Quantcast
Channel: あべまつ行脚
Viewing all articles
Browse latest Browse all 295

青い日記帳×山種美術館 ブロガー内覧会「竹内栖鳳ー京都画壇の画家たち」展・山種美術館

$
0
0
 アートブログ「青い日記帳」のTakさん。
 今やこの人を語らずしてアートブログは始まらないという方が
 いつどのような情熱で企画を実現されるのか、毎回謎です。
 そのアートへの愛情の深さにいつも甘えて差し出されたチャンスを
 ありがたく頂戴していますが、
 今回は山種美術館でのブロガー内覧会で館長のギャラリートークと
 和菓子お茶会交流も用意して下さいました。
 没後70年の竹内栖鳳展を鑑賞できるとのこと、早速申し込みエントリーしました。
 NO、20!
 
 一週間前の山下裕二先生の関連講習会に参加できなかったのが残念でしたが、
 竹内栖鳳のその画業をあまり知らないまま鑑賞するのも
 きっとその絵に対して素直な気持ちで対面できることと楽しみにしました。

 開催にあたり、山種美術館サイドからの案内が丁寧で
 下準備のきめ細やかさがあちこちに感じられました。
 鑑賞に当たっての細心の注意は、その場を一緒に廻る方々と館側との
 信頼関係にも繋がります。
 撮影も自由というお楽しみつきですが
 フラッシュはイケマセン。
 トーク中は撮影はしないで自由時間まで待つということ。
 ケースに近づきすぎないこと。
 映り込んだ方への留意。
 撮影が出来ない絵があること。
 他きちんとしたタイムスケジュールが立てられていました。
 その後、TakさんからTwitter活用方法など、今回の企画を楽しむツボを
 軽くお話しがあって、
 いよいよ館長のトーク開始です。
 今回はお初にお目にかかる方が多かったように思いましたし、
 和装でのステキな参加者がいらしてそれだけでも華やかでした。
 そう、館長もしなやかな和装で登場されたのです。
 館長さんにはあべまつの顔を覚えて頂き
 お目にかかるとつい嬉しくてお声かけさせて頂くようになりました。

 さて、本展は
 竹内栖鳳の生誕70年記念の特別展。
 館長のトークのメモを残します。
 まずは掴みとしての「斑猫」(はんびょう)から始まりました。
 栖鳳が、徽宗皇帝の猫だ、といった猫の写真が展示してあって、
 ただの八百屋おかみの愛猫が、なんという高みに上がったことでしょう。
 その絵を間近で見ること、猫の瞳に金泥が配されていたり、
 ブルーとトルコブルーが配されて何とも言えない妖艶な目の輝きとなっています。
 絵全体の中の猫の位置、落款の朱色の効き方、位置、も絶妙であることを
 館長トークで気付かされます。
 この斑猫をめぐってNHKで特別番組が放映されたことを思い出します。
  
 
 第一章、先人たちに学ぶ
 与謝蕪村、円山応挙、長沢芦雪、森寛斎たちによる
 動物たちのとらえ方、四季の景色などが並び、
 栖鳳が丸山四条派を学んだことを知ります。
 栖鳳の師である幸野楳礼嶺も四条派を学んでいたそうです。
 驚いたことには、雪舟の模写にも励んできたことです。

 後期に展示される、応挙や森狙仙の猿の図が楽しみです。
 芦雪の「岩上双鶴図」この静かな描きっぷりにちょっとキュンとしました。
 
 第二章 竹内栖鳳の画業
 いよいよ栖鳳のワンマンショーです。
 「池塘浪静」
 音のない静かな池でピチャッと音を立てて鯉が池から跳ね上がる瞬間をとらえています。
 水面下に泳ぐ鯉も何匹か顔が見え、
 一瞬の静と動の小気味良い緊張感があります。
 応挙四条派の写生に忠実な実に品の良い作品だと思いました。

