*Bunkamuraで白隠展
昨年から山下裕二先生の講義を聴いたり、
関連本を開いたり、早々に届いた図録を眺めたり、
森美術館で開催された「日本美術がわらう」展の図録を
探して手に入れて、
そこで見た白隠さんを確認したりして
白隠さんを追いかけてきました。
永青文庫にもまた行きたいな、とか、
細川家の至宝展で拝見したあの迫力ある乞食僧の絵を思い出したり、
数年前に出光美術館での書の展覧で
「動中工夫」の大胆な中という巨大かつ激しい文字に仰天したことを思い出したり。
一つ目小僧の意表を突く面相や、
ぬうっと出てきそうな達磨さんの妙な迫力。
すたすた坊主のどうしようもない脱力ぶりや、
おかめさんにお灸を据えられるだらしないおじさん。
これが禅画ですか。
仙厓(センガイ)さんと並び評されることもあるようですけれど、
お腹にある太さが黒々としてみなぎる力も
ハンパないことは追随する人はいないでしょう。
期待値を上げ上げでやっと白隠展に行ってきました。
もう、最初からニヤニヤものでした。
白隠さんが住職のお寺に参詣した気分です。
もはや、そもそもの人間の太さが違うんだと実感したのです。
破天荒な絵から凝り固まった脳みそが
解けていくような、
マジメでいることのばかばかしさみたいな
まぁ良いじゃないの、という達観にも近い気分に
させられるということが
さすが禅僧白隠さんです。
ナビゲーターが山下先生と井浦新さんの
掛け合いトークなので、イヤホンガイドもついつい
お借りしました。
この機会がきっと美術史の王道に白隠さんが
ぶっとく生きながらえることを確信したのでした。
山下裕二先生の深い愛情と執念の念願叶って、
白隠さんに見事光が当てられた桃源郷となっていました。
図録もコンパクトで秀逸美本でした。
編集は「日本美術が笑う」展図録と同じ匂いがする、
と思ったら同じ方。広瀬麻美さんという方。
*たばこ塩博物館 「さくらいろいろ」展
充実感を胸にせっかくの渋谷なので、たばこ塩博物館まで足を伸ばしました。
「さくらいろいろ」展
さくらにはほど遠い寒い日々が続いていましたが、
丁度サントリー美術館で歌舞伎展を開催しているタイミングで
あでやかな役者絵を堪能できます。
入場料が百円で
カラー刷りのコンパクト冊子を頂けます。
どんだけふとっぱらか。
日々、塩をまぶしまくりましょう。
江戸の桜と言えば隅田川、墨堤、浅草寺。
上野寛永寺。飛鳥山。
舞台では娘道成寺、桜門五三桐、助六などなど。
桜門五三桐で思い出しましたが、
歌舞伎界では猿翁不調で休演とのニュースに心配事が生まれます。
どうか、ご快復を。
役者絵の賑やかうっとりな三枚綴りは
晴れ晴れしく気持ちが必然と上がってきます。
「江戸花二人助六」
描かれているのは五代目松本幸四郎の意久、三代目尾上菊五郎の揚巻の助六、
二代目沢村田之介の揚巻、七代目市川團十郎の花川戸助六、
三代目坂東三津五郎の白酒売。
という、二人助六という珍しいもの。
あぁ、亡き十二代團十郎の助六とと菊五郎の白酒売の掛け合いは
本当に可笑しく微笑ましい一場面だったな〜と
思い出しつつ鑑賞したわけです。
芝居と言えば歌舞伎だった江戸時代。
かかる演目にあわせて着物や帯を選び、鍋一式を桟敷に並べて
つまみながらワイワイ鑑賞し、
芝居の帰りには贔屓の役者絵を買って帰る、
そんなことをタイムマシンで体験したいものです。
*第182回 文楽公演 「摂州合邦辻」
数日後、今年初の文楽鑑賞、国立劇場に行ってきました。
いつもお昼の部しか見られないのですけれど、
今回は「摂州合邦辻」
ややこしいお家騒動の中、命懸けで家を護る一騒動。
賑々しく、親子、夫婦、恋敵、主従の様々な糸がこんぐらり、
お家を護るあまりに命全うしてしまうお話。
護る家があるという幸不幸。
そういえば、亡くなった團十郎さんが若い頃
住大夫さんの所へ出稽古に行ったシーンを
團十郎の苦闘ドキュメントでみたのですが、
口伝という厳しい現場を垣間見た迫力あるシーンでした。
声の出し方などを丁寧に厳しく教えられていました。
