったのでメモを簡単に残そうと思います。
 箇条書きで読みにくいかとは思いますが、こんな事を伺ってきました。

今回サントリー美の学芸として赴任した
上野学芸主幹が初仕事として「お伽草子」展を担当されたそう。

 ・サントリー美でのお伽草子を取り上げる展覧は30年ぶりとなる。
 ・BS ぶらぶら美術館の放映が10月9日の予定。
 ・サントリー美のレセプショニストの制服が新調された。

という前振りのお話しからいよいよ本題に。

 ・そもそもお伽草子というのは1670年までの短編ものの物語りで
  420編の多種類に渡る。
 ・以降、江戸中期から後期まで人気のあるロングセラーで、
  本展で紹介される箱入りの渋谷版23編のものが基本となって伝えられてきた。
 ・約420編の総体を「お伽草子」
  核となる23編を「御伽草子」と「お」「御」を使い分けている。
 ・戦乱期にあって人々の奇想天外を望んだ物語となった。
 ・昔むかし物語りというのは平安期の貴族に限定されていた。
  後に公家の弱体化とともに物語りも弱体化し、
  他のモノが芽生える、お伽草子の芽生え。
 ・お伽草子として、まずは短編であること、
  挿絵があること、新規の話であることが特徴づけられた。
 ・今回は「長谷雄草子」が展示されるが、
  くりかえされる戦いに短編が好まれ、庶民、神仏の子、化身、
  動物、鬼が主人公となった。
 ・その「長谷雄草子」に朱雀門で鬼と双六をするシーンがあるが、
  漫画の起源のような盤を叩く表現をが見える。
  永青文庫所蔵品
 ・この話はお金と女を賭けた鬼との戦いで長谷雄が勝った褒美に
  女を得るが、条件として百日待てば自分の女となるから
  けっしてその禁を破ってはならないという厳しいもの。
  しかし、毎日麗しい女性が目の前にいては、長谷雄はついに80日にして禁を破ってしまう。
  ところが、女を抱いてしまった瞬間水に変わり流れてしまう。
  このように貴族が女に負けたり、金を賭けたりする姿を楽しんだ。
  近代の子どものための「おとぎばなし」とは違った、大人が楽しむものだった。
 ・お伽草子の絵や、絵巻ものの絵の表現は
  伝統的な絵で、その表現のすばらしさからも上層階級が読者であったことがわかる。
 ・「福富物語」という放屁の話は
  放屁によって鈴を鳴らす珍芸が褒美をもらう奇想な話だが
  褒美をもらったことを羨んだ隣の者に朝顔の種を飲めば良いと
  下剤効果のあるものを勧めてしまう。
  そういった低俗と思われるような話を鑑賞したことが
  宮内庁の文献に残る。
  貴族皇族のような上流階級が庶民の下世話物を読んで楽しんでいたことがわかる。
 ・武家の台頭が進むと化けもの草子、今昔物語が生まれる。
 ・武家の秩序を守る礼節教訓が大流行し、それが屏風にもなる。
 ・作者、注文主、制作年代がわかる稀なものもある。
  狩野元信が描き、北条氏綱の注文により、1522〜1531までに完成した事がわかる。
  奥書は三条西実隆が記している。
  「酒呑童子絵巻」は特別な物。(サントリー美所蔵)
 ・大名が一流の絵巻物を持つということがステータスとなった。
 ・時代が下がると世の中の下克上とともにお伽草子にも下克上が起きる。
  公家の文芸界をになってきたお伽草子に
  武家、町民、僧侶が加わる。
 ・主人公は滑稽、皮肉もの。僧侶さえ笑いの種となる。
  「ささやき竹草子」は老僧侶が見初めた女性の両親の元に
  夜、忍び込んで父親の耳元に長い竹竿を差し込んで、
  なんとか手に入れようとする。
 ・「おようのあま」という草子では夜に男の下に忍び込む
  たくましい女性を描く。
 ・絵の表現様式も変化する。
  稚拙な煙の表現を浦島草子に見ることが出来る。
  絵と文章を同人物が手すさびで画いた。
 ・享受者としても絵巻物語りの大量生産が始まり、
  大量享受も始まった。
 ・物語の場面として、「清水寺」が多く登場する。
 ・お伽草子の約一割に清水が使われる。
 ・ものくさ太郎の辻取り現場も清水。
 ・男女の巡り会うところとしての清水寺。
 ・二重瞼のイケメンを描いた28才の女性絵師であることがわかった。
 ・室町時代の現世利益は長谷、石山、そして清水であった。
 ・動物のお伽草子、鼠の草子は実は教養のあった源氏物語を理解した
  高尚な人々であった。
 ・物語りに歌が詠まれているがそれらは源氏物語を知った上での
  歌であったことがわかる。
 ・お伽草子は次第に変化を続け、付喪神物語り、
  百鬼夜行物語へと続いていく。
 ・闇の漠然とした怖さを明るくとらえた。

以上の点をスライドを通しての解説を約30分聞くことが出来、
その後、実際の展示鑑賞にとても役立ったのでした。

このレクチャーをより深く理解するためにも
「図録」をよろしくお願いします、と最後の言葉で締めくくられたのでした。
「図録」とても丁寧な作りで、しっかり求めて帰りました。
学生時代から親しんできたお伽草子、より一層楽しく
面白く、その魅力に触れることが出来ました。

会期は11月4日までと長目なのですが、展示替えが随分あります。
リストチェックなどして
何度も足を運ぶことお勧めします。(会員になるとお得感ありますね〜) 

サントリー美のお伽草子の解説はこちらから

奇想天外、エログロが盛り沢山の大人のファンタジー
お伽草子のユニークなパワーをこの目で確かめて
ぜひ大笑いして元気になってもらいたいと思いました。

おまけ

これが、噂のイケメンの絵。
しぐれ絵巻から

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