 隣には、「熊」

 もう、皆さんが大好きになった作品で、かわいい!の歓声も聞こえますし、
 思わず私も声を上げてしまいました。
 熊さんの周りに紅葉した葉っぱが良いポイントに入ります。
 色に対するこだわりと効果的な配置が絶妙です。
 栖鳳のキャラクターとして充分使命を果たしてくれそうです。
 そして、金屏風の大作、「象図」
 金地一色のなかに墨で象が二頭対峙します。

 左の象の背中には籠が乗せられ、その中で猿が一匹
 屏風の上部角に飛ぶ雀二羽を指さしています。
 この大小の対比などは芦雪の手法にも見られます、との説明を受けました。

 そういえば、大きな牛さんとちびわんこの屏風がありましたね。
 象のずんずん進む歩みの迫力に対応する右の象は
 向かってくる象に余り好意的ではなさそうな視線で
 受身で引いた優しい視線を浮かべています。
 静と動の波動が伝わります。
 墨一色の中にも濃淡で多様な表現が出来るのです。

 そこで、雑誌「家庭画報」の館長特別講義の誌面を参考に
 名だたる日本画家愛用の和紙を作ってきた
 「岩野平三郎製紙所」のお話を伺いました。
 少し前に日曜美術館で大観の紙の特注のエピソードなどの興味深い番組がありました。
 絵を描くための紙、和紙が重要だったことを知ったのでした。
 そこの和紙製作所では、平山郁夫氏や千住博氏も使っているとのこと。
 栖鳳は栖鳳紙というパルプを加えたものを作ったそうで、
 「晩鴉」(ばんあ)もこの栖鳳紙を使用していたとのことです。

 こういった絵の素材などの話は知り得ない貴重なお話でした。
 「象図」に対面したように「雨霽」(あまばれ)が空気の湿度と
 気温まで描かれた墨の屏風です。
 雨後のことを雨霽と表現するのも湿気があって詩情感溢れます。

 柳と五位鷺を描いていますが、出品わずか数日前に
 若柳を描き足してようやく栖鳳の気持ちが落ち着いたそうです。
 すっきり納得できるまで悶々とその絵に向かっていたというエピソードが紹介されました。

 小品で「緑地」という蛙一匹の青緑の絵はコバルトブルーの水面から
 顔をちょっと出しただけの蛙の図ですが、
 透けた感じがとてもオシャレだと館長絶賛の作品でした。
 私も同意!です!

 実際、その淡い色のぼかし具合と、蛙の伸びた右足のゆるさ、
 目玉のちゃんとした視線、都会的だし、ちっとも古くない現代的な作品でした。
 後で沢山の蛙さんと出会うことになります。

 栖鳳の描く動物の巧みさはやはりヨーロッパに遊学したことが
 より一層腕を磨くこととなったことがよくわかります。
 四条派のしっとりしたいかにも和風な落ち着きのある画面から、
 動物たちのほとばしる生命力ある表現に変わっていきます。
 
 その最たる屏風が現れました。
 「飼われたる猿と兎」


 飼われたる、ということは、実際に飼っていたということなのでしょう。
 実際栖鳳さん宅では色々な動物たちが飼われていたそうです。
 猿は輪郭線をなくし、兎にはつけたという表現方法にも
 一工夫されたとのことでした。
 この屏風をよく見てみると、絹の上に胡粉を塗って
 地色を工夫していたことがわかったそうです。
 それにしても何ともリアルな表情の猿と兎たちです。
 何を語っているのでしょう。
 
 大作の屏風がもう一点。
 「若き家鴨」ひしめき合ってぐわっ、ぐわっ大騒ぎしている様子が
 伝わります。これが屏風で金箔が全面に散らされています。

 東洋と西洋のミックスがバランス良く、73才の作とは思えない程の
 元気でパワフルな作品です。

 栖鳳の画業として小品の作品群がありますが、
 これらの作品のなんとも小気味の良い題材と
 バランスの妙にとても惹かれました。
 リズム感があるというのか、
 力の抜け具合の間の取り方が上手いというのか、
 とくに、「風かおる」のすっきりとした配置がすばらしいと思いました。

