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現代美術のハードコアは実は世界の宝である展 ・東京国立近代美術館

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 実はこの派手派手しいチラシに目くらましをくらっていまして、
 一体何が起こったのかと
 見に行くにはこちらのコンディションを整えなければならないと
 気合いを入れていきました。

 その前に、近美の常設展を見ておかなければ、
 きっと頭の中の混乱が予想つくのです。
 近美の常設は幅広く、
 速水御舟、鏑木清方、岸田劉生、河野通勢、古賀春江、北脇昇、岩田専太郎、恩地孝四郎、
 丸木位里、水越松南、河原温、荒川修作、草間弥生、山下菊二、
 中村宏、杉本博司、・・・・
 私のご贔屓筋が乱立しておたおたしてしまいます。
 こういうこともあって、
 最近は企画展を見る前に常設展を鑑賞することにしています。
 受付カウンターにその旨お願いすれば、なんなく常設へ向かうことができます。
 企画展の残像を背負って常設を見るととてもつらいことになるのです。

 じりじりと焼け付く竹橋の太陽は
 入り口にに設置した巨大なオブジェを日焼けさせるのではないかと危惧します。
 白い肌で、ややこしく屈折していることに驚愕しながら、ハードコア展に突入します。
 巨大女性像は マーク・クイン 「神話(スフィンクス)」





 このコレクションは
 台湾資本の電子部品メーカー、ヤゲオ・コーポレーションのCEOである、
 ピエール・チェン氏のもので、今や世界トップ10入りしている
 著名なコレクターなのだそうです。
 台北「國立」故宮博物院のお宝が東博で展覧中ですが、
 アジア圏、台湾の現代アートコレクションを見る機会は初めての展覧でした。
 今年はちょっとした台湾ブームなのかも。

 中へ入っていきなり、マン・レイ、リキテンスタイン、ウォーホル!!
 近美の企画展会場の特徴である長い廊下状の展示コーナーには
 中国の近代、現代作家作品がずらり。
 こちらの作品群は東洋絵画のDNAがあって親しみを持って見ることができました。
 もう少し、中国現代作家のこと知るチャンスがほしいとも思いました。

 長い展示が切れて景色が変わると
 マーク・ロスコの黄色系暖色の作品、
 その奥に杉本博氏の海景を思う、二作品が
 「最後の晩餐」の長大なモノクロを挟みます。
 やられた感に浸りながら、このコレクションに寒気立ちました。
 振り返るとゲルハルト・リヒターの一瞬ずらした危険な肖像画が並びます。
 「毛沢東」はちょっとしたショックです。
 リヒター作品はなんと6点も出品されていました。
  
 この展覧は、今、あなたがあふれる財力があったならば、
 世界のどんな芸術作品をコレクションしますか?という
 あり得ない妄想も伏線に忍ばせてくれます。

 そして、次の間に入ってまたくらっとしました。
 去年訃報がニュースとなった、ザオ・ウーキーの作品が
 4点も並んで囲まれます。
 色のにじみに儚いたゆたう生命を感じる、日本のもののあはれ、それにも
 通じるような墨色をカラープリントしたらこんな風に見えるのではないかと思います。
 この日丁度、ブリジストン美術館所蔵のウーキー作を見てきたばかりでした。

 次に現れたのは グルスキー作品。
 去年、国立新美術館で初めてグルスキー展をみて
 写真の持つ破壊的作戦に感嘆したのでした。
 以来、集合体マッスを見ると、すぐにグルスキーだと変換してしまいます。
 彼のどうしようもない写真力にはテンションが上がります。
  
 キャンバスに藁束が貼り付けられた4メートルもの作品、
 アンゼルム・キーファーの「君の金色の髪マルガレーテ」
 金髪を束にしたものがバラバラ点在しているのは
 なんだか不穏です。1945年生まれの作家。

 そして、ツァイ・グオチャンの「葉公好龍」
 火薬を仕込んでその焼けた後を作品にする日本でも著名な作家作品を
 初めて見ることができました。
 火薬がバチバチ音を立てて焼け跡を残した音も残されているようです。
 そしてそして、
 なんと、フランシス・ベーコンの3連作が!
 「ルシアン・フロイドの肖像のための三習作」
 「教皇のための習作 Ⅵ」
 
 デヴィッド・ホックニーの「学位のための人物画」
 
 ラストの展示には人形造形、チラシに掲載された金色のミニチュア、
 なぜか、川端康成に捧ぐという副題が付いた
 「名人」4連作は碁盤に碁石を拡大した無駄のないクリアな線と色で 
 表現していて、とても静かな印象を受けました。
 ホセ・マリア・カーノによる、小泉純一郎、マドンナの肖像。

 意表をつかれ、鳩が豆鉄砲状態で出たのでした。
 出口サイドに
 妄想コレクションゲームが設置されていて、
 50億円の予算でお好きに購入してみて下さいと投げかけられたので、
 恥ずかしながら挑んでみましたら、
 1億4286万円不足と云われました。
 ロスコーを入れたのが敗因だったかもしれません。

 とはいえ、ヤゲオ財団コレクション、これはショッキングなコレクションでした。

 後もう少しの会期、あのチラシにだまされてはいけないと
 まだ未見の方にはぜひにもお勧めしたい展覧です。
 遅まきながら、あのチカチカは鑑賞後の頭の中を表現したのかも?と思いついたこところです。

 サイトはこちら  

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