日頃の稽古のすさまじさを知らない者には
大変だ、の一言で申し訳ないことです。
鍛錬のたまものこそがお見せできる芸事に繋がるわけですね。
まだまだ文楽をみて日が浅いので
なんとも頼りないのですが、
ようやく、三味線の個性に気がついて楽しく思います。
人間国宝の鶴澤寛治さんが表情を変えず淡々と
親子の情や人の道を説く激しい場面を盛り上げると思いきや、
クライマックスの場面には若手の鶴澤燕三さんが
ガンガンロックに三味線を叩きます。
俊徳丸という綺麗な色男な若殿様をめぐる
色恋、お家継承、親子情、人の道。
玉手御前は俊徳丸の継母ですがお家のためとどういうわけか
色仕掛けします。もともと浅香姫というかわいい人がいるのにもかかわらず。
それで、二人がぶつかるシーンがあるのですが
これがまた激しい女の喧嘩戦い。
見苦しい戦いっぷりに唖然とするなか
開場からは失笑の渦。
女性のひとすじに思う気持ちのいじらしさは
過ぎると大変と言うことです。
いさめる親も大変です。
文楽は去年某市長の税の使い方に端を発して
賑やかな事でしたが、
決して伝統の古色蒼然としたものではなく、
もっとギラギラ人間くさいバタバタした無茶な物語が多いので、
芝居小屋を覗く気持ちでどんどんお出かけすることを
お勧めしたいです。
大夫さんのことばも段々と昔ことばに慣れてきますし、
カタログには台詞の小冊子が挟まれていて、
勉強になります。
なによりも人形が愛らしく美しいのです。
その人形遣いの修行もまた長々しいのですが
マジメにいい男が人形にひれ伏して物語を動かしていく
その現場のもの凄いこと。
次回は五月皐月の緑の時です。
曾根崎鑑賞を楽しみにします。
それ以外に、
同人誌の編集お手伝い、企業華道部のお手伝い、
来週に迫るいけばな展への準備、
などなど身に余る様々になんとか足手まといにならないよう、
気をつけなければならない日々が続きました。
三月弥生ひな祭り、
春が近づく、命が土の中から動いて生まれてきます。
力が生まれる3月となりますように。
昨年から山下裕二先生の講義を聴いたり、
関連本を開いたり、早々に届いた図録を眺めたり、
森美術館で開催された「日本美術がわらう」展の図録を
探して手に入れて、
そこで見た白隠さんを確認したりして
白隠さんを追いかけてきました。
永青文庫にもまた行きたいな、とか、
細川家の至宝展で拝見したあの迫力ある乞食僧の絵を思い出したり、
数年前に出光美術館での書の展覧で
「動中工夫」の大胆な中という巨大かつ激しい文字に仰天したことを思い出したり。
一つ目小僧の意表を突く面相や、
ぬうっと出てきそうな達磨さんの妙な迫力。
すたすた坊主のどうしようもない脱力ぶりや、
おかめさんにお灸を据えられるだらしないおじさん。
これが禅画ですか。
仙厓(センガイ)さんと並び評されることもあるようですけれど、
お腹にある太さが黒々としてみなぎる力も
ハンパないことは追随する人はいないでしょう。
期待値を上げ上げでやっと白隠展に行ってきました。
もう、最初からニヤニヤものでした。
白隠さんが住職のお寺に参詣した気分です。
もはや、そもそもの人間の太さが違うんだと実感したのです。
破天荒な絵から凝り固まった脳みそが
解けていくような、
マジメでいることのばかばかしさみたいな
まぁ良いじゃないの、という達観にも近い気分に
させられるということが
さすが禅僧白隠さんです。
ナビゲーターが山下先生と井浦新さんの
掛け合いトークなので、イヤホンガイドもついつい
お借りしました。
この機会がきっと美術史の王道に白隠さんが
ぶっとく生きながらえることを確信したのでした。
山下裕二先生の深い愛情と執念の念願叶って、
白隠さんに見事光が当てられた桃源郷となっていました。
図録もコンパクトで秀逸美本でした。
編集は「日本美術が笑う」展図録と同じ匂いがする、
と思ったら同じ方。広瀬麻美さんという方。
*たばこ塩博物館 「さくらいろいろ」展
充実感を胸にせっかくの渋谷なので、たばこ塩博物館まで足を伸ばしました。
「さくらいろいろ」展
