Quantcast
Channel: あべまつ行脚
Viewing all 295 articles
Browse latest View live

没後10年記念 宗左近詩碑建立の活動に参加して

$
0
0

 季節は巡り、今年はあと二月となりました。
 約一年半前から活動していた、協賛金活動が無事終了し、
 会計監査も無事に認められ、目標としていた
  没後10年記念 宗左近詩碑建立
 
 そのモニュメントが市川市里見公園内に
 まるでずっとそこに立ち続けていたかのように設置されました。



 活動の進捗報告など、ブログやFacebookなどをもっともっと活用できれば
 スピーディに現場画像などもお伝えすることなどができたのですが、
 なかなか手詰まり、人手不足など 精鋭(?)少人数で回っていましたので、
 致し方なかったことと、反省しつつも、できるだけのことに
 奮闘してきたと感じています。

 そもそも、このあべまつ、がなぜ関わってきたのかというと、
 市川在住時代にひょんな事からご縁を頂き、
 宗先生のご自宅マンションに親しく通い、大変お世話になって、
 そのご縁もありながら、奈良に住んだこともあったのでした。
 二十代の頃でした。
 
 宗先生は、詩人、法政大学教授、美術評論家でもあり、
 校歌を三善晃氏とコンビを組み三善晃氏が作曲、宗先生が作詞を多くつくられました。
 詩作では「炎える母」で歴程賞受賞、詩集「藤の花」で詩歌文学館賞受賞などしています。
 市川に長らく住みましたが、生まれは北九州戸畑。東大哲学科卒。
 1919〜2006 87才

 それまで、宗先生の偉大さとか、何を詩作されてきた方なのか、
 法政大学で何を教えてこられたのか、
 まったく知らないまま、近くの文化度の高いえらいおじさん宅にお邪魔する
 そんな心つもりで親しく通っていたのでした。
 最初は夫人にお誘いを受けてお邪魔するようになったのですが、
 不思議なご縁が続いたものです。

 夫人は、宗香という名前で帽子作家として活動していた時期がありました。
 サイトにまとめて頂きましたので、ご紹介します。 こちら
 圧倒的に突き抜けている造形作家だったと思います。

 その後、私自身の人生の双六のコマがなかなか複雑で、
 ご夫妻とお目にかかれずに、仕事に結婚、子育て、乳がん闘病などで
 余裕のない生活をしていたわけですが、
 愚息がなんとか手がかからなくなってきたこともあって、
 宗先生没後5年頃から、夫人のお手伝いをするようになりました。

 そして、夫人が病気を得て、なかなか生活も思うように暮らせなくなり、
 いよいよ命の炎が消え、去年4月1日に宗先生の元へ旅立たれたのでした。
 夫人存命中から詩碑を市川にも建てることを願って、活動を進めていこうという矢先の事でしたから、
 なんとか、詩碑を建てて、
 すでに記念モニュメントがある、北九州、宮城の中新田、(今は加美町となりました)
 とともに、縁の深い三カ所が宗左近のトライアングルとなるよう、
 市川の地でもぜひに、と活動が進められてきたのでした。

 ここにブログを開設して下さった方がいるので、
 ご紹介します。

 宗左近ブログ 


 本当に力強い方々との活動でした。
 お陰様で、宗先生と香夫人にきちんとご報告ができるよう、
 心して励むことができました。
 アート・ブロガーのTakさんの応援も頂きました。
 記事はこちら
 
 今後も「宗左近」という大きな大きな縄文の詩の神様とともに、
 香夫人の類い希な才能も忘れず、しっかりとものをみつめることを
 大切に人生を努めていこうと思います。 
 
 私の中で、きっと宗左近夫妻の圧倒的なものを真剣に
 純粋にみる、ことを目の当たりにしたことが大きく影響されたのだと
 ありがたく感謝するしかないのですが、
 文学、哲学の素養もないにもかかわらず、
 これからも、宗先生から頂いた言葉、
 「網膜の拡大と突破を」を忘れずに大切にしたいと思います。

 応援頂いたみまさまへ、ありがたく御礼申しあげます。
 季節の良いときに市川里見公園の花々とともに、
 ぜひ、詩碑をごらんにお出かけしてみて下さい。
 市川駅からバスで国立病院下車し、江戸川に向かって徒歩5分程度です。

 詩碑の完成を安堵と解放と宗先生、香さんへのご報告を喜びにかえて。

 「宗佐近」この詩の巨人、ぜひチェックしてみて下さい。

アート鑑賞記録(2016年 8月) 

$
0
0

 年末間近だというのに、夏、8月からの記録で、記憶が危ないところ、ご容赦下さい。
 
 *東洋・日本 陶磁の至宝 出光美術館
 出光美術館は今年50周年記念を迎え、大々的な展覧会を開催してきました。
  「美の祝典」では日本美術の潮流をくまなく観るとともに、
  「伴大納言絵巻」の公開など貴重な展示品にも巡り会うことができました。
  その後、開催されたのがやきものの至宝。
  「東洋・日本 陶磁の至宝」展。
  いやはや、本当にお宝が行列の展示ケースに息をのみました。
  中国の随、唐、北宋元、明、清、の景徳鎮窯
  朝鮮からは高麗、李朝時代の優品、
  そして、日本の陶磁器の代表者が作陶してきた名品たち。
  やはり桃山の陶磁器は特出して逸品ぞろいだと感じ入りましたし、
  江戸前期までにやりきった感があるように思えました。
  光悦、仁清、乾山、長次郎、彼らが日本の陶磁器の神様だと思いました。
  その後、出光所蔵として名高い、板谷波山の作品に続いていきます。
  陶芸史としても外せない、立派な名品を時代の流れと共に鑑賞できた
  有意義な展覧会でした。
  

 *シーボルト日本美術館展 佐倉歴史博物館
  夏のイベントとして、友人と共に、佐倉までいってきました。
  その記事をご参照下さい。
  こちら
  シーボルト展はこちら


 *伊豆下田 上原美術館
  両親の暮らす伊豆高原に愚息と姪っ子をお供して行ってきました。
  その際、姪っ子と何処に行こうかと思っていたところ、思いがけず、
  「上原美術館」をアート鑑賞で交流している方からご紹介頂きました。
  その美術館の照明にも関わったとのこと。有り難いことです。
  また、その方からのお声がけで美術館の方に展示解説までして頂きました。
  それにしても、下田の駅から山の方に向かって、美術館があるとはまったく知りませんでした。
  大正製薬のコレクションだそうで、
  それもまた、驚きでした。
  美術館の横には仏像美術館が改装建築中で、完成が楽しみとなりました。
  展覧会は「はじまりの絵画」画家の新たなものがたり
  安井曾太郎の作品が何点も並ぶ中、目を引いたのが
  ゴッホによる「窯で刈る人(ミレーによる)」
  ゴッホ27才のころのもので、デッサン画として残っていることが大変珍しく、
  よくぞ発見されたという作品でした。
  ほか、須田国太郎の作品も多く展示されていました。
  作家のまだ若い時代のフレッシュな生命力溢れるに緑溢れる作品群でした。
  それと、美仏像が一体「十一面観世音菩薩立像」
  解説を伺えば、桜材の仏像は大変珍しいとこのこと。
  きっと縁ある桜の木を願って使用することで冥福を祈る、
  そういったこともあったのでしょうか。
  見晴らしの良い高台のうえに、近代的な建築でコンパクトでありながらも
  コレクションの質の良さに癒やされる素敵な所でした。
  現在は「冬の情景、そして春へ」モネから横山大観まで が4/2まで開催中です。
  伊豆下田へお出かけの際は、ぜひお出かけしてみて下さい。
  突然押しかけましたのに、姪っ子共々お世話になりました!!

  美術館のサイトはこちら
  





  
 *大妖怪展 東京江戸博物館
  夏は妖怪、おばけのシーズン。
  今年も愛おしいくも危ないお化けたちが集合しました。
  今回は国宝、重文の妖怪もそろい踏みです。
  会場の江戸博に大勢の夏休み中の人々が集合して熱気もむんむんでした。
  展覧の監修が、あの安村敏信センセ!面白くないはずがありません。
  日本で異形、魔界の鬼、もののけが登場して以来、縄文から平安の地獄絵、
  室町からの絵巻、江戸は浮世絵、現代の妖怪ウォッチまで、妖怪ジャンルの
  つわものどもが集結しました。
  会場の展示にも工夫が彼方此方。
  図録も面白デザイン、怖いけど、愉快痛快チャーミングな異界の
  キャラクターたちフェスにこちらも始終ニコニコ見て回ることができました。 
  
  


  同時に、伊藤清雨の企画展示もあり、
  そらおそろしいお化けを描いている絵師ですから、
  ワクワク拝見しました。
  なんていっても筆の巧さ、かっこよさに惚れ惚れ致しました。
  ジブリの鈴木敏夫さん監修のブースもあり、それも楽しむことができました。
  伊藤晴雨にそうとう入れ込んでいたようでした。

  


 夏の企画展、子供達と一緒に楽しめる企画が満載で、ご一緒された方も
 多いと思いますが、観て感じる、その楽しさが小さい方にも感じられますよう
 すでに一緒に何かを観る、という事がなくなってしまった
 愚息の小さい時を思い出しながら。

アート鑑賞記録 (2016年9月)

$
0
0
 
 秋の始まりは大変遅く感じた今年でしたが、各所で充実の展覧会が開催されました。
 熱狂したのは、サントリー美術館での「鈴木其一展」で、3回通いました。
 また、写真美術館が改装後リニューアルオープンに杉本博司展にも2回行きました。
 アート鑑賞シーズン到来、という時がきた実感がぎゅんと迫ってきました。
 9月の展覧会鑑を回想してみます。

 9月

 *はじめての古美術鑑賞 根津美術館

  古美術という作品を鑑賞するに当たって、様々な技術方法の名称を知っていると
  鑑賞眼が一段と深まるというものです。
  なんとはなしに目にしてきた作品が、そういう技術方法があったのかと
  改めて作品に敬意を持つ事ができます。
  そんな切り口の展覧会を企画してくれました。
  「たらしこみ」「うらはく」「はつぼく」「きりかね」
  「はくびょう」「つけたて」「きんうん」「そとぐま」等々
  毎度ながら、根津美術館蔵の充実にため息を漏らしてきました。
  

 *シャガール、ヴラマンク、キスリング、、、館蔵7作家による
       ヨーロッパ近代絵画
  松岡コレクション 中国の陶磁 宋から元まで   松岡美術館

  庭園美術館に行くときは松岡にも行くべきでしょう、と通っていましたが、
  大変のご無沙汰、失礼しました。
  目黒方面に出ることがなかなか遠くて、叶わない数年でしたが、
  行った事がないという友人を伴って行ってきました。
  美術館の建築姿も美しく、セレブなお宅訪問のような気持ちとなります。
  この美術館は随分前からカメラOKなので、今回もさまざま撮影してきました。
  見る楽しみと、撮る楽しみがいっそう鑑賞の気持ちを盛り上げてくれます。
  中国の陶磁器の中で、宋〜元の期間の生まれた陶磁器は本当に美しいものが
  勢揃いです。定窯、磁州窯、龍泉窯、景徳鎮窯、名だたる窯から生まれた
  名品がケースぐるり並ぶ様は壮観でした。









  隣の展示室には キスリング、ユトリロ、シャガール、ヴラマンク、
  その中に藤田嗣治などが入り、
  品の良いリビングにお邪魔したような気分となりました。








  個人の邸宅で収集したコレクションを拝見できる、
  ゆったりとした雰囲気を味わいながら、西洋、東洋の芸術作品を
  鑑賞できる、唯一の場所です。

 *茶の湯ことはじめ 畠山記念館
  高輪の閑静な住宅地に静かな佇まいの畠山記念館。
  そこのすぐ隣に白亜の御殿が建って、毎度、ギョッとするのですが、
  お金に不足のない方が日本にこのような建物を建てようとすることが
  不明なことです。
  という感想もいちいち喧しくて申し訳ないのですが、
  余りにも畠山記念館の緑深い環境と異次元なので、ついつい。
  今回は茶の湯に触れたことのない方も楽しめるよう、工夫された企画展です。
  とはいえ、所蔵品の品格に定評があるところですから、
  きっちり、魅せてくれました。
  珍しかったのは、仁清作 「錠花入」 大きな木製の錠前の形をした
  やきもので掛花用の筒型で、造花朝顔が一輪が入れてあり
  畳の上に上がっての鑑賞場所で、一幅の絵となっていました。
  他、大のお気に入り、唐物籐組茶籠、
  黒楽茶碗 銘 馬たらい 楽一入作
  雨漏堅手茶碗、堅手片口茶碗、などなどがあり、
  茶の湯で使用される名器が一同に並んで、
  重厚感があるようで、大変わかりやすい夏使用の茶器が並びました。
  レクチャーや、ミニトークなども企画されていて、
  チャンスのある方は気軽に楽しめたのではないでしょうか。

 *ガレとドーム展 日本橋高島屋 

  ガレとドーム作品は一体どのくらい世の中にあるのでしょう。
  何度も見てきている作家、工房であるのに
  今回もまた美しくも可憐な作品を見ることができました。
  ガレはガラスばかりではなく、ファイアンスと呼ばれる
  軟質陶器も精力的に作陶したきたようで、今回多数展示されました。
  丁度知り合いのアンティークショップのお手伝いをしたところ、
  ガレのファイアンス作品が店頭に並んだこともあり良い機会でした。
  ドームにしても、ガレ同様、ジャポニズムに強い影響を受け
  日本の動植物があちこちに現れます。
  サントリー美術館での「ガレ」展、
  三井記念美術館で開催された「アール・ヌーヴォーの装飾磁器」展に
  繋がる、好機でした。

 *12Rooms  東京ステーションギャラリー

  現代美術コレクションとして世界最大規模を誇る、UBSアート・コレクションが
  東京ステーションギャラリーに集結します。というのはフライヤーの一文ですが、
  世界で優秀な企業がアート作品のおおいなるスポンサーであることの正義というか、
  うらやましさというか、芸術への門戸が堂々と開かれていることに清々しささえ感じてしまいます。
  投資、と言う意味合いもあるのでしょうか。
  それでも感性に響き合うものをコレクションすることで
  その企業のステータスは必然、美化されるのだと想像します。
  その長大なコレクションからセレクトされた12名のアーティスト作品が並びました。
  スーザン・ローゼンバーグ、エド・ルーシェイ、荒木経惟、陳界仁、
  アイザック・ジュリアン、ルシアン・フロイド、アンソニー・カロ、
  小沢剛、ミンモ・パラディーノ、リヴァー二・ノイエンシュヴァンダー、
  デイヴィッド・ホックニー、サロンド・キア
  見知った作家名と知らない作家が混在しますが、
  エッチング、シルクスクリーン、写真作品が多い中、
  カロのオダリスクが充実観あるブロンズ像でした。
  ステーションギャラリーの企画展は毎回、工夫に充ちていて、
  ワクワクさせてもらえます。