 青々とした柳の葉は少し盛り上がって見えたので、
 胡粉で盛り上げてのではないかと思いました。

 「蛙と蜻蛉」
 この作品も先ほどの岩野平三郎製作所の栖鳳紙を使用したと思われる作品だそうです。
 画面上の小さな蜻蛉の位置がいいです!
 鳥獣戯画を思い起こすようなタッチですが、
 実は久しぶりの帝展出品作で審査員の数の蛙さんがいるとのこと?!
 先ほどの一匹の蛙さんも伸びやかなタッチでしたが、
 こちらも実に自然に伸びやかな上手い、蛙さんたちでした。
  
 前期、栖鳳作のトリは「散華」 
 離れた展示室に飛天が優雅に舞い飛んでいます。
 めずらしい仏画だと思いましたが、
 栖鳳は東本願寺法主、大谷光演から俳句を学ぶ一方、
 光演に絵を指導していたそうで、その縁から天井画を依頼されていたとか。
 残念ながらその話は未完で終わってしまったけれど、
 天女図を実際のモデルを使って描いていたそうです。
 そのモデルさんが亡くなった後、
 「絵になる最初」(後期展示)に使ったモデルさんの恥じらいの刹那を描こうとしたようです。
 この女性の持っている着物は栖鳳絣といって
 高島屋で発売されたそうです。
 ちっとも古くなく、今でも充分通用するポップな色使いで
 復刻されたらきっと評判となると思います。 


 第三章 栖鳳をとりまく人々
 栖鳳と同時期に活躍した画家や、お弟子さんたちの作品が紹介されます。
 西村五雲、西山 翠嶂、上村松園、村上華岳は栖鳳のお弟子さん。
 「狗犬」はこの度修復が終わって綺麗になったばかりの作品だとか。
 美術館の作品への保護、修復、公開の大事な任務の一つだと伺いました。
 都路華香の作品も展示されて2006年の近代美術館での大個展を思い出します。
 おおらかな線と色使いが大好きになったきっかけの展覧でした。
 ラストに村上華岳の濃厚なる「裸婦図」でぎゅっとされたのでした。

 こうして盛り沢山の館長のギャラリートークが終わりました。
 その後は、展示された絵からイメージされた和菓子を頂きながらの
 交流会がセットされ、楽しい歓談となりました。
 絵が好きな物同士の交流は意外に稀なことで、
 それはこの山種美術館の新しいあり方や、若い方々への日本画への
 アプローチとして入りやすさを心がけた熱意の賜と思います。
 とかく上の方の極一部の愛好家だけのためのものと思われがちな日本絵画を
 ぐっと身近な楽しい世界を紹介してくれる現代の人たちに
 もっと好きになって欲しいという気持ちが溢れているのだと思います。
 それと今回の目玉は内覧した現場ですぐにリアルタイムに
 Twitter、Facebookに記事を投稿してみなさんと交流するという
 新しい取り組みがあったことです。
 アナログな私もよたよたなんとか投稿してみました。
 すぐにその画像が大きなスクリーンで紹介されます。
 あぁ、新しい鑑賞方法があるのだな〜と実感です。
 後期も見所のある作品の展示替えがあるようですから
 ぜひもう一度恵比寿、山種に伺いたいところです。

 それと、今回の図録がとても便利です。
 コンパクトなのに中身が濃厚で、かつリーズナブル。
 図録が重たくて買って帰る気がしない、そんな杞憂から解放されます。
 あの立派な図録を持ち帰ってしっかりお宝化している現実が
 本棚を見ればわかるのですが、
 これならば帰りの電車の中でも隣に遠慮なく拡げられます。
 願ってもないことで、素晴らしいことです。

 それと最後に私が頂いた和菓子はこちら。
 「菊がさね」でした。
 柚あんがきいていてとても美味しゅうございました。

 会期は11月25日までですが
 前期は28日まで。後期は30日から始まります。
 日本人であることの豊かさを充分に満喫できる展覧です。
 ぜひにも!
 展覧のサイトはこちら

Viewing all articles
Browse latest Browse all 295

Trending Articles