さくらにはほど遠い寒い日々が続いていましたが、
丁度サントリー美術館で歌舞伎展を開催しているタイミングで
あでやかな役者絵を堪能できます。
入場料が百円で
カラー刷りのコンパクト冊子を頂けます。
どんだけふとっぱらか。
日々、塩をまぶしまくりましょう。
江戸の桜と言えば隅田川、墨堤、浅草寺。
上野寛永寺。飛鳥山。
舞台では娘道成寺、桜門五三桐、助六などなど。
桜門五三桐で思い出しましたが、
歌舞伎界では猿翁不調で休演とのニュースに心配事が生まれます。
どうか、ご快復を。
役者絵の賑やかうっとりな三枚綴りは
晴れ晴れしく気持ちが必然と上がってきます。
「江戸花二人助六」
描かれているのは五代目松本幸四郎の意久、三代目尾上菊五郎の揚巻の助六、
二代目沢村田之介の揚巻、七代目市川團十郎の花川戸助六、
三代目坂東三津五郎の白酒売。
という、二人助六という珍しいもの。
あぁ、亡き十二代團十郎の助六とと菊五郎の白酒売の掛け合いは
本当に可笑しく微笑ましい一場面だったな〜と
思い出しつつ鑑賞したわけです。
芝居と言えば歌舞伎だった江戸時代。
かかる演目にあわせて着物や帯を選び、鍋一式を桟敷に並べて
つまみながらワイワイ鑑賞し、
芝居の帰りには贔屓の役者絵を買って帰る、
そんなことをタイムマシンで体験したいものです。
*第182回 文楽公演 「摂州合邦辻」
数日後、今年初の文楽鑑賞、国立劇場に行ってきました。
いつもお昼の部しか見られないのですけれど、
今回は「摂州合邦辻」
ややこしいお家騒動の中、命懸けで家を護る一騒動。
賑々しく、親子、夫婦、恋敵、主従の様々な糸がこんぐらり、
お家を護るあまりに命全うしてしまうお話。
護る家があるという幸不幸。
そういえば、亡くなった團十郎さんが若い頃
住大夫さんの所へ出稽古に行ったシーンを
團十郎の苦闘ドキュメントでみたのですが、
口伝という厳しい現場を垣間見た迫力あるシーンでした。
声の出し方などを丁寧に厳しく教えられていました。
日頃の稽古のすさまじさを知らない者には
大変だ、の一言で申し訳ないことです。
鍛錬のたまものこそがお見せできる芸事に繋がるわけですね。
まだまだ文楽をみて日が浅いので
なんとも頼りないのですが、
ようやく、三味線の個性に気がついて楽しく思います。
人間国宝の鶴澤寛治さんが表情を変えず淡々と
親子の情や人の道を説く激しい場面を盛り上げると思いきや、
クライマックスの場面には若手の鶴澤燕三さんが
ガンガンロックに三味線を叩きます。
俊徳丸という綺麗な色男な若殿様をめぐる
色恋、お家継承、親子情、人の道。
玉手御前は俊徳丸の継母ですがお家のためとどういうわけか
色仕掛けします。もともと浅香姫というかわいい人がいるのにもかかわらず。
それで、二人がぶつかるシーンがあるのですが
これがまた激しい女の喧嘩戦い。
見苦しい戦いっぷりに唖然とするなか
開場からは失笑の渦。
女性のひとすじに思う気持ちのいじらしさは
過ぎると大変と言うことです。
いさめる親も大変です。
文楽は去年某市長の税の使い方に端を発して
賑やかな事でしたが、
決して伝統の古色蒼然としたものではなく、
もっとギラギラ人間くさいバタバタした無茶な物語が多いので、
芝居小屋を覗く気持ちでどんどんお出かけすることを
お勧めしたいです。
大夫さんのことばも段々と昔ことばに慣れてきますし、
カタログには台詞の小冊子が挟まれていて、
勉強になります。
なによりも人形が愛らしく美しいのです。
その人形遣いの修行もまた長々しいのですが
マジメにいい男が人形にひれ伏して物語を動かしていく
その現場のもの凄いこと。
次回は五月皐月の緑の時です。
曾根崎鑑賞を楽しみにします。
それ以外に、
同人誌の編集お手伝い、企業華道部のお手伝い、
来週に迫るいけばな展への準備、
などなど身に余る様々になんとか足手まといにならないよう、
気をつけなければならない日々が続きました。
三月弥生ひな祭り、
春が近づく、命が土の中から動いて生まれてきます。
力が生まれる3月となりますように。