 *千家十職の軌跡展 日本橋三越

  お茶の千家に関わる、十職の仕事ぶりを一望にできる
  滅多にない展覧でした。
   土風炉・焼物師 永楽家
  楽焼・茶碗師 楽家
  釜師 大西家
  一閑張細工師 飛来家
  袋師 土田家
  塗師 中村家
  竹細工・柄杓師 黒田家
  表具師 奧村家
  指物師 駒澤家
  金物師 中川家

  この十職がどんなものを千家、茶道に捧げているのか、
  圧巻の展示作品でした。
  1回目に鑑賞した際、大変な混雑でしたので、
  日を改めてゆっくり鑑賞しなおしました。
  お茶の頂上が集まったのでした。 

 *たまふり弐 ギャルリさわらび



  御贔屓の佐々木誠さんの木彫展が銀座の奥野ビルにあるギャルリ「さわらび」で
  開催されました。
  何回か伺うごとに、安心の場所、のようなギャラリーとなりました。
  毎回、作家の佐々木さんともお目にかかり、オーナーの田中さんとご一緒にお話を伺えることも
  楽しみの一つとなりました。
  「たまふり弐」
  現代に命を繋ぎながらも、佐々木さんの視点は遙か、
  古代大和国を見つめながらほとばしる魂の住処である木に
  鑿目を刻んで見る人に迫ってきます。
  その鬼気迫る緊張感と、命の塊にぞわっとするのでした。
  オーナーの田中さんのお手を煩わせ、影が美しかったので作品を持って頂きました。








 *メッケネムとドイツ初期銅版画 国立西洋美術館

  今年の西洋美術館は目玉揃いで、本当に歓喜の声を上げました。
  その中では、地味な展覧と思われがちですが、
  版画好きにとって、とても興味が引かれる作品群でした。
  キリスト教が主題の物が多い中、なんとはなしに俗の香りがして
  ユーモアも感じられます。
  同時期のデューラーなどの作品を大量にコピーする傍ら、
  その後、クラ—ナハにつながるようなダブルポートレートを
  制作します。
  この頃既にオリジナルとコピーの問題が生まれてきたことも
  興味深いものでした。
  この日は、コルビュジエ建築を観察することも楽しんできました。
  心地よい建築物の中でゴージャスな西洋美術史を網羅する
  西洋美美術館、常設の作品、スポットの企画展、
  毎回おおいに堪能できる唯一の場所です。
  ユネスコ世界遺産に登録され、入館者がぐっと増え
  人気も急上昇のようです。














 
 *杉本博司 ロスト・ヒューマン展 東京都写真美術館



  東京都写真美術館のリニューアル完成のこけら落としが
  「杉本博司 ロスト・ヒューマン」
  杉本博司氏の紡ぎ出す世界観に惹かれ、展覧、お芝居など
  チャンスがあれば駆け付けようと思うようになりました。
  鑑賞するそのものに溺愛を捧げては本来の実際を見落とすのではと、
  一定の距離を置きたいと牽制するのですが、
  杉本博司界には、いちいち妙な反応の針が動いてしまいます。
  東京都写真美術館、「TOP MUSEUM」と名称も新になりました。



  その3回展示室では、〈今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない〉
  と言うタイトルで、杉本氏の数寄者ぶりに文明が終わるという想定の下、
  33の物語に各界の著名人直筆の解説文が色を添えます。
  この話にあの方が直筆で!!
  そういった楽しみも多いに心沸き立つ仕掛けでした。
  展示は荒れ果てたソーホーのような古ぼけた壁に腐食したトタンが張り巡らされ、
  この世の末期状態をそれぞれのストーリーの部屋ごとに
  古美術とコンテンポラリーを取り混ぜた怪しい気配。
  片隅には劇薬の入ったいると思しき小さなガラスの薬瓶が
  確信犯的にソッと置かれています。
  物語一つを取り上げれば長々しくなるので省略しますが、
  ともかく、もう一度見に行かねば、気がつかないことが隠れていそうでした。
  33の物語の衝撃と余韻に浸るまもなく、
  次の展示室には漆黒の大画面写真が並びます。
  劇場シリーズの〈廃墟劇場〉
  三十三間堂の〈仏の海〉光学五輪塔。
  大画面の写真にかけた時間が途方もないことを知らされますが、
  周到に準備し、その作品に集約する光源の顛末に
  写真ということの意味が無意味に感じさせられ、途方に暮れます。
  そんな理解しようとすると混乱するループにはまり、
  結局は杉本氏の思うつぼにはまりに行ったようなもので、
  小気味よく罠にかかりに行く、そういうこともあっていいのだろうと
  ひねくれた実は純粋な美の妄想伝道者に跪くのでした。

  その後、またまんまと罠にかかりに行き、やはり杉本世界に
  とらわれるのでした。
  
 *鈴木其一展 サントリー美術館

  「鈴木其一」江戸琳派酒井抱一の後継者である、その人の
  一大展覧会が開催されました。
  鈴木其一の名前を胸に刻んだのは2006年の東博、その名も
  プライスコレクション「若冲と江戸絵画」
  そこでは江戸琳派の抱一の後に紹介されて、 
  淡々とした写生の上手い、クールな筆が気になりました。
  この年にはバークコレクション展も開催され、  
  遅まきながら、江戸絵画を知る上で貴重な展覧会続出の一年だったように思います。
  その次に2008年、これも東博で開催された「大琳派展」継承と変奏 でした。
  大琳派展では、其一作品は24点もの数が出品されて、おおいに其一作品を
  堪能する事ができたのでした。
  宗達、光悦、光琳、乾山、そして酒井抱一までが琳派主流の作家たちですが
  その最後に現れるのが其一でした。「きいつ」と読むあたり、
  抱一「ほういつ」の継承者だと感じ取ることができます。
  以来、いつか、「鈴木其一展」と期待を寄せていましたが、
  いよいよよ念願の大展覧会が開催されたのです。
  サントリー美術館の会員になっているので、ぜひにもと内覧日に行き
  レクチャーを拝聴し、その後、2回通いました。
  「大琳派展」との再会の作品もありましたが、
  なんと様々な仕事のできる人なのだろうと、感嘆しました。
  抱一の存命中は抱一の片腕に徹し、品の良い江戸の粋と琳派の風が吹いています。
  その師、抱一が亡くなった後、ようやく其一の本来の性分が表れてきます。
  「朝顔図屏風」
  その妖しさは朝顔を題材にし其一が独立しどうしてもやりたかったことを
  屏風全面に表現した、そんな情熱と執念を感じました。
  「夏秋渓流図屏風」
  このミステリアスな画面は静寂を極め、群青と黄金色に緑青の三色が
  林立する桧林をうねる妖しさ満点の屏風絵です。
  写実的動植物は添え物のようでもありながら、
  ちゃんと詳細な図も描けるのだと見る人に訴えてきます。
  琳派や抱一ばかりではなく、円山応挙を学んだり、
  写実への好奇心、描表装などの工夫、見る人へのサービス旺盛な技術、
  下戸の抱一と違って、相当飲めて、ちょっと酒癖も悪い面があったとの
  図録寄稿文を読んで興味深く思いました。
  今年を振り返ってもこの展覧会は燦然と煌めいています。
  メトロポリタン、ファインバーグ、近くは足立区郷土博物館、
  細見、出光、根津、太田、畠山、千葉市美、東博、等々から作品が結集し、
  個人蔵の作品も多く加わり、大々的な其一展が開催されたこと、
  大変有り難い企画展でした。
  今年も、サントリー美術館開催の展覧会は極上揃い、
  また来年も楽しみに期待しています!




  やれやれ、9月まで、こぎ着けることができました。
  今年中に終えることができるのやら〜
  暮れのお忙しい中、ご訪問に感謝致します。

2017年 平成29年 謹賀新年

$
0
0

 2017年、平成29年 新年あけましておめでとうございます。

 昨年に引き続き、ゆるゆる遅延の「あべまつ行脚」をよろしくお願い致します。

 今年は 年女、還暦を迎える、記念の一年となります。
 まぁ、大変な年増になったものだと、他人事のように感じられます。
 とはいえ、いつもながらのマイペース、気が向く風にふわりのりながら
 ゆるゆるお付き合いお願い致します。

 それよりも、去年のアート鑑賞、どうするんでしょうね〜(冷汗)
 アートベストテン、放置するんでしょうかねぇ〜 (いや、やります)

 ということで、呆れた状態ではありますが、
 ご容赦頂ければと思います。

 お正月末まで、どこまでたどりつけることやら。

 皆様のご多幸とご健勝をお祈り申し上げます。

 昨年105才の祖母が天寿を全うしました。
 通例ですと、喪中なのでしょうが、長女の母も
 「105まで生きて、おめでたいことなんだし、
 あけましておめでとう、と言ってるわよ」と明るい声。
 そういうわけで、若干引き締め観はありますが、
 いつもと変わらず、新年をお祝いしたいと思います。
  


 あべまつ拝




 実母も酉年、私も酉年なので、親子鳥、のように
 春日大社の干支酉と、一刀彫り覚道さんの大きな鶏を出して飾りました。
 怪我病気に気をつけて、愉快に暮らしたいと思っています。

2016年 アート鑑賞ベスト10

$
0
0
 

 新年が明けてからの2016年アート鑑賞ベスト10となりました。

 昨年は大きなイベントの事務局として活動に奔走していました関係で
 なかなかアート鑑賞の機会を得ることができず、
 あたふたと過ごしてしまいました。
 鑑賞すると言うことは、見る側のコンディションがとても重要で、
 きちんと対峙することができなければ、
 何も見ていないこととなります。
 記憶にも残らないような、そんな申し訳のない鑑賞では
 展覧会にとても失礼なことをしてしまうことになりかねません。
 今年はそんなことが少なくなるよう、落ち着いた心持ちで
 ひとつでも記憶に残る美との出会いがあればと
 また飽きもせず、とことこ出かけたいと思います。
 
 では、10位から発表します。

 10 恩地孝四郎 国立近代美術館
    1/13〜2/28



   恩地孝四郎、その名前は「月映」という田中恭吉、藤森静雄の三人で木版画と
   詩の同人誌の存在を知ったときから、文芸と美術の蜜月の詩情あふれる
   切なさと挿絵木版画のシンプルではありながらも物語世界に引き寄せる
   不思議な力に胸が高鳴ったのでした。
   この展覧前に東京ステーションギャラリーの企画でずばり「月映」展を観ていましたので、
   会期初日にわくわく勇んで行ってきたことを思い出します。
   会場の静かさに驚きましたが、再訪した後期には
   日曜美術館などからの情報が起爆剤となって大勢の入場者が入って
   関係者ではないにしても安堵したのでした。
   「月映」での活動は若い恩地のほんの初期作品群であったこと、
   その後の活動は長く、夭折した田中恭吉、藤森清雄は53才で亡くなる中、
   64才まで精力的に制作を続けていたことを質量で驚かされることとなりました。
   「月に吠える」萩原朔太郎の装幀などの作品は有名なのですが、
   油絵作品も沢山制作していて、白馬会原町洋画研究所に通っていたとのこと、
   重厚感あるセザンヌに学んだような作品が展示されていました。
   しかし、彼の魅力は版画、挿絵、装幀にあるとどうしても感じてしまいます。
   また、写真作品もあらわれ、作品から被写体への命の形の美しさに
   導かれ、またそれを元に版画作品も生まれます。
   戦後の作品スタイルの変化も興味深いものでした。
   日本に留まらず、サンパウロビエンナーレにも参加し、旺盛な活動を展開しました。
   自由で軽やかで色彩の構成も時代の変化を肌で感じます。
   展覧のサブタイトルが「形はひびき、色はうたう」
   シカゴ美術館、大英博物館、ボストン美術館他、
   日本国内では版画所蔵の得意な美術館から集合していることも
   恩地孝四郎の評価が高かったことを知らされたのでした。
   それにしても、萩原朔太郎像の版画の迫力たるや。
   常設とのコラボも秀逸な近美、独特な視点での開催も近美ならではの特色だと
   工芸館もセットでお気に入りスポットです。  

 9 河井寛次郎と棟方志功 千葉市立美術館
   7/6〜8/28





   千葉市美術館の展覧会はいつも企画の練り方がかなり重層で、
   展示数の多さにも鑑賞する側にプレッシャーを与えてくれますが、
   それだけ気合いが入っているということの証でもあります。
   昼食もがっつり仕込んで、エネルギーチャージもしっかりして挑みます。
   民芸活動の騎手、河井寛次郎と棟方志功、二人を並行させて
   その活動の変化を時系列で辿る旅のようでした。
   たまたま作品解説の時間と遭遇し、参加して解説を伺ってきました。
   二人のボランティアの方が河井担当、棟方担当となって、かわりばんこに
   説明をしてくれるという、その工夫も楽しい企画でした。
   職業人タイプの河井寛次郎がコツコツと工夫する陶芸は  
   戦後、びっくりするほどカラフルになって、自由になっていく、
   一方の棟方志功は東北という土地の悲しみの中、ひたすら芸術家になりたいと
   エネルギッシュに彫刻刀を握り続ける、同時代の二人の活動に
   民芸活動、柳宗悦が要となって精力的な制作をしていくことを
   生々しく追いかけることができました。
   千葉美所蔵の関連展示もまた、秀逸でした。
   その後、日本民藝館で、「柳宗悦・蒐集の軌跡」展を見に行くこととなり、
   あらためて、柳宗悦の活動の影響力の大きさが途方もなかったことを
   感じたのでした。
    
 8 美の祝典 出光美術館
   4/9〜5/8  やまと絵の四季
   5/13〜6/12水墨の壮美
   6/17〜7/18江戸絵画の華やぎ



   出光美術館が開館して50周年記念事業としてもの凄い展覧会を開催しました。
   美の祝典として三部構成で出光美術館所蔵品で堂々のお宝を魅せてくれたのでした。
   「国宝 伴大納言絵巻」を上中下巻を各会期に展示するという特別展示にも
   注目が集まりました。
   我が家のフライヤーの山から丁度十年前のものが発掘されました。




   開館記念という節目に伴大納言絵巻きが登場する、そのことも
   大変おめでたい気がします。
   なにはともあれ、出光所蔵の国宝、重文、重美のつく名宝の
   ざくざくお出ましにひたすらため息を漏らした記念の企画展でした。
   出光美術館の心地よい広さ、暗さ、静けさとホッと一息つける
   お茶サービス、皇居を眺める休憩椅子、センガイ和尚の作品が多く登場する
   朝夕庵のしつらい、陶片の資料室、それらがワンセットとなって、
   お気に入りの美術館です。
   昨年の他の展覧会も大変楽しませて頂きました。
   「東洋・日本陶磁の至宝」「大仙厓展」「時代を映す仮名のかたち」
   そして、今年はいよいよ又兵衛。
   「岩佐又兵衛と現時絵」展が8日から始まります。
   陶磁の専門でもある出光美術館、「古唐津」の展覧も心待ちです。   

 7 動き出す!絵画 ペール北山 東京ステーションギャラリー
   9/17〜11/6



   まったく知らないおじさんがフライヤーにいまして、
   何とはなしにそそられる雰囲気がありました。
   その妙な感は大切で、実際会場に踏み入れて
   本当にびっくりしました。明治末の文芸誌「白樺」等の時代、
   美術専門誌として「現代の洋画」を創刊したのが、北山清太郎。
   この人の存在が同時代の画家たちにとって、どれだけ影響力があったか、
   展示された作品群に吸い込まれました。
   時代を代表する西洋画家、セザンヌ、ミレー、ピサロ、モネ、ゴッホ、ドガ、
   ルノワール、ロダン、ボナール、ムンク、オノレ・ミエ、等々。
   日本からは中村彝、戸張孤雁、梅原龍三郎、石井柏亭、岸田劉生
   萬鉄五郎、田中恭吉、河野通勢、木村荘八、などなど。
   おぉ!とうなりました。
   彼らの良き理解者であった北山清太郎は「フュウザン会」を作り
   展覧会企画などをして支援してきたそうです。
   後には日本のアニメーター元祖のような活動もし、その子供達へ向けた
   アニメーション動画も放映されました。
   意表を突かれた、その収集絵画の素晴らしいことに驚かされました。
   今年の東京ステーションギャラリーの企画は秀逸で、
   川端康成の蒐集展もよかったし、年初のモランディー展も広く人気を得たようです。
   今後も個性的な企画展の開催を期待しています。 

 6 杉本博司 ロスト・ヒューマン 東京都写真美術館 
   9/3〜11/13




   しばらく改装して休館だった東京都写真美術館が「TOP MUSEUM」となって、
   リニューアルオープンしました。そのこけら落としが
   「杉本博司 ロスト・ヒューマン」
   もう、個人的に杉本氏の数寄者ぶりに降参しているわけで、
   この世にある杉本眼鏡を通して集められた物を
   杉本芸術論と杉本物語と写真、もろもろに振り回されることを
   わざわざしに行くのです。
   すこし、大人になったのか、意図とする事を引き合いに出してきたものたちの  
   出自などがわかることもあって、なるほど、ここにこうして現れたのか、
   そういう楽しみがまた愉悦となるわけです。
   骨董に物語りあり。
   人にも物語あり。
   数寄者はそれを選んで並べてほくそえむこと。
   それって、茶人のしてきたことじゃないかと思ってもみたり。
   とはいえ、そこにあるものが生きてきた、残されてきた
   時空が果てしなく遠い遙かなもので、
   一期一会の夢、儚さ、切なさの純愛も見えるのです。
   好き嫌いがあるとは思うけれど、ともかく、
   数寄者、ですね、しかも、生きていて死んでいる、そんな具合です。
   〈今日 世界は死んだ、もしかすると昨日かもしれない〉
   そんな杉本氏、熱海のMOA美術館を監修して、今春リニューオープンが
   待たれます。やりたいことをやりたいようにやる、それが
   どれだけ難しいことか。ご活躍祈念致します。
   また、杉本氏、平野啓一郎氏の戯曲「肉声」のアートディレクションもされることを
   友がキャッチしてくれ、草月ホールで大人の退廃エロスを感じてきたのでした。
   そんなことで、平野啓一郎氏「マチネの終わりに」なども読んだりしたのでした。
   ランクインは超個人的趣味、です。

 5 禅 東京国立博物館
   10/18〜11/27



   こんなビッグタイトル展覧会ができるのは、国立、だからでしょう。
   京都国立博物館で展覧を終えての巡回展でしたが、
   案外会期が短かったので、気をつけて前期後期を見てきました。
   関連イベントの「雪舟VS白隠 達磨図に迫る」山下祐二、山口晃両氏の講演会にも
   参加してきました。
   まさに、「禅」を網羅するということの凄味に迫る展覧会でした。
   高名僧侶の頂相などずらずら並んで、威厳溢れる重圧たるや。
   何もしていないのに、申し訳ありません、と頭を垂れてしまいます。
   各禅寺の寺宝も並ぶところなども圧巻でした。
   白隠、雪舟、雪村、仙厓、永徳、牧谿、梁楷、など信じられない
   ビッグネームが並び、茶の湯の名器もずらずら。
   国宝、重文ものがありすぎて、桃山、江戸を牽引してきた「禅」の凄さが
   半端なくガンガンきました。
   日本美術はほとんどこの時代でしょうと、ともかく
   鼻息も荒く、圧倒されたのでした。
   その後、目黒の五百羅漢寺を訪ねることとなり、
   ますます禅のエネルギーに振り回されたのでした。
   併せて本館、東洋館も関連展示などがあるところ、
   一日じゃ到底回りきれるものではありませんでした。

 4 鈴木其一 サントリー美術館
   9/10〜10/30 



   待ちに待った、鈴木其一のワンマンショー、大個展がサントリー美術館で開催されました。
   そもそも美術鑑賞が好きで手当たり次第、気の向くまま若い時から
   漠然と通うだけで、お気楽な趣味を続けていましたが、
   2006年にあのプライスコレクションを観てから、江戸絵画のおもしろさに
   俄然引き込まれています。その中に鈴木其一がいました。
   琳派展も近美や、トーハクの表慶館等で開催が続いてました。
   江戸琳派の酒井抱一の後継者としての名前を頭のどこかに置いていましたが、
   トーハクでの「大琳派展」でその凄味を実見することができました。
   ちょっと、抱一の品の良い画面からはみ出して、ぶわっと羽ばたいているような
   描表装のしつこさとか、色使いのどこかぎらついているところとか、
   それでも琳派の新しい表現でもあるような。
   それにしても、プライスコレクションは大変なコレクションだと
   尊敬を捧げます。
   その、鈴木其一作品をこれだけたっぷりと見ることができた、
   それだけでいい、というランクインです。
   絵が上手い、という天性のものは、その人の核となって、人生を動かすものだと
   感じることがままあります。
   其一も絵筆と共に人生があった人だと納得します。
   広重や国芳と余り変わらない年齢で、広重と同じくコレラで亡くなる、
   次女があの河鍋暁斎の妻となった、ということもなにか、因縁を感じます。
   描表装などのサービス精神旺盛なこと、さらりと描く季節の行事の軽味、
   応挙に尊敬を捧げる写生の巧み、抱一に敬意を表す琳派の継承、
   大作への意気込みと執着、自分の立ち位置をわきまえながらも
   しあわせな画業人生ではなかったかとこちらも充実感と幸福を感じるのでした。
   図録も大変充実、抱一は勿論、其一の周りにいた絵師、抱一の跡を継いだ鶯蒲(おうほ)
   息子の守一、鈴木蠣潭(れいたん)、松本交山、田中抱二、池田弧邨 等々も
   きっちりと脇を押さえているところも素晴らしい企画でした。  
   スライドレクチャーを拝聴し、内覧会に行き、その後2回鑑賞し
   サントリー会員のサービスをとことん使うこともできました。  

 3 宮川香山 サントリー美術館
   2/24〜4/17





   陶磁器が大好きで、茶陶から民芸、現代作家ものまで、さまざま観るだけで
   嬉しくなります。
   唐物、桃山の挑発から朝鮮陶磁器の安寧、土と炎から生まれてくる器に
   えもいわれない魅力を感じます。
   陶工のなかでも異色の超絶技巧をおしげもなく見せつけてきた
   宮川香山の大々的展覧会がサントリー美術館で早春のころ開催されました。
   トーハク所蔵の、あの蟹が二匹瓶にへばりついた作品が宮川香山の名前を
   刻んだ作品です。
   陶芸の器、という使用目的など置いてけぼりで、
   ともかく、やきものでどのくらいのことができるのか、限界に挑戦した、
   奇人偉人天才。
   多少の作品をみてきたので、どんなものかと会場に入って、
   もう、びっくり仰天作品がずらり、これでもかと並びました。
   降参です。
   それらを蒐集した人も、そうとう香山に没入して、狂ったのだと思います。
   田邊哲人氏。
   この方、スポーツチャンバラの創始者、真葛焼の研究家とされている、というのは
   ウィキの解説で、現在は警備会社の重鎮で、ご本人も芸術活動をなさっているとのこと。
   凄い方がいらしたものです。図録解説でも田邊氏の研究が大変重要な存在だと
   お礼を捧げていました。
   香山はそもそも楽焼の系統の家に生まれ、家業を継いだのち、横浜に居を持つ事から
   外国人好みの薩摩風の作品から「高浮彫」が生まれ、いよいよ動植物のリアルな
   装飾過多な超絶技巧の制作に邁進したのでしょう。
   後には帝室技芸員にも任命され、名誉を頂いています。
   超絶なこれが陶器?と思わせるリアルな作陶はその後釉薬の研究にも
   力を注ぎますが、晩年、あの蟹の瓶を再度制作するのです。
   サントリー美の展覧会後、増上寺の宝物展示室でも「宮川香山展」を開催しました。
   香山没後百年記念の大きな節目となる回顧展を存分に堪能することができました。
   三の丸尚蔵館にも香山の立派な青磁瓶作品があったのは帝室技芸員という
   肩書きからも当然だったのだろうと気がつくのでした。 
   2016年の企画展はどれもが秀逸でした。
   「ガレ」も今までどれだけ鑑賞してきたかと思いましたが、
   まだまだ知られていない作品があるのだと、陶器作も多く紹介され、
   生々しい自然界との共存に日本の自然の解釈と違って、生き血が感じられるのでした。
   暮れの「小田野直武と秋田蘭画」も大変興味深いものでした。
   今年は六本木に移転して10周年記念の一年間、サントリー所蔵の名品が続出で
   今からワクワクしています。 

 2 カラバッジオ 国立西洋美術館
   3/1〜6/12



   普段は日本美術に心奪われているのですが、カラバッジオ、この人は特別です。
   彼がいなければ、西洋美術界はどのように発展できたでしょう。
   ありえない絵の表現に驚愕することとともに、彼の「人殺し」という悪徳が
   強烈なスパイスとなって、いっそう作品に惹かれる要素となります。
   危険である、ということの愉悦、倒錯の魅力とでも言いましょうか。
   1571〜1610年の短い一生でしたが、天才の超越した表現は残された作品から
   圧倒的なリアル、光と闇、物語が浮き上がり、こちらへ動いてきそうな
   気配までエモーショナルに描ききり、これを最初に見た人々の驚きとため息が聞こえてきそうです。
   この絵が安土桃山時代にやってきたら、永徳や探幽たち絵師はどんな驚嘆を向けたでしょう。
   ナルキッソス、トカゲに噛まれる少年、メドゥーサ、法悦のマグダラのマリア、
   聖ペテロの磔刑、果物籠を持つ少年、
   これらの作品を目の前で飽きるほど見つめることができたこと、
   一作品からの圧力の激しさ、それを体感できたこと、
   それがランク2位の位置を決めました。
   よくぞ、上野まで無事にきてもらったと。喝采です。  
   
 1 クラ—ナハ 国立西洋美術館   
   10/15〜2017,1/15





   クラ—ナハ、その名をいつ頃から覚えたのか、定かではありませんが、
   ルターを描いた作品、ユディットの涼しい目などを本などで見ていたのでしょう。
   一度見たら忘れられない目力に魅力を感じていました。
   ルカス・クラ—ナハ(父)という表現も同じ名前を持った息子が同じく絵描きで
   父より先に亡くなっているので、そういう表記だと言うことをあとで知ります。
   西洋美術館の会場前にはいつもイントロダクションとして短編紹介映像が流れていて、
   鑑賞前に大変ありがたい予備知識を注いでくれます。
   会場に入った瞬間、折角頂いた予備知識はどこへやら。
   クラ—ナハの描き込み情報の多さに惹きつけられ、凝視してしまう作品が続々並びます。
   背景が真っ黒、肖像画の淡々とした描きよう、淡々とした涼しげな女性達の瞳。 
   衣裳、装飾品の細かなこと!!
   たとえヌードであっても、いやらしさのない品の良さ。
   見ているあなたが試されるようでもあります。
   カラバッジオと違って、宮廷画家として、豊かな生活と地位を持ち、
   悲惨な画面がひとつもなく、女性の魔性に殿方ども気をつけよ、と訴えてきます。
   セレブが描く豪奢な画面に上質の営みと装飾にすっかり魅了されました。
   また、ピカソ、デュシャン、岸田劉生など、クラ—ナハ影響が見て取れる作品、
   はては森村泰昌がユディットとなって参加したり、
   「正義の寓意」を今の中国の複製村で100人の絵描きに7時間リミットでワークショップをした
   壁一面の作品群もユニークでした。  
   クラ—ナハと現代作家たちとの共演という企画に好印象を持ちました。
   世の中の美人ヌード作品が多数あるなかで、クラ—ナハの淡々とした男性の欲望をものともしない
   挑発の視線、肢体、重厚感あるファッション、美しいという危険にうっとりするしかないのでした。
   彼のサインもお気に入り!
   2016年の西洋画展覧会は実に私好み連発でした。
   ボッティチェリ、カラバッジオ、クラ—ナハ。これだけ海外にツアーしてみることを思えば、
   本当に有り難い一年だったと実感します。
   また、国立西洋美術館のコルビュジエ建築がユネスコ世界遺産として登録されました。
   絵画、芸術作品だけでなく、建築美も一緒に鑑賞できる、見所満載な美術館です。


 ようやく、やっと、なんとか、2016年のアート鑑賞ベストにこぎつけました。
 やっぱりお気に入り展覧会は何度か足を向けています。
 惹きつける魅力が溢れているということでしょう。
 60展あまりに通っていたようです。
 安定のトーハク上野界隈、出光、三井記念、根津、そこを基準とした
 鑑賞の場所が限られてしまいましたが、
 今年はもう少し足を伸ばせるよう、がんばりたいと思います。
 長々しいことお付き合いに感謝です。   

宇宙と芸術展 森美術館

$
0
0


 2017年新年最初の美術鑑賞は
 森美術館で「宇宙と芸術展」でした。

 今年はブログ更新が遅延しない工夫として、
 フライヤー画像をあげて、
 とりあえずは簡単に感想を入れて、
 展覧会に深い感想がある場合はあらためて記事にする作戦など
 試行錯誤したいと思います。

 以前のように
 思いを込めてたっぷり時間をかけながら
 作品と向かうような真面目な態度がかたむけられるかどうか。
 ゆるくなったこと、ご容赦下さいませ。

 さて、「宇宙と芸術展」
 大変楽しい企画でした。
 人間が地球に生きている限り、宇宙との交信は延々と続けられるのだろうと思います。
 その切なる思いの作品群。
 仏教の曼荼羅、竹取物語のかぐや姫、月を望遠鏡で覗き描いた詳細な
 月面観測図、月を観測した望遠鏡、
 ダヴィンチやガリレオの手稿、ニュートンやコペルニクスの本、
 出ました、カミオカンデのグルスキー
 コンテンポラリーアート作品、杉本博司作品も参加。
 アポロ関連品、隕石、そして、今回初体験のチームラボ映像
 「追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして衝突して
   咲いていく ーLigt in Space 」
 盛り沢山に宇宙とのつきあいの歴史を作品を通してざくっと
 多彩多種な多面体となってそれら自体が混沌の宇宙ステーションとなっていました。
 その中で竜安寺を線で結んだ 北脇昇作品がヒットでした。
 7月30日からのロング展覧会にも関わらず、ギリギリの鑑賞となってしまいましたが、
 森美術館テースト満載でした。
 カメラOKな作品画像をのせます。会場の雰囲気がなんとなく伝わると良いのですが。
 今年はこの程度のライトな記事でいってみようと思います。
 展覧会は1/9に終了しました。


























入江泰吉作品展「心の原風景 奈良大和路」 フジフイルムスクエア写真歴史博物館

$
0
0
 
 森美術館からミッドタウンのサントリー美術館へ移動し、
 もう一度「小野田直武と秋田蘭画」展をみたいと思って外を歩いていました。
 そこに、大好きな入江泰吉先生の写真がみえました。
 吸い込まれるように、フジフイルムスクエアの中に入りました。



 奈良には30代前半のころ、3年ほど移住していたこともあって、
 思い入れのある懐かしい場所です。
 
 当時若い写真家を友人に持つ人がいて、入江先生のお宅までお邪魔したこともありました。
 門下の方にご紹介して頂いたり、シルクロード博覧会が開催された折にも
 近しくお目にかかることができたのでした。
 その後、黒川紀章さんが「入江泰吉記念奈良市写真美術館」を設計することとなり、
 新薬師寺に行くなだらかな坂道の途中に奈良らしい屋根を持つ記念館が建ちました。
 生前に間に合えば良かったのですが、残念ながら開館を前に86才で旅立たれました。

 そんなことを思い出しながら、
 懐かしい作品を拝見でき、大変穏やかな気持ちとなる時間でした。

 高畑、あの界隈には志賀直哉の旧居ががあったり
 お散歩するだけで、もしかしたらそのあたりに
 いまを忘れて遠い歌人たちがいるようにも感じます。

 入江泰吉先生の写真からは、
 自然界の被写体に向けた慈愛溢れる愛情を感じ取ることができます。
 有名な「親子鹿」の写真はテレカが活用されていた頃よく使われていたことを
 思い出しました。
 遠い古代万葉の景色がいまそこにあるかのような景色が現れます。
 光の移ろい、木陰の湿度、色の重なりの美しいことといったら。

 入江泰吉先生の目がとらえた奈良の景色は少し変化してきたのかも知れませんが、
 豊かな歴史をはぐくんできた奈良そのものを体感できる作品ばかりです。

 展示は3月22日まで、入場無料です。
 奈良の写真美術館では「春日大社とおん祭」展が22日まで開催中のようです。



 また、先生おすまいの旧居が公開されるようになっていて驚きました。
 東大寺戒壇院に行く途中の閑静な場所にあります。
 お水取りにお出かけの時など、ちょっと足を伸ばしてみること
 お勧めしたいです。
 戒壇院、二月堂までの道のり、何度歩いたことでしょう。
 六本木の真ん中で奈良を恋しく思った時間でした。



*入江泰吉先生のお名前の「吉」は下が長い土に口なのですが、表記が抜けてしまうようだとお知らせ頂いたので、便宜上「吉」としました。

白洲正子ときもの展 松屋銀座8階

$
0
0
 


 年末年始の企画展として、ここのところ着物を特集するようになった
 松屋銀座店ですが、今回は白洲正子さんのきものをとりあげました。

 銀座界隈の和装店との協賛でもあり、ショップも和装店が出店し
 銀座各店の和装店のサービスを銀ぶらしながら楽しめるような企画ももりこまれました。

 旧友との恒例新年会は京都の香りがただようこじんまりとしたお店で
 お正月らしい京都のお雑煮ランチをし、日本酒なども一口頂戴し
 晴れやかな新年を頂いた気持ちとなりました。

 ほろ酔い気分で会場入りすると、
 能を稽古してきた白洲正子さんの舞台で着用した黒の着物が松の大ぶりの枝を入れた
 大壺とセットが迎い入れてくれました。

 いわずと知れた白洲正子さんの審美眼で集められた着物の展示に
 いちいち工芸美の素晴らしさにため息を吹きかけ、
 これなら着てみたい、と思える色使い、コーディネイトにうっとりしました。
 自身の染織工芸の店「こうげい」で扱われた商品の丁寧なものつくりと
 美しさは主の目に叶わないと制作者も大変だったのではないかと思いますが
 妥協を許さないもっといいものを、と思う上昇志向、その思いの強さが
 やわらなか着物となって人々を豊かにしてくれるのだと改めて思います。
 
 あぁ、やはり、着物は織物がいいなぁ、とつくづく見惚れた
 極上の着物の姿でした。

 武相荘の冬景色も美しいことでしょう。
 椿、見に行きたいと友と話したところです。

 16日、月曜日までの開催です。

あなたに続く森 青木美歌 展  ポーラミュージアムアネックス

$
0
0


 金沢から友人が遠征してきて、
 彫刻家、中村ミナトさんの個展で合流し、しばし歓談ののち、
 ミナトさんと3人で晩ご飯をご一緒することとなりました。

 その晩ご飯まで少し時間があったので、金沢の友人と銀座を散歩することとしました。
 金沢より寒い、といわれたくらい身に染みる冷え込んだその夜は
 黄昏をすぎてネオンが一段と煌めいていました。
 思いつきで、ポーラミュージアムアネックスを覗いてみることとしました。
 前情報などなにも手にしないで、いきなり。

 そうしたら、なんと、その日が初日の展覧が始まっていました。

 エレベーターを降りたら、
 オープンしたばかりの熱気、のようなものがあり、
 もしかしたらこれからオープニングパーティがあるのかと思いつつ、
 私たちが入ってもいいのだろうかと危惧しながら思い切って入ってみましたら、
 なんとまぁ、薄暗い会場に透明のガラス作品が会場の照明をうけて
 妖精が舞い降りてくることを待っているかのような不思議な生命力に輝き、
 滴が落ちる瞬間を凝固して光を放っていました。












 誘われ、導かれるまま、展示ケースの島を巡ります。
 もし、こわれてしまったら、という儚さと線の細さにガシャンと音を立てて
 目の前で粉々になったら、という恐ろしさにからだをこわばらせながら。





 途中、こわばった様子をみかねて荷物をお預かりしましょうかと
 係の方に声を掛けて頂きました。

 この方の作品、どこかで拝見した気がします。

 NHKかどこかのテレビ放映だったか、記憶が薄いのですが
 バーナー越しにガラス棒を持ちながら、生まれる線を繋ぎとめながら
 延々と続く作業に目がとまったことがあったように思います。

 作品をiPhoneでぱちぱち撮らせて頂きました。













 そうすると、ご本人がいるので、話を聞いてみたらどうですかと、
 係の方がまた声かけして下さいました。
 青木美歌さん、ご本人と友人を交えて
 作品のこと制作のこと、色々伺いました。

 印象に残ったことは、作品の下書き、スケッチをしないで
 バーナーとガラス棒を持ったその時に任せて手を動かして制作に向かわれるとのこと。

 青木さんの指先から熱を帯びたガラス糸が紡ぎ出されてくるようです。

 無機質、透明、固い、冷たい、ガラス。

 そこからどうしてこんな有機的なしずくの集まりのような
 作品が生まれてくるのでしょう。

 制作場面の動画も公開されていました。











 フライヤーに
 「・・・地球上の生物は、さまざまな生命体が生と死のサイクルを繰り返し
  関わり合いながら、何億年という時を経て、今ここに生を得ています。
  その神秘的な生成プロセスとカタチを植物の細胞をいうミクロの
  世界で表現します。
  ガラスの森の中へ分け入ることで、そこにひっそりと佇む見えないものの
  息吹を感じるような幻想的な世界をお楽しみ下さい・・・」

 というご案内文が掲載されています。





 本当に、有機的ではあれど、この世のものとは思えない
 儚い涙の森、のような、煌めきに終始息をのんで
 ぐるぐるとガラスの妖精を探しにでかけたような
 しあわせな時間を過ごすことができました。

 作品の写真をどうぞ、公開して下さいとのこと。
 撮ってきたもの、全部アップします。




 来月2月26日まで。

 ぜひ、ご自身の目で煌めきの罪深い儚さを確かめて欲しいと
 思います。

 ポーラミュージアムアネックスのサイトはこちら
 

東京国立博物館 2017/1/27 本館より

$
0
0

 年初の東博にはあの、長谷川等伯の「松林図」がおでましで
 賑々しく新年をお祝いする行事が沢山企画されていましたが、
 なかなかそれを体験することができなかったのですが、
 やっと1月27日に見てきたもの、画像でメモしておきます。

 まずは縄文土器に初もうで。
 深鉢形土器 縄文中期
 解説を読むと、なんと、千葉県市川市柏井町
 姥山貝塚から出土!



 市川市は縄文国だったこと、もっと知って欲しいともと住民としても
 切望しました。
 旧知の市川に居住した詩人故宗左近氏に見てもらいたいと思いました。

 国宝室 池大雅 楼閣山水図屏風 1/17〜2/12








 ところどころの鮮やかな赤、青が印象強くさせています。


 宮廷の美術
 1/15に国宝 扇面法華経冊子の展示が終了してしまって残念でしたが、
 明治時代に作成された、森閑山の模写が展示されていました。



 扇面雑画帖 室町






 茶の美術 1/2〜3/20
 今年4月11日から6月4日まで開催される特別展「茶の湯」
 それに先駆けてそもそも好物な茶器を今一度注目したいと思います。
 
 今回も何気なく錚々たる名品が並びました。
 狂言袴茶碗 銘 浪花筒 伝利休所持→鴻池伝来 (2/5まで展示)




 黄瀬戸筒向付 美濃 安土桃山



 黄瀬戸の特徴である、胆礬(たんぱん)がよく確認できます。
 桃山のころ黄瀬戸では茶碗は作られていなかったそうで、
 筒茶碗のようでも向付として扱われていたようです。

 志野茶碗 銘 橋姫 彼方此方から撮ってみました。






 同時期に一階の陶磁展示に
 志野茶碗 銘 振袖 が展示されています。


 茶掛けにには 定家、紀貫之の墨書が掛けられます。
 どれだけ殿上人の茶会かと恐れ多くなります。

 1591年の年初、茶人、利休にとって、厳しい一月であったと
 知らされます。山上宗二が処刑され、その後、自分にも処刑の期日が迫ってくるのです。
 五島美術館の茶の取合せ展でも厳しい宿命の展示がありました。

 武士の装い
 武具、具足、刀などの美しいものが並ぶ中、
 時々、驚くべき素材の羽織に遭遇します。




 「陣羽織 白地花唐草模様緞通」 一領 (陣羽織を一領と数えることに萌えます)
 首回りのフリルデザインも斬新で、これを纏って必勝武運を願ったのでしょうか。

 屏風と襖絵 ~2/5
 丹精な筆使いはやはり、円山応挙です。



 「雪景山水図」(旧帰雪院障壁画) 1787年(天明7)
 この後、書画の展開コーナーにこの一連作品が堂々と現れます。

 国宝展示室にあった、池大雅、こちらにも
 もくもくとした「西湖春景・銭塘観湖図屏風」が悠々としていました。
 




 暮らしの調度 
 デザインの粋な漆芸や、ちょっとした道八コーナーの陶芸など
 目が喜びました。
 夜着 紫綸子地鶴模様 


 書画の展開
 花鳥図屏風 佚山黙隠(いつざんもくいん)1702〜78
 黙隠は曹洞宗の禅僧で書家でもあり、沈南蘋の花鳥図を長崎で習得し
 若冲との関連が注目されているようです。
 本当に、若冲臭ぷんぷんします。





 他にも若冲の弟子と知れた 秦意冲という名前の「雪中棕櫚図」


 まさに、若冲の中にいた空気が溢れています。

 応挙「雪中老松図」
 三井のお宝、国宝「雪中老松図屏風」を彷彿とさせます。



 探幽の素晴らしい作品、「新三十六歌仙図帖」 1664年(寛文4)
 左大臣鷹司房輔の娘、信子を徳川綱吉に輿入れする際に嫁入り道具として
 調整させた豪華な画帖。描かれた線の華麗なこと、色のつややかなこと。



 剃髪姿は西行。

 
 そして、カメラ撮影念願叶った、光悦の書、
 「芥子下絵和歌巻」
 雲英の芥子の様子を一度撮ってみたかったのでした。




 
 浮世絵
 江戸三幅対 谷風・六代目市川團十郎・扇屋花扇 勝川春好
 谷風関は丁度新横綱になった稀勢の里に似ているなぁとニコニコしました。



 それから
 1階へ移動し、目にとまったもの、ご紹介です。

 光悦の「舟橋蒔絵硯箱」多方面からiPhoneで撮ってみました。
 しかし、こんな硯箱、後世制作したことがあっただろうかと、
 見る度に新しいと驚かされるのです。
 中はどうなっているのだろうかと、思いをはせます。





 茶陶器の色々。





 一入は陶器で根来をしてみたかったのだろうかと思います。
 下地に赤、表面を黒にしているようで。

 特集「掛袱紗 ー祝う心を模様にたくす」〜2/19



 吉事があるときに使用されてきた袱紗、そこにお祝いの模様を
 入れて祝う心を表現したそうです。
 珍しい柄が沢山。刺繍の表現にも驚かされます。






 他、写真師(カメラマン、写真家ではなく)小川一真の
 彼方此方の宝物「写真帖」が大変珍しく、美しいものでした。






 
明治の超絶工芸




 






 目を見張ったのは
 聖心女子大学管理下のパレス天井画。
 旧久邇宮御常御殿障壁画1926年(大正15)
 椿 安田靫彦


 雪松 中村岳陵


 紅梅 前田青邨


 牡丹に雀 下村観山


 これらは横山大観の「梅図襖」など、旧久邇宮邸に関連したもので
 大観の襖の展示は87年ぶりの展示とか。
 詳細はトーハクblogを参照下さい。 こちら







 こうして、その日、金曜日ということもあって、
 3時過ぎから、春日大社展からはじまり、ずっとトーハクにいたのですが、
 さすがにスタートが遅かったため、
 東洋館、法隆寺館までは至らず、タイムアップとなりました。
 それにしても今年もまた、トーハク、私のテーマパーク、しっかり通い続けたいと
 熱く思ったのでした。

博物館に初もうで 東京国立博物館 2017

$
0
0
 1月27日の初トーハクではありましたが、いつもながらの重厚充実の展示の中、
 特集「博物館に初もうで 新年を寿ぐ鳥たち」をみてきました。
 展示は1月29日までで終了しています。
 本当に、トーハクは私立美術館の何倍ものスペースを何処よりも
 安価でかつ、美麗優麗な建築物の空気感の中、好きなように歩き回ることができるのですから、
 夢のような桃源郷だと心底敬愛を捧げます。

 さて、雪月花、花鳥の世界観を表す日本美術ですから
 いつでも鳥たちと仲良ししているはずですが、
 こうして特集されるとまた鳥たちの存在をまた一段と深く思い知ることができました。

 カメラ不可でしたが、
 鶏図屏風 曽我直庵の猛々しい鷹図に見惚れました。
 ほか、お気に入り画像のせます。

 花鳥図屏風 海北友雪 

 春の京都国立博物館で「海北友松展」が開催されます。
 4/11から5/21と短期間の間に自由時間、作れるでしょうか。
 父子の作も拝見で知るのだと思います。建仁寺、海北友松のおすすめスポットです。

 鶏蒔絵螺鈿印籠 土田宗悦作 


 鶏を捕らえる子供 磯田湖龍斎 
 腹巻きに壽の文字をあしらった男の子が鶏を捕まえますが
 災難にあった鶏の鳴き声がぎゃーと響いてきそうです。


 松梅群鶏図屏風 伊藤若冲 

 よくよく見てみると、とてもコケティッシュ!!






 今回の鶏特集で一番のお気に入り。
 羽觴(うしょう)明治 
 「羽根をもつ觴さかずき」という語彙があり、曲水の宴に用いるという
 伝承があったようで、後世このような形が考案されたとのこと。
 こんな子が流れてきたら、歌など作れずに盃に見とれてしまいそうです。
 たいへん、愛らしく、かわいい!!



 今年、渡辺省亭という画家の展覧が予定されているとの情報を
 Twitter、Facebookでゲットしました。
 東博の近代コーナーで時々窓絵のような楕円形のなかに
 優美な絵を見たことが何回かありましたが、なんとはなしに七宝絵画を臭わせていると思っていたら、
 やはり、濤川惣助との縁があったようです。
 迎賓館の花鳥の間、大食堂の壁に飾られた七宝焼きの下絵が
 展示されて、ハッとしました。
 実際には渡辺省亭の下絵が採用され、濤川惣助が七宝の額絵を制作したとの
 解説がありました。
 赤坂離宮花鳥図画帖 荒木寛畝 渡辺省亭
 画像最初から3作目までが省亭。
 後の2作が寛畝。 








 迦陵頻伽像 新羅のものです。




 年初らしい、干支集合企画、ギリギリセーフでしたが、
 おおいに楽しませてもらったのでした。

 我が家にも新参のニワトリ、ご紹介します。
 春日大社展ショップで一刀彫りが販売されていたので、つい。

いけばな展に出品 北千住マルイギャラリー

$
0
0
 
 いけばな草月流は各地での支部活動も活発です。
 私が所属しているのは、東京都北支部ですが、
 その花展が2月10日〜12日まで
 北千住マルイギャラリーで開催され、不肖あべまつも出品する好機を頂きました。

 今回で支部展には4回目の出品となりましたが、
 ちゃんと成長しているのだろうか、との疑問もありながら、
 花展の経験値が少しずつ増えてきましたので、
 なんとかなるかと思いきや、今回も多いに手こずり学ぶ事が沢山あった展覧となりました。

 使用する花器、展示ケースの大きさをはみ出さないよう
 作品の大きさを確認する下準備をしたり、
 花屋さんに行って、花展の予定日に確実に手に入る花材や
 使用したい花などを下見したりします。
 それでも使用したい花材が準備練習の時と同じ花材が届く保障など
 まったくありませんので、
 だいたいの雰囲気、というところまでの準備となります。

 今回はコロンとした壺、結婚のお祝いに元美術系出版社の方から頂いたもので、
 お披露目がなかなかできなかったものです。
 それに、太い蔓枝をからませてみようと思いました。

 年初の枝花は紅白の梅から始まり、黄色の枝花も多く
 そのなかから まんさく を選びました。

 その間に入れる花には今年年女、還暦を迎えることもあったので
 自分用にお祝いも込めてみようと思い、胡蝶蘭を使おうと思いました。

 あとはバランスを考えて、胡蝶蘭と協調するアマリリス、緑の葉物を入れることで
 全体のバランスを整えようと考えました。

 2月9日、いよいよいけこみです。
 前日にショッピングカートにいけこみ用のグッズを入れ、花器を壊れないよう
 厳重に梱包して入れて運び込んでいましたので、荷物が軽くて助かりました。

 花材はいつもお世話になっている花屋さんが届けてくれますが、
 届いたものを見るまでどんな花材が入っているか、ドキドキです。
 今回は同じ教室の仲間が3人も初参加する事となり、大変嬉しく心強く思いました。 
 また、都合悪く参加できない方が裏方に回ってサポートしてくれました。
 そんなことも教室だけでは経験できないことです。

 花材をあけてみると、とても生き生きとした胡蝶蘭、その色と調和する
 アマリリス、下準備の時に使用したまんさくよりも小ぶりでしたが、
 その方が胡蝶蘭を引き立ててくれそうです。

 ギャラリーは天井が高く、5メートルはあるでしょうか、とても広々とした
 ステキな会場です。
 そこに、勅使河原茜家元の巨大竹作品、8メートルもあるような花材が大型キャスターにのせられて
 搬入されたときはその迫力に目を見張りました。
 今回は会場中央に設置され、360度鑑賞してもらうという力作を展示することとなったそうです。
 しばらくして、家元が会場入りされ、アトリエスタッフと共に
 みるみる作品ができあがっていきました。
 家元のいけこみの様子をじっくり見届けられるような余裕がなく
 自分の事で精一杯だったのが残念です。

 あっという間に、振り向くとあっという間に巨大作品が 
 そこのギャラリーの主のように鎮座していました。













 今年は草月流創世90周年という記念の年。
 あちこちで草月の花火が打ち上がることでしょう。
 拙い一員ではありますが、学ぶ事の喜びは他に変えられないと実感します。

 お昼過ぎからのいけこみ、順々に作品が仕上がり、
 殺風景だった会場に花の香りが充満してきました。

 会場の様子を画像でご紹介します。














 

 拙作もご紹介します。








 日々変化してくるもの、生け花の醍醐味です。
 最終日のメンテナンスで私の先生からゆったりして良くなったとのご意見頂き、
 ホッとしました。
 家元からは、色のバランスと、枝の勢いについて講評を頂き、大変嬉しく思いました。

 そして、最終日、12日の5時過ぎ、閉場された後
 瞬く間に片付けられ、もとの静かなギャラリーに戻されていきました。

 花の命は短くて、残りません。
 はかない命の有り様を瞬間、人の手によっていけた人となって、
 誰かの目を輝かすことができたら、
 そんな嬉しい事ことはありません。 

 会場にお越し下さった方々へここで簡略ながら
 御礼申し上げます。

 また、来月3月8日〜13日まで
 新宿高島屋で「いけばな協会展」が開催されます。
 私は8日、9日に出品する予定です。
 もしお時間がありましたら、ぜひお立ち寄り下さい。

 また、今月いっぱい2月28日まで
 都内の銀座、日本橋三越、新宿伊勢丹で草月の錚々たる先生たちの作品が展示されています。
 
 まずは日本橋三越から。










 特に、伊勢丹、見応えありますので、そちらもぜひ。
 久しぶりの伊勢丹、デパートとして一番オシャレ先端を行っているところだと
 ワクワクします。
 建物も、よく見たら、ほんと、ステキ!!







第56回 2017 いけばな協会展 新宿高島屋11階催事会場

$
0
0


 いけばな協会展に出品の機会を今年も頂きました。
 出品したのは
 3月8日、9日の2日間です。
 花材がいきいきみられるのは短くて、2,3日で展示替えとなります。
 家元クラスの大作はお手入れが大変ですが、
 花材も吟味されたもので6日間展示されました。
 日々、変化していきながら、堂々とその場を飾りきることも
 大変な技術です。

 2月の草月流北支部展の花展に出品した翌月に
 慌ただしい準備となりましたが、
 それもまた勉強になると先生が余裕で仰るので、
 どんなことになるのか、チャレンジしてみようと思いました。

 前回の重厚な雰囲気から
 がらっと変えて、ポップな軽やかさを出してみようと思いました。

 花器は2年前に飯能窯でやきもの体験して作陶した
 つきあいにくい拙作です。

 2年前できあがったこの花器を、通っている教室での勉強会で
 使用してみましたが、個性的すぎるフォルムに振り回されて、
 なかなかすっきりといけることができませんでした。
 この際、その思いをクリアーできればと思ったのでしたが、
 やはり、使いにくさが先だって、悩ましい準備期間でした。

 花器の本体が白なので、
 春めいた季節の先取りできるよう、明るい色を使おうと思いました。

 花屋さんで一目で気に入った、アネモネ、テマリソウ。
 これを上手く使えるよう、自宅で内職に励みました。

 以前、一束頂いた スターチスをドライにして、白い花を全部ふるい落として
 箒のようにし、サラシミツマタを一緒に束ねたものを
 横に置いて、花器の縦のラインと同調できるようにして、
 そこへ、アルミワイヤーをくるくるしたものを巻き付けてみました。



 単色な状態に、ポップな明るい色と元気な丸い玉になる
 テマリソウがユニークな存在感を出してくれそうです。
 ということを、一月前ぐらいからごそごそと準備していました。

 いけこみ本番、思った通りになかなか落ち着きませんでしたが、
 先生のご助言を頂いてテマリソウの玉を足下に入れることで
 バランスがとれてすっきりしました。

 草月流の勅使河原茜家元の華やかな作品、



 特別参与の 石川龍先生の作品、



 常任理事の 久保島一超先生の作品、


 
 そして、最後に拙作をご紹介します。
 初日の作品



 2日目の作品。
 アネモネが照明と暖房に耐えきれず、
 全部入れ替えすることとなりました。
 小さな葉っぱは、アイビーです。




 会場にご多用の中、お出かけ下さった皆様に
 あらためて御礼を申し上げます。
 
 難しい花器でしたが、終わってみれば
 なかなか可愛らしく、楽しい作品となって、まずまずよかったな、
 と思うことができました。
 一緒に参加した仲間とも、一層信頼が深まりました。

 今後は、6月のこれもまた、新宿高島屋が会場となりますが、
 草月流展の合作チームに参加する事となりました。
 詳細がでましたら、ご案内致します。
 いけばな、というイメージが一新されることをきっと体験できると思います。
 ご声援、よろしくお願い致します。

金沢観光 2017年3月12日

$
0
0
 
 3月11日に、ワクワクと金沢入りしました。
 金沢がどんな街なのか、心そぞろに思いましたが、
 ともかくはメインのイベントが終わらなければ、動きがとれませんでした。
 会場までの移動とか、不安な点もありましたが、
 無事にイベントが終了し、関係者お疲れ様の会が
 画廊オーナー他、みなさま御贔屓のビストロで開かれました。
 初対面の方々が多かったのにもかかわらず、
 自然素材の豊かな美味しいディナーを前に楽しく豊かな時間をご一緒できました。
 その後は、渋いおじさまがマスターのバーへ。
 車で移動の人は早々にご帰宅されて残念でしたが、またの機会に。
 主婦となってから夜ご飯を外で、とか、夜バーに行く、
 そういったこととすっかり離れてしまっていますが、
 ちょっと羽目を外して自分を解放するって事、大事だわ、と
 久しぶりにおしゃべり倒してしまいました。
 そこには「工芸青花」という貴重な本もこともなげに置いてあるところで、
 さすが、工芸の街、金沢だと思ったのでした。
 バーには殿方同伴せず、女史会だったことも新鮮!!
 話題は彼方此方に飛び跳ね、好き放題を語り合えたしあわせな一日となりました。
 それにしても、金沢の夜は寒かった!!

 翌朝、12日のモーニングを駅中で取ったので、
 金沢駅の様子をようやくしっかり確認することができました。
 駅中の様子もなんとなく理解し、お土産は「あんと」が便利そうでした。
 その後、車でお迎え頂き、念願の白山ガレリア画廊に訪問し、素晴らしい環境下の
 画廊を見学させてもらいました。
 昼食はお勧めの大変美味しいお寿司、白子焼をお腹に入れ、エナジーチャージして
 珍しい籠を編んでいるお店をご紹介してもらいました。
 目にするものすべてが面白く、その中で、鉈入れを一つ手に入れました。
 その後、ナビの方の車で金沢市内に入り、金沢市内の散歩へ連れて行ってもらったのでした。

 お散歩はナビの方に全面に頼って、ひたすらご案内方向をご一緒したのでした。
 どまんなかの兼六園、金沢城公園、21世紀美術館、そこをはずして、
 泉鏡花文学の香る、主計(かずえ)町茶屋街、浅野川を渡り、
 その先のひがし茶屋街を通り抜け、卯辰山までお散歩してきました。
 みちすがら、あの魯山人の舌をうならせたという「料亭山乃尾」
 の横を通り抜け宝泉寺を目指しました。
 そこからの眺望は金沢市一帯を見晴らせる絶景の場所だったのです。
 さすが、金沢在住の日本画を描く方のご案内でした。

 一回りしたあと、美味しいおやつタイムをしました。
 なんと、21世紀美術館のすぐお隣!
 ケーキミルフィーユのシンプルなこと、大変美味しかったです。
 
 時の流れは速く、帰路の時が迫ってきました。
 金沢駅でご案内して下さった方とお別れし、再会を願いました。
 北陸新幹線の乗り場、ふと見上げるといい味の鉄鋼柱、ホームの柱巻は金巻、
 さすが、工芸の街だと改めて感慨深く見上げたのでした。
 






 金沢市内から白山に移動して、ガレリア画廊へ。





 扱う作家作品群、オーナーの目にとまった優れもの。



 昼食の美味しいお寿司とふぐの白子焼をご機嫌に頂いて、
 金沢市内へ移動です。
 なんとなく、芸子さんたちのお稽古する三味線の音が聞こえてきそうです。
 くらやみ坂を下ります。





 浅野川を渡る橋も風情のある姿。









 高級料亭 山乃尾 の看板。



 宝泉寺の石仏群。
 芸子さんの街ということもあって、哀しいお話も沢山ありそう。













 21世紀美術館、その近くのパティシエ OFUKU より。





 金沢駅北陸新幹線ホームより









 学生時代に富山から金沢へ車で通り、
 兼六園も行ったのですが、記憶の外となって、
 実際の初金沢経験をしてきました。
 
 あっという間の事でしたが、
 帰路の新幹線の車窓から、都心の明かりが見えてきて
 なんとはなしにいつもの場所に帰るのだと感じたことも印象的でした。
 
 お目にかかった方々に御礼と感謝を申し上げます。
 これからも、お付き合い頂けること、よろしくお願い致します。

 次回は、ぜひ、21世紀美術館などなど、アートナな美術館、建築、文学記念館なども
 巡りたいなぁと思いをはせました。

 一泊だけのショートステイ、金沢でしたが、とても近しい、親しい気持ちがするところでした。
 また、次、心待ちにしたいと思います。


 

本田和の語りによる 宗左近 炎える母   金沢 STUDIO L.F.I 

$
0
0






 敬愛する宗左近氏の著作「炎える母」を
 本田和さんの語り、映像と音楽のコラボで語るイベントが
 旧知の金沢白山のギャラリー、ガレリア画廊オーナーのプロデュースで
 開催されるという事を聞き、
 これは現地に行かねばと心楽しみにしていました。
 
 その日は3月11日。奇しくも、という日程ではありましたが、
 イベント会場の空き状況がたまたまその日、だったとのこと。
 宗左近氏はその日が何の日か知る術もなく、遠く天空の中空から
 こちらに視線を投げかけていたのかも知れません。

 東京駅9時過ぎの北陸新幹線に乗り込むとお昼には私を無事に金沢まで運んでくれました。
 上越妙高を過ぎると、右手に海、左手は山脈、日本海側にきたのだなぁと
 しばし車窓を楽しみました。
 
 息子が既に金沢に行った経験があり、駅中のホテルが便利だと教わり
 そこに予約をしたので、簡単な荷物を置き、イベント会場へ向かいました。

 会場は金沢市内からちょっと離れていて、電車で野々市駅まで移動し、
 車内で偶然遭遇した知り合いと、地図を片手に
 歩いて会場を目指すことしました。
 さすがに、寒い風ではあったものの、なんとはなしに春近しという
 長閑さも陽光に感じられ、街中を探索しながらようやく到着。

 普段ライブスタジオという会場には、呼びかけに参集した
 方々、30名程度の席がボチボチ埋まって、地元ならではの
 親交が漂っていました。
 日頃の活動がしっかりと浸透しているという事なのでしょう。
 当日の語り、本田和さんのサイトをご紹介します。

 語りの本田和さんのサイトより
 当日の紹介動画もぜひご覧頂ければと思います。




 1945年5月25日、東京大空襲の折に宗左近氏が母と逃げながらも自分が生き残り、母の手が離れて、
 母を死なせてしまったという罪の体験が、詩作の根源に焼き付かれていることを
 まざまざと知らされる、「炎える母」
 母を失ってから、20年後に上梓した壮絶な作品です。
 
 心して聴かなければ、という思いと、
 現代でもそういった体験をした「宗左近」が世界中にいるではないか、
 という思いと、
 理不尽という悪夢をどうやって生き抜けばいいのか、
 という難題を持ち、この作品を読む度に暗澹たる思いとなるのですが、
 今回は、思いの外、フラットな気持ちで体験することができました。
 丁寧な語りのリズムに、軽やかにアニメーションがスクリーンで動き
 そこに詩と同調する音楽が情感に迫ります。
 これは新しい「炎える母」の誕生だと思いました。
 それは、人の声だけでは感じえられない、スクリーンに流れるアニメーションと
 詩に合わせた音楽の効果など、五感に拡散したことが影響したのかも知れません。
 作品を知っている人が感じた印象と、初めて触れた人の感想に
 違いが生まれたとしても、それはそれとして新しい広がりだと思えたのでした。

 そもそも追体験の重さなど、誰が等しく感じられましょう。
 作品は一つのイメージに拘ることなく、
 受け取った人の数ほど 新しい作品となって、
 その人の胸に届けば良いのではないかと、
 少し、自由な気持ちを持つ事ができました。

 発信先は宗左近氏であって、その先は君たちでいいんだよ、という声も
 聞こえてきそうです。

 ガレリア画廊のたっての希望で
 ともかくは「炎える母」を沢山の場所に届けたい、その一念が
 もっと拡散できるよう、お役に立てることができればと、思ったのでした。

 語り、の後、会場の方々との感想などの開かれた話し合いの場があったのが
 とても良かったのでした。
 それぞれの感想を伺う事ができましたし、私もそれなりの年齢となって、
 息子を持つ母となって、親の立場の感想などにも共感を持てることができました。
 
 凄惨な体験を作品にできた、詩人がいたからこそ、
 人の営みの残酷な厳しさ、その底流には無常の愛があることを
 今一度、この胸によみがえらせて、
 この世で一番崇高なことは、何なのかを確認できるきっかけとなれば。


挿絵本の楽しみ〜響き合う文字と絵の世界 静嘉堂文庫

$
0
0
 
 今年も早、ゴールデンウィーク突入となり、
 眩しい入学式を終えて、新学期が始まり、
 学生、生徒のみなさんは初めてだらけの一月が終わり、ほっとする時、ではないでしょうか。
 手にした真新しいテキスト本のなかには必ず挿絵、画像が掲載されていて、
 ぱらぱらとめくったことも懐かしく思い出されます。

 そんな学びのスタートの時、静嘉堂文庫美術館では
 「挿絵本の楽しみ」として所蔵20万冊の中から
 挿絵として登場した中国南宋の経文に始まり、
 江戸の浮世絵までを厳選された書籍によって紹介されています。

 その会期中4月16日日曜日に
 トークショー&ブロガー内覧会が企画されたことをネットで知り、
 早速ダメ元で応募しましたら、見事当選しました。

 二子玉川界隈の桜はすでに葉桜になり、山吹などの花達が咲き始めていました。
 旧知の方とゆっくりランチをご一緒した後静嘉堂までバスを利用することとしました。
 日曜日の二子玉川の混雑ぶりにバスの到着に気をもみましたが、
 なんとかトークショーに潜り込むことができました。

 15時からのトークショーは 
 永青文庫副館長の 橋本麻里さん、
 静嘉堂文庫美術館の館長に就任された、河野元昭さん、
 静嘉堂文庫,司書の 成澤麻子さん、
 ナビゲートに 青い日記帳のTakさんこと、中村剛士さん。
 この有り難い4名の方々が展覧会のことをわかりやすくガイドしてくれました。

 橋本麻里さんは特に日本美術解説分野で時空を超えた現代言葉で
 ざっくりストレートに楽しく導いてくれる貴重な女性で、
 今は様々な媒体を通して、ファン急上昇中なのではないでしょうか。
 美術評論男性陣の重鎮の間にあって、大変有り難い存在と尊敬を捧げています。

 河野館長のお話は何回か講演会などを拝聴していますが、
 スピーディでダジャレも挟みながら、大事なことをさらりと仰るので、
 耳をダンボにしませんと、うっかりもったいないお話を取りこぼしてしまいます。
 特に琳派のご専門のお話はリアリティがあって、興味津々となります。 
 
 そして、静嘉堂文庫の司書、成澤さんは司書というお仕事が
 本当にお好きなのだと誠実なお話を伺って伝わりました。
 今回の企画に奮闘されました。
 
 そして、トークナビ担当のTakさんはすっかりアートナビのプロフェッショナルとなられ、
 「カフェのある美術館」を上梓され、もう3刷りが決まったそうです。
 ラジオ電波にも心地よい声でアートナビにますますご活躍で、
 今回のトークでも軽妙なさばきを見せてくれました。

 お話のメモを少しご紹介します。

  成澤さん ある人の挿絵から物語を考える、という話を聞いて、
       挿絵の力を再認識した。
       中国では古来「文字の国」として文字の位置づけが大変高く、
       文字は権力の印でもあったので物語があっても絵を入れることをしなかったが、
       明時代となって絵が付くようになった。
       宋時代に入って貴族に限った政治にかわり、皇帝との繫がりに官僚「科挙」が生まれた。
       その「科挙」となるには厳しい試験があり、合格をえるためには43万字におよぶ儒教を覚える必要があった。
       文字だけでは対処しきれないとの要望から解説として絵で様々な冠、動作、などを示すようになった。
       受験勉強のテキスト的存在が社会適要望として生まれた。いわゆる受験参考書、的なもの。
       今回の展示にそのテキストが出ている。

  河野館長 静嘉堂文庫には20万冊の古典籍があり、漢籍12万冊、和書8万冊を所蔵している。 
       (岩崎弥彌之助、その子小彌太親子で設立) 
       美術品展よりも関心が薄いのではと心配している。
       今、東京国立博物館で開催中の「茶の湯」展に静嘉堂の「国宝 曜変天目」が出品中。
       5月7日までの展示、その後、6月17日より静嘉堂でも展示が予定されている。
       館長みずから執筆の「饒舌館長」ブログも快調!

  橋本さん 今、サントリー美術館で「絵巻」展が開催されているが、
       本という版本の圧倒的物量に対し、一点ものの絵巻と競べるのも面白い。

  成澤さん 版本、彫り師が競うようになると、もっと技術力のある人が増え、
       もっと綺麗なものが求められ、明、清に高度なものが生まれてきた。
       受験勉強のテキストなどで絵入りに慣れてくる状況下、社会も活性化してきた。
       
  河野館長 中国挿絵が日本でジャパネライズされ、文字(主)絵(従)の関係が
       絵(主)文字(従)に変化してくる。
       そして江戸時代、浮世絵は独立する。
       展覧会の冒頭に国貞の大判錦絵を持ってきた企画を評価する。
       博物図譜、図説、など解説する絵、技術書、博物解説など
       江戸の博物図の挿絵が凄い。
       近世絵画でも若冲や北斎も博物図をみている。
       自然科学から実証主義的博物学、本草学などは
       絵がないと始まらない。
       若冲のうらにも実証主義、博物図が入っている。
       文字は辛い、富岡鉄斎は文字、賛から読めというが。
       
  Takさん 今の参考書、大変な変化を遂げていて、萌え絵が入るようになってます!

 そして、最後に4名の方のこれがいい1枚を上げてもらいました。
  成澤さん、46番 ロシア漂流記
  橋本さん、34番 岩崎灌園 本草図譜 ありえない手書きの本草図!
  河野館長 37番 渡辺崋山 芸伎図
  Takさん 44番 松浦武四郎選 天塩日誌 

 そして、質疑応答でも興味深いお話がでました。
  問 ボタニカルアートとの関連性はあるのか?
  答 シーボルトが来日して、本草学が広まる時、岩崎灌園とも逢っていた。
    植物学を学んだと考えられる。
  問 宗達と光悦の鶴下絵はどちらが主従だったのか?
  答 あの作品の前に室町に既に金銀泥に文字を載せる前史があった。
    宗達の側で光悦が筆を持っていただろうというライブ感が指摘される。
    あの歌集の中に鶴が含まれていない、という配慮が面白い。
  
 一時間のトークショーはあっという間でした。
 雑なメモでわかりにくいとは思いますが、興味深いお話を伺う事が出来、
 鑑賞の大きな手助けとなりました。 

 その日は、美術館より、会場の様子を特別に撮影の許可を得たので、ご紹介します。

 ブログにしても、画像がなければ、説得力が生まれません。
 画像でなんとか、文字にできない空気気配を伝えることができれば
 大変有り難いと切に思います!







 
















 今回のガイド本、豆本なのに、中身が充実の350円という、太っ腹価格。
 





 静嘉堂文庫のサイトの解説が丁寧です。 こちら






 静嘉堂文庫までのお散歩も楽しく、
 二子玉川駅前の賑やかな景色と離れて、ゆったりとした時間を
 過ごせる奥深い場所だと感じます。
 今回は、久しぶりの訪問となりましたが、
 そうか、静嘉堂「文庫」なのだから、書籍が充実しているわけだと
 改めて、歴代のコレクションの関わり、三菱の隆盛、などにも思いをはせて
 感じ入りました。
 
 5月28日までの会期中、さまざまなイベントが企画されているようです。
 4月29日は館長のおしゃべりトークが企画されています。
 河野館長のお話はとても楽しいので、お勧めです!

 さわやかな緑の季節、ちょっと遠出となりますが、
 楽しい本の挿絵の世界へお出かけしてみて下さい。

 同時期に川原慶賀のボタニカルアート展、
  「川原慶賀の植物図譜」展が 埼玉県近代美術館で5月21日(日曜日)まで開催中。
 こちらも併せて見ると一層深まりそうです。

花*Flower*華 ー琳派から現代へー 山種美術館

$
0
0



 桜が散り、あっという間に新緑、燕子花、藤、躑躅などの花々が咲き乱れる頃となりました。
 その百花繚乱を集めて、山種美術館では
 「企画展」花*Flower*華 ー琳派から現代へー
 が6月18日(日曜日)まで開催されています。

 山種美術館のサイト

 運良く、4月24日にその内覧会の機会を得ることができました。
 我が家から地下鉄一本で訪問できることができる、
 意外と通いやすい美術館で、これまでにどのくらい鑑賞してきたことでしょう。

 山種美術館ではこういった開かれた企画を数々と続けてこられて、
 特にお若い方へのアプローチに配慮されていると感じます。

 母校にもほど近く、親しい気持ちで参加してきました。

 今回は山種美術館顧問でもある、山下祐二氏の解説から始まり、
 早速快調なお話に惹きつけられました。
 ちょっと短時間でしたのが、濃厚でしたので、つめこみメモ、ご紹介します。
 展示されている作品の中から、山下先生のチョイスでショート30分余りを
 ガンガン進みました。

 山種美術館のこの企画展
 「花*Flower *華 」のご案内 こちら

 山下先生の解説の乱筆メモから記録します。(乱調ご容赦)

 第一章 春ー芽吹き

 *渡辺省亭
  今年は渡辺省亭の記念すべき年、注目されている省亭(せいてい)
  3幅あるうちの「桜に雀」が展示
  日本画家で初めてパリに行った人
  その5年後に個展を開催している。

 *奧村土牛
  「醍醐」
  土牛のこの「醍醐」の素描があるが、それは大画面だった。
  本作はそこから切り取られたことがわかった。

 *千住 博
  「夜桜」
  40代後半の作品で、山下先生と同じ年、1958年生まれ。
  今はニューヨークにお住まいで、帰国される度にご飯をご一緒されるとか。

 第二章 夏ー輝く生命
 
 *小林古径
  「菖蒲」
  菖蒲が生けられている壺は古径の自宅のもの。
  後から館長のお話により、伊万里のもので、現存しているそうだ。
  古陶磁コレクションをしていたとのこと。
  背景を黒くぼかしたところが奥行きを作っている。

 *福田平八郎
  「花菖蒲」
  グラフィカルにデザイン化されている。
  光琳を意識しているが、光琳よりももっとリアルな作
  
 *小林古径
  「白華小禽」
   戦前の作、泰山木を描く、線を引いたことが特徴
 
 *山口蓬春
  「梅雨晴」
  近代美術館のすぐ近く、JRの経営する記念室がある。
  (自宅兼アトリエで、大変自然の多い、ゆったりとした佇まいの記念室です)
  紫陽花を描くが、洋画的な作品

 *速水御舟
  「阿蘭陀菊図」
   グラフィックにシンプル化させている。
  「桔梗」
   水墨と着色、たらし込みをしている。
   御舟の「墨牡丹」に通じるもの。

 第三章 秋ー移ろう季節

 *酒井抱一
  「菊小禽図」
  亀田綾瀬(かめだりょうらい)の賛があり、この手の賛があるものが山種に2幅ある。
  (もう一つは「飛雪白鷺図」ということ、山種美術館「琳派から日本画へ」の
   図録から知りました。)
  他、細見美術館、ファインバークー美術館にもある。
  12幅の12ヶ月シリーズが大変人気を博した。
  
 *木村武山
  「秋色」
  作家として地味な存在ではあるが、今でも市場流通されている。

 第四章 冬ー厳寒から再び春へ
  
 *小茂田茂樹
  「水仙」
  当時、陰影を付けることが流行した。
  
 *牧 進
  「明かり障子」
  牧進が飼っていた、雀、ピー太とのコラボ。
  牧進は川端龍子の弟子

 *横山大観
  「寒椿」
  大変具合の悪い絵ではあるが、そこがまた面白い。
  大観の作品にはポップ系もあり、そこに人を見る。

 *酒井抱一
  「月梅図」
  今回修復後、初披露でとても美しくなった。
  若冲の影響があったのではないか。 
  琳派と若冲という関係も研究されていくだろう。

 *「竹垣紅白梅椿図」 重要美術品
  17世紀の琳派系、光琳的構成の作品

 花のユートピア

 *鈴木其一
  「四季花鳥図」
  二曲一双、という琳派の定型的タイプ。
  99%六曲一双という屏風の形が典型
  其一の冷たい、人工的、コンピューターグラフィカルな面が
  見られる。べっとりな塗り方など、根津美術館で展示されている
  「夏秋渓流図屏風」にも通じる。

 *田能村直入
  「百花」
  清朝の影響がある。

 *加山又造
  「華扇屏風」
  山種コレクションを代表するもの
  銀は経年変化することをふまえ当初から黒くさせている。
  意図的な変化をさせているようだ。
  これに対し、館長から硫黄を吹き付けている、との解説あり。

 *酒井鶯蒲(さかいおうほ)
  「紅白蓮・白藤・夕もみぢ図」三幅
  修復をしてみると裏打ちに落款を消した後が発見された。
  鶯蒲(抱一の養子)が本阿弥光甫のコピーをしたが、
  そぐわわないとして自分で消したと思われる、とのこと。
  館長からは、作品の補修や、研究も美術館の大切な役割だと紹介された。
  (この本作、光甫のものは藤田美術館、MOA、細見美術館などに
    所蔵されている。「琳派から日本画へ」の図録より)

 *山元春挙  
  「春秋草花」
  挙という字があるように、応挙系の作家
  ダイナミックな人がしっくり小さく描いた。

  魅惑の華・牡丹

 *鈴木其一
  「牡丹図」
  今回の図録に研究が寄稿されているが、
  この牡丹にそっくりな伝趙昌の作品がある。

 *渡辺省亭
  「牡丹に蝶」
  山下先生、肝いりの作品。
  他、春草、はじめ、牡丹を描いた作品を集め
  小さい展示室は「牡丹部屋」となっている。

 ざっと荒っぽいメモですが、備忘録として記録しておきます。
 60作品ではあっても、大変奥深く、日本の画壇の大きな潮流さえも
 感じられるような作品群でした。( 括弧内はあべまつ捕捉)
 
《あべまつセレクト》


 *山元春挙 
  「春秋草花」 
   日本画としては珍しい、パステル調の優しい色あわせに
   ホットされられます。色と画面構成も琳派的。
   コオロギが葉陰にいるところあたりもキュン。

 *鈴木其一
   「四季花鳥図」
   絢爛百花図のなかにも、マットな怪しい気配あり、という
   ところが其一。朝顔図の分身もあります。



 *小茂田茂樹
   「四季草花画巻」
   草花と一緒に蓑虫、とか、くまねずみ、とかがちゃっかりいるあたり、
   それぞれの草花も愛おしい姿。
   「水仙」
   水仙の可憐で乙女の純粋を排除した陰気を映したような
   妖しい気配に目がついとまっていしまいます。



 *酒井鶯蒲  
   「紅白蓮・白藤・夕もみぢ図」
   本阿弥光甫にリスペクトを捧げ、がっつり3幅とも模写し
   落款を消すあたり、鶯蒲の真面目さが見えます。
   光甫の隠し落款の心意気、オシャレ度にぎゅっと胸を捕まれたのだろうと思うと
   本作と照らしてみたいものです。

 *横山大観
   「寒椿」
   これが大観の作品か?と思うような抜け感のある椿の姿、
   富士山だけじゃない,存在としてメモしておきたい作品でした。
   竹と,椿、案外いい雰囲気なのです。



 *渡辺省亭
   「牡丹に蝶図」
   過日、京橋の加島美術で生々しく拝見した作品ですが、
   再会に喜びました。
   朽ちてゆく牡丹の雄しべが舞い散る様など、見ていても飽きの来ない
   惹きつける力が溢れています。

 *加山又造
   「華扇屏風」
   この屏風に加山又造さんはご自分の技量、工芸をあますことなく
   表現し、扇の花々よりも金箔、銀箔の性質を知り尽くして、
   現代の琳派継承に尽力されたのではないかと、圧倒されるのでした。

 *「竹垣紅白梅椿図」重要美術品 17世紀
   前回、この屏風を見て、本当に驚いたのですが、
   今回もまた屏風一双から溢れる気配に圧倒されました。
   おめでたい紅白の花々が散りばめられ、竹垣は植えられている竹をそのまま曲げて組まれ、
   梅の古木と椿の木に絡まります。
   そこに何羽の鳥たちが集まっているのでしょう?
   「飛ぶ、啼く、宿る、食べる」姿を描き分けている点が特徴と
   解説にありました。
   画面構成や、配色、なんとはなしに室町が香っているところあたり、
   大のお気に入り作品となりました。



 他、今回のフライヤーに抜擢された、田能村直入の「百花」の鮮やかさ、
 奧村土牛が描いた、小林古径七回忌の帰路、醍醐寺でみた桜、「醍醐」
 も何度見ても、深い感慨を持ちました。
 間近に、小品を室内で楽しんできたような日常感あるものもあって、
 描かれた花々に英気をもらって、清々しい気持ちとなったのでした。

 山種美術館の企画展では毎回その展示作品からインスパイアされた
 姿もうるわしい和菓子が提供されます。
 今回も愛らしい和菓子が青山の「菊屋」から生まました。

 内覧会ではその和菓子を試食してきました。
 
  チョイスは 薫風 小林古径「菖蒲」
        華の王 鈴木其一「牡丹図」

  
  手前が 花の王、薫風。
  奥にあるのは、ご一緒した、@aispy 愛さんのチョイス、
  花の香りと同じく薫風。
 
  色のトーンが協調していい感じでした。  
  
  朝つゆ 山口蓬春「梅雨晴」は好評であっという間に消えていました。残念!
  花の香り 小林古径「白華小禽」
  夏の日 鈴木其一「四季花鳥図」
  これらの姿もお味もぜひに。


 また、今回の図録
  「山種コレクション 花の絵画名品集 flower」
 こちらも1000円で、鈴木其一と中国絵画の研究、寄稿も掲載され、
 興味深い論考があり、充実していてお勧めです。




 *ご紹介画像は 山種美術館の許可を得て撮影したものです。
  作品は、渡辺省亭「牡丹に蝶」以外はすべて山種美術館所蔵。

 描かれた花々の作品展覧は、日本画の潮流を感じつつ、
 思いがけず、多彩な画家たちと遭遇できる充実の展覧会でした。

 次回は「RYUSHI 川端龍子 ー超ド級の日本画」6/24(土)~8/20(日)
 関連イベント 7/8(土)川端龍子が目指したこと 講師 山下祐二氏
 こちらもぜひ参加したいと思っています。

奈良 西大寺展 叡尊と一門の名宝 三井記念美術館

$
0
0
  







 
 日本橋の三井記念美術館では
 特別展 創建1250年記念
    奈良 西大寺展 叡尊と一門の名宝  
          が6月11日(日)まで開催されています。
  こちら

 サブタイトルに
 元興寺、浄瑠璃寺、白毫寺、法華寺、岩船寺、称名寺、極楽寺他一文寺院の名宝も一同に

 とあります。
 私が30才の頃、奈良に足かけ3年住んでいたこともあり、
 「奈良」に対する思いもひときわ親しく濃いものを持っています。
 当時は元興寺の直ぐ側に住んでいて、ご紹介された西大寺一門の
 奈良近郊の寺院は殆ど行きましたが、
 どういうわけか、西大寺には訪ねることなく戻ってきてしまいました。

 西大寺、奈良の南都七大寺の一つといわれた立派なお寺であることは知られていても
 どういった歴史があったのでしょう。

 西大寺の冊子「西大寺の文化」が丁寧な歴史を伝えています。
 (ミュージアムショップで価格500円 販売中)
 それによると、
 奈良時代、765年(天平神護元年)に称徳天皇の発願によって営まれ、
 藤原仲麻呂の反乱のようなことがないよう、念願したもの、ということのようで
 最初に天部の四天王が造られたそうです。 
 その後、12年の時を経てようやく南都七大寺、西大寺ができあがるも、
 平安期には焼失が相次ぎ、荒廃してしまうのです。
 鎌倉時代に入り真言律宗が復興運動と合致して再興を目指した時に
 叡尊が現れ、次々と再興造営の仕事を尽くしました。
 ところが、叡尊の亡き後、再び火災にあい、寺運が下がっていったようです。
 災難の続いた西大寺ではありましたが、江戸時代になって、江戸幕府からの
 支援をもらいようやく今見る西大寺の姿ができあがったようです。

 ざっと、西大寺の歴史を辿りましたが、
 会場の展示物をみて、意外にも、密教系のお寺だったことを知りました。
 また、創建当時の伽藍地図などは大変広大で、立派な姿だったことも驚きました。
 奈良市内のお寺は西大寺と関係も深く、真言律宗という繫がりがあったことを
 初めて教わったのでした。
 叡尊の弟子として活躍した、「忍性展」が去年奈良で開催されたことも御縁のようです。

 そんな復習もかねて、会場を思い出します。

 展示室 1 密教と修法具

  ずらり、密教の独古法具が並びました。
  「白銅密教法具」 
  「鈴虫」という銘があり、光明真言会で長老が導師を務める際に
  大壇上に安置される特別な法具。
  いちど、「鈴虫」の音を聞いてみたいものです。

  「藍染明王座像」(厨子入)
  コンパクトなサイズで、現代の住居にも置けそうな可愛らしいものでした。
  厨子の造りも鮮やか。
  

 展示室 2 戒律と舎利信仰

  「国宝 金銅透彫舎利容器」
   大変細密な金工が施され、蓮台とともに舎利容器が外に展示されました。
   火焔宝珠も華麗な姿でした。

 展示室 3 西大寺の瓦と塼
   
   創建当時の土、質感が残っているようでした。

 展示室 3 如庵
     
   西大寺、といえば、大茶盛式。
   赤膚焼に奈良絵ののどかな絵付けの大きなお茶碗。
   介添えの方がいないと、そりゃ、安心してお茶が頂けませんが
   一度、体験したいものです。
   お軸が墨書のゆるい山水でいい雰囲気でした。

 展示室 4 西大寺の創建から平安時代まで
    
   国宝、重文クラスがずらり
   お経、経箱、資材帳、
   国宝の十二天像、
   艶めかしい如意輪観音半跏像、それらは皆、奈良時代、平安時代のもの。
   よくぞ、この平成の時まで、護られてきたものだと感じ入ります。

      叡尊の信仰と鎌倉時代の復興
   
   西大寺中興の祖といわれる興正菩薩叡尊の長い眉と存在感のある
   立派な鼻梁に80才の姿としては大変力強く、  
   西大寺復興のため奮闘したリーダーとしての情熱、人徳の深さが伝わります。
   また、寺宝の愛染明王座像などの納入品が展示され、
   像内に魂を入れた、大切な証拠を見るようでした。 
   元興寺からは、聖徳太子2才の凛々しい像。
   川端康成も、聖徳太子の幼い像を所蔵していたことを思い出しました。
   
 
 展示室 5 戒律と舎利信仰

   こちらでは寺宝のお像に入れられていた、舎利などがずらり展示されていて、
   小さな水晶の五輪塔群にときめきました。
   舎利容器、舎利厨子、それらに大切に守られ、信仰を捧げてきたのでしょう。
   舎利塔にかけられた、紐も美しいのでした。

 展示室 6 西大寺の伽藍配置図

   当初の広大な伽藍の様子などを知ることができました。

 展示室 7 真言律宗一山の名宝

   西大寺と並ぶ真言律宗のお寺より、名宝が展示されていました。
   奈良市内の地図に関連寺院が建ち並んでいることも記されています。
   
   五色椿で有名な白毫寺からは空恐ろしい強面が。
   「太山王座像」康円作
   ごめんなさいを強要されなくとも言ってしまいそうな眼力にひれ伏します。

    *6月6日〜11日まで、浄瑠璃寺の吉祥天がお目見えです。
     ご開帳の期間限定でなかなか目にかかれませんが、
     日本橋で、拝観できるチャンス到来です!



      忍性と東国の真言律宗

    叡尊の弟子として著名な忍性さん、去年、奈良で展覧がありましたが、
    こちらにもおでまし。
    なかなか厳しい方のようで、日蓮さんとぶつかり合いをし、
    鎌倉幕府に処刑を申し出たとのこと。
    東国、鎌倉にも真言律宗を拡大した功労があるようです。
    
    「釈迦如来立像」神奈川 称名寺
    衣紋の襞が特徴的で、清涼寺式だとわかります。
    清涼寺式の釈迦像は真言律宗によって全国に広められたのだそうです。

 こうして一巡して作品リストを確認して見ると
 どれもコレも国宝や、重文クラスの名宝ばかり。
 西大寺、大変なお寺だと思い知ります。

 いつか、また奈良を訪問し、西大寺を訪ねたいと思いました。
 また、保存、補修に潤沢な寄進があることを願いました。
 
 次回は夏のイベントらしい、「地獄絵ワンダーランド」
 7月15日〜9月3日まで。 こちらも楽しみです!

2017年半年の振り返り

$
0
0



 (神奈川県立近代美術館葉山から)

 いやはや、ブログ放置もここまでくると
 もはや、更新をやめているのかと思われても致し方ない状況です。

 とはいえ、今年のイベント目白押しと、
 パソコン前で落ち着いてカタカタすることもなかなか確保できず、
 反省ばかりです。

 というここで、今年、2017年の半年のふりかえり、
 ザッとですがしたいと思います。

 1月  宇宙と芸術展 森美術館
   
    小田野直武と秋田南画展 サントリー美術館

    日本の芸能展 三井記念美術館

    白洲正子展 銀座松屋

    岩佐又兵衛展 出光美術館

    青木美歌展 ポーラミュージアムアネックス

    春日大社展 東京国立博物館

    
 2月 古唐津 出光美術館
    
    草月いけばな展 創流90周年記念第10回草月会北支部 出品
    北千住マルイ シアター1010 11階ギャラリー

    入江泰𠮷作品展 フジフイルムスクエア
   
    endless 山田正亮の絵画 東京国立近代美術館

    瑛九 闇の中で「レアル」をさがす 東京国立近代美術館ギャラリー4
   
    新宿通り いま・むかし 中村屋サロン美術館

    茶道具取り合わせ展 五島美術館
    
 3月 2017 いけばな協会展 出品
    新宿高島屋

    茶碗の中の宇宙 東京国立近代美術館

    マルセル・ブロイヤーの家具 東京国立近代美術館ギャラリー4

    加山又造展〜生命の煌めき 日本橋高島屋

    アートフェア東京 2017 国際フォーラム

    並河靖之七宝展 東京都庭園美術館

    松岡コレクション美しい人々 松岡美術館

    サントリー美術館新収蔵品
    コレクターの眼 ヨーロッパの陶磁と世界のガラス 
               サントリー美術館

    高麗仏画展 
    興福寺中金堂再建記念 特別展示
    再会ー興福寺の梵天・帝釈天  根津美術館


 4月 これぞ暁斎! Bunkamuraザ・ミュージアム

    茶の湯 東京国立博物館

    挿絵本の楽しみ(ブロガー内覧会参加) 静嘉堂文庫美術館

    花*flower*華 ー琳派から現代へ(内覧会参加) 山種美術館

    川原慶賀の植物図譜 埼玉県近代美術館

    
 5月 奈良西大寺展 三井記念美術館

    絵巻マニア列伝 サントリー美術館

    茶の湯 東京国立博物館 (2回、3回通う)

    雪村展 東京藝術大学大学美術館(2回通う)

    茶の湯の名品 畠山記念館

    初心 資生堂ギャラリー

    ロマン・チェシレヴィチ鏡像への狂気 ギンザ・グラフィック・ギャラリー

    茶の湯 うつわ展 出光美術館
    
 6月 砂澤ビッキ展 
    躍動する個性ー大正の新しさ  神奈川県近代美術館葉山

    神の宝 玉手箱  サントリー美術館

    ジャコメッティ展 国立新美術館

水墨の風 出光美術館

    KEIICHI TAHARA"Les Sens" ポーラミュージアムアネックス

    リアル(写実)のゆくえ 足利市美術館

    創流90周年記念 草月いけばな展
     「自然の花の中から、いけばなという別の花が咲くのだ。」
    本部合作チームに参加出品   新宿高島屋






 (国立新美術館ジャコメッティ展より)

 今年はこの他に市川市でのイベント企画運営、
 草月の北支部運営に参加、
 地元女子高華道部指導、等が重なり、かなり大変でした。

 その中、高校一年時のクラス会、奈良のお姐様達上京、北海道のオバが上京
 元職場仲間と20年ぶりの対面、
 高校の先生と高校卒業以来の対面、
 色んな方々と懐かしい対面が重なりました。

 還暦、となるとそういった邂逅の時が転がり込んでくるのでしょうか。
 
 7月となって、ようやく一段落してきたところです。
 展覧の感想などを落ち着いて上げていきたいところですが、
 どうなります事やら。
 8月は杉本文楽、鑑賞を控え、楽しみです。
 まだ、熱海、MOAには行っていないのですが、いずれ。

 こうしてみると、忙しい中、よく通ったなぁと思います。
 記事にできなかった残念さが押し寄せてきますが、
 夏以降は少し記事アップに努めたいと猛省します。

 お恥ずかしいため込み、ご容赦下さいませ。   






 (草月会館より)

夏休みコレクション展北斎「冨嶽三十六景」 MOA美術館

$
0
0

 熱海、MOA美術館がリニューアルオープンされ、
 その素晴らしさを耳にし、目にし、早くこの目で確認できることを
 願っていましたが、
 ようやく、伊豆高原の両親宅から移動して、
 なんとかその時を得て行ってきました。

 伊豆方面も夏の景色とは思えない、雨模様続きで、
 梅雨へ逆走しているかのようです。
 夏休み中の家族連れなどでもっと賑わうはずでしょうに。

 それにつけても熱海駅がオシャレな建物となってびっくり。
 どこも昭和時代を引きずることは劣化、耐震不安などの現実もあって
 惜しまれつつもリニューアルしていくしかない時が来ているのかも知れません。
 美術館までのバスがすぐに出てしまうので、周りの変化をチェックする間がなかったのが
 残念です。バス停近くに足湯もできてました。

 MOA美術館の山へ向かうカーブの多い坂道をエンジン音を響かせながら
 バスが熱海駅から10分足らずで入り口まで届けてくれます。

 入り口のロッカーに荷物を預け、チケット(1600円)を求めて
 さぁ、MOAのエスカレーター7基を乗り継いで美術館入り口に向かいます。

 20代の頃、一人で初めてMOAに来たときと同じように、
 還暦となった今も、このエレベーターにこの世と隔絶されてゆく背中が不安になりながら
 頂上を目指します。



 連れだって一緒に行動する人が誰もいません。
 何処となしに薄暗いのです。気持ちも薄暗くなります。

 外はしとしと緑に英気を注いでいるようです。

 ようやく、あの、漆芸家の人間国宝室瀬和美氏とともに杉本博司氏も刷毛を持った
 片身替わりの巨大な漆の扉が待ち受けていました。
 おぉ、これがあの扉か、と出たり入ったりを楽しみました。(ひとりおばさんが怪しすぎる)






 エントランスの広々とした見晴らしに目を奪われます。











 今回の企画展示は「北斎 冨嶽三十六景」
 そのコレクションと「裏富士」とよばれる10図を加えた、46図を一挙公開。
 なかでも「凱風快晴」は摺り、状態ともに極めて優れた1枚という作品が展示されています。

 とはいえ、
 中に入って、その展示室の素晴らしさに目が奪われて
 北斎、広重に申し訳なかったと後から反省したのでした。

 メインロビーに杉本氏の写真
 柔らかな乳白色の大理石の床で、ガラス張りの向こうからは
 熱海の景色が一望できます。
 雨で遠くは見届けられませんが、それなりのしっとりとした
 靄の景色も美しいものでした。
 ベンチの椅子の支えには、三角のガラス。
 ロンドンギャラリーの椅子、バージョンです。

 さて、展示室に入ります。
 いちいちスマートになりました。
 木の扉が左右にスーっと開きます。





 展示室最初に目がとまったのは、
 「港浜風俗図屏風」江戸時代 
 なんと、ガラスなし。







 薄暗いのですが、すぐに目が慣れてきます。
 まさに杉本氏のチョイスによる古木の柱。
 框には幅のある大きな材木が存在感を放っています。





 しげしげ見ていると、係のおじさんが
 見かねてか、材木のことなど教えて下さいました。
 框は屋久杉、行者杉。途中で繋いであります。
 古材の柱は 右が海龍王寺、左に當麻寺(どちらも奈良県)
 畳は麻縁にしてあります。
 漆喰の大きな壁の下には東大寺の瓦職人の手による敷瓦が敷き詰められています。



 運良く、その案内メモを多分超特別に頂くことができました。
 (係のおじさん、感謝!!!)

 ぐるりと「北斎 冨嶽三十六景」が展示されていますが、
 その展示の台、解説札、これもまた、美しいこと。











 展示室1,3,共に漆喰の壁が真ん中に立ち、映り込み防止の役を果たしているとのこと。
 映り込み防止にこんな事しますか、そうですか。
 展示室2,こちらには、かまくらのような黒漆喰で囲んだ
 特別室があり、その中に「国宝 色絵藤花文茶壺」が神々しく輝いて鎮座している
 仰々しさ。凄いことに。










 企画展は、3室までで終了です。




















 北斎「雉図」


 北斎「粟に小禽図」


 北斎 「化粧美人図」
 軸装がまたステキ







 2階から常設展示室が始まりますが、
 次の4,5,6,室は階下、1階へ移動することになります。






 そこへの階段、階段の窓、いちいち手が込んでいます。
 木漏れ日がもれて美しい木材の格子がはめられています。



 平安時代の「阿弥陀如来両脇侍座像」がゆったりおわします。
 また、「東大寺大仏縁起絵巻」室町時代 に目がとまりました。







 その反対側には小さな仏様たち。中国随、唐の時代のもの。
 「十一面観音立像」は平安
 小作りながら、端正。






 次は5室。
 そこには桃山の絢爛が待ち受けてくれました。





 目に飛び込んできた、赤い草花の行列屏風。
 なんて赤がきれいなのかと、どっきりしました。





 「鶏頭図屏風」桃山時代。
 誰の筆によるものか解説になかったのですが、
 琳派の潮流をビシビシ感じます。
 それにしても妖しい色気のある鶏頭の群生です。
 このゆったりとした空間ですっかりこころここにあらず。
 持っていかれました。

 美濃のやきもの。
  「志野梅花四方鉢」「織部扇形蓋物」等が並びます。

 「豊臣秀吉北政所書状」



 

 展示室6には
 杉本氏の「海景 熱海」バージョン。
 また、現代の工芸家の作品。
  (カメラは現代作家作品にかぎり不可でした)






 
 最後の部屋で創立者の紹介部屋と続きます。

 以前はもっともっと展示作品があったように思いますが、
 厳選して、ゆったり展示を心がけることとなったのだと思いました。

 ラストにドアが開くと
 杉本博司氏の「月下紅白梅図」


 ここの展示もまた、美しく、千葉市立美術館で見てからの
 再会となりました。
 須田悦弘氏の梅がこぼれていやしないか、つい探してしまったり。


 

 雨に濡れるヘンリ−・ムアの「王と王妃」も相変わらずの
 睦まじい姿でしたし、その奥には
 近代工芸館前庭、または埼玉県立近代美術館の公園内において
 異形の存在感を放っている黒々とした作品の作者である、
 橋本真之氏の「揺らぐ日々の中に」という作品が展示されていて、
 王と王妃、お二人を横から守っているようでもありました。



 写真を撮ってきたので、おしげなくアップします。














 カフェのカウンターの石がまた異彩を放っています。
 営業が終了してしまっていたのが残念でしたが、
 次回は、お茶室、光琳屋敷まで足を伸ばしたいと思います。
 この石は、真鶴の小松石というもの、だそうです。
 


 まずは、リニューアルMOA美術館を確かめられたこと、
 大変喜んでいます。

 先週は杉本文楽。
 なにかと杉本博司氏の美学に導かれているようです。
 
 あんなに素晴らしい材料と、匠とスポンサーをバックに
 美学を貫けること、稀代のアーティストであることは
 致し方がないのかも、と頭を垂れるばかりです。

 美への眷属であればこそ、
 私の心は安定するのですが、まだまだ未熟を恥じ入るばかりです。 

 リフレッシュできた、小旅行のような体験でした。
 私の、プチ夏休み、かな。
 これから、秋に向けて、色々動かねばならないことが待ち受けていますので、
 エネルギーチャージ、です。

 秋には、MOA美には茶器が展示されるとのこと、これまた、そそられるじゃありませんか。
 「千宗屋キュレーション 茶の湯の美 ーコレクション選」
  10/27〜12/10 
 行かねば!!!!


 
Viewing all 295 articles
Browse